血と砂(1965)

靖国神社にだけは行くなよ

あそこはねぇ 他の神様にいじめられるから

一番良いのは なーんにもなくなっちまうこと」

 

なんか今の靖国神社問題を予知するようなセリフですね

原作は伊藤桂一悲しき戦記

岡本喜八戦争体験を喜劇にしてしまう手腕は相変わらず

(同じアナーキズムでも今村昌平の「冷笑」とは違う)

悲劇を「笑い」というベールで覆った、戦死者たちに対する鎮魂

完璧ともいえる伏線回収の脚本

1945年(昭和20)夏、北支戦線(支那方面軍)

少年兵13人の軍楽隊(音大生)が「聖者の行進」でやってきます

後ろから騎馬に乗った小杉曹長三船敏郎)に

小杉曹長をお追いかけてやってきた従軍慰安婦

お春”こと金春芳(団令子)が合流します

お春は慰安婦たちの中でも人気があり

上官からのチップも弾み、札束を数えるほど

お春の姿を見ただけで、立ち上がれなる少年兵たちに

「若いんだなあ」と微笑む小杉

基地では敵前逃亡の罪に問われた見習士官が銃殺される事件があり

(実は敵地から連絡に戻っただけだった)

小杉は大隊長佐久間大尉(仲代達矢)を殴りつけ

処刑をおこなった”出刃”こと犬山一等兵佐藤允) を

軍規違反だと独房に入れます

怒った大隊長により、少年兵たちは楽器をとりあげられ

一般兵として毎日軍歌を歌わせられることになります

小杉の処刑を恐れたお春は、寝床で隊長に泣きこんで

小杉の命乞いをします

(小杉が北支戦線に左遷されたのは、嫌がるお春を守ろうとして上官を殴ったため)

大隊長から小杉にヤキバ砦奪還の命令が下され

同行するのは戦闘経験が一度もない軍楽隊の少年兵たちと

営倉(軍律違反に問われた軍人を収容する施設)に入っていた

葬儀屋”こと持田一等兵伊藤雄之助) と志賀一等兵天本英世

そして(板前だった)出刃でした

いわば「使えない」のと「問題児」ばかり

しかもこちらが17人に対して砦には50人以上

奪還どころか自殺行為

しかし「少年たちを軍歌で送るには寂し過ぎる せめて明るく送ってやりたい」

という小杉の思いに、大隊長は楽器だけは返すことにします

小杉は「野球やってた奴はいるか?

(コンダクター原田) 「ハイ!自分はピッチャーでした

榴弾持って俺についてこい

トロンボーンは軽機だ、出てきた敵を撃ちまくれ」

「アルト・サックスとクラリネットは大薬種」

「大太鼓と小太鼓擲弾筒(てきだんとう)ぶっ放せ」

「ピッコロ、スーザホーン、トランペット突っ込め」

 

「リズムを忘れるな、リズムが狂ったらやられるぞ」

スポン、ガツン、はいレフト、いちにっさん、ボカン!

スポン、ガツン、はいセンター、いちにっさん、ボカン!(笑)

小杉と原田は水汲みをしていた敵の服を奪い、変装して砦に潜入

榴弾を爆発させ、仲間を突撃させると

2名の死者を出したものの、砦を乗っ取ることに成功します

さらに砦の近くには国民政府軍の基地があり

小杉は大砲に二重に弾を詰めると、出刃とともに夜襲をかけ

殲滅(せんめつ=皆殺し)します

そこに日本軍から奪ったトラックで国民政府軍がやってくると

小杉らはそこでも敵を撃退し

同乗していた(小杉を追いかけてきた)お春を救出します

お春は小杉のことを本当に好きなんですね

お春が来たことが嬉しくてたまらない少年たち

お春のために「なでしこ部屋」を用意し

オリジナル・ソング「お春さんの歌」が歌われます(笑)

その夜、「お前たちは童貞か?訊ねる小杉

俺もですと手をあげる葬儀屋(笑)

 

若くして戦死した兵士のを

「楽しみも知らずに逝くなんて」と嘆くお春に

小杉が少年たちの相手を頼むと、無償で小杉の願いをききます

(なんの問題もなくノビノビと(笑)「はい、次!」)

でもなんか、小杉とお春の

男女とかセックスとか、そういうところを超えてしまっている

絶対的な信頼関係っていいですね

 

一方で出刃は銃殺した見習士官が

小杉の実の弟であったことを知り衝撃を受けますが

砦の奪還にやってきた国民政府軍の激しい襲撃により

小杉が戦死してしまいます

小杉弔いのため、大砲と砲撃が吹き荒れる中

楽器を演奏する少年たち

爆破音と「聖者の行進」によるハモり

しかし大隊長の援軍を待つことなく

少年たちも、お春も犠牲になってしまいます

その日、815

戦闘に巻き込まれ死んだゲリラの少年の手には

終戦を告げるビラが握られていました

 

 

