カンヌ国際映画祭受賞作品

ある過去の行方(2013)

原題は「Le passé」(過去) アスガー・ファルハディの映画って まっこうから国、文化、宗教、男と女の違いをぶつけてくる どこからどう切り出したらいいのか 私にとってレビューを書くのが最も難しい監督のひとり (もうひとりはドゥニ・ヴィルヌーヴ 笑) …

聖地には蜘蛛が巣を張る(2022)

「ドラゴン・タトゥーの女」シリーズのような邦題ですが(笑) 原題は「عنکبوت مقدس」(聖なる蜘蛛) イランの首都テヘランに次ぐ第2の都市で 多くのシーア派の信徒が訪れる聖廟都市(聖地)でもあるマシュハド (「富者はマッカへ、貧者はマシュハドへ」 と…

フィッツカラルド(1982)

原題は「Fitzcarraldo」(主人公の通称) 19世紀末、南米ペルーのアマゾンのジャングルに オペラ愛好家の男がオペラハウスを建設しようとする話 映画史上最も制作が困難だった作品のひとつということで 主演のジェイソン・ロバーズが、映画の半分が完成した…

トムボーイ(2011)

原題は「Tomboy 」(お転婆娘) なんの前知識もなく見たので、それがよかった お父さんの膝の上で一緒にハンドルを持ち運転する少年ロール 今じゃご法度ですが、昔はこういう風景がたまにありました お父さん役のマチュー・ドゥミは ジャック・ドゥミとアニエ…

EO イーオー(2022)

原題は「IO」(ポーランド語)でロバの鳴き声に由来 「くまのプーさん」の「イーヨー」の名前も 英語のロバの鳴き声の"eeyore"からなんですね イエジー・スコリモフスキが、ロベール・ブレッソンの 「バルタザールどこへ行く」(1966)にインスパイアされた …

サブスタンス(2024)

原題は「The Substance」(物質) 「アノーラ」を見た時も思いましたが、こういう映画が ゴールデンラズベリーではない映画賞の最有力候補になるとは 時代は変わったものです 女優が「脱いでなんぼ」=「体当たりの演技」と評価されるのは 昔も今も同じです…

コズモポリス(2012)

原題は「Cosmopolis」 コズモポリスとは、国際都市ニューヨークのこと 原作はドン・デリーロの同名小説 監督・脚本はデヴィッド・クローネンバーグ プロデューサーは(300本以上の映画を制作した)パウロ・ブランコ 私的にお友達になりたい変態三つ巴(笑) …

エミリア・ペレス(2024)

原題は「Emilia Pérez」 メキシコの麻薬王が、チャンスに恵まれない女性弁護士リタに 性別適合手術を受ける協力をしてもらい エミリアという名前の女性になり かってのカルテルの富と人脈を利用して 行方不明になったカルテルの犠牲者(パラ)を見つける 非営…

ストーカー(1979)

ALWAYS四丁目 ギドラのお城 ギドラ伯爵からの名作DVDのプレゼント第三弾 今なお多くのクリエイターたちに影響を与え続けている アンドレイ・タルコフスキーの哲学的SFファンタジー 原題は「Сталкер」(ストーカー) ストーカーが特定の人物に付きまと…

ANORA アノーラ(2024)

原題は「Anora」 R指定(日本では18歳未満入場禁止、米国では17歳未満は要保護者の同伴) にもかかわらず、2025年第97回アカデミー賞で 作品賞、監督賞、主演女優賞、脚本賞編集賞の最多5冠を獲得 30年前ならば「脱いでなんぼ」のゴールデンラズベリー賞(褒…

聖なるイチジクの種(2024)

原題は「دانه‌ی انجیر معابد」英題は「The Seed of the Sacred Fig」 熱帯雨林で最も背の高い木のひとつ「聖なるイチジクの木」は 別名「窒息する木」とも呼ばれ その種は鳥の糞を通じて他の木に落ちると、木の幹で発芽し やがて宿主の木を取り囲み締め付け…

帰れない山(2022)

原題は「Le otto montagne」(8つの山)で 「須弥山(しゅみせん=スメール山)を囲む8つの山」 のこと 原作はパオロ・コネッティが2016年に発表したベストセラー小説 須弥山は古代インド仏教の、世界の中心にそびえ立つ山のことで この山を囲んで世界が広が…

怪物(2023)

第76回カンヌ国際映画祭において脚本賞(坂元裕二)と クィア・パルム賞を受賞した是枝裕和監督作品 クィア・パルム賞とはその名の通り 性的マイノリティを扱った作品に与えられる賞のこと この時点でネタバレなのですが(笑) 物語はガールズバーの入ってい…

PERFECT DAYS パーフェクト・デイズ(2023)

原題の「Perfect Days」(完璧な一日)は 本作の挿入歌としても使われている Lou Reed (ルー・リード1942~2013)が 1972年に発表した楽曲のタイトルから 「トレイン・スポッティング」で使われたり デュラン・デュランほか様々な歌手にカバーされている人…

ニトラム/NITRAM(2021)

原題は「Nitram」 1996年4月28日、オーストラリア・タスマニア島のポート・アーサーで 死者35人、23人が負傷した無差別銃乱射による大量殺人事件 「ポート・アーサー事件」 その27歳の犯人、マーティン・ブライアント(Martin John Bryant)の 「Martin」を…

