チロルの挽歌(1992)

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1990年に開業された北海道芦別市のテーマパーク

「カナディアンワールド」がモデル

当時は第三セクターによる地方観光開発が盛んで

地元の人間も時代の流れに乗って盛り上がったのでしょうが

今となってはお金の無駄使いと、浅はかとしか思えない計画


ドラマとしては前編がよく作り込まれており

後編は登場人物それぞれの自分勝手な主張に

かなり”イラッ”ときます(笑)


フランスならともかく、北海道の田舎で中年男女の三角関係なんて

好奇の目で見られて陰口言われるのが現実

しかも「人の噂も75日」どころか、何年もの間

死んだ後まで言い伝えられますから

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かって炭鉱で賑わい、現在は過疎に悩む北海道納布加野敷(ぬぷかのしけ)市

再び活気を取り戻そうとテーマパーク「チロリアンワールド」の建設に力を注ぐ

市長の山縣(河原崎長一郎

そこに資本参加を証明する東京の関東電鉄から

技術部長立石(高倉健が新たな責任者として赴任してきます


街で洋品店を営む菊川(杉浦直樹

東京から立石がやって来ることを知り気が気でありません

4年半前菊川は志津江(大原麗子と駆け落ちしてこの街にやってきました

志津江は(戸籍上は今も)立石の妻だったのです

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偶然が偶然を重ね、時を待たずに立石と志津江は再会

さらに志津江の父親がやって来て、短大生の娘の亜紀までやってくる

そこに占いが得意でカメラ店を営む商店会長、橘(金子信雄

自分の持つ農地の買収を頑なに拒む半田(岡田英次が絡みます


トップ・オブ・イラッチくんは菊川くん

立石の赴任を知り逃げ隠れしてばかり

車が雪にハマり、偶然立石顔をあわせたときも何だこの偉そうな態度は!

しかも立石志津江が人で話し合うことを提案しても

どうしても立石と顔を合わせたくない

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本気で志津江が好きで一緒にいたいのなら

本来、志津江と立石に離婚してもらわないとどうにもならないのに

そういう”キチンとした決まり事”にこの男は適応できないのです

(そんな優柔不断だから、勤めていた会社からも利用されたんだよ)

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立石は立石で、仕事一徹で部下からの信頼は厚いかもしれないけど

家ではろくに口も利かず、責められれば口より先に手が出るような男

健さん=寡黙で男らしいというヒーローというより

怒鳴るし、殴るし、パチンコでストレス解消、泥酔して周りに迷惑

娘に甘く、おまけに女々しくタロットカードで恋占い(笑)

でも健さんだと、そのギャップがまた好く見えるから

やっぱりこの人の持ってるカリスマは凄い

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市長も、半田も、菊川も、志津江も、そして立石も

みんな自分に都合のいいよう、我儘ばかり

人間の裏表のない欲望と本音にむかつく

 

だけど彼らは誰ひとり悪い人間ではない

何より情に深いからそうなってしまうのです

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立石と志津江の年頃の娘が、こんな両親を罵らず反発もせず

素直で理解のある大人に育ってよかった(笑)

 

なんだかんだ折り合いをつけながら

ついに「チロリアンワールド」はオープンの日を迎え

開場ゲートの前には多くの人々が並ぶ姿がありました

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これもひとつのバブルの記録映画

でも懐かしいより、虚しい気持ちになるばかりでした



【解説】ウィキペディアより

NHK総合テレビで1992411日・18日に放送された山田太一脚本 高倉健大原麗子ダブル主演のドラマ。第29ギャラクシー賞奨励賞、前編は第32日本テレビ技術賞(録音)を受賞するなど高く評価された。

前編「再会」、後編「旅立ち」の2週連続(各回90分)で放送された。北海道芦別市(ドラマでは架空の納布加野敷市)が舞台。1991年の夏と1992年の冬に分けて撮影が行われた。高倉健のテレビドラマ出演は1977年以来。NHKドラマには初出演。





眠狂四郎殺法帖(1963)

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眠狂四郎の記念すべき第一作目で、市川雷蔵の当たり役

伝説の大スターの色男ぶりを堪能できる作品ですが

ヒルというよりは、お喋りで磊落(らいらく)な浪人という感じ

ただしタイトルが出るまでの90秒は超カッコイイ!