【解説】ウィキペディアより

岡本喜八監督、三船敏郎主演による1965年9月18日公開の日本映画である。モノクロ、シネマスコープ、132分。

当時、日本映画界全般を見渡しても屈指の名コンビ(監督・主演者)と言い切れる活躍ぶりを展開していた岡本喜八三船敏郎による戦争活劇大作映画である。『独立愚連隊』(1959/東宝)、『どぶ鼠作戦』(1962/同)で根幹に据えたテーマをよりわかりやすく表に出そうという岡本の思いのもとに企画された。そうしたこともあり、「独立愚連隊」シリーズの少年版、番外編、または東宝『独立愚連隊』ものの七作目とも一部からは言われる。ヒロインは日本名を持つ朝鮮人慰安婦である。

 

 

ゆきゆきて、神軍(1987)

「今日の結婚式は、花婿と媒酌人が共に反体制活動をした

 前科者であるがゆえに実現しました

 たぐいまれなる結婚式でございます」

凍り付く花嫁と親族たち(笑)

すみません、これはコメディ映画でしょうか

田中角栄を殺す」 「宇宙人の聖書!? 」の選挙カー

奥崎謙三がヤバすぎて笑ってしまうんですけど(笑)

面白いけど、「近寄りたくない人」「関わり合いたくない人」

今も生きていたらSNSでバズりまくりだと思います

ニューギニア戦線の日本軍の第36連隊の生き残りで

アナーキストで作家でもある前科三犯の奥崎謙三

かっての戦友たちの慰霊の旅に出ます

広島県の島本正行一等兵の墓を訪ね母イセコに感謝されると

「自分がお世話しますからニューギニアに行きませんか」と話をもちかけます

戦死した仲間や、その家族を思うやさしい気持ちはあるんですね

なので戦争が生み出した悲劇

義憤(ぎぶん)に駆られた男の正義のための行動

という見方もできるんですけど

本人自体が道から外れすぎている(笑)

そしてそういう自分に酔っているのです

戦後36年目にして、36連隊のウエワク残留隊に従軍していた

(遺族には戦病死したと伝えられた)吉沢と野村という2人の日本兵

終戦23日目に敵前逃亡の罪で銃殺処刑されていたことを知ると

真実を探るため、2人の遺族とともに

ウエワク残留隊の生き残りに会いに行きます

これ、今なら顔を隠したり声を変えると思うんですけど(笑)

実名のうえ、家や家族まで撮影されてよく上映の許可がおりましたね

 

最初は誰も口を開かないし、無礼な態度を取られるときもあります

すると奥崎は暴力を振るってでも、無理矢理自白させます

「食べたか?食べていないか?」

やがて奥崎が冷静になり

(間があるのはスタッフが奥崎を止め、話し合いによる演出だろう)

戦争責任を取るべき本当の相手を探す事が困難になること

後世に真実を伝えないと、再び戦争を起こしてしまう可能性があること

「誰が悪い」を追求する事ではなく、戦争を止める事が大切だと

問い詰めると、誰もが「食べた」事を認めることになります

神戸市で食堂を営んでいる元衛生兵のおやじは

ジャングルでは周囲4キロを米軍に包囲され、飢えと疲労のため

白人を白ブタ、土人(原住民)を黒ブタと呼び

人肉食が行われていたことを告白します

2人の日本兵は食べ物を探すため脱走し

終戦後戻ってきたため処刑されたといいます

「じゃあ、ブタというのはすべて人肉のことだったんですね」

土人(本物の)豚を取ったら、土人から殺されるからね」

「でも白ブタも黒ブタも捕まえられないこともあったでしょ

 そういう時は部隊の下の方から殺して順番に食べていったんじゃないですか」

「いや、私のいた部隊では日本兵は食べなかった」

処刑を命令した元ウエワク残留隊隊長村本政雄に会いに

広島県大竹市に行き「軍法会議によらない処刑は殺人だ」と迫ると

村本は、処刑を命じた理由は2人が人肉を食べようとしたためで

自分は処刑の場にいなかったと答えます

そこで(奥崎に組み伏せられて大騒ぎになった)妹尾幸男を再訪すると

妹尾は村本の命令で妹尾と高見(旧姓妹尾)含めた5人で2を撃

最後に村本が拳銃とどめをさしたといいます

 

高見を再訪した奥崎は

照準こそ外したものの、自分も撃ったことを認め

やはりとどめをさしたのは、村本だと言います

さらに奥崎のいた36連隊本隊でも「くじ引き」が行われ

橋本義一軍曹が殺された事件があったことを知ります

奥崎はアナーキストの知人大島栄三郎と妻のシズミを遺族にしたて

埼玉県深谷市にいる元軍曹で病気療養中の山田吉太郎に会いに行きます

そこでもキレて喧嘩になり、奥崎が自分で110番する始末

山田は橋本が食料を盗んだため他の兵士の食料にされたのだろう

自分も危なかったが、山のこと勘が利いたので食われなかったと言うと

足を怪我したかもしれないと救急車で運ばれるのでした

島本イセコが死に墓参りに行く奥崎

イセコはニューギニアに行くためパスポートを作っていました

(ローマ字のサインが悲しすぎる)

1983年、奥崎はひとりニューギニアに行

 

