あなたが帰ってこない部屋(2025)

「これは私たちの子どもです あなたたちの子どもです」

 

原題はAll the Empty Rooms」(空っぽの部屋たち)

これはあまりにも辛すぎた

悲しみと苦しみしかなかった

短編でよかった

アメリカの報道番組(CBS)ニュースの特派員スティーブ・ハートマンは

カメラマンで友人でもあるルー・ボッブと共に

上司に無断で、学校銃乱射事件で亡くなった子ども達を追悼するため

子ども部屋を拝見するドキュメンタリーを作る決意をし
全ての家を一軒一軒訪ねるためアメリカ全土を旅します

ついに残り4件となったときには7年という歳月が流れていました

内容的には、亡くなった子どもの寝室を撮影し

家族から話を聞くだけというもの

もうこの世にはいない娘や息子の寝室を

まるで「いつ帰ってきてもいい」ように手つかずにしている両親

自分たちは年をとり、きょうだい達も成長しているのに

家族にとって「あの日」から時間は止まったままなのです

これは病気や交通事故で我が子を亡くした親でも

気持ちは同じだと思うんですね

そこにいたはずの愛する人の痕跡を消すことなんてできないのです

私なんて次男が就職して家を出ただけでも

寂しくて息子ロスになったくらいですから

その悲しみは計り知れない

産まれたときから大切に育て

泣いて笑って愛情がいっぱい詰まった部屋

 

今このレビューを書いているだけでも泣きそうになる

アメリカで最も多く若者の命を奪っているという学校銃乱射事件

だけどアメリカでの銃社会の撲滅は見えてこない

それどころか、さらにルールも法もない

武器を持つ者が「先に攻撃したほうが勝ち」の時代への突入

スティーヴ・ハートマンが、アメリカにおける学校銃乱射事件の取材を

初めて担当した1997年当時の学校銃乱射事件は年間17件

それがさらに近年での年間平均発生件数は132件にまでのぼっているそうです

それでもアメリカは銃社会が正しいと言い続けるのでしょうか



【解説】映画.COMより

Netflix2025121日から配信。

98回アカデミー短編ドキュメンタリー賞ノミネート。

2025年製作/35分/アメリカ
原題または英題:All the Empty Rooms
配信:Netflix

 

ナイブズ・アウト: ウェイク・アップ・デッドマン(2025)

 

原題はWake Up Dead Man: A Knives Out Mystery

死んだ男を目覚めさせろ:ナイフが抜かれた”ミステリーこと”ブランの事件簿”)

 

過去2作のような派手さはなく、いかにもアガサ・クリスティ的

地味に密室殺人を紐解く正統派古典ミステリーに仕上がっています

その分ブランのおとぼけ探偵の魅力は半減

 

さらに(神の啓示を受けたから?)ブランが解決するのではなく

真犯人の告解(こっかい)によって真相がわかるというという結末(笑)

しかも尺が146分もあるにもかかわらず

最初の殺人に使われた酒ボトルを

誰が盗んでどこに隠したという謎は残されたままという(笑)

私的にはスッキリせず惜しいところでした

ニューヨーク州北部の小さな町にある「聖なる勇気の聖母教会」

聖金曜日の礼拝中、ウィックス神父は(毎回)疲れたという理由で

聖壇に隣接するクローゼットに休むため向うと、そのまま倒れる音がし

ジャドが向かうとウィックス神父の背中に突き刺されていたのは

悪魔の頭の飾りのついたナイフ

それはジャドが酒場のランプの飾りを酔って持ち帰り投げ捨てたものでした

警察も信者たちもジャドが犯人だと疑いますが

そこに登場したのが名探偵ブノワ・ブラン

真犯人を探すためジャドに協力を求めます

 

名探偵ブノワ・ブラン(ダニエル・クレイグ)

 

ジャド神父(ジョシュ・オコナー)

元ボクサーで試合中相手を殺した過去がある

言葉に無礼な助祭を思わず殴ってしまい除名になるところを

理解あるラングストローム司教の計らいで

(問題のある)ウィックス神父が率いる教区に派遣

信者たちに主の本当の教えとは何かを伝えようとしても理解されないうえ

ウィックス神父が何者かに殺されると、第一容疑者になってしまう

 

ジェファーソン・ウィックス神父(ジョシュ・ブローリン)

アルコール依存症で、自慰行為を告解するなど

(実際は前立腺がんの手術の後遺症の性不全)

聖職者であるにもかかわらず(聖職者だから?笑)堕落している

一方で力強い言霊と、型破りな説教で人気があり

(シングルマザーなど)聖書の教えに反する人間を攻撃しては

信者同士を結束させている弱い者いじめの法則(ランチェスターの法則

何者かに殺されるが生き返って霊廟から脱出する

 

マーサ(グレン・クローズ)

幼い頃(ウィックス神父の父親の代から)教会に仕え

教会を実務の全てをまかされている運営者

ウィックス神父や信者から最大限信頼されていて

唯一殺人事件のもととなった「イヴのリンゴ 」の隠し場所を知っている人物

 

ヴェラ(ケリー・ワシントン)

地元で法律事務所を経営している優秀な弁護士

亡き父親がどこからか連れてきた出生不明の男子サイを

ヴェラの養子としたため面倒を見ている

ウィックス神父の死後「誰に忠誠を誓うべきか」を悩む

 

サイ(ダリル・マコーマック)

ヴェラの養子で政治家を目指していたものの挫折し

ウィックス神父の動画をアップした(保守派の)インフルエンサーとして活躍

遺伝子検査でウィックス神父の息子だったことがわかり(母親は不明)

ウィックス神父から全財産を相続すると宣言される

マーサにとって教会の権威を失墜させる決定的なスキャンダル

 

ナット(ジェレミー・レナー)

離婚した妻に未練タラタラの町医者

(結婚指輪の代わりに薬指にナットをつけている)

