チリの闘い 第1部「ブルジョワジーの叛乱」(1975) 第2部「クーデター」(1976) 第3部「民衆の力」(1978)

原題も「La batalla de Chile

凄い映画でした

これが本物のドキュメンタリー



かなり画像は悪いんですよ、手ブレも酷くて

でもそれが見ていくうち

どれほど命がけの撮影だったか、ということがわかります

1970年チリ、国民による初の公正な選挙によって選ばれた

サルバドール・アジェンデ大統領と唯一の社会主義政権



アジェンデは工場や農場での生産や富を富裕者層だけでなく

国民全体に分配しようと、いわゆる社会主義思想を掲げ

労働者たちから高い支持を受けます

それに反発しているのがブルジョワ中産階級)と

彼らが支持する過半数を占める右派の国会議員や軍人

それを支援していたのがアメリカの資本とCIAニクソン政権)でした



なのでアジェンデの公約は国会で全て否決

配送業や工場をストライキさせ国内の経済を停滞

社会主義、共産思想を抹殺しようと企みます

しかしそれがアメリカから賄賂を受け取っている

ファシストの陰謀だと知っている民衆の結束は固く

工場を再開させ、農地を手に入れ

知恵とアイディアと労働で苦難を乗り切り

アジェンデはますます支持を集めていくのです



1973629

ついに陸軍の一部将校らが首都サンティアゴの大統領官邸を襲撃

撮影していたカメラマンが将校に銃殺され、ここで第一部が終了



しかしプラッツ将軍の努力と、CIA時期尚早という判断で

クーデターは未遂に終わります

822

アジェンデ政権を違憲とする決議案を下院で採択

これによりチリ軍部にとってのクーデターの正当性が確立



99

アジェンデは自らの政権を問う国民投票11日に発表すると閣僚の前で決定

911日早朝

国民投票発表の前に陸海空三軍と国家警察隊が大統領官邸を襲撃

交戦によりアジェンデ死亡(後日ピノチェトは自殺と発表)



クーデターといっても、大統領ひとり暗殺するのに軍隊が押し寄せたうえ

官邸を空爆するんですよ(味方も死ぬだろうに)

それも何発も

912

ピノチェト軍事評議会の議長になる



1974627

ピノチェト大統領に就任



930

亡命先のブエノスアイレスでプラッツ将軍が妻とともに暗殺

ここで第二部が終了

クーデターのあとフランスへ亡命したグスマンが

民主主義の社会主義政権の終焉を描く

ここまでグスマンは何の主義主張もしていない

ただ淡々とカメラが事実を映し出しているだけ



そしてグスマンが最も訴えたかったことが

第三部で描かれていきます

主人公はアジェンデでも、ピノチェトでもない
チリの労働者たちなのだと

労働者階級による労働者の組織を作り出そうという活動は広がりをみせ

深刻で絶望的な状態にもかかわらず、顔には誇りが宿ってる

無学であっても、信念をもっている

 

それはマルクス主義の理想の形なのだけど

冷静に考えると不可能なのですね

たとえ成功してお金が入ったとしても、今度は欲が出てしまう

今の社会主義国家を見てもわかる通り

結局は資本主義、格差社会になってしまうのです

それでも大切なのは、希望を捨てては生きていけないということ

そして私たちも、発展途上国の労働者からの摂取のおかげで

今の生活を維持しているのを忘れてはいけないのです



【解説と概要】公式サイトより

『チリの闘い』は、サルバドール・アジェンデ大統領率いる人民連合政権(1970年~1973年。マルクス主義を掲げて民主的選挙で成立した史上初の政府)時代の、騒擾に満ちた最後の数か月間を記録・再構成した作品である。階級闘争を繰り広げる国民と内戦の危機に瀕した分裂国家の姿を記録し、三部構成・約四時間半の大長編映画へと作り上げたのは、パトリシオ・グスマンをリーダーとする映画製作チーム「三年目」。映画は、政治家たちが討論する議場、時に周囲が煙や銃声に包まれる不穏な街頭デモ、「備蓄された武器」を探して労働者たちの拠点を襲撃する軍、サンティアゴの街頭でおこなわれる大規模な政治集会等々、その視点をミクロからマクロへ至るまでの多彩な事象に据えて、当時のチリが置かれていた一触即発の危機的状況とその後のアジェンデ政権崩壊、そうした状況下で奮闘しつつ社会主義的な自治=互助組織を形成してゆく民衆の逞しさを複眼的に描き出す。

一部:ブルジョワジーの叛乱(96分)

19733月におこなわれた議会選挙における左派(人民連合)の予期せぬ勝利に続く、右派による攻勢の激化を検証する。議会制民主主義がアジェンデの社会主義政策を阻止できないことを思い知った右派は、その戦略を国民投票から街頭闘争へと転換する。この第一部は、右派が政府を弱体化して危機的状況を引き起こすために、デモやストライキの扇動から暴動、そしてテロへとその暴力的戦術をさまざまに駆使する様子、そしてついには軍部がクーデター未遂事件を引き起こすまでの数か月間を追う。

第二部:クーデター(88分)

第二部は、第一部の終盤に登場した1973629日のクーデター未遂事件で幕を開ける。この「クーデター未遂」は、軍にとって有益な予行演習となったことは明らかであり、「本番」がおこなわれるのは時間の問題だと誰もが認識しはじめた。左派は戦略をめぐって分裂し、一方右派は着々と軍による権力掌握の準備を進める。最終的に73911日の朝にクーデターが実行に移され、大統領府は軍による爆撃を受け破壊される。アジェンデはラジオを通じてチリ国民に向け演説をした後、自殺と思われる死を遂げる。同じ日の夜、アウグスト・ピノチェトを議長とする軍事評議会のメンバーがテレビ出演し、新たな軍事政権の発足を宣する。

第三部:民衆の力(79分)

平凡な労働者や農民が協力し合い、"民衆の力"と総称される無数の地域別グループを組織してゆく姿を追う。彼らは食糧を配給し、工場や農地を占拠・運営・警備し、暴利をむさぼる闇市場に対抗し、近隣の社会奉仕団体と連携する。こうした活動は、まず反アジェンデ派の工場経営者や小売店主や職業団体によるストライキへの対抗手段として始められたものだった。やがて"民衆の力"は、右派に対し決然たる態度で臨むことを政府に要求する、ソビエト型の社会主義的組織体へと徐々に変質してゆく。