ラ・カリファ(1970)

原題は「La califfa」(カリファ夫人)

エンニオ・モリコーネ特選上映 Morricone Special Screening×2」2本目

なぜ今まで日本未公開だったのか

しかもロミー人気が絶大なドイツでさえ

あまり知られていない映画ということ

ロミーのフィルモ・グラフィーのなかでも

最も大胆にヌードを披露していて

おそらくロミーありきの企画だったと思うのですが

ひとことでいえば駄作でした(笑)

テーマはゼネストか、恋愛か、反共産党か、

経営者間の軋轢なのか、はたまた息子の成長を願うものなのか

ひとつひとつのエピソードが大雑把でつぎはぎ

盛り上がりそうな場面で唐突にシーンが切り替わり

当然モリコーネの音楽もぶつ切り

余韻に浸れないったらありゃしない

(ワンコとスズメは可哀想だったけど)

モリコーネの曲はこの映画とは違ったところで

音楽ファンを魅了し有名になりますが

ロミーは監督の采配について

「映画が何なのかわかっていなかった!」と吐き捨て

自身の伝記本の中でも「最も嫌いな作品」と延べているそうです

ただロミーの美しさは本作でも際立っていました

お宝映像と言っていいと思います


1970年代初頭のイタリアのエミリア

ストライキによる暴動で、カリファと呼ばれる労働者階級の男が

機動隊と衝突し死んでしまいます

それを見ていた妻のアイリーン(ロミー・シュナイダー)は

夫の遺志とカリファという名を継ぎ、ストライキを率いるリーダーとなり

配送トラックを占領、女性たちを煽り電化製品を川に投げ捨てます

(もったいないと思うのは、私の心が汚れているからかしら)

その頃 セメント工場の経営者で実業家のドベルド(ウーゴ・トニャッツイ)は

ひとり息子が海外に放浪の旅をしたいと言い出し

妻のクレメンティーナを哀しませるのではないかと悩みます

カリファは別の倒産した工場から解雇された労働者たちと連帯し

(経営者はドベルドらに救いを求めたが報われず首吊り自殺してしまう)

ドベルドのセメント工場工場を占拠します

ドベルドはストライキを終わらせるため、労働者たちと話し合いに行くことにします

ドベルドはいわゆる「成り上がり」で、かっては自分も貧しい労働者でした

彼らと理解しあえると信じていたのです

そこでどう、ドベルドとカリファが惹かれ合ったのかはわかりませんが(笑)

ドベルドは突然カリファの部屋(社宅のようなもの)を訪ね

ベッドを共にしていた男が出て行くと、カリファを抱くのでした

そうしてふたりは情事を繰り返すようになり

(カリファがドベルドの父親と友人なのはなぜ? 笑)

ドベルドは労働者たちの共同経営、利益分配といった組合設立の要求を認め

(利益は見込めなくなるものの)倒産した工場を再開し労働者たちを再雇用します

しかしそのことは、ほかの工場の経営者たちから強い反感を受けるだけでなく

同じ労働者階級の中にも容認できないという極右の市民も多くいて

対立は深まるばかり

偉いのは奥さんですね(笑)

夫の不倫を知っても、彼の生きる気力を

やるべき道の方向を示してくれたと、カリファを責めることはありませんでした

息子の海外行きも許します

その間、ドベルド以外の経営者たちは重大な決断をします

カリファと会った帰り道、ドベルドは何者かに誘拐され

遺体は海辺に捨てられたのでした

あれもこれも詰め込もうとせず、単純に労働者と経営側の分断と

そこで起こった悲愛モノにしたほうが良かったんでしょうね

ロミーの言う通り、確かに監督は映画が何なのかわかっていなかった(笑)



【解説】映画.COMより

「ルートヴィヒ」「夕なぎ」などに出演しヨーロッパ映画界で人気を誇った女優ロミー・シュナイダーが、許されざる恋に落ちた女性を体当たりで演じた1970年製作の社会派メロドラマ。亡き夫の遺志を継いでストライキのリーダーとなった女性が、かつての仲間であった工場長の男性と対立しながらも次第にひかれ合っていく姿を、巨匠エンニオ・モリコーネの甘美なメロディに乗せて描き出す。「Mr.レディMr.マダム」シリーズのウーゴ・トニャッツィが工場長を演じ、イタリアの脚本家アルベルト・ベビラクアが長編初メガホンをとった。モリコーネによるテーマ曲は数ある彼の作品の中でも特に人気が高いことで知られるが、映画自体は日本では長らく未公開のままだった。2024年4月、特集企画「エンニオ・モリコーネ特選上映 Morricone Special Screening×2」にて日本初公開。

1970年製作/91分/イタリア・フランス合作
原題:La califfa
配給:キングレコード