その年、村本宅を再訪すると出てきた息子に発砲し重傷を負わせ

殺人未遂などの罪で徴役12年の実刑判決を受けます

そんな奥崎を支え続けた奥さん

だから苦労して早死にしたんだわ



 

【解説】映画.COMより

ドキュメンタリー映画監督の原一男が、過激な手段で戦争責任を追及し続けるアナーキスト奥崎謙三の活動を追った傑作ドキュメンタリー。神戸市で妻とバッテリー商を営む奥崎謙三は、自らを「神軍平等兵」と名乗り、「神軍」の旗たなびく車に乗って日本列島を疾駆する。ある日、自身がかつて所属していた独立工兵第36連隊で、終戦後23日も経ってから敵前逃亡の罪で2人の兵士が処刑されていたことを知った奥崎は、その遺族らとともに真相究明に乗り出す。時には暴力も辞さない奥崎の執拗な追及により、元兵士たちの口から事件の驚くべき真実と戦争の実態が明かされていく。1987年の初公開時は単館上映ながら大ヒットを記録。第37回ベルリン国際映画祭カリガリ映画賞を受賞するなど、国内外で高く評価された。戦後75年、奥崎謙三生誕100周年となる2020年の8月、全国のミニシアターでリバイバル公開。

1987年製作/122分/日本
配給:疾走プロダクション
劇場公開日:2020年8月14日

その他の公開日:1987年8月1日(日本初公開)

 

 

ぼくの伯父さんの休暇(1953)

原題は「Les Vacances de Monsieur Hulot」 (ユロさんの休暇)

コメディアンでもあるジャック・タチの当たり役「ユロさん」を

自作自演したシリーズの第1作目

ミスター・ビーン」の ローワン・アトキンソン

この作品の影響を受けているそうです

特に話の筋はなく(誰の伯父さんでもない 笑)

ユロさんが海辺のリゾートを訪れ

繰り返すトラブルを繋ぎ合わせたもの

ずれてる絵画

ナイスなタイミングで登場するワンコ

テニスのサーブが上手すぎる

乗馬ブーツに引っかかったキツネの剥製

波に流されるペンキの缶

真っ二つに折れたカヌーで大パニックは

スピルバーグがインスピレーションを受け「ジョーズ」になったとか(笑)

花火小屋の爆発では火傷したスタッフが絶対いただろうと思ったら

火傷したのはジャック・タチ本人だったそうです

どのネタも視覚的によく出来ていてジワるのですけど

犬や波とか演技ではできない使い方と

天才的に計算された空間把握力に驚かされます

国や人種が違っても、言葉がわからなくても笑える

エスプリ(知性)の効いた、というのがぴったり

(近年のコメディは下ネタや汚物がオンパレードすぎる)

ユロさんがなぜ周りの人間とかみあわないのか

それはユロさんが無声映画からトーキーに逃げてきた人物で

テクノロジーやガジェット(便利な電子機器といった

非人間的な世界に馴染めない、という設定だそうです

タチは、ユロさんを通じて

戦後の資本主義的生産に対する依存や

人間らしい単純な楽しみより、複雑なテクノロジーに価値を求めることを

軽蔑し、穏やかに嘲笑する

そのことは後の作品でも繰り返されるテーマになります

そのわりには、予算が足りなく

(撮影のために道路を舗装、木の伐採、状態の悪い家の修復、などにお金がかかった)

モノクロでしか撮影できなかったことを嘆いていたそうです(笑)

 

 

【解説】映画.COMより

フランスの喜劇作家ジャック・タチの長編第2作で、彼の代表的キャラクターとして世界中の人々から愛されるユロ氏が初めてスクリーンに登場した記念すべき作品。大勢の人々がバカンスを楽しむ海辺のリゾート地に、ポンコツ車に乗ったユロ氏がやって来る。チロル帽にパイプをくわえ、個性的な歩き方をするユロ氏は、なぜか行く先々で騒動を巻き起こし……。日本では長編第3作「ぼくの伯父さん」の方が先に公開されたため、このタイトルとなった。その年最高のフランス映画に贈られるルイ・デリュック賞やカンヌ国際映画祭国際批評家大賞を受賞。2014年、タチの監督作をデジタル復元版で上映する「ジャック・タチ映画祭」でリバイバル

1953年製作/89分/フランス
原題:Les vacances de Monsieur Hulot
配給:日本コロムビア
劇場公開日:2014年4月19日

その他の公開日:1963年8月3日(日本初公開)

 

ハードエイト(1996)

「私にも同じく親切に」

 

原題の「Hard Eight」は、クラップス(Craps)というサイコロゲームでの

「4のゾロ目」という意味のカジノ用語

ポール・トーマス・アンダーソンの長編デビュー作ということですが

PTAでも、たぶんいちばんわかりやすい

なぜなら登場人物がいちばん少ないから(笑)

まるで舞台の幕のように巨大なトレーラーが横切り

視界が開けるという見事な導入部分

カメラはロバート・エルスウィット

巨匠と呼ばれる監督になるためには

名カメラマンとの出会いがいかに大事かわかります(笑)