一時的に昏睡させることのできる薬物(ペントバルビタール)を酒に混ぜ

ウィックス神父を殺害した実質的な犯人

 

リー(アンドリュー・スコット)

エゴイストなベストセラー作家で、新作タイトルの「聖人と吟遊詩人」 を執筆中

「不可能犯罪」の謎に深く関っている

 

シモーヌ(ケイリー・スピーニー )

原因不明の疼痛(とうつう)で引退したチェリスト

病を治す「奇跡」を信じてウィックス神父に全財産を寄付している

 

サムソン(トーマス・ヘイデン・チャーチ )

マーサと同じく幼いころから教会に尽くしてきた管理人

真の善人で、心から愛するマーサに尽くすため

ウィックス神父の替え玉となって霊廟に入り

ウィックス神父の祖父の亡骸から「イヴのリンゴ」を見つけて脱出したものの

欲に目がくらんだナットに殺されてしまう

 

プレンティス・ウィックス神父(ジェームズ・フォークナー)

ウィックス神父の祖父で教会の創設者

多大な資産を持っていたものの、強欲な人間(娘)に渡らないようにするため

「イヴのリンゴ」(巨大なピンク・ダイヤモンド)に替え

飲み込み死亡(窒息か)

 

グレイス・ウィックス(アニー・ハミルトン)

「あばずれ娼婦」と呼ばれていたウィックス神父の母親

グレイスの異性関係と散財に頭を悩ませていた祖父は

教会に留まることで資産を相続することを約束しますが

祖父の死後、資産がダイヤモンドに変えられたことを

(どこからか)知ったグレイスは教会を破壊してダイヤ探しますが見つからず

父の墓の前で憤死(激しい怒りのあまり死ぬこと)してしまう

 

ジェラルディン・スコット (ミラ・クニス)

非常に有能で真面目な地元の警察署長

 

ラングストローム(ジェフリー・ライト)

ジャドを「聖なる勇気の聖母教会」に派遣した司祭

 

ジェニー(リヴ・ヒューソン

地元で兄と扉の修理や鍵の製作の会社を営む女性

霊廟の「開かないはずの扉」に

内側からだけ開けらる特殊なラッチ(掛け金)を取り付けるよう

依頼されたことを知らされますが

ジャド神父は犯人捜しより、彼女のホスピスに入居している身内の話に感銘を受け

神父としての勤めに本気で目覚てしまう

 

前2作と同じように、証言の食い違いや証拠のピースを繋ぎ合わせ

さらに証拠となるサイの(すべて録画している)動画によって

密室殺人と生き返った死人の真相を探るブノワ

 

しかし皆が集まった教会に日が差し込むと、啓示を受けた?ブノワは

やっぱり解決できないと言い出します

するとジャド神父の前にマーサがやってきて、告解を申し出ます

それは彼女にとっても一番大切な人

サムソンを自分のせいで死なせてしまったから

マーサはイヴのリンゴを誰にも渡さないために

ナットの協力で(薬を用意し皆が現場を離れている隙にナイフを突き刺した)

ウィックス神父を殺し、替わりにサムソンを埋葬しま

(検死の終わったウィックス神父の遺体はナットの家の地下に隠される)

 

マーサに言われた通りダイヤを手にしたサムソンは

霊廟の扉を突き破り(どんだけ柔らかいコンクリートだ 笑)

(サムソンに変装した)ナットと合流

そこに何も知らないジャド神父がやって来て

ウィックス神父が蘇ったと信じてしまいパニック、気絶してしまいます

ジャド神父が気がついた時、鎌を刺されて死んでいるサムソンを発見

ブノワは自首しようとしているジャド神父を止め

彼と共にナットの自宅に向かいます

そこには薬物に浸かったウィックス神父とナットの遺体

(ウィックス神父がナットを絞め殺している構図)

つまりナットはイブのリンゴを独り占めするためにサムソンを殺したうえ

イブのリンゴの存在を知るマーサも殺そうと、彼女のコーヒーに毒を盛ります

(サムソンの復讐のためやって来た)マーサはこっそりカップを入れ替え

毒入りコーヒーをナットに飲ませると

死んだはずのウィックス神父が、ナットを殺したように細工したのです

 

マーサは全てを告白すると、自ら毒を飲んだことを明かし倒れ込むと

死に際で被害者への赦しを祈ります

ジャド神父グレイスのこともすよう促すと

マーサは(いやいやながら?)グレイスのことも赦すと告げ

握っていたイヴのリンゴをジャド神父に託し息絶えると

ブノワはマーサが真犯人だと知ったものの、彼女の唇が乾いていたことで

すでに毒を飲んでいて時間がないことに気付き

犯人追及することを(神にまかせ)止めたことを打ち明けます

 

1年後、ジャド神父は(グレイスに破壊され十字架のない教会に)

木彫りの十字架を彫り、教会も「永遠の恵みの聖母」と改名し再開

一方、相続権(イヴのリンゴ諦めきれないサイは

ジャド神父どこかにダイヤを隠しているに違いないと

ジャド神父のお金の流れを監視し続けていました

 

だけどジャド神父の隠し場所は銀行でないことはもちろん

ウィックス神父の祖父のように飲み込むのでもなく(だけど敬意をこめて)

教会に飾られた十字架のキリスト像の喉の奥に永遠にしまったのでした

 

 

【解説】映画.COMより

ダニエル・クレイグが主演を務め、ライアン・ジョンソン監督がオリジナル脚本で描く人気ミステリー「ナイブズ・アウト」シリーズ第3弾。ダニエル・クレイグ扮する名探偵ブノワ・ブランが、これまでで最も危険な事件へと挑む。
ある田舎町の教会で、絶対に実行不可能と思われる犯罪が発生し、名探偵ブノワ・ブランは若く実直な神父と手を組み、真相究明に挑む。しかし、その教会には長年封じられてきた忌まわしい過去が潜んでいた。
ブノワ・ブランと手を組む若き神父を「ゴッズ・オウン・カントリー」「墓泥棒と失われた女神」のジョシュ・オコナーが演じるほか、グレン・クローズ、ジョシュ・ブローリン、ミラ・クニス、ジェレミー・レナー、ケリー・ワシントン、アンドリュー・スコット、ケイリー・スピーニー、ダリル・マコーマック、トーマス・ヘイデン・チャーチら豪華キャストが共演。Netflixで2025年12月12日から配信。

