リンダはチキンがたべたい!(2023)

原題は「Linda veut du poulet!

国際的に高い評価を受けたフランス・イタリア合作の

「アート系」アニメ-ジョン

素描に色を重ねただけという、カラフルでシンプルな作画スタイルですが

キャラクターが個々に色分けされているので

多人種を表すのにうまく機能して迷うことがありません

いかにもフランス風のスラップスティックコメディの中に

シングルマザーや移民が置かれている格差や

ゼネスト企業や組織単位ではなく全国レベルで団結して行うストライキ

という社会問題を背景に

モラルに欠けた理不尽な世の中で人々はどう助け合うべきなのか

さらに「記憶にない人間は存在するのか?」という

哲学的ともいえる問いかけが待っています

 

一般的な日本人と感性に比べて、相性がいいかというと難しいですけど

エリック・ロメールを好きな方とかにはおススメかも

バンリュー(フランスの移民や貧者が多い公営住宅地帯)の

団地に住む女の子リンダ(10歳くらい)は
父親はリンダが一歳の時、食事中に突然亡くなっていて

母親のポレットとふたり暮らし

父親の記憶はありませんが、父親が作ってくれた得意料理

「パプリカチキン」のことだけは覚えています

ある日、母親の大切な指輪がなくなり

親友のアネットの新しいベレー帽と交換したと疑いを掛けられたリンダは

叔母でヨガ講師をしているアストリッドに預けられます

アストリッドは(たぶん)ベジタリアンで自然回帰型の生活をしていて

リンダは彼女の家に泊まるのが堅苦しい(笑)

帰宅したポレットは、猫のゲーの中に指輪を発見

リンダが盗んだのは誤解だとわかり

お詫びに「パプリカ・チキン」を作ることを約束します

しかしその日はストライキでお店はどこも休み

日本人の親だったら、うまく子どもを言い包めると思うのですが

ポレットはたとえ相手が子どもであっても

ひとりの人間として人格を尊重しようとするんですね

それはいいとして

なんとポレットは養鶏所から生きている鶏を盗んで逃げます

だけど絞め方がわからない(笑)

姉のアストリッドに電話で助けを求めると

運転中の通話で警察に捕まってしまい

新人警察官のセルジュが怪しい音のするトランクを調べてみると

鶏が逃げ出してしまいます

リンダとポレットは鶏を追いかけ

イカを運ぶトラックの荷台に逃げ込みます

自転車でトラックを追いかける警察官(笑)

警察官に気付いた運転手のジャン=ミシェルがトラックを停めると

ジャン=ミシェル(鳥の羽根アレルギー)は荷台に隠れていたポレットに一目惚れ

母親のメメなら鶏を絞めれるかもとバンリューまで乗せていくと

メメはリンダの知り合いでした

だけどメメも鶏を絞め方は知らないという(父親の仕事だった)

そこで警察官はピストルで鶏を撃ち殺そうとしますが、当たらない

部屋を壊されたメメは気絶し

リンダと友人たちは鶏を追いかけ

メメの家具をめちゃくちゃにしてしまいます

やっと捕まえた鶏を地上めがけて窓から放り投げると

鶏は大木の枝に留まってしまう

地上からは子どもたちが、鶏を落とそうとあれもこれも投げつけ

リンダたちは見つけた釣り竿で鶏をひっかけようとします

警察官がポレットの手錠の鍵を飲み込んでしまっため

ジャン=ミシェルはポレットの手錠をバーナーで焼いて切る

どこにやってきたアストリッドが、警察官に木に登れと命令し

リンダの友人がパプリカを焼いているオーブンが煙を吹く

ついには機動隊まで出動すると

友人の幼い弟がトラックの荷台から投げ捨てたスイカ

サッカーボール如き宙を行き交う

世の中は理不尽で、大人(政治家)の言うことは辻褄があわない

それをアニメーションという「嘘」で表現する

 

でも大変なときここそ助けあわなきゃいけなし、許さなきゃならない

(鶏を盗まれたニート風なお兄ちゃんが一番マトモそうという 笑)

そして恋もしなくちゃいけない(笑)

リンダの頬に水漏れの雫が落ち、あたかも涙のように流れる

そのとき水が溢れた階上のリンダの部屋では

父親が猫を抱き、チキンのレシピ本を読んでいました

確かに父親は存在していて、リンダのことも母親ことも愛していたのです

結局誰が鶏を絞めたのかは、わからなかったのだけど(笑)

バンリューの広場で皆にパプリカチキンをふるまうジャン=ミシェル

でも得意なのはラザニアと打ち明けると

「ママがいちばん好きなのはラザニア」だと、リンダは教えます

木の上にいた警察官とアストリッドにはスイカが届けられ

警察官が本当は手品師になりたかったと告白すると

アストリッドは彼のパンツを「素敵」と褒めるのでした

 

みんな、幸せになあれ

問題はパプリカチキンがあまり美味しそうじゃないということ(笑)

劇場でレシピの載ったカード貰えます

 

 

【解説】映画.COMより

チキンをめぐって母娘が巻き起こす騒動と亡き父の記憶をカラフルな色づかいで描き、アヌシー国際アニメーション映画祭2023の長編アニメーション部門で最高賞にあたるクリスタル賞に輝いたアニメ映画。
とある郊外の公営団地に暮らす8歳の女の子リンダと母ポレット。ある日、母の勘違いで叱られてしまったリンダは、間違いを詫びる母に、亡き父の得意料理だった「パプリカ・チキン」を食べたいとお願いする。しかしその日はストライキで、街ではどの店も休業していた。チキンを求めて奔走する母娘は、警察官や運転手、団地の仲間たちも巻き込んで大騒動を繰り広げる。
監督・脚本を手がけたのは気鋭の映画作家キアラ・マルタと「大人のためのグリム童話 手をなくした少女」のアニメーション作家セバスチャン・ローデンバック。実生活では子を持つ夫婦である2人が、ユーモアといたずら心を織り交ぜながら詩的な表現で描き出す。

2023年製作/76分/G/フランス
原題:Linda veut du poulet!
配給:アスミック・エース