ダイナーの前で途方に暮れ座り込んでいるひとりの男

老紳士がどうしたのかと声をかけると

母親が死に、葬儀代の6000ドルを稼ぐため

カジノに行ったものの大負けして一文無しになったと言うのです

シドニー(フィリップ・ベイカー・ホール)は

ジョン(ジョン・C・ライリー)にタバコとコーヒーをおごり

ラスベガスでギャンブルに勝つための心得を教えようと言います

新品のスーツを買い与え、掛け金の両替方法を伝授する

見事に2000ドルもの大金を手に入れます

ここ「パーパー・ムーン」(1973)のレジでのお金のやりとりくらい

わからなかった(笑)

この方法はここまで、6000ドルを稼ぐためには

ロサンゼルスの友人が手を貸してくれるだろうと助言します

それがどういう手かわからないまま(笑)

2年後、ジョンはネバダリノでナイトクラブを経営し

シドニーを父親のように慕っていました

ジョンが従業員友人でもあるジミー(サミュエル・L・ジャクソン)を

シドニー紹介すると

シドニーは品のないジミーを不快に思います

さらにシドニーが好意を寄せているクレメンタイン(グウィネス・パルトロー)が

売春をしていることを知り

シドニーはクレメンタインにも父親のように振る舞い

彼女を説得し、ジョンとの仲を取り持とうとします

ふたりはめでたく両想いになり、結婚しますが

カジノで若者(フィリップ・シーモア・ホフマン)と軽く遊んでいたとき

ジョンから呼び出されます

クレメンタインがホテルで男と金銭トラブルになり

駆け付けたジョンは男を暴行監禁したうえ

男の妻に「夫を殺されたくなければ金を届けろ」と電話したといいます

シドニージョンから銃を取り上げ

クレメンタインの軽率な行動を叱ると

ジョンは「妻を侮辱するな」と逆ギレ

呆れたシドニーが立ち去ろうとすると、ジョンは謝罪します

シドニーは男の妻が警察に通報するかも知れない

捕まる前に「遠くに逃げろ」と警告すると

「金(セックス代)を払うべき」と譲らないクレメンタイン

そこでシドニーが新婚旅行がまだじゃないかと機転をきかせると

「ナイアガラの滝」を見たいとクレメンタイン

「前に行ったことある」と渋るジョン(おいおい)

何とかふたりをカナダ目指して出発させると

シドニーは痕跡を消すためホテルに戻ります

夫婦が警察に通報しなかったことを告げるため

(旅行中のジョンの代わりに店を任された?)ジミーに会いにいくと

ジミーはシドニーのことを調べあげていて

シドニーがかってマフィアであったこと

ジョンの父親を殺したことを知っていると脅します

ジョンに知られたくなければ1万ドルを渡せと要求されると

(サミュエルだけは絶対口喧嘩で勝てない 笑)

6,000ドルしかない、とかけあい

カジノで金を受け取りジミーに渡します

その金で女を家に連れ込むジミー

シドニーは電話でジョンに「息子のように愛している」と伝えると

ジミーの家で彼の帰りを待ち殺すと、奪われた金を取り戻します

ダイナーでコーヒーを注文し

シャツの袖に着いた血を、そっと上着で隠す

アキや、ブニュエルや、ブレッソンのような「徹底した省略」ではなく

「中途半端な省略」がPTA(笑)

 

シドニーとジョンの父親との関係は明かされません

シドニーは、ジョンの父親を殺したことで

マフィアから足を洗い、ギャンブルで生計をたてている

(カジノの支払いでホテル生活しているので大物と思われる)

やがてジョンの母親が死に、お金に困っているジョンに手を差し伸べた

ジョンに近づいたのは罪滅ぼしだったのです(たぶん)

いつしかジョンを本当の息子のように愛しく思い

守らなければならない使命と同時に

かっての冷血さも目覚めます

クレメンタインとホテルに行った男が警察に通報しなかったのは

シドニーが手をまわしたからでしょう

ジョンとの関係を壊されないために、ジミーも躊躇なく殺します

シドニーが父親殺しであることは、ジョンに知らされることはなく

ぬるいままで終わるのですが、とりあえずハッピーエンド

 

最後に私が言いたいと思ったのは

もう売春なんかしちゃいけないよ(できればだけど)





【解説】映画.COMより

マグノリア」「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」などの鬼才ポール・トーマス・アンダーソンが、1996年に手がけた長編監督デビュー作。母親を亡くした青年ジョンは葬儀代を稼ぐためにラスベガスを訪れるが、失敗して一文無しになってしまう。途方に暮れるジョンの前に初老の賭博師シドニーが現われ、カジノで勝つ方法を伝授。数年後、シドニーのおかげで一流ギャンブラーへと成長を遂げたジョンは、クレメンタインという恋人もできて満ち足りた生活を送っていた。ところが、友人ジミーの存在がジョンの人生に思わぬ波乱を巻きおこし……。出演は「シカゴ」のジョン・C・ライリー、「ブギーナイツ」のフィリップ・ベイカー・ホール、「ロイヤル・テネンバウムズ」のグウィネス・パルトロウ、「パルプ・フィクション」のサミュエル・L・ジャクソン

1996年製作/101分/アメリ
原題:Sydney

 