2025年製作/146分/アメリカ
原題または英題:Wake Up Dead Man: A Knives Out Mystery
配信:Netflix

 

歌うたい (2025)

原題は「The Singers

原作は1850年に発表されたイワン・ツルゲーネフの短編小説「歌うたい」

 

酒場に集まった男たち、それぞれの人生を投影するような

名曲が次々歌い上げられ

すべての歌唱シーンは口パクなしのライブ録音ということで

単なるミュージックビデオではないドラマ感があります

なかなか渋いカメラですし、わずか18分という短編映画なので

音楽に興味のないかたにもおススメできます(笑)

孤独な男たちが集まる場末の小さなバー

建設作業員風の男(ウィル・ハリントン)が

他の客にビールを奢ってくれとせがみますが誰も耳を傾けません

そこでハリントンは俺は歌が上手い

奢ってくれたら歌を披露すると言うと

呆れたバーテンダー(マイク・ヤング)は

そこにいる爺さん(クリス・スミザー)は昔は凄かったと

歌合戦で一番歌の上手い奴に賞金100ドルとビール1本を奢るといいます

マイク・ヤングの「アンチェインド・メロディ」 を皮切りに

クリス・スミザーが「朝日のあたる家」

ウィル・ハリントンがピアノの伴奏をはじめ

「イット・ハーツ・ミー・トゥー」を歌い

ジュダ・ケリー が(トイレで)「ハレルヤ」を熱唱すると

もう100ドルとビール1本なんてどうでもいい

感動的な歌声に何人かの客は涙を流し、皆で抱擁しあったとき

 

ひとりの男(マット・コルコラン)が前に出てきて

突然予想外の(オペラ「道化師」から)「衣装をつけろ」を披露(笑)

歌合戦は続いたのでした

マイク・ヤング:地下鉄で撮影した動画が拡散し監督の目に留まった歌手

クリス・スミザー: フォーク・ブルースのレジェンド

ジュダ・ケリー: オーストラリア出身のシンガーソングライター

ウィル・ハリントン: 路上演奏で知られるピアニスト

マット・コルコラン:アメリカのオペラ歌手(テノール)、声優

 

 

【解説】Netflixより

酒場で不意に始まった、100ドルとビール1本を賭けたのど自慢。それはやがて、互いの心がつながり合う温かな時間にかわっていき…

アカデミー賞ノミネートされた短編映画。

2025年製作/18分/アメリカ
原題または英題:The Singers
配信:Netflix

 

センチメンタル・バリュー(2025)

「イケアの椅子よ」

 

原題は「Affeksjonsverdi」(愛着や思い入れがあって捨てられないもの)

カンヌ国際映画祭、ゴールデングローブ賞をはじめとした

各国の映画祭で数々の賞を受賞している

今年度イチ評価の高い映画ですね

昔は貧しくても、学歴がなくても

誠実に生きていれば報われるという

清貧の思想というものがありましたが

近頃は誰にも完璧さが求められていて

生きていくのが苦しい時代

 

さらに親に愛されていなかった、または過剰な期待から

メンタルバーンアウト(認められないことへの絶望)を病んでしまったものの

死にたいけど死ねない現実

 

これはそんなどん底から立ち直っていく女性のストーリー

そしてそこまでたどり着くのに必要だったのは

親への「赦し」しかなかったということ

ノルウェーの映画監督グスタフ・ボルグ(ステラン・スカルスガルド) は

夫婦喧嘩の末、妻と幼い娘のノーラとアグネスを棄て

キャリアに専念するためフランスに渡り、世界的な名声を得ていました

成長した(30半ば)姉のノーラ(レナーテ・レインスベ)は舞台女優として活躍

(だけど激しい舞台恐怖症に悩まされている)

歴史学者になった妹のアグネス(インガ・イブスドッテル・リッレオース)は

結婚し息子のエリックがいます(俗にいう幸せな家庭を築いている)

心理カウンセラーだった母が亡くなり、葬儀あと突然父親のグスタフやってきます

グスタフが戻ったのは元妻が死んだことや

家の権利がグスタフにあることもありますが

本当の目的は、自分の新作映画にノーラに出演して欲しいと頼むことでした

アグネスはエリックが生まれてから、父親との交流を再開していましたが

ノーラは未だ父親のことが許せずにいて

父親の言う「おまえの脚本」を受けとることすらしませんでした

そんなときオスロでグスタフのレトロスペクティブ(回顧展)が開催され

グスタフの(アグネスがヒロインを演じている)過去作を見た

ハリウッドの若手人気女優レイチェル(エル・ファニング)は

(商業的な成功ではなく芸術的な作品を求めている)

グスタフの作家性に惹かれ、グスタフの作品に主演することを熱望

グスタフもまた彼女の素直なチャーミングさに惹かれます

ネットフリックスによりレイチェル主演によるグスタフの新作の製作が発表され

姉妹が母親(と祖母)の住んでいた「家」でのリハーサルが始まります

ノーラは(自分から主演を断ったものの)心中穏やかではありません

「家」こそ捨てられない思い出(擬人化した胎内)だったから

エリックの10歳の誕生日に、再び父親と会うことになるノーラ

グスタフが誕生日のプレゼントに、「女性を理解するのに役立つ」と

ミヒャエル・ハネケの「ピアニスト」と

ギャスパー・ノエの「アレックス」の

DVDをプレゼントするシーンには

グスタフの感覚がいかに世間の常識からかけ離れていることがわかります

(大人が見ても過激なアート映画 笑)