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いきなり伊賀者に闇討ちされそうになる狂四郎

そこへ千佐(中村玉緒)がという女が100両を持って

命をつけ狙う唐人陳孫から守って欲しいやって来きます


続いてその陳孫(若山富三郎)から結び状で呼び出され

千佐は加賀前田藩の間者だから深入りするなと狂四郎に警告します

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前田藩の君主・前田斉泰は、豪商・銭屋五兵衛と組んだ密貿易で

巨額の富を手に入れますが、幕府への発覚を恐れ銭屋五兵衛を殺害

そして銭屋五兵衛の片腕で少林寺拳法の達人の陳孫からの復讐を恐れ

陳孫を葬るため千佐を利用して

狂四郎を味方につけようとしていたのです

当然陳孫を斬り捨てた後には、狂四郎も殺す気でした

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狂四郎は千佐を間者と知った上で船宿に匿い

再び陳孫に会いに行くと、そこには死んだはずの銭屋五兵衛がいました

銭屋五兵衛は金を積んで協力を要請しますが狂四郎にその気はありません

そこで陳孫は千佐を拉致し消えてしまいます

もし密貿易が幕府にばれたら前田藩は潰されるため前田は必死

そんな時、前田は参勤交代で加賀(金沢)へ向かうことになり

銭屋と陳孫もすでに加賀へと渡っていました

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加賀に着くと狂四郎は千佐を救い出し(しっかりエチもする)

その後九谷焼の窯元・蔵六の家に匿い

そして銭屋と陳孫から碧玉の仏像を奪うと

その中には前田直筆の証明書が入っていました

 

千佐は前田と元遊女の愛人(今は出家)との間に出来た子でした

千佐は仏像をネタに前田に隠居することを迫り

押収した銭屋の財産を返還させることを約束させます

 

しかし千佐が母親に会いに行くと母はすでに殺され

千佐も待ち構えていた銭屋の銃弾に倒れます

狂四郎は銭屋を斬り、陳孫との対決に挑むことになります

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若山富三郎少林寺拳法の使い手というのだけど

格闘家としてこの体形はどうよ(見ようによってはカワイイがな 笑)

まあでも、狂四郎の剣先を真剣白刃取りで受け止めたのだから

円月殺法ここに敗れたり!なんだけど


そこで狂四郎が脇差しを抜いて反撃というのもどうよ

あきらかに反則じゃね?(笑)

狂四郎は陳孫を殺さず、密貿易の件から手を引くよう約束させます

 

ラストは青春ドラマのごとく

「もうこの世には美しいものはないのか~どこにあるんだ~」と

海に向かって秘密の詰まった碧玉仏を投げ捨て狂四郎

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女とエチが好きなオマエが叫んでもあまり説得力ないがな(笑)

ついでに言うと円月殺法の見せ場もなかったがな(笑)


12作ある人気シリーズですが、スパイアクション的な要素もあって

極端に例えるなら和風007という感じでしょうか

ちなみに2作目以降からのほうが評判はいいそうです



 

【解説】映画.COMより

柴田錬三郎の同名小説より、「座頭市兇状旅」の星川清司が脚色、「座頭市兇状旅」の田中徳三が監督した時代劇。撮影もコンビの牧浦地志。

 

若おかみは小学生!(2018)