インヒアレント・ヴァイス(2014)

原題は「Inherent Vice」(保険用語で「内在する欠陥」という意味)

原作はトーマス・ピンチョンの同名の小説

 

欠陥だらけのキャラクターと、意味不明なジョークで

笑えるところも、面白いところもあるし

目立たない長回しにタイトなクローズアップ

絶妙な照明のタッチ、お洒落な70年代スタイルというセンスには感心しましたが

やたら登場人物が多く、筋も掴みどころもない(笑)

ストーリーが全く頭に入らず、続けて2度見ました

 

にもかかわらず記憶に残ったのは

ホアキン・フェニックスのもみあげと

ジョシュ・ブローリンの髪型だけ(笑)

舞台は1970年のロサンゼルス

ゴルディータ・ビーチで私立探偵を営んでいる

ラリー・"ドック"・スポーテッロ(ホアキン・フェニックス)が

3件の事件の調査依頼を受けるというもの

 

ひとつめの依頼はドックの元カノの

シャスタ(キャサリン・ウォーターストン)がやってきて

シャスタはユダヤ人の不動産王

ミッキー・ウルフマンエリック・ロバーツ)の愛人で

ウルフマンの妻が彼を誘拐し、精神病院に入院させ

愛人と財産を奪おうとしているのを防いでほしいというもの

その後ウルフマンもシャスタも姿を消します

ふたつめの依頼は、ブラック・ゲリラ・ファミリー(BGF)の

(黒人によるストリートギャングおよび政治組織)

タリク(マイケル・ケネス・ウィリアムズ)が、かって刑務所で金を貸した

チャーロックという男を探して借金取りをして欲しいというもの

チャーロックはアーリアン・ブラザーフッドの元メンバーで

ウルフマンのボディガードをしているといいます

3つめの依頼は、元ヘロイン中毒のホープジェナ・マローン)で

行方不明になったサックス奏者の夫コーイ(オーウェン・ウィルソン)を

見つけて欲しいというもの

夫は死んだと思っていたが、銀行口座に多額の入金があったため

生きていることを確信したといいます

 

そこにドックの今カノで、ダメ男のドックをなぜか崇拝している

地方検事ペニーリース・ウィザースプーン

ドックの弁護士ソンチョベニチオ・デル・トロ

 

相棒を殺したエイドリアン(ピーター・マクロビー)という殺し屋を追い
「特捜隊アダム12」というドラマにも副業で出演している
常にアイスバナナを咥えるLAPDの警部補
ビッグフット(ジョシュ・ブローリン)が絡みます

ドックはウルフマンとシャスタを探すため

ウルフマンが開発予定している場所にあるマッサージ店を訪れ

東洋人女性ジェイド(ホン・チャウ)にチャーロックの行方を尋ねると

何者かにバットで殴られて倒れます

目を覚ますと、隣にはチャーロックの死体があり

犯人の疑いを掛けられたドックは、ビッグフットに尋問されるものの

弁護士のソンチョによって釈放され

ジェイドからは警察に通報したことの謝罪と

「黄金の牙に気をつけて」というメッセージを受け取ります

 