ここまでくれば軽蔑を通り越して笑うしかない(笑)

ノーラの落ち込みは激しくなり

彼女が所属する劇団の演出家のヤコブと不倫をしてしまいます

ところがヤコブは妻との離婚が決まっていたにもかかわらず

そのことをノーラにだけ伝えていなかったのです

(つまりはそれ以上の関係に発展しないということ)

劇中劇でノーラがヒロインを演じているのが、チェーホフの「かもめ」

作家志望の青年トレープレフは

息子の才能を認めようとしない大女優の母親アルカージナからの

愛情不足が原因で挫折

しかも女優を目指していたトレープレフの恋人ニーナが

人気作家のトリゴーリンの名声に惹かれ

トレープレフのもとをってしまいます

しかもトリゴーリンは母親の愛人でした

芸術にも愛にも絶望したトレープレフはついに命を絶ってしまう・・というもの

つまり本作は(母親を父親に、青年を娘に替えた)

ヨアキム・トリアー版「かもめ」ということなのでしょう

ついには舞台に出れなくなってしまうノーラ

一方意気揚々と新作映画に参加したレイチェルも

役をつかもうとすればするほど苦悩し

(ノルウェー語訛りの英語をマスターしたり、髪色やメイクを変えても)

これが自分のための映画ではないことを悟ります

 

同じ頃、父親からエリックを映画に主演させたいと脚本を渡されたアグネスは

(自分が父親の映画に主演したあと寂しい思いをしたため)断ったものの

新作のモデルである祖母(グスタフの母)の記録を調べることにします

そこには第二次世界大戦中、ノルウェー抵抗運動(レジスタンス)に係わり

(仲間を密告しなかったため)ゲシュタポから受けた激しい拷問が記されていました

解放後祖母は英雄として扱われましたが

拷問によるトラウマは決して癒えることはなく

まだ幼かったグスタフを残して自殺したのです

 

父親の書いた脚本を読むことにしたアグネスは

いつのまにか涙を流していました

(セルフネグレクトになってしまった)ノーラのアパートを訪ねたアグネスは

脚本の1ページをノーラに読ませ、これは「あなたの物語」と伝えます

そして私がこうして大人になれたのは

面倒を見てくれた姉がいたからなのだと、感謝の気持ちを伝えます

時に鬱というのは些細なことから脱却できるもの

自分はダメなだけの人間じゃなかった

すくなくとも(自分とは違い立派に成長した)妹の支えにはなっていた

過去に捕らわれていただけの自分にさようなら

グスタフはレイチェルに降板されたショックでワインを飲み過ぎ

心臓発作を起こし救急に運ばれます

知らせを受けたノーラとアグネスが病院に駆け付けると

美人看護師を口説いているうえ、水ではなくシャンパンが欲しいという始末

この男はたぶん死ぬまで自分勝手

ノーラとアグネスは吹き出してしまいます

ラストシーン

 

「家」は(製作資金のため)リフォームされ売却

そこから母親役を演じるノーラと息子役を演じるエリックのクライマックス

だけど私が何より素敵だと思ったのは

グスタフの相棒(カメラ)だったピーターが

撮影監督として現場で映像をチェックしているシーンでした

 

 

【解説】映画.COMより

「わたしは最悪。」で世界的に注目を集めたスウェーデンのヨアキム・トリアー監督が、愛憎入り混じる「親子」という名のしがらみをテーマに撮りあげた家族ドラマ。
オスロで俳優として活躍するノーラと、家庭を選び夫や息子と穏やかに暮らす妹アグネス。ある日、幼い頃に家族を捨てて以来、長らく音信不通だった映画監督の父・グスタヴが姿を現し、自身にとって15年ぶりの新作となる自伝的映画の主演をノーラに打診する。父に対し怒りと失望を抱えるノーラは断固として拒絶し、ほどなくしてアメリカの人気若手俳優レイチェルが主演に決定。やがて、映画の撮影場所がかつて家族で暮らしていた思い出の実家であることを知ったノーラの心に、再び抑えきれない感情が沸きおこる。「わたしは最悪。」でも主演を務めたレナーテ・レインスベが主人公ノーラを演じ、名優ステラン・スカルスガルドが映画監督の父グスタヴ役で共演。妹アグネスをインガ・イブスドッテル・リッレオース、アメリカの人気俳優レイチェルをエル・ファニングが演じた。2025年・第78回カンヌ国際映画祭でグランプリを受賞し、第98回アカデミー賞では作品賞をはじめ8部門で計9ノミネートを果たした。助演男優賞ノミネートのスカルスガルドはキャリア初のオスカーノミネートとなり、アカデミー賞史上初めて外国語映画での助演男優賞ノミネートなった。

2025年製作/133分/G/ノルウェー・フランス・デンマーク・ドイツ合作
原題または英題:Affeksjonsverdi
配給:ギャガ

 

ブゴニア(2025)

「トムとジェリー」の穴あきチーズ(エメンタールチーズ)のようなフォント

原題の「bugonia」とは

牛の「bous」と、誕生や再生の「gonos」が組み合わさった

「牛の死骸から蜜蜂が生まれる」(転じて死からの再生)という意味だそうです

韓国のSFブラックコメディ「地球を守れ!」(2003) のリメイクということで

今や不条理映画の代名詞ともいえるヨルゴス・ランティモス監督

&アリ・アスタープロデュースのわりには不穏さは控えめ(笑)

わかりやすい内容ではないでしょうか

ほぼ、アンドロメダ星人の陰謀論に染まりきった男と

人間になりすましたアンドロメダ星人に違いないと誘拐されてしまった

大企業の女性CEOとの、全く噛み合わない会話劇なのですが

終盤は血飛沫舞うグロが炸裂します(笑)