燃ゆる女の肖像(2019)

原題は「Portrait de la jeune fille en feu」(燃える少女の肖像) 批評家から絶賛され、国際的にも高い評価を受けた本作 監督は自身もレズビアンのセリーヌ・シアマ 映画と視聴覚における女性と男性の平等 性とジェンダーの多様性を促進を目的とする活動を…

関心領域(2024)

原題は「The Zone of Interest」 300万人のユダヤ人を虐殺した(現在ではおよそ100万人強というのが通説) アウシュビッツの所長で戦犯、ルドルフ・ヘスとその家族がモデル ここでの「関心領域」とはアウシュビッツを隔てている壁のこと そして壁1枚隔てたヘ…

籠の中の乙女(2009)

原題は「Κυνόδοντας」(犬歯=牙) 常に「性」と「暴力」というのが ヨルゴス・ランティモスの作品テーマだと思うのですが これは「哀れなるものたち」より、さらに”哀れなるものたち”の物語でした(笑) 「プロパガンダ」を「家庭」という小さな世界に置き…

「死刑台のメロディ(1971)4Kリマスター英語版

「無名で一生を終えたであろう自分たちが アナーキストとして後世に名を残すことができたことを 検事と裁判官に感謝する」 原題は「Sacco e Vanzetti」(サッコとバンゼッティ) 「エンニオ・モリコーネ特選上映 Morricone Special Screening×2」 にて鑑賞 …

落下の解剖学(2023)

原題は「Anatomie d'une chute 」(落下(転落)の解剖) 第76回カンヌ国際映画祭で最高賞パルムドール 第81回ゴールデングローブ賞で脚本賞と非英語作品賞を受賞 第96回アカデミー賞では作品賞を含む5部門にノミネート 人里離れた雪山に立つフランスの山荘…

ロブスター(2015)

原題は「The Lobster」 冒頭、雨の中車が牧場に着くと女が降りて一頭のロバを撃ち殺します その後この「ロバを撃った女」は一度も登場しません 場面は切り替わり、主人公デヴィッド(コリン・ファレル)の面接シーン デヴィッドは妻が別の男と出て行ったため…

聖なる鹿殺し/キリング・オブ・ア・セイクリッドディア(2017)

原題は「The Killing of a Sacred Deer」(神聖な鹿の殺害) ミヒャエル・ハネケのような不気味で居心地の悪さ でもハネケの「本当に怖いのは人間」とは違って 神がかっている これは映画の終盤で娘が学校のレポートで「A」をもらったという ギリシャ神話の…

時の翼にのって/ファラウェイ・ソー・クロース!(1993)

原題は「In weiter Ferne,so nah!」(遠くて、とても近い) 「ベルリン・天使の詩」(1987)の続編で (ヴェンダースは続編というより、統一後のベルリンを探索したかったらしい) 第46回カンヌ国際映画祭審査員特別グランプリ受賞 主題歌はU2の名曲「en:S…

アンダーグラウンド(1995)

「むかし、あるところに国があった」 原題は「Подземље(セルビア語)」 (地下) 1941年セルビアの首都ベオグラードをナチスが爆撃 それから50年もの間戦争が続いていると嘘をつき 人々を地下に閉じ込め、武器を作らせ 地上で金儲けした男の物語 それはかっ…

太陽に灼かれて(1994)

原題は「Утомлённые солнцем」(”疲れた太陽”という意味もある)で 1930年代にソ連で流行した、ポーランドのタンゴに由来 (原曲はポーランド語で「最後の日曜日(To ostatnia niedziela)」) 公開当時はスターリン時代の共産主義者(正しくは社会主義)に…

大人は判ってくれない(1959)

原題は「Les Quatre Cents Coups」 直訳は「400回の攻撃」転じて「無分別な行動」や「若気の至り」という意味で 1621年、20歳そこそこだったルイ13世が フランス西南部のモントーバン市のプロテスタント系住民を弾圧するため 大砲400発を発砲したものの失…

白いリボン(2009)

原題は「Das weiße Band」 ここでの「白いリボン」とは ”純潔に育つように”と願いをこめて(間違いを犯した)子どもに 親が結ぶもので、一方で子どもにとっては ひとめでそれとわかる屈辱的なもの 1913年、ドイツ北部のプロテスタントの村 小学校の教師(の…

ぼくの伯父さんの休暇(1953)

原題は「Les Vacances de Monsieur Hulot」 (ユロさんの休暇) コメディアンでもあるジャック・タチの当たり役「ユロさん」を 自作自演したシリーズの第1作目 「ミスター・ビーン」の ローワン・アトキンソンは この作品の影響を受けているそうです 特に話…

過去のない男(2002)

原題は「Mies vailla menneisyyttä」(過去のない男) 暴漢に襲われ記憶喪失になった男が、親切な人々に助けられ 救世軍の女性と恋に落ちる 最後ふたりは結ばれ、暴漢たちも成敗を受けるという 難しいところはひとつもない(笑)ハッピーエンドもの 舞台はヘ…

ワイルド・アット・ハート(1990)

原題も「Wild at Heart」(真の野生) 原作はバリー・ギフォードの「ワイルド・アット・ハート: セーラーとルーラの物語」 リンチはこの映画のテーマのひとつは「地獄で愛を見つける」ことで 結末は「幸せな」と述べたそうですが 最初の脚本は、セイラーがル…