ドックがジェイドに再び会いに行くと

「黄金の牙」(the Golden Fang )とは麻薬の密輸組織で

ホープの夫コーイは「黄金の牙」の存在を警察に密告したことで

命の危険を感じトパンガ渓谷の隠れ家にいると教えます

コーイに会いに行きホープが探していることを伝えると

妻と娘の元に帰ることだけが望みだが

「俺は死んだことになっているんだ」といます

そして「黄金の牙」号という船が港に入港していることを教えます

次にウルフマンの妻に会いに行くと

彼女の愛人でスピリチュアル・アドバイザーのリッグスもいて

ウルフマンのネクタイ室には、シャスタの絵が描かれたネクタイがありました

恋人の検事ペニーにウルフマンとシャスタの失踪を相談すると

FBIの職員2人がやってきて

チャーロック殺しの疑いが完全に晴れていないドックは

尋問をうけることになります

ビッグフットの話では、ウルフマンは失跡前に「黄金の牙」という謎の船に乗りこみ

そのことにFBIが関係しているらしいといいます

ソンチョの調査でシャスタもその船に乗船したことがわかります

シャスタからドックにポストカードが届き

内容は昔ふたりで麻薬を探し回った場所のことと

黄金の牙の形をした大きな建物の写真でした

そこは「黄金の牙エンタープライズ」という歯科医の組合本部で

シャスタは麻薬で歯が抜け入れ歯だったことを思い出します

そこにはドラッグまみれの女性ジャポニカ(サーシャ・ピーターズ)がいました
ドックは以前、父親の依頼で家出したジャポニカを探したことがり

彼女をドラッグ漬けにしたのは

歯科医のブラッドノイド博士マーティン・ショート)でした

麻薬で若者の歯が抜けると歯科医がもうかるからです

しかしビッグフットからの電話で、ブラトノイドが死んだと知らされます

ブラトノイドは黒幕でなかった、誰がブラトノイドを殺したのか

さらにウルフマンが「黄金の牙」と関係のある精神病院で

実態はカルト集団の施設に入所していることがわかったといいます

施設には「シャスタと書かれ絵入りのネクタイをした

鉤十字のタトゥー男がいて、ウルフマンはカウチで寝ていました

ウルフマンは不動産事業の失敗で、カルトの一員であることのほうが幸せだと言い

シャスタの居場所については答えませんでしたが

ドックが帰宅すると、突然シャスタが戻ってきます

ウルフマンは妻のもとに帰り、自分は所詮娼婦だった

ウルフマンと乗り込んだ「黄金の牙」では

多くの男に性的に利用されていたことを打ち明けます

激しくシャスタを抱くドック

ペニーから検察の機密ファイルを受け取ったドックは

ロサンゼルス市警

ビッグフットの相棒を殺したエイドリアンも黄金の牙と結びついていて

相棒とシャーロックはそれらの取引を知ったことで殺され

(ふたりともバットで殺されていることから)

自分をシャーロック殺しにはめようとしたのも、エイドリアンだと気付きます

エイドリアンのアジトと思われる部屋を訪ねると

なんと相棒のパックに監禁され薬を盛られてしまいます

ドックは朦朧としながらもパックとエイドリアンの両方を殺すと

そこにビッグフットが現れ彼を救出、家まで送りますが

ドックの車には20キロものコカインが隠されていました

ビックフットが相棒をされた復讐にエイドリアンから盗んだもので

それはもちろん「黄金の牙」のものでした

 

ジャポニカの父親から麻薬を返すよう脅迫されるドック

「黄金の牙」はジャポニカの父親だったのです

ドックはコーイを見逃すことを条件に麻薬を返すことを約束し
受け渡し場所に現れたコーイを「しっかり生きろ」と励ますのでした

悪い奴は誰も成敗されないし、何も解決していない(笑)

つまり、この映画のテーマがなにかというと

世界は決して変えられないし、大きな敵も倒せない

 

そんな世の中でも、ドックとビッグフットの共感の芽生えや

ドックとシャスタの底知れぬ愛こそが救いだということ

だと思います(たぶん 笑)

 

 

【解説】映画.COMより

「ザ・マスター」のポール・トーマス・アンダーソン監督とホアキン・フェニックスが再タッグを組み、米作家トマス・ピンチョンの探偵小説「LAヴァイス」を映画化。1970年代のロサンゼルスを舞台に、ヒッピーの探偵ドックが、元恋人の依頼を受けたことから思わぬ陰謀に巻き込まれていく姿を描いた。元恋人のシャスタから、彼女が愛人をしている不動産王の悪だくみを暴いてほしいと依頼された私立探偵のドック。しかし、ドックが調査を開始すると不動産王もシャスタも姿を消してしまう。ドックはやがて、巨大な金が動く土地開発に絡んだ、国際麻薬組織の陰謀に引き寄せらていく。共演にジョシュ・ブローリンオーウェン・ウィルソンリース・ウィザースプーンベニチオ・デル・トロ

2014年製作/149分/R15+/アメリ
原題:Inherent Vice
配給:ワーナー・ブラザース映画
劇場公開日:2015年4月18日

 

スノーデン(2016)

原題は 「Snowden

NSA(アメリカ国家安全保障局)および

中央情報局 (CIA) の局員だった エドワード・スノーデン

国際的監視網(PRISM)による違法情報収集を

「ガーディアン」誌に暴露しロシアに亡命した事件

2013年、香港のホテル

スノーデン(ジョゼフ・ゴードン・レヴィッド)に

ドキュメンタリー映画作家のローラ・ポイトラス

ジャーナリストのグレン・グリーンウォルド

「ガーディアン」誌のユエン・マッカスキルが呼ばれます

新聞社からの告発、という映画は多くありますが

内部告発者が主人公というのは珍しい

 

スノーデンは国際的監視網(PRISM)による

違法な個人情報収集や悪質な盗聴、盗撮

さらに自分や、自分の恋人までが監視されていることを知り

我慢できなくなったのです

(優秀なプログラマーなのに、そんなことも予知できない謎)

でも特定の個人を監視をしようと思えば出来る、というシステムに

今さら驚くことはありませんでした

CIAのシステムを使うまでもなく

商店街やコンビニにどこの家の玄関先にも防犯カメラは設置され

誰かの車のカーナビにも私たちの姿は映り込み

許可なく保存されているのです

私がそれより怖いと思ったのは

日本がアメリカの意向にそむいたら、横田基地でエンターキーを押すだけで

日本中を停電させることが出来るということ

日本のインフラすべてをストップさせることが可能なのです

システムに頼りすぎる恐ろしさと

あくまで日本はアメリカの人質であり続けるという真実

もうひとつは、イスラム教で金融界の大物の親族の盗撮シーン

若い女性がブルカを取り、服を脱ぎ下着姿の

スケベ心としか思えないのぞき見

女性に対してはもちろん、宗教への冒涜は

道徳的に許せるものでありません

これにはさすが、使い終わったノートパソコンは必ず閉じるか

カメラに目隠しをしなければいけないと思いました

高校を中退したスノーデンは、911同時多発テロ事件に衝撃を受け

国を守るため軍隊に入隊しますが怪我のため除隊

その後CIAにコンピューター技師としての能力を認められ採用されます

さらにネットで知り合った日本アニメ好きでリベラル派の

リンゼイ(シャイリーン・ウッドリー)とも付き合い始めて順風満帆でしたが

ニコラス・ケイジは何を示すためにご登場? 笑)