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20032013年までに全20巻が刊行され

300万部以上の売り上げを記録した令丈ヒロ子による児童文学シリーズ

サブタイトルは「花の湯温泉ストーリー」

両親を交通事故で亡くした小学生6年生の女の子が

おばあちゃんの経営する旅館「春の屋」で人と触れ合い、成長していく物語

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もっと悲しい状況を乗り越えていく話なのかなと思ったけれど

ファンタジー要素とユーモアがあって、ポジティブになれる作品

子どもだけでなく、大人に見てもらいたい

特に小学生の女の子のいるお父さんが見たら涙腺崩壊間違いなし(笑)

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おばあちゃんが倒れ、跡取りの若おかみとして修行するようになったおっこ

だけど慣れない着物に接客で失敗ばかり

しかも「春の屋」にやってくるのは、困った客や面倒な客ばかり

でも「春の屋」のモットーは「花の湯温泉のお湯は誰も拒まない」

様々な困難を、真っ直ぐな努力でアイディアを生みだし乗り越えていきます

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そんなおっこにライバル心をメラメラと燃やすのが

クラスメイトもあり、秋好旅館のお嬢”ピンフリ”こと真月

ご自分様の旅館至上主義というプライドの高い女の子

でもおっこが本当に困っているときには何気に助けてくてる

「エースをねらえ」のお蝶夫人

ガラスの仮面」の亜弓さんみたいな立場位置ね(笑)

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秋になり、おっこと真月が神社で神楽の練習を始めた頃

長期入院から退院したばかりという男が、妻と息子を連れてやってきました

しかしこの男、花の湯の料理を病院食と変わらないとケチをつけ食べようとしません

真月の協力でピンチは切り抜けたものの、料理に満足した男の話から

彼こそが両親を死に追いやったトラックの運転手だったことを知るのです

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おっこのショックは隠せない

怒りや、悲しみや、いろいろな気持ちが爆発して涙が流れる

今まで彼女を励ましてくれた両親の姿も

幽霊のウリ坊(おばあちゃんの幼馴染)や美陽(真月の姉)

PTSDになったおっこが作り出した妄想ではないかと思えてしまう

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でもそのことで、おっこは初めて両親の死を受け入れます

自分は被害者ではなく「春の屋」の若おかみ

そして「花の湯温泉のお湯は誰も拒まない、すべてを受け入れ癒してくれる」

おっこは一家を快くおもてなしする決意をするのです

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春、神楽の舞台で踊るおっこと真月の姿

ウリ坊と美陽は生まれ変わったら再会することを約束し

成仏していくのでした

(救いはおばあちゃんが死ななかったこと 笑)

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とにかくすごいのが、これだけの話を90分というコンパクトにまとめたこと

そして意外にもアニメーションの技術がすごいということ

いかにもジブリのパクリというシーンも嫌味でなく(笑)

子どもだけではなく、「お涙頂戴のアニメなんて嫌だ」という大人にも

ぜひ見てほしいと思います

 

 

【解説】映画.COMより累計発行部数300万部を誇る人気児童文学シリーズ「若おかみは小学生!」をアニメーション映画化。小学6年生の女の子おっこは交通事故で両親を亡くし、祖母の経営する旅館「春の屋」に引き取られる。旅館に古くから住み着いているユーレイ少年のウリ坊や、転校先の同級生でライバル旅館の跡取り娘・真月らと知り合ったおっこは、ひょんなことから春の屋の若おかみの修行を始めることに。失敗の連続に落ち込むおっこだったが、不思議な仲間たちに支えられながら、次々とやって来る個性的なお客様をもてなそうと奮闘するうちに、少しずつ成長していく。人気子役の小林星蘭が主人公おっこの声を担当。「もののけ姫」「千と千尋の神隠し」などスタジオジブリ作品で作画監督を務めてきた高坂希太郎が、「茄子 アンダルシアの夏」以来15年ぶりに長編劇場アニメの監督を手がけた。脚本は「映画 聲の形」「夜明け告げるルーのうた」などヒット作を数多く担当する吉田玲子。