趣味で養蜂をしているテディ(ジェシー・プレモンス)は

従弟のドン(自閉症)に

近年働きバチが、女王バチを棄てて大量失踪する原因について

それは人間を監視し自分たちの脳にまで侵入し生活を脅かす
人間に変装したアンドロメダ星人の陰謀だと教えます

テディはそのひとりがミシェル・フラー(エマ・ストーン)という

大手製薬会社のCEOだと言い、ドンと共にミッシェル誘拐を決行

彼女を地下室に閉じ込め

(他のアンドロメダ星人に救難信号を送るのを防ぐため)

頭を剃り、抗ヒスタミンクリームで全身を覆います

目的は(4日後の)月食の日アンドロメダ星から飛来する宇宙船でやってきた

(月食だと地球の大気圏侵入に気づかれずに侵入できるという理屈)

皇帝と会談するため会わせてほしいというものでした

ミシェルが自分がエイリアンである根拠は何かと尋ねると

「45歳にしては若すぎる」(笑)

(それなら永遠の39歳の私もエイリアンだ 笑)

高学歴でエリートのミシェルは自身の最大限の知見や話術を使って

テディにアンドロメダ星人ではないこと

または、あなたの言う通りアンドロメダ星人よと

イカレ野郎のテディを説得しますが

テディの納得を得られず電気ショックをさせられるハメに

しかしミシェルの高い電圧に対する耐性に

彼女がただのアンドロメダ星人ではなく皇帝の一族だと見なし

(リサイクルショップで買った中古の)ドレスと夕食を用意し

地下室から解放します

そこでミシェルは、難病を患っていたテディの母親サンディが

ミシェルの会社の新薬の臨床試験に参加し

それがもとで母親が昏睡状態に陥ってしまったことを思い出します

つまり今回の犯行は、試験の失敗による補償金が不満だったのね、と

ミシェルの発言にテディはキレ、彼女に殴りかかったととき

今は地元の副保安官で、かってテディのシッターだったケイシーが訪ねてきて

(テディに性的虐待をしていた可能性を臭わせる)

誘拐された製薬会社のCEOの携帯の電源が最後に確認されたのがこの近くなので

何か知らないかと捜査に来ます

ミシェルのために用意したケーキを(スィーツ大好き)保安官にふるまい

その場をやり過ごそうとするテディ

 

その頃、地下室でミシェルを見張っていたドンは

テディとミシェル両方からの言葉のプレッシャーに耐え切れず

ショットガンで自殺してしまいます

異変に気付いた保安官をテディはうまく丸め込み

養蜂場に連れて行き、スコップで殴ったあとハチの大群に顔を噛ませて殺し

次にドンの遺体を発見したテディはミシェルを殺そうとし

ミシェルは、実は昏睡状態のテディの母親を回復することができる

新薬(解毒剤)がすでに開発されていて

車のトランクの中にある、見た目は不凍液の容器に隠しているのだと

命さながら訴えます

テディはドンの仇だとミシェルの膝蓋骨を強く打ち(脱臼させる)

車から不凍液の容器を発見して病院に急行

母親の点滴バッグに液体を注射するものの、母親の容態が急変

まもなく心電図が平行線を辿り、異変に気付いた看護師たちがやって来ます

その間、ドンの遺体のポケットから鎖の鍵を取り出して逃げようとしたミシェルは

ミシェルと同じように丸坊主にされた遺体の一部が入った多くの瓶や

拷問されたアンドロメダ星人の写真を見つけ

病院から逃げて戻ったテディに「何人殺したのだ」と涙ながらに訴えます

地球にやって来たアンドロメダ星人は

恐竜の絶滅を誤って引き起こしたことへの罪悪感から

自分たちの姿とそっくりの人類と、アトランティスを創造したこと

しかし人類は暴力と地球の破壊を繰り返したため

善良な生物を除いて生命体を滅ぼしますが(ノアの箱舟)

(優勢人種の子孫は)さらなる人類の差別や攻撃性を生み出し

(テディの母親に行った)新薬の臨床試験も、生まれつき欠陥のある人類を

暴力的な性質から遠ざけるための実験の一部だったとミシェルは明かし

自分もいつしか人類の欲望に侵されていたと打ち明けます

それからテディをアンドロメダ星人の会合に参加することを約束し

宇宙船にテレポートするため、ミシェルの会社に向かいます

ミシェルのオフィスに到着したテディは、もし騙された時に自分の身を守るため

自作の(身体にダイナマイトを巻きつけた)爆弾ベストを着ていました

ミシェルは電卓で船を呼ぶ数字(パスワード)を押し

(前回の月食から年月が経っているためなかなか思いだせない 笑)

船へのテレポーターだとテディクローゼットに押し込めますが

テディが誤ってベスト爆発させてしまい、テディの身体は木っ端みじん

衝撃で気絶したミシェルは救急車で運ばれますが

目を覚ましたミシェルは救急車から飛び降り

再びオフィスに戻り電卓を手にすると

クローゼットに入り船へテレポートするのでした

なんとテディが言っていたことも

ミシェルが言っていたことも

全部嘘のようで本当だったのです(笑)

ミシェルは真のアンドロメダ星人の皇帝であり

(編み編みの宇宙服がモードすぎる 笑)

仲間のアンドロメダ人と、人類への実験は失敗したことを結論づけます

ミシェルが(天動説に出てくる平面の)地球のドームを割ると

瞬時に人類は死に、それ以外の動植物はすべて生き残ります

ミシェルは鳥たちが飛び、ミツバチがテディの養蜂場に戻ってくるのを

見つめたのでした

 

つまりは戦争のない地球の平和を取り戻し、環境を守るためには

人類が滅ぶしかないということでしょうか

かっては自然と共存して暮らしていた民族も、多くいたはずなのに

 

 