横田基地NSA施設に派遣された時のこと

同僚のソルから、任意の検索ワードで世界中のチャットやメール

その発信者のデータをすべて閲覧できるシステムを教えられ

仕事に疑問を持ち始めます

リンゼイに仕事の内容を打ち明けることもできず

さらにスノーデンは忙しかったりストレスが溜まると

ひとりでコンピューターゲームにはまってしまう、あるある(笑)

怒った彼女はメリーランドに帰ってしまいます

帰国後、スノーデンはリンゼイを迎えに行き復縁しますが

てんかんの発作で倒れてしまい

医師からストレスを溜めないよう診断されます

次の赴任先はハワイで中国のサイバー対策

スノーデンを心配したリンゼイはハワイについて行くことにします

ハワイでソル(ベン・シュネッツァー)と再会し

実際の任務は携帯電話のSIMハッキングをして指示された人物を追跡

軍のドローンでの攻撃の仲介をすることでした

大量殺人に関わることに反感を覚えるスノーデン

リンゼイと参加したバーベキューパーティー

誰かが飛ばしたドローンを見ると、攻撃されると思ってしまい

再びてんかん発作をおこすスノーデン

副作用で頭の働きが鈍くなることを心配して、薬の服用を止めていたのです

怒るリンゼイ

さらにポリグラフ検査でアメリカへの忠誠心に異変が見られると

上司から警告を受け、リンゼイを監視していたことが伝えられます

スノーデンはリンゼイにメールや通話が全て知られていることを告げると

いつも通り行動するよう言い

CIAによる違法な集団監視を公表することを決めます

監視プログラムのデータを全てコピーすると

同僚パトリック(ラキース・リー・スタンフィールド)の助けもあり

ルービックキューブにマイクロSDを隠すと

持ち出すことに成功するのです

スノーデンの一方的な供述なので(笑)

データーを盗んだこと以外は、どこまで真実か

私的には疑問に思いましたね

香港からロシアに亡命したとき

どのような過程や取引があったのか、まったく語られていない

あまりにスムーズで、恋人まで受け入れるなんて出来すぎているし

住宅や生活費もロシア当局が用意したとしか思えない

むしろそちらの逃亡劇のほうを

オリバー・ストーンには掘り下げてほしかった

もしかしたらスノーデンは

ロシアのスパイだったのではないかとさえ疑ってしまいます

もし違うのなら、今のロシアで何を思うか聞いてみたいものです

 

 

【解説】映画.COMより

ハリウッドを代表する社会派監督オリバー・ストーンが、アメリカ政府による個人情報監視の実態を暴いた元CIA職員エドワード・スノーデンの実話を、ジョセフ・ゴードン=レビット主演で映画化。2013年6月、イギリスのガーディアン誌が報じたスクープにより、アメリカ政府が秘密裏に構築した国際的監視プログラムの存在が発覚する。ガーディアン誌にその情報を提供したのは、アメリカ国家安全保障局NSAの職員である29歳の青年エドワード・スノーデンだった。国を愛する平凡な若者だったスノーデンが、なぜ輝かしいキャリアと幸せな人生を捨ててまで、世界最強の情報機関に反旗を翻すまでに至ったのか。テロリストのみならず全世界の個人情報が監視されている事実に危機感を募らせていく過程を、パートナーとしてスノーデンを支え続けたリンゼイ・ミルズとの関係も交えながら描き出す。

2016年製作/135分/PG12/アメリカ・ドイツ・フランス合作
原題:Snowden
配給:ショウゲート
劇場公開日:2017年1月27日

 

草原の実験(2014 )

 

原題は「Испытание(テスト)

セリフの一切ない無言劇

雄大な風景、草原にポツンと一軒家

美しい娘、無邪気な青年

ラスト5分でタイトルの意味がわかります

なぜか私は、子どもの頃読んだ「スーホの白い馬」という

絵本を思い浮かべました

 

遊牧民の少年、スーホは白い子馬を拾い大切に育てます

数年後、殿様が自分の娘の結婚相手を探すため競馬大会を開きます

スーホが立派に成長した白い馬に乗り、競馬大会で優勝すると

殿様は貧しいスーホと娘を結婚させることは出来ない

しかも白い馬を自分に渡すよう命令します

スーホは断りますが、家来たちに暴行され白い馬を奪われてしまいます

白い馬は殿様が宴会をしている隙に、家に帰ろうと逃げ出しますが

家来たちが放った矢で、体中を射られてしまいます

なんとかスーホのもとに戻ったものの

看病もむなしく死んでしまうというもの

 

この映画にはスーホと同じような

純粋さと、悲しみがありました

現代における、支配者と摂取される者

男タルガートがトラックに羊を乗せて帰ってくると

娘のジーが迎えます

 

