アンダーグラウンド(1995)

「むかし、あるところに国があった」

原題は「Подземљеセルビア語) (地下)

1941年セルビアの首都ベオグラードナチスが爆撃

それから50年もの間戦争が続いていると嘘をつき

人々を地下に閉じ込め、武器を作らせ

地上で金儲けした男の物語

それはかってユーゴスラビアで虐げられた人々と支配者の構図であり

最後には兄弟も友人も殺し

誰も彼もが死んでしまうのには内紛を思わせます

死後になってやっと美しい景色のもとへ還ったとき
互いに互いを赦し合い

陽気な音楽とともに笑い飛ばしてしまう

セルビア人監督エミール・クストリッツァ

失われたユーゴスラビアへの愛が詰まった作品

それは狂気に似た愛で、しかもかなりブラック(笑)

反戦へのメッセージは全く感じられず

見ようによっては、巧妙に作られたプロパガンダ映画

賛辞と同じくらい批判があることもわかります

物語は大きく3つに分かれてい

 

第一章「戦争 (Deo Rat)」

ナチス進攻下のベオグラード

共産党員のマルコは、親友のクロを共産党入党させ

ナチスを襲撃して武器を奪います
ナチスからの攻撃に備え、祖父の屋敷の地下に住民を避難させると

クロの妻は地下に向かう階段で息子のヨヴァンを出産

そのまま息絶えてしまいました

1943年、クロはナチス将校フランツの愛人で女優ナタリアと結婚するため

舞台に侵入するとフランツを殺しナタリアを拉致しますが

ナチスに逮捕され拷問を受けることになります

マルコにより助け出されたクロでしたが

持っていた手りゅう弾が爆破して重症を負ってしまい

その間にマルコはナタリアを自分のものにしてしまいます

1948年、ユーゴスラビア社会主義国ながらソ連と対立

マルコはチトー元帥(大統領)の側近になるまで出世します

第二章「冷戦 (Deo Hladni Rat)」

1961年になっても、地下室に潜っているクロたちにマルコは

“戦争”は終わっておらずナチス激しい戦闘が続いていると伝えます

地下室人々はマルコに騙され銃や戦車を製造

マルコはそれを密売し私腹を肥やしていました

クロの息子ヨヴァンが結婚することになり

そのときやっと、クロはマルコとナタリアの関係に気付きます

更に子どもたちの悪戯により、戦車の砲弾が発射されてしまい

地下室の壁に穴が開いてしまいます

ナチスを倒そうと意気込み、穴から外に出たクロとヨヴァン

そこではナチスと戦い殉死した「英雄クロ」の映画撮影されていました

ナチの軍服を着た俳優たちクロとヨヴァンは攻撃を開始します

第三章「戦争 (Deo Rat)」

1980年、チトーが死去

1991年、スロヴェニアクロアチアが独立を宣言

そして1992年ベルリン精神病院に入院しているナタリアの弟イヴァンは

ユーゴスラビアに帰りたいと泣いていました

主治医第二次世界大戦はとっくに終わってい

ユーゴは内戦の最中」で危険であること

マルコとナタリアは武器商人国際指名手配されている」ことを説明すると

ショックを受けたイヴァンは病院から逃げ出しマンホールから地下に逃げます

そこでは国連軍や難民たちが行き来してい

ユーゴスラビアに行きたいと言うイヴァン

国連の兵士「ユーゴはもうない」と答えます

チンパンジーソニと再会し導かれたイヴァンは

激しい内戦と虐殺を目の当たりにします

しかもその指揮官はクロでした

この監督は動物の使い方が本当にうまいですね

猫で靴を磨くのはいただけないけど(笑)

国連軍クロに問います

クロアチアか? セルビアか?」

「俺はクロ

「どの部隊に所属している?」 「上官はいるのか?」

「俺の部隊だ」 「いる "祖国"だ」

敵軍と商談するマルコとナタリアを見つけたイヴァンは

マルコを杖で殴打し殺すと、罪を償うため教会首を吊るのでした

(商談に失敗し捕らえられマルコ(の遺体)とナタリア

「武器商人か? 殺せ」無線の声

マルコとナタリアの亡骸は燃え上がり、十字架の周りをグルグル回る車いす

「地下室」に戻ったクロが井戸を覗くと、息子ヨヴァンの姿

井戸に飛び込んだクロはドナウ河に流れ着きます

そこにはかっての仲間たちが集まっていて、マルコナタリアもいました

悪かった 許してくれ」とマルコ

「許そう でも 忘れない」とクロ

楽しげな演奏が鳴り響き、皆が笑顔で踊りだすと

陸から切り離された半島はドナウ河を漂っていくのでした

この映画の公開6年後、10年間に及んだ内戦の末
連邦国家ユーゴスラビア」は完全に消滅します

 



【解説】映画.COMより

1995年・第48回カンヌ国際映画祭パルムドールを受賞したエミール・クストリッツァの代表作。
1941年、ナチスドイツがユーゴスラビアに侵攻。ベオグラードに住む武器商人のマルコは祖父の屋敷の地下に避難民たちを匿い、そこで武器を作らせて生活する。やがて戦争は終結するがマルコは避難民たちにそのことを知らせず、人々の地下生活は50年もの間続いていく。
1996年日本初公開。2011年にデジタルリマスター版、2023年に4Kデジタルリマスター版でそれぞれリバイバル公開。2017年の特集企画「ウンザ!ウンザ!クストリッツァ!2017」では、上映時間5時間14分の完全版が上映されている。

1995年製作/171分/G/フランス・ドイツ・ハンガリー合作
原題:Underground
配給:コピアポア・フィルム