【解説】映画.COMより

「哀れなるものたち」「女王陛下のお気に入り」などで知られる鬼才ヨルゴス・ランティモス監督が、これで5度目のタッグとなるエマ・ストーンを主演に迎えて描いた誘拐サスペンス。「エディントンへようこそ」「ミッドサマー」の監督アリ・アスターがプロデューサーに名を連ね、2003年の韓国映画「地球を守れ!」をリメイクした。
世界的に知られた製薬会社のカリスマ経営者ミシェルが、何者かに誘拐される。犯人は、ミシェルが地球を侵略する宇宙人だと固く信じる陰謀論者のテディと、彼を慕う従弟のドン。2人は彼女を自宅の地下室に監禁し、地球から手を引くよう要求してくる。ミシェルは彼らの馬鹿げた要望を一蹴し、なんとか言いくるめようとするが、互いに一歩も引かない駆け引きは二転三転する。やがてテディの隠された過去が明らかになることで、荒唐無稽な誘拐劇は予想外の方向へと転じていく。
エマ・ストーンが髪を剃った丸坊主姿も披露し、陰謀論者に囚われたミシェル役を熱演。彼女を宇宙人だと信じてやまない誘拐犯2人組を、「憐れみの3章」「シビル・ウォー アメリカ最後の日」のジェシー・プレモンスと、オーディションで抜てきされた新星エイダン・デルビスが演じる。2025年・第82回ベネチア国際映画祭コンペティション部門出品。第98回アカデミー賞では作品賞、主演女優賞ほか計4部門にノミネートされた。

2025年製作/118分/PG12/アイルランド・イギリス・カナダ・韓国・アメリカ合作
原題または英題:Bugonia
配給:ギャガ

 

This is I(2026)

ニューハーフタレントとして活躍する「はるな愛」こと

大西賢示さんの半生を基にした

世界初?(笑)エア・ミュージカル映画

とにかく、アイの小学生時代を演じた子役(岩川晴)

中学生以降を演じた望月春希の演技が素晴らしく

よくぞこんな逸材を見つけたものだと思います(笑)

男優が演じていると知ってるから

首が太いなとか、のどぼとけがあるなとか

ウエストの位置が低いことに目がいってしまうのですが(笑)

80年代90年代アイドルそのものの可愛らしさ

 

でもやはり中学高校時代は壮絶な虐めに遭い

ついには学校に行けなくなってしまうんですね

そんなとき道頓堀にかかる深里橋(ふかりばし)

ショーパブ(オカマバー)の「冗談酒場」ママ、アキ(中村中)と出会い

「アイ=愛」という源氏名でニューハーフとして働くこになります

ある日、先輩から「わだクリニック」に

薬(ピルと思われる)を取りに行くよう頼まれたアイは

(警察病院を辞めて形成外科になった)和田先生(斎藤工)の怒鳴り声に驚き

冗談酒場の名刺だけおいて逃げ帰ってしまいます

冗談酒場でアイのショーを見た和田は感激

接客に来たアイに「輝いている」と伝えます

和田が形成外科の医者であることを知ったアイは

睾丸を取り除いて欲しいと頼みます

睾丸がなくなれば男性ホルモン(テストステロン)の分泌が減り

ひげや体毛の増加、筋肉や骨格の発達といった「男らしさ」を

抑えることができるからです

ニューハーフたちは男性ホルモンを抑える代わりにピルを飲んでいて

(女性ホルモンのエストロゲンプロゲステロンを人工的に合成した薬)

副作用に苦しんでいました

しかし旧優生保護法(1948〜1996年)では

性別適合手術は(明確に「禁止」されてはいないが)概念的に認められず

作中でも「ブルーボーイ事件」という言葉が出てきますが

1965年、性同一性障害の女性に性別適合手術を行った医師が

医道の倫理に反する「淫売手術」だと摘発され

治療ではなく、生殖不能不妊)のための手術であり

「違法行為」だという判決を受けたのです

 

もしかしたら逮捕されるかもしれないと、ためらった和田ですが

アイの情熱に負けてしまい、除睾手術を行うことにします

その噂はすぐにニューハーフの間で広まり

「わだクリニック」には長い行列が出来るまでになります

さらにダンサーのタクヤ吉村界人)と恋に落ち同棲するようになったアイは

タクヤとセックスするための膣が欲しいと望むようになります

 

アイの「本物の女になりたい」という再びの熱い情熱に

和田は「本当の医療とは何か」を悩み

独学でペニスを切除した後の造膣術(膣形成術) を研究

シリコン製型(モールド)を用いて膣が塞がらない方法を編み出します

そうしてアイは日本で最初に造膣術を行った人物となり

和田は「ペニスカッター」のパイオニアになっていきます

タクヤのため性転換して、タクヤと念願のセックスをするアイ

だけど形としての膣はできたものの、想像していたセックスとは違ったのでしょう

「女の体に嫉妬する」と塞ぎこんでしまいます

それでもタクヤの明るさと優しさだけが救いでした

タクヤと一緒にタクヤの田舎の実家に挨拶に行くことになるアイ

そこでは両親だけでなく、親戚一同が集まりアイにおもてなしをしてくれました

しかしタクヤが席を外したとたん

「あんたは良い人だけど、子供を産むことができん」

タクヤと別れてもらえないか」と親戚一同から頭を下げられます

(息子には言わず、アイにだけ言ういやらしさ)

タクヤと別れ東京でアイドルを目指すことにするアイ

何も知らないタクヤはアイを引き止めますが

アイの決意は変わりませんでした

 