天気の子(2019)

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私はこういう「セカイ系」という

現実性がなく、辻褄があわない

「きみとぼく」「世界の危機」という純愛的誇大妄想に

ついていけないタイプ

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しかもリアリティな都会の街並みや、現実に存在する企業やサービスも

素直に若者文化と思えず(大人もマックは食うしYahoo!知恵袋も使うがな)

カネ絡みのスポンサー賞賛というあざとさしか感じられない

打算的で汚れた心の持ち主

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でももしかしたら、主人公たちと同じ1516歳頃の中高生だった頃は

どこかの国で戦争があっても、どこかの地域が気候変動で災害がおこっても

それより好きなことで頭がいっぱいだったかも知れない

自分が思う正義のためには、常識的な大人が重苦しかったかも知れない

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光に導かれた廃ビルの屋上の神社で

「晴れ女」の能力を身に着けた少女、陽菜と

離島から家出した少年、帆高が

新宿の街で運命の出会いをする

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お互いお金に困っているふたりが「晴れ女ビジネス」を開業すると

フリーマーケットに、結婚式、花火大会など依頼が殺到

一緒にいるたびに帆高は陽菜のことが好きになっていき

陽菜の18歳の誕生日に指輪をプレゼントしようとしたとき

帆高は陽菜から「晴れ女」になったいきさつを教えられるのです

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そこから警察に追われ、ラブホに泊まり

翌朝陽菜は人柱として消え、東京に晴れの日が戻ります

陽菜を取り戻したい帆高は、地上と天を結ぶ廃ビルの神社に向かい

雲の上にいる陽菜を迎えに行きます

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帆高は保護観察となり、それから3

高校を卒業した帆高は東京の大学に進学しようとしていました

3年の間雨は降り続け、東京は埋め立て地は水没していました

かって「晴れ女ビジネス」を依頼した老婆は

「東京のあのへんはもともと海だったんだよ」 と、言う

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再び運命に導かれたように、陽菜と再会した帆高は

「僕たちはきっと大丈夫だ」と

雨の中、傘もささずに祈る陽菜の手を握りしめるのでした

(大丈夫だと思っているのは男だけの場合が多いがな)

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まあとにかく、恋愛成就と無理やりな展開のためなら

不都合な内容すべて削り落とした作りは潔い(笑)

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純粋な少年(と、純粋な少年の心を忘れないおっさん)の

妄想に不可能はないのだよ

女だけが現実的に年齢を重ねるんだな、きっと



【解説】映画.COMより

君の名は。」が歴史的な大ヒットを記録した新海誠監督が、天候の調和が狂っていく時代に、運命に翻弄されながらも自らの生き方を選択しようとする少年少女の姿を描いた長編アニメーション。離島から家出し、東京にやって来た高校生の帆高。生活はすぐに困窮し、孤独な日々の果てにようやく手に入れたのは、怪しげなオカルト雑誌のライターの仕事だった。そんな彼の今後を示唆するかのように、連日雨が振り続ける。ある日、帆高は都会の片隅で陽菜という少女に出会う。ある事情から小学生の弟と2人きりで暮らす彼女には、「祈る」ことで空を晴れにできる不思議な能力があり……。「兄に愛されすぎて困ってます」に出演した醍醐虎汰朗と「地獄少女」「Last Letter」など話題作への出演がひかえる森七菜という新鋭の2人が、帆高と陽菜の声をそれぞれ演じる。そのほかの出演に小栗旬、本田翼、平泉成梶裕貴倍賞千恵子ら。「君の名は。」に続いて川村元気が企画・プロデュース、田中将賀がキャラクターデザイン、ロックバンド「RADWIMPS」が音楽を担当。RADWIMPSが手がける主題歌には女性ボーカルとして女優の三浦透子が参加

万引き家族(2018)

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1988巣鴨置き去り事件を題材にした 「誰も知らない」(2004)

