原題は「The Elephant Man 」
19世紀末、ヴィクトリア朝時代のイギリスに実在した
「エレファント・マン」と呼ばれた青年ジョゼフ・メリック(1862~1890)
バーナード・ポメランスが戯曲化
それを異形愛の変態(クローネンバーグもだがな 笑)
デヴィッド・リンチが愛を込めて脚色・監督
映画化されると世界的に注目を浴びることになります
私が小中学生の頃は、夏休み冬休みの前に
映画の割引券が配られていたんですよね
遠足や運動会のように、授業の一環として映画鑑賞会もありました
この映画も当時は凄く話題になりましたね
人間の醜さとは、真の美しさとは何かと問いかける物語で
当時はその造形にびっくりした人も多いと思うのですが
今見ると可愛いくらいで
こういう純粋な人間を笑いものにする奴らこそ憎たらしい
そういう私も残酷なので(笑)
こいつらに(貧しさという背景があるのかも知れないが)
どうかバチが当たってくれと願ってしまうのです
物語は、見世物小屋の中でも特に見物客に恐れられている異形の男
外科医のフレデリック・トリーヴス(アンソニー・ホプキンス)は
彼を動物扱いし痛めつける興行師のバイツ(フレディ・ジョーンズ)から
怪我と研究を理由に引き取り、病院の屋根裏部屋に匿います
「エレファント・マン」を学会で発表し
奇形で言葉も発せず、知能遅れだという診断を下すフレデリック
(今日ではプロテウス症候群と推測されている)
しかし数日が過ぎ、病院が安全な場所だと悟った「エレファント・マン」は
声を発し、自らをジョゼフ・メリックだと名乗ります
フレデリックは彼をカー・ゴム院長(ジョン・ギールグッド)に紹介し
病院に住まわせるため自己紹介と聖書の詩編を暗記させることにします
そんなことはすぐにお見通しの院長
ところがメリックは詩編の全てを暗記してました
ただ暴力による恐怖で怯えていただけ
実は教養のある、知的な紳士だったのです
フレデリックが自宅にメリックを招くと
奥方に「女性に優しくされたのは初めて」と感謝するメリック
棚に飾られた家族写真を「素敵です」と称え
彼が唯一自分のものとして持っている宝物
母親の写真を見せるのです
「母は今の僕になら会ってくれるだろうか」
涙ぐむ奥方
さらにメリックの新聞記事を読んだ
大女優のケンドール夫人(アン・バンクロフト)が面会にやって来て
メリックはその美貌に感激、夢見心地になりますが
病院の夜警員のジムが、メリックの醜姿を見せてひと儲けしようと企みます
娼婦やそれに群がる男たち連れメリックの部屋に乗り込み
メリックに酒を浴びせ、女たちと性交させようとして笑いをとる
抵抗できないメリックに、自身の姿を鏡で見せます
やがて飽きたジムたちは去って行ったものの
今度は見世物小屋のバイツが、メリックを取り戻すためやって来ます
再び見世物小屋で働かさせるメリック
しかしバイツの暴力により、立つことさえ出来なくなり
弱ってしまったメリックは猿小屋に閉じ込められます
見世物小屋の仲間たち(彼らも奇形)はメリックを逃がそうと猿の檻から出し
コートと頭巾を身につけさせロンドン行きの船に乗せます
ロンドンに到着すると、メリックの奇妙な体系に少年たちが注目
メリックは逃げますが、誤って少女を踏み倒してしまい
そのせいで大人たちからも追われ、追い詰められてしまいます
「僕は象じゃない!」
「動物でもない!」
「人間なんだ!」
警官がやって来たおかげで、メリックは無事保護されフレデリックと再会
ケンドール夫人に舞台に招かれると、暖かい拍手で人々から迎えられます
その夜、メリックは完成した大聖堂の模型にサインすると
「全部終わった」と呟き、壁に飾られている絵画を見つめます
それはベッドで安らかに眠る子どもの姿
メリックはいくつも重ねられた背もたれ用の枕をどけると
ベッドに仰向けになって横たわるのでした
それは頭蓋骨の変形したメリックが死に至るということ
やがて深い眠りにつこうとするメリックの目の前に
母親の顔が現われるのでした
【解説】映画.COMより
19世紀末のロンドンを舞台に実在した奇形の青年ジョン・メリックの悲劇の人生を、「イレーザーヘッド」のデビッド・リンチ監督が描き、鬼才リンチの名を世界にとどろかせた名作。見世物小屋で「エレファント・マン」として暮らしていた青年メリックの前に、ある日、外科医のトリーヴスという男が現れる。メリックの特異な容姿に興味を持ったトリーヴスは、メリックを研究材料にするため、自分が勤める病院に連れ帰ることに。何も話さず怯え続けるメリックを、周囲は知能が低いと思っていた。しかしある時、メリックが知性にあふれた優しい性格であることが判明するが……。日本では1981年に初公開。作品誕生25周年を記念した2004年にはニュープリント版、本国公開から40年を迎えた2020年には4K修復版でそれぞれリバイバル公開される。
1980年製作/124分/G/アメリカ・イギリス合作
原題:The Elephant Man
配給:アンプラグド