しかしニューハーフであることを隠さなかったアイは

芸能事務所の面接を受けてもどこも不採用

やっと得た仕事も集客の見込めないステージや

露出の多い水着を着せられるというもの

結局行きついた先は、カラオケスナックの雇われママでした

やがてエア・アイドルに目覚め、モノマネするアイに客は大うけ

その中の客のひとりがアイを番組プロデューサー(藤原紀香)に紹介

「エア・あやや」を披露したアイはたちまちテレビでブレイク

父親千原せいじの浮気が原因で離婚した母親木村多江)とも和解します

母もまた女性の心を持つアイを、男の子として産んでしまったことに

アイを苦しめたと、自身も苦しんでいたんですね

一方の和田は優生保護法違反で鶴久刑事(中村獅童)に目を付けられていて

さらに執刀した患者が(和田のミスではなかったが)死亡事故してしまい

訴訟の対応や、多額の賠償金、検察の捜査で

精神的にも肉体的にもまいってしまいます

(たぶん自分を取り戻すため)アイに会うため東京までやってきて

ボトルをキープしていく和田

間もなくして和田が(不眠のため麻酔の過剰摂取で)死んだと知らされたアイは

和田を弔うため、トランスウーマンのためのビューティーコンテスト

ミス・インターナショナル・クイーン」に出場

見事優勝を果たしたのでした

 

和田の墓に(そんな場所に墓立てないだろ 笑)優勝の報告に行き

My Revolution」で踊りだすアイ

すると派手な衣装のニューハーフたちわらわらとやってきて

アイと一緒にり出します

まあ、ミュージカルだからいいのですけど(笑)

このラストには感動より、ちょっと困惑してしました



【解説】映画.COMより

タレント・はるな愛の実話をもとに、“本当の自分”のあり方を探し求めながら夢を追う主人公の葛藤と、その人生に大きな転機をもたらした医師との出会いを描いたドラマ。はるな愛の自伝「素晴らしき、この人生」と、医師・和田耕治についてのノンフィクション書籍「ペニスカッター:性同一性障害を救った医師の物語」を参考に、当時の日本ではタブー視されていた性別適合手術の現実とふたりの強い信頼関係を、時代を彩るヒット曲と軽やかなダンスとともに映し出す。
幼い頃からアイドルを夢見ていたケンジは、成長とともに“自分らしさ”と周囲の視線に悩むようになる。学校でいじめを受け、家族にも相談できずにいたケンジは、両親に内緒で働きはじめたショーパブで、華やかで個性的なメンバーたちと知り合い、「アイ」という名前でステージデビューを果たす。そしてアイは、貴公子のようなダンサー・タクヤと恋に落ちる。一方、過去に患者を救えなかった苦悩を抱える医師・和田は、アイの深い苦悩を知り、性別適合手術の世界に足を踏み入れることを決意する。
オーディションで選ばれた望月春希が主演を務め、医師・和田耕治役で斎藤工が共演。「Winny」の松本優作が監督を務めた。Netflixで2026年2月10日から配信。

2026年製作/130分/日本
配信:Netflix

 

火喰鳥を、喰う(2025)

原作は第40回横溝正史ミステリ&ホラー大賞を受賞した

原浩(ハラコウ)の同名小説

確かに序盤は横溝正史っぽいのですが(笑)

後半はミステリ&ホラーというより

まさかの「マルチバース」(多元宇宙)的な(笑)

マルチバースものといえば

スパイダーマン:スパイダーバース」シリーズ

パラレルワールド」(並行世界)や

(自分の人生においての”If”の世界)

 

「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」(通称:エブエブ)

「バース・ジャンプ」(並行宇宙(バース)跳躍

(異次元を含む別の宇宙に移動する)がありますが

どちらも「もしあの時、別の選択をしていたら?」という

別の歴史を歩む世界に、何かのアイテムやきっかけによって

移動するというもの

 

本作では約70年前パプアニューギニアで戦死した叔父の

日記が見つかったことがきっかけとなり

叔父が生きていた、という歴史に変わってしまいます

この(間違った)執念が世の中を変えるとか

自分が生き延びるためには、誰かが犠牲になってもかまわないという

思想には私的にはイマイチ乗れませんでしたが

 

このこじつけだらけの内容にストーカーな霊能者を演じた

宮舘涼太こと舘様(だてさま)の胡散臭さはぴったりでした(笑)

普通ならストーカー男が最後に消されそうなものですが

まさかの元カノの執着心のほうが勝つという意外性もありました

ただしこれは「Snow Manだからこそ成り立つことを

世の男性は肝に銘じておくべきです

信州で暮らす大学助教授の久喜雄司(水上恒司)の実家の墓で

大伯父の貞市(小野塚勇人)の名前が削られてしまうという事件がおきます

もしかしたら貞市の日記が見つかったのと関係しているのかと家族が疑っていると

草原に白いワンピース姿の少女を見つける雄司

次の瞬間少女は消えていました

雄司と妻の夕里子(山下美月)は高校の天文学部の後輩先輩で仲睦まじい夫婦

墓荒らしの犯人を探すため、久喜家では地元紙「信州タイムス」の

記者の与沢一香(森田望智)と玄田誠(カトウシンスケ)を自宅に呼び

オカルトに興味ある夕里子の弟で大学生の瀧田亮(豊田裕大)もやってきて

日記(従軍手帳)を見つけた詳しい経緯を聞くことにします

祖父の保(吉澤健)が日記を読み上げると

パプアニューギニアではマラリアと飢餓によって仲間が次々と死んいき

最後に残った貞市と藤村と伊藤の3人はジャングルの中で餓死状態寸前

その時「火喰鳥」の鳴き声を聞きます

生き延びるためには「火喰鳥」を捕まえて喰うしかない

ヒクイドリヲクイタイ」

しかし日記は六月九日 日付を最後に途切れていました

気がつくと夕里子の弟の亮が日記の月九日のページに

ヒクイドリヲ クウ ビミ ナリ」と書いていました

夕里子は慌てて亮から日記を奪い、亮が書いた文字を消しゴムで消しますが

突然記者の玄田が「久喜貞市は生きている」と叫びます

それからというもの雄司と夕里子は悪夢にうなされるようになり

玄田は原因不明の体調不良で入院

(狂乱したのち、久喜家にやって来て自害)

与沢も車の運転中、謎の不審火に巻き込まれ死亡

亮は高熱が続いていました

真相を探ろうと会いに行った貞市の戦友の伊藤は戦死しており

(生還したはずの伊藤が現地で戦死したという歴史に変わっている)