家の前に飛行機が着陸

何かを運送中、タルガートに会うため立ち寄ったようで

タルガートは飛行帽を借り、少しの間飛行機を操縦し

その後パイロットは飛行機でどこかに飛び立ちます

タルガートは出かけるとき、分かれ道までジーナにトラックを運転させます

ジーナがトラックから降りると、カイスゥィンという青年が馬で迎えに来て

家まで送ってくれます(ジーナはあまり嬉しそうではない)

ある日、(軍隊のものと思われる)車がオーバーヒートしてしまい

青い目の青年マクスが水をもらいにきます

ジーナを好きになったマクスは、ジーナに会いに来るようになります

マクスはアクロバットのように身体を動かし

ニコニコと笑い、ふざけたり、おどけてみせます

マクスのことを好きになっていくジー

いつも通り分かれ道までトラックを運転するジー

荷台に隠れていたマクスが、そのままタルガートのトラックで

去っていきます

 

夜遅く帰宅したタルガートが、高熱をだし寝込んでしまうと

暴風雨の中防護服の男たちがやってきてタルガートを家の外に出し

トラックや家畜全てのものに検知器を近づけ測定をはじめます

布団に隠れるジー

さらにたちはタルガート裸にし、検知器を近づけ

豪雨の中タルガートを残し去っていきました

ジーナはカイスゥィンに助けを求め、カイスゥィンが軍医とを連れてくると

タルガートは車に乗せられ連れ去られ

 

夜明け前、帰ってくると正装に着替え

ベットを外に出し、そこで朝日を眺めながら絶命します

ジーナはひとりでタルガートの遺体を埋葬

郵便配達に受け取りのサインをさせられた手紙を読むと

トラックで逃げ出そうとしますが

燃料切れと鉄条網に行く手を阻まれます

ここは旧ソ連時代のカザフ共和国(現・カザフスタン)にあった

セミパラチンスク核実験場なんですね

(撮影はウクライナクリミア半島フェオドシア)

最初の核実験(RDS-1)の1949年からソ連崩壊1991年まで

周辺住民に危険性が知らされないまま、100回以上の地上核実験が行われます

トラック(ZIS-5)はソ連の軍用トラック

飛行機(An-2E Wig)はソ連の輸送機

娘が赤い糸で作った星形を墓標にすることから

ソ連当局の核施設で働く元パイロットなのがわかります

 

羊は実験動物で、食用のために職場から盗んできたもの

核物質(ウラン)を箱をトラックに積んだせいで被ばくしたのです

 

手紙は父親あてで、立ち退きの勧告

娘の家にだけ届いたのは彼が当局の職員だからでしょう

青い目の青年は、当局のカメラマン(記録係)

カメラはZORKI-1という、ライカのコピーですが

当時のソ連ではかなりの贅沢品で、裕福なことがわかります

 

しかたがなくジーナが家に戻ると、カイスゥィンとその家族がいて

カイスゥィンはジーナに求婚し、伝統に則って婚姻の儀式を結びます

髪を切り、結婚への抵抗を示すジー

そこにマクスがやってきてカイスゥィンに決闘を申し込みます

カイスゥィンマクスをバイク(IMZウラルという軍用バイクでBMWのコピー)

海岸まで行きジーナを懸けて戦います

ふたりの意識はもうろうとしていき

負けを認めて去っていくカイスゥィン

マクスは何時間も草原を歩きジーの家にたどり着くと倒れてしまいます

マクスを助けジーナは、マクスとそのまま一夜を共にします

海岸はチャガン湖、通称「原子の湖」と呼ばれる核爆発によって作られた人造湖

ふたりは喧嘩のせいではなく、被ばくしてせいで意識朦朧となったのです

 

夜が明け、朝日を浴びながらあやとりをしてぶふたり

そこに閃光と共に巨大なキノコ雲が現れると

一帯は瞬く間に吹き飛ばされたのでした

こんなにも美しい場所が

何十年も放射能で汚染され、今も誰も住めないなんて

 

この作品が核や、核実験への反対を訴えているのはもちろんですが

それよりも伝えたかったのは、カザフスタンという国の

立場ではないかと思います

美しい娘はカザフスタン

太陽の眩しさは、核の眩しさ

鉄条網で囲まれ、逃げ出せない

 

幼馴染の許嫁はロシア

古いしきたりと、重い装飾で縛り付けようとする

青い目のカメラマンは西側

自由な生活に憧れるけど、裏切ったら最後なのです

 

 

【解説】映画.COMより

広大な草原地帯を舞台に、平和な日々を送る父と美しく優しい娘、そして娘に恋をする2人の青年のエピソードを一切のセリフを排して描いた異色作。ロシアの新鋭監督アレクサンドル・コットが、旧ソ連カザフスタンで起きた実際の出来事に着想を得て作り上げた一作で、セリフなしの映像美で描かれる少女たちのささやかな日常に、徐々に意外な暗い影がさしこんでいく。2014年・第27回東京国際映画祭コンペティション部門に出品され、最優秀芸術貢献賞を受賞した。

2014年製作/97分/ロシア
原題:Ispytanie
配給:ミッドシップ
劇場公開日:2015年9月26日