1971年赤ちゃん取り替え事件を題材にした そして父になる(2013)


そして「万引き家族

 

2014年、大阪府吹田市の釣具店で両親が店員に質問攻めにしている最中

中学生の長男(14)と小学生の次男(12)と長女(9)が

釣り具セットを店外に持ち出していたことが

防犯カメラの映像により発覚し両親を窃盗容疑で逮捕

防水工の父親(36)と母親(33)は子どもたちの万引きが見つかるたび

「うちの子がご迷惑をかけてすみません」と謝罪し

警察への通報を免れていた家族と

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2010年東京都足立区の民家で戸籍上「111歳」の男性の遺体が見つかり

長女(81)と孫(53)が男性が生存しているように装い

遺族共済年金915万円を不正に受給していたとして詐欺容疑で逮捕された

ふたつの事件がモデル

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ここに登場する大人たちは、どいつもこいつもロクなもんじゃない

犯罪者で自分勝手で自分の都合のいいようにだけ解釈して言い訳する

だけどそんな”ずるい大人たちを、是枝 裕和(これえだ ひろかず)は

ファンタジーの世界のように描く


放浪の末、窃盗団にスリを仕込まれる「オリバー・ツイスト」か

貧しいから盗むしかなかった「レ・ミゼラブル」か

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物語はスーパーで万引きをするシーンから始まります

中年の男、治(リリー・フランキー)が店員から見えないよう死角を作り

その隙に息子・祥太が手早くリュックに食料品を詰める

帰り道、揚げたてのコロッケ(は代金を払う)を頬張っていると

男は寒い中、明らかに親からの虐待を受け

お腹を空かせてベランダでうずくまっている少女を見つけて

自分たちの住む古い一軒家に連れて帰ります

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家には治と祥太のほかに、家の持ち主であるおばあちゃん(樹木希林

妻の信代(安藤サクラ)、小姑の亜紀(松岡茉優)が暮らしていました

そして”ゆり”と名乗る少女を新しい家族として受け入れるのです


戦後の戸籍がわけわかんなくなった時代ならともかく

いくら人助けのつもりでも、これは明かな誘拐

でも治も信代も、万引きにしても誘拐にしても何の罪悪感も持っていない

それでゆりも含め、家族が幸せになれればいいと思ってる

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しかし治が工事現場で怪我をしてしまったうえ、日雇いで労災が下りず

おまけに信代が人件費削減で職場のクリーニング店をリストラされてしまう

亜紀は”JK見学店”という風俗でバイトしているもののアテにならず

(とはいえ恋した男が”4番さん”なのは、治と同じく同情が愛情になるタイプ)

収入はおばあちゃんの年金(と元夫と後妻の家族からの心付け)のみ

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そのおばあちゃんが突然死んでしまい

家族は庭に遺体を埋め、その後も年金だけは受け取っていました

そんなある日、いつも通りスーパーに万引きに行った祥太

しかしりん(ゆり)が祥太のまねをしてチョコレートをポケットに入れてしまう

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祥太はゆりをかばうように、玉ねぎを盗んで走り出し店員の目を引きます

だけど逃げる途中で脚を骨折してしまい捕まってしまう

それを知った治と信代は祥太を置き去りにして逃げようとしますが

あえなく捜査員に見つかってしまいます

そしてこの偽りの家族の正体が明かされていくのです

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それでもこの家族で暮らした間は幸せだった

散らかった着替え、万年布団

汚れた台所、ジャンクフード、カビだらけの風呂場

打ち上げの音だけの見えない花火

海水浴

ゆきだるま・・

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駄菓子屋の親父(柄本明 は棒ゼリーを2本くれた

「妹にはやらせるなよ」と

ずっと知っていて見逃してくれていたんだ

その親父も死んだ

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何年かあと、大人になった祥太は誰を探し

誰に会いに行くのだろう

誰の生き方から人間の価値観を学ぶのだろう


ラスト、ベランダでひとり遊びをしていて何かに気付くりん

そこには幼い彼女が虐待されてないことを祈る見守りが

きっとあったのだと思います



 