寝たきりで、娘に介護してもらっている藤村は

突然「ヒクイドリヲ クウ ビミ ナリ」と叫びます

(火喰鳥を喰べたおかげで貞市は生きていると訴える)

間もなくして藤村の家が火事になり藤村が意識不明の重体なったことが伝えられ

さらに祖父の保がトラックで出かけたまま行方不明になってしまいます

そこで夕里子が頼ったのが大学時代の元彼で

超常現象専門家北斗宮舘涼太)でした

(北斗曰く、夕里子も自分と同じ能力を持っているらしい)

亮は、全ては姉さんを手に入れるため

北斗が仕掛けた罠かも知れないと雄司に伝えます

(後に亮も現在に存在していなかったことになる)

貞市の従軍手帳を見た北斗は、これは「籠(こも)り」だと語ります

飢餓と狂気に満ちたパプアニューギニアの戦地で

火喰鳥を食べたなら生き延びられるという

貞市の執念が閉じ込められ(籠り)

日記が開かれたことで、その「籠り」が現代へと漏れ出してしまい

戦友の死や祖父の保が行方不明になったのは

現実の世界が過去の異界(籠り)に飲み込まれ

消滅していくプロセスだと説明します

「籠り」を解き、現実への侵食を食い止めるためには

現実の書き換え(上書き)をしなくてはいけない

いつの間にか削られたはずの墓が修復され

貞市の名前の変わりに保の名前が彫られていた墓の前で

貞市の日記に「久喜貞市は死んだ」と書かせる北斗

(あまり効果はなかった 笑)

さらに北斗は儀式だと、夕里子を生贄にし(蒸し焼きにして食べた?)

貞市の直系である雄司に戦地での貞市の体験を再体験(追体験)させます

そこで貞市が食べたのは火喰鳥ではなく

弱った貞市を戦地に置き去りにしようとした伊藤のことだったのです

 

伊藤に置き去りにされ戦死→今の雄司と夕里子が結婚した世界

伊藤を食べて貞市が生き延びた→雄司と夕里子が出会わない世界

現代に戻った雄司は夕里子を取り戻すため、貞市を殺しに行きます

雄司が見た貞市の顔は「火喰鳥」そのものでした

気性が荒く、強力な蹴りで相手を殺すこともできるという「地上で最も危険な鳥」

貞市は「火喰鳥」侵食されていたのです

つまり人間であることを捨ても生きることを選んだということ

雄司の口の中に指を突き立て「何か」を流し込む

(あるいは引きずり出す)貞市

疲れ果てた雄司が自宅に戻ると、母親が家に入れてくれません
「雄司だよ」と言うと

雄二は父親と祖父と一緒に交通事故で死んだと告げられます

 

一方貞市が生きている世界では白いワンピースの女の子、千弥子が存在しています

千弥子貞市の孫で、現在は四十歳くらいで妊娠中

彼女もまた雄司と同じように悪夢に苦しんでいて

(北斗によって)雄司が存在する世界では自分が生まれていないこと知り

お腹の子を守りたい一心で北斗に全面協力していたのです

すべて北斗の思惑通り

偶然貞市の「籠り」の日記を見つけた北斗は、それを久喜家に送りつければ

夕里子が自分のところに相談に来るだろうと確信していたのです

そうして貞市の戦死した世界では

従軍手帳を取材した新聞記者も、戦友の藤村と伊藤も

夕里子も夕里子の弟の亮も死に

雄司は父親と祖父の保とともに交通事故死していたことになり

(何も見ざる聞かざる知らない派の母親だけ死ぬことはない)

貞市の生き延びた世界では、千弥子のところに北斗が訪ねてきて

これから新婚旅行に行くので寄ったのだと妻の夕里子を紹介

雄司は(かっての世界で夕里子と恋に落ちた)天文台の職員(観測員)で

同僚とも楽しく仕事しています

・・でも何かが違う

そのとき天文台の観測ドームの入り口で雄司が夕里子がすれ違い

お互い何かを感じたふたりは振り向き、見つめあいます

その距離は、はたして縮むことはできるのでしょうか

(まさかの「君の名は。」かよ 笑)

 

 

【解説】映画.COMより

第40回横溝正史ミステリ&ホラー大賞を受賞した原浩の同名小説を映画化したミステリーサスペンス。「あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。」「九龍ジェネリックロマンス」の水上恒司が映画単独初主演を務め、「六人の嘘つきな大学生」「山田くんとLv999の恋をする」などで活躍する山下美月、人気アイドルグループ「Snow Man」の宮舘涼太が共演。「超高速!参勤交代」「シャイロックの子供たち」など幅広いジャンルの作品を手がける本木克英監督がメガホンを取った。
信州のとある村に暮らす久喜雄司と夕里子の夫婦のもとに、謎めいた日記が届く。それは雄司の祖父の兄で、太平洋戦争末期に戦死したとされる久喜貞市の遺品だった。日記には異様なほどの生への執着が記され、最後のページには「ヒクイドリ、クイタイ」という文字がつづられていた。その日を境に、墓石の損壊や祖父の失踪など、雄司と夕里子のまわりで不可解な出来事が起こり始める。2人は夕里子の大学時代の先輩で、怪異現象に造詣が深い北斗総一郎に、不可解な現象の解明を依頼する。しかし、存在しないはずの過去が現実を侵食していき、彼らはやがて驚愕の真相にたどり着くが……。
主人公の雄司役を水上、雄司の妻・夕里子役を山下が務め、彼らとともに怪異に対峙することになる、どこか怪しく危険な空気をまとわせた男・北斗を宮舘が演じる。そのほかの共演に森田望智、吉澤健、豊田裕大、麻生祐未。脚本は「ラーゲリより愛を込めて」「ディア・ファミリー」などの林民夫が手がけた。

2025年製作/108分/G/日本
配給:KADOKAWA、ギャガ