プリシラ(1994)

AIDS FUCKERS GO HOME!」(エイズ野郎は出て行け!)

原題は「The Adventures of Priscilla, Queen of the Desert

(砂漠の女王プリシアの冒険)

これは凄い、あらゆる意味で完成度が高すぎる

正真正銘のアート作品であり、人間ドラマ

役者がいい、音楽がいい、衣装がいい、カメラがいい

友情、差別、暴力、夫婦、親子、許し、全てが描かれている

同時にドラァグ・クイーン(女装パフォーマーのこと)や

同性愛、エイズというテーマをどうしても受け入れられない

嫌悪感を抱く人も多くいると思います

主人公を演じたテレンス・スタンプもそのひとりで

出演するにあたっては難色を示したそうですが

仕上がってみれば、さすがの存在感

ダンスシーンではワンテンポ遅れるオジぶりも可愛いすぎる(笑)

ヒューゴ・ウィービングガイ・ピアースの登竜門が

この映画だったことも驚き

だけど、ピンポン玉ポーーーン!!がやはり最強(笑)

彼女が何処から来て、何処へいくのかが気になります(そこ? 笑)

オーストラリア、シドニー

ドラァグ・クイーンのミッチ(ヒューゴ・ウィーヴィング)は

仲間のひとりが25歳の若さでエイズでこの世を去りショックを受け

アリススプリングスにあるラセターズホテルからのオファーと

キングズ・キャニオンの山頂に立つ夢のため

愛人のバーナデット(テレンス・スタンプ)と

若いフェリシアガイ・ピアース)とともに

プリシラ号」と名付けたバスで3千キロの旅に出ます

しかし田舎に行くほど差別は酷くなっていき

ゲテモノ扱い、ゲイ=エイズ=病気が伝染るの偏見に

やっぱり傷つく

逆に全く文化の違うアボリジニのコミュニティで

彼らは受け入れられます

クィア(性的マイノリティ)が悪者という観念がないのかも知れません

そんな旅の途中、バスが故障し

偶然出会ったヒッピーのボブに修理を頼むことにします

その間パブでショーをする3人でしたが

ボブの妻が現れピンポン玉を飛び出させると大混乱

妻に逃げられたボブは3人に同行することにし

車の部品を手に入れるため立ち寄ったクーバーピディという町では

男に色仕掛けし殺されそうになったフェリシアを救います

目的地のアリススプリングス

ミッチの妻と子がいることを知り傷ついたバーナデットも

ボブの優しさに癒されていきます

さらにミッチの妻のマリオンと息子ベンジーが素敵すぎる

ミッチは息子にだけはクィアであることを隠し

男らしい父親であろうとしました

でもマリオンは全て息子に伝えていたのです

父親のステージが素晴らしいものであることも

マリオンは8年間母親をやったのだから

次はミッチの番だとベンジーの父親の役目を頼みます

戸惑うミッチでしたが、ベンジーニュートラルな考えが

ミッチの迷える心を救います

4週間のショーが終わりシドニーに戻ることになったプリシア号

バーナデットはボブと残る決意をし

ベンジーを連れたミッチとフェリシアのステージは満席

ふたりはベンジーがリクエストした「マンマ・ミーア」を踊るのでした

見た目に反した年齢も人生経験も違う3人のピュアさと

差別や挫折を乗り越えようとする絆にホロっとくる

ハリウッド映画のLGBTものが

いかに馬鹿げているかをわからせてくれる傑作でした



【解説】映画.COMより

オーストラリアの広大な地を舞台に、3人のドラァグクイーンが真実の愛を求めて旅する姿を描いたロードムービーシドニーで暮らすバイセクシュアルのミッチ、誇り高き性転換者バーナデット、若く騒々しいフェリシアら3人のドラァグクイーンは、オーストラリア中部の砂漠のリゾート地でショーを行うため、おんぼろバスの“プリシラ号”に乗って3千キロの旅に出る。道中で様々な出会いやトラブルに遭遇しながら、目的地を目指す3人だったが……。出演は「コレクター」のテレンス・スタンプ、「マトリックス」シリーズのヒューゴ・ウィービング、「L.A.コンフィデンシャル」のガイ・ピアース。1995年・第67回アカデミー賞で衣装デザイン賞を受賞した。

1994年製作/103分/オーストラリア
原題:The Adventures of Priscilla, Queen of the Desert
配給:ヘラルド・エース日本ヘラルド映画
劇場公開日:1995年8月19日