原題も「The Report」
「The Torture Report」から
「Torture」の文字をマーカーで塗りつぶしたのが本作のタイトル
「Torture」とは「拷問」のこと
派手さや面白さはないけれど、深く考えさせられる
ポリティカルサスペンスであり、ドキュメンタリー
ちょうど今、日本でも「赤木ファイル」の存在が
トップニュースになっていますが(2021.6.22)
政治家や官僚に不都合な公文書が見つかれば
黒塗りにしたりあっという間にシュレッダーにかけてしまう
そしてそのことを調べて罰しようともしない
法律も、民主主義も作用しない
それは権力者からの仕返しや、クビになるのが怖いから
みんな自分のことだけが可愛いからです
でもほんのたまに、お金や出世より
正しいことだけを追い求めるヒーローが現れる
しかしそんなヒーローに限って、実はとてつもなく地味(笑)
海岸の砂の中から一粒の砂金を見つけるような作業のために
コツコツと何年間も働き続ける
もっと大切なのは、そういう人間を雇い続けることが出来る人間
しかも政界や財界に顔の効く実力者でなくてはいけない
その双方の力がなくては国は動かせない
残念ながら今の日本に、選挙と金と利権争い以外のために働く人間を
雇う議員はひとりもいないでしょう
民主党の上院議員ダイアン・ファインスタイン(アネット・ベニング)の命令で
部下のダニエル(ダン)・ジョーンズ(アダム・ドライバー)は
9.11アメリカ同時多発テロで、CIAが拘留、尋問した容疑者について
630万ページ以上のCIAの記録の分析調査を行うことになります
そこで「EIT」(強化尋問テクニック)という拷問が行われていた
実態が浮かび上がってきました
徹底的に容疑者を侮辱(イスラム教徒のシンボルである髭を剃る、全裸にする)し
手錠に繋ぎ、顔に袋を被せ暴行、吊るすなど苦しい体勢での放置
それでも口を割らなければ、大音量と光による不眠、水責め
害虫と共に棺桶に閉じ込める偽埋葬・・などを繰り返します
拷問受けたを容疑者はわかっただけでも119人
しかも拷問によって知り得た情報は
すでに報道され周知の事実ばかり
それもそのはず、容疑者の全員が
ビン・ラディンの側近でも何でもなかったのです
口を割らないのは、次のテロがどこで起きるか知るはずがないから
にもかかわらず、拷問は続けられ死者も出ます
もちろん反対するCIA職員もいました
明らかに国際的に違法で
同じような拷問を受ける・・と不安になるんですね
(リアルな描写だけに拷問シーンはかなりキツイ)
自分の国や国民を大切にしたいなら
他の国や宗教の人々の人権も守るべきだと考えるのです
上院調査委員会に提出するため、報告書をまとめたダンでしたが
CIAと大統領府(ホワイトハウス)の妨害によって
ダンはCIAのコンピューターをハッキングした
犯罪者として扱われてしまいます
そこで国相手でも戦える弁護士(コリー・ストール)に相談するわけですが
とてもダンの給料で払える弁護料じゃない
弁護士を雇えば破産、雇わなければ刑務所、どちらにしてもCIAの思う壺
そこで弁護士はある提案をします
新聞を利用すること
確かに私も思う
報道はゴミだけど、民衆に訴えるパワーだけは持っている
それもしつこいほどに(笑)
CIAは訴追(そつい)を取り下げたものの
重要書類の日付け、内容、個人名、偽名、すべて黒塗りにされ
公開されても、国民が真実を知ることは困難になってしまいます
CIAの、テロから祖国を守るという理念もわからなくはない
9.11ショックで早急なテロ対策も必要だったでしょう
だけどこんなナチスより残酷なことをしていたら
9.11が自作自演の捏造という陰謀論と言われてしまってもしょうがない
それでもダンは最後まで国と、ファインスタイン上院委員を信じた
スノーデンのような、売国奴にだけはならない
そして日本と違って凄いのは
国が国の間違いを認めることができるということ
(日本は野党に魅力がないうえ弱すぎるんだろうな)
しかし「EIT」プログラムを決行した博士やCIA職員が
裁かれることはなく
拷問を受けた容疑者たちに
謝罪の言葉もありませんでした
日本では劇場公開されなかったそうですが
「不都合な真実」(2006)のスコット・Z・バーンズだけあって手堅い
「こんなことあってはならない」と間違いなく思わせる
アダム・ドライバーはこういう地味な映画の地味な役がぴったり(笑)
アネット・ベニングは、年を追うごとに
こんな好い女優になるなんて思ってもいませんでした(笑)
amazonスタジオ制作
amazonプライム・ビデオで見ることができます
【解説】ウィキペディアより
『ザ・レポート』(原題:The Report)は2019年に公開されたアメリカ合衆国のドラマ映画である。ブッシュ政権下でのCIAによる拷問と、次のオバマ政権下でのその調査を描く。監督はスコット・Z・バーンズ、主演はアダム・ドライヴァーが務めた。本作は日本国内で劇場公開されなかったが、Amazonプライム・ビデオでの配信が行われている
アメリカ合衆国上院調査スタッフのダニエル・J・ジョーンズはダイアン・ファインスタイン上院議員によってCIAの勾留及び尋問に関するプログラムを調査するチームのリーダーに任命される。2009年、ジョーンズ率いる6人のチームはCIA職員との接触を禁じられ、600万ページを超える文書を調査し始める。
フラッシュバックで、2001年のアメリカ同時多発テロ以降、CIAは容疑者の取り調べを強化する。翌年、CIAに雇用された心理学者のジェームズ・ミッチェル博士とブルース・ジェッセン博士は強化尋問技術と称した拷問を行う。
ジョーンズはFBI捜査官のアリ・スーファンに会い、またCIA文書を調べて、容疑者を重要人物であると偽って拷問したことを突き止める。医療助手であったレイモンド・ネイサンは密かにジョーンズに会い、CIAが容疑者を水責めにしたことを証言する。ジョーンズたちのチームは、国家安全保障問題担当大統領補佐官のコンドリーザ・ライスや、司法長官代理のジョン・ユーがCIAによる拷問の情報を隠し、当時のブッシュ大統領は2006年まで知らなかったことを知る。さらにCIA自身が拷問を内部調査し2009年に内部報告書をまとめたことを知る。メディアでは拷問によってテロを防ぐ重要情報が得られたと語られるが、拷問前にすでに情報が得られていたことがわかる。
5年を費やしたジョーンズたちの6000ページを超える報告書は、CIAにより妨害され、日の目を見られるか不明となる。チームのメンバーには辞職者も出る。CIAは、内部報告書がジョーンズによってハッキングされたとして訴追の構えを見せる。ジョーンズはニューヨークタイムズの記者に会い、一部の情報をリークする。CIAはジョーンズの訴追を取り下げる。議会で共和党が多数派となり、ホワイトハウスと共和党の取引により、報告書の公開は困難となる。ジョーンズは再び記者に会い、報告書のリークを促されるが、断る