【解説】KINENOTEより

「三度目の殺人」の是枝裕和監督長編14作目。東京の下町で、犯罪で生計を立てている貧しい一家。ある日、父・治と息子・祥太は万引きの帰り道、凍えている幼い女の子を見つけ、連れて帰る。体じゅうの傷から境遇を察した妻・信代は、家族として受け入れる。出演は、「美しい星」のリリー・フランキー、「DESTINY 鎌倉ものがたり」の安藤サクラ、「ちはやふる」シリーズの松岡茉優、「映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ」の池松壮亮、「64 ロクヨン」前後編の緒方直人、「ちょっと今から仕事やめてくる」森口瑤子、「あゝ、荒野」前後篇の山田裕貴、「谷崎潤一郎原案/TANIZAKI TRIBUTE『富美子の足』」の片山萌美、「今夜、ロマンス劇場で」の柄本明、「彼女の人生は間違いじゃない」の高良健吾、「怒り」の池脇千鶴、「海よりもまだ深く」の樹木希林。第71回(2018年)カンヌ国際映画祭にてパルムドール受賞。2018年 第92キネマ旬報ベスト・テン日本映画第1位、読者選出日本映画第1位、読者選出日本映画監督賞受賞。

再開発が進む東京の下町のなか、ポツンと残された古い住宅街に暮らす一家。日雇い労働者の父・治(リリー・フランキー)と息子の祥太(城桧吏)は、生活のために“親子”ならではの連係プレーで万引きに励んでいた。その帰り、団地の廊下で凍えている幼い女の子を見つける。思わず家に連れて帰ってきた治に、妻・信代(安藤サクラ)は腹を立てるが、ゆり(佐々木みゆ)の体が傷だらけなことから境遇を察し、面倒を見ることにする。祖母・初枝(樹木希林)の年金を頼りに暮らす一家は、JK見学店でバイトをしている信代の妹・亜紀(松岡茉優)、新しい家族のゆりも加わり、貧しいながらも幸せに暮らしていたが……。

フラガール(2006)

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「いつまでも時代のせいにしてればいい」
「時代の方が変わったんだ、何故オレたちまで変わらなければならない」


 プロットは矢口史靖監督のウォーターボーイズ(2001)

スウィングガールズ(2004)と同じ

最初はあまりやる気のない素人集団が、努力で困難を乗り越え

ステージを成功させるサクセス・ストーリー

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でも時代背景は実話ベースだけに興味深い

昭和40(1965)年、福島県いわき市ある本州最大の常磐炭鉱

しかし日本の産業エネルギーは石炭から石油と移行し

炭鉱は閉山されようとしていました

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そこで経営会社は、観光業で生き残りを図ろうと

豊富な温泉資源を活用して日本で始めてのテーマパーク

常磐ハワイアンセンター」(現、スパリゾートハワイアンズ)の設立を決定

ダンサーとして働く地元の若い女性を募集します

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「温泉センター」だ「保養所」だ、という発想なら誰でも思いつくでしょう

そうではなく、東北にハワイを作るという奇想天外な付加価値を思いついた

これはすごい

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しかし当然、親子3代続いた炭鉱で働く労働者たちや

地元の住民は、炭鉱が”娯楽施設”になることなど受け入れられません


しかも当時の田舎の人間にとってダンサー=ストリッパー(笑)

若い女性が肌も露わに人前で踊るなど、家族の恥なのです

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そんな時、高校生の紀美子蒼井優)は、親友の早苗徳永えり)から

フラダンスチーム募集のチラシを見せされ、どうしてもと一緒にと

家族に内緒でフラダンスのレッスンを受けることにします

講師は(東京のSKD松竹歌劇団)からやってきたという

アル中で借金を抱えているという曰く付きの平山まどか(松雪泰子

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最初は腰フリダンスに逃げ出した女性たちも

いよいよ2000人という大量人員削減、炭鉱の閉山が見えてきて

家のために稼がなきゃと戻ってきます

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それでもまだまだハワイアンセンター開業への理解は厳しい

ハワイアンセンターに転職した者に対する村八分

ダンサーになろうとして母親に縁を切られる紀美子

リストラされた父親からDVを受ける早苗

営業先では「脱げ」の野次

実際にこんな嫌がらせは多々あったのでしょう

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でも”若い”エネルギーは古い男たちの慣習に負けなかった

少女たちは奇跡を起こし「ハワイアンセンター」のショーは

多くの観客を魅了し、見事成功するのです

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クライマックスはもう蒼井優ちゃん、ただひとりの見せ場(笑)

ダンスはかなり本格的に見えました

影ながら応援しているつもりの母親(富司純子の姿は

バレバレすぎ(笑)

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当時の炭鉱夫やフラガールたちを史実として描いたというより

誰でも見やすく楽しめる娯楽作品として、うまくまとめた佳作でしょう

 

 

【解説】allcinema より

炭坑の閉山で活気を失った町の再生を期して計画されたレジャー施設“常磐ハワイアンセンター”(現・スパリゾートハワイアンズ)誕生にまつわる感動秘話を映画化したハートフル・ストーリー。施設の目玉となるフラダンスを教えるため東京から呼び寄せられたダンス教師と地元の炭坑娘たちとの葛藤と心の成長を描く。主演は「子ぎつねヘレン」の松雪泰子、共演に蒼井優山崎静代。監督は「69 sixty nine」の李相日。3ヵ月の猛特訓を積んだという出演者たち自らが披露する迫真のフラダンス・シーンも見どころ。
 昭和40年、福島県いわき市の炭鉱町。時代は石炭から石油へと変わり、閉山が相次ぎ、町は先細りの一途をたどっていた。そこで、起死回生のプロジェクトとして豊富な温泉を利用したレジャー施設“常磐ハワイアンセンター”が計画された。そして、目玉となるフラダンスショーのダンサー募集が地元の少女たちに対して行われた。この町から抜け出すチャンスだと考えた早苗は紀美子を誘って説明会へと向かう。説明会では、セクシーな衣装で踊る姿に、大半の応募者が逃げ出し、残ったのは紀美子と早苗の他には初子と小百合のわずか4人だけだった。そんな中、元SKD(松竹歌劇団)のダンサー平山まどかがフラダンスの教師として東京から招かれる。しかし、とある事情で渋々やって来たまどかは、教える相手がズブの素人と分かり、完全にやる気を失ってしまう…。

絶唱(1975)

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伊豆の踊子」「潮騒」についで百恵&友和”文芸シリーズ三作目

共通しているのは”身分違いの恋愛”ですが

愛した女性の亡骸と祝言を挙げるラストは

感動的というよりは、正直言ってかなり変態

 

昭和17(1942)年、山陰の大地主園田家の跡継ぎで大学生の順吉は

山番のひとり小雪結婚するつもりでいました

しかし父親は大反対、園田家と家柄の釣り合う橋本家のお嬢

美保子と勝手に婚約させてしまいます

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お嬢を演じた木内みどりが、出番こそすくないけど何気にいい(笑)

古風で、知的で、夫に尽くすお嬢様に見えるように頑張ってるけど

実はメガネっ子の天然ドジっ子

今なら絶対こういう女子のほうがモテる

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順吉は父親の決めた結婚がいやで、小雪を迎えに行き

鳥取砂丘のある小さな町に駆け落ちします

そこで順吉の友人や町の人々に支えられ

ふたりは幸せに暮らしていましたが

やがて召集令状が届き出征することになりました

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小雪は順吉と、毎日午後ちょうど

どこにいても一緒に「吉野木挽き歌」を歌う約束をします

小雪はどんなに遠くにいても順吉の足音や歌声がわかる

シャーマンなんですね(笑)

 

小雪は働きながら順吉の帰りを待ちましたが

3時になっても順吉の歌声が聞こえないようになり

そのショックか肺を患い寝込んでしまいます

(外国とは時差があるんだよ)

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昭和21(1946)年、順吉の父親が死去

村八分にされていた小雪両親、やっと小雪の見舞いに行きますが

小雪は危篤で、すでに友人たちが集まっていました

小雪はもうろうとした意識の中「順吉さんの足跡が聞こえる」と呟き

順吉は本当に帰ってきました

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「私は今まであなたの妻とは思うていなかった・・」

小雪そう言い残して順吉の胸で息を引き取ります

その言葉に、順吉は小雪の結婚式と葬式を

山陰の実家で同時に挙げる決意をするのでした

 

小雪に花嫁衣裳を着せ、花嫁行列を作って帰宅

死んだ花嫁との婚礼に、涙を流す列席者たち

ここ泣けるというより、ホラーだけどな(笑)

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このあとちゃんと火葬するならいいけど

このまま新婚初夜まで一緒ならなおさら怖い

もしかして死姦かよ(この奥さんはこういうことしか考えないよ)

人間として道徳に反する行為だけど

もしかしたらこれ以上ない、一途で究極の純愛かも知れない

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大ヒットメーカーなうえ、アイドル映画だけでは終わらせない

西河克己の手腕はさすがなもの、だけど

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「偽りの妻」が死体になって初めて本物の妻になる

ただ綺麗に終わらせるのではなく

その意味するものをもっと描き切って欲しかった

 

 

【解説】KINENOTEより

山口百恵主役による文芸シリーズ第三作目。大地主の息子と山番の娘との悲恋を描いた大江賢治の同名小説の三度目の映画化。脚本・監督は「潮騒 しおさい(1975)」の西河克己、撮影も同作の萩原憲治がそれぞれ担当。

山陰地方で園田家といえば、山園田といわれる程に名の通った大地主である。その一人息子で大学生の順吉は、山番の娘・小雪を愛しているのだったが、父・惣兵衛は、身分が違うと反対し、町の実業家の令嬢・美保子との結婚を強いるのだった。順吉が大学の休暇を終え京都に戻ると、惣兵衛に因果を含められた小雪は、他国の親戚にあずけられた。小雪に会いに帰省して、その事を知った順吉は、小雪を捜し出し、駆け落ちした。宍道湖のほとりの経師屋の二階が、二人の愛の巣となった。順吉は、肥くみ作業員、材木運びなどをして生活費を稼いだが、二人は幸せだった。だが、戦争が激しくなり順吉にも召集令状がきた。壮行会の日、小雪が唄った山の木挽歌を、どこにいても毎日、決めた時間に二人で唄うことを約束して、順吉は戦地へ向った。戦争はさらに激化し、いつしか順吉からの便りも絶えた。二人で約束した木挽歌を唄う事だけが小雪の心の支えだった。戦争は終った。小雪結核で倒れたが、木挽歌を唄う事だけは欠かさなかった。やがて、惣兵衛が急死し、小雪はようやく両親と会う事を許された。だが、小雪の体力は限界にきていた。「あの人の足音が聞こえる……山に帰りたい」小雪がこう言って死んだその日、順吉が復員して来た。慟哭する順吉は、葬る前に、せめて山へ帰って、結婚式をしてやりたい、と切望した。花嫁が花婿に抱かれて園田家に着いた。村人たちは、嫁入り歌で二人を迎えた。式が終ると、順吉は、小雪の体を抱いたまま、木挽歌を唄った。それに和して唄うように、どこからか、順吉には小雪の声が聞こえてきた……。