高知のチャールストン・ヘストン(のほうが嬉しいと本人からリクエスト 笑)
ギドラさんからのプレゼント第一弾レビュー
原題も「Z」
1963年5月22日にギリシャで起きた
左派平和主義者グリゴリス・ランブラキス(Grigoris Lambrakis)暗殺事件が題材
「Z」とはギリシャ語の「Ζει」「彼(ランブラキス)は生きている」に由来する
ギリシャにおける政治的抗議をするときのスローガンということ
舞台は東地中海に位置する架空の国
物語は、葡萄の病気を防ぐためには
3度の農薬散布がいかに大切であるかという
農業政策における政府の講義とスライドショーから始まります
同じく人間(危険分子)の予防も、幼少期、中等期、高等期に渡り3度必要だと
1967~73年軍事政権下だったギリシャは
アメリカから資金援助され、ロシアの共産主義の侵攻を防ぐことに
力を入れていた国のひとつ
人々の自由は警察により、脅迫や暴力によって押圧され
教育は幼少期から海外からのさまざまな思想の流入を排除し
自分の考えを持てなくする思想弾圧と統制を図ろうとしていました
(結局は資本主義も共産主義も同じ、中国はアメリカの二番煎じ)
そんなとき、軍事政権に反対する気鋭の議員で、左派の政治指導者
Z氏の講演が行われることになります
しかし予約していた会場が使えないというトラブル
しかもどの会場も貸してくれない、これは何者かによる圧力に違いない
そこに仲間の妻から緊急の電話
「誰かからは言えないが、確実な情報で先生の暗殺計画がある」
スタッフは警察に相談に行き、警察はZ氏を警備することを約束
自称中立的な立場の警官から、小さな会場を借りることもできました
だけどそれも全て罠だったのです
Z氏は脅しなんていつものことさ、予定通り講演をするといい
会場に入れない人たちのためにスピーカーで路上放送しようと提案します
時同じくして「ボリジョイバレエ団」の公演
すべての官僚たちは公演に向かい(無政府状態)美しい踊りを堪能しています
(共産主義は否定しても、ロシアの女の子は大大好き 笑)
一方Z氏の講演の場外では暴動が起こり
Z氏と間違えられた議員が暴行され病院に運ばれる
話し合いによる解決をしようとしたZ氏も
突然現れたトラックの荷台に乗った何者かによって
頭を強く殴られ倒れてしまいます
厳重な警備にもかかわらず、なぜ
予審判事がこの不可解な事件の謎を、ひとつひとつ紐解いていく
検事も警察も、私欲しかない愚かで滑稽な黒幕たちに操られる
今見ても、遠いどこかの国の出来事ではないという恐怖
にもかかわらず、全編に漂うゾクゾクとした色気
俳優たちの完璧な演技と配役が
この作品をさらに素晴らしいものにしています
カメラはゴダール組のラウール・クタール
Z氏 (イヴ・モンタン)
モデルはギリシャの医師、政治家、反戦活動家のグリゴリス・ランドラキス
機動隊に囲まれた真ん中で、何者かにこん棒で殴られ殺されてしまう
ピエール(ジャン=ピエール・ミケル)マット(ベルナール・フレッソン)
マヌエル(チャールズ・デナー)ピロウ(ジャン・ブィーズ)
Z氏の支援者
予審判事(ジャン=ルイ・トランティニャン)
モデルは法学者のクリスト・サルツェタキス
ランドラキスの暗殺事件で最後まで調査・追求した不屈の検察官
殺人に関与した警察官僚に有罪判決を下すことに成功
1967~74年ギリシャ軍政によって更迭されたものの
その後最高裁判事を経て、1985~90年ギリシャ大統領を務めた
新聞記者(ジャック・ペラン)
フォト・ジャーナリスト(パパラッチ)
事件当時Z氏の暗殺現場にいて、カメラを通じ予審判事に協力する
レーヌ(イレーネ・パパス)
Z氏の妻、Z氏の浮気の現場を目撃してしまい別居中だったが
夫の危篤を知らされ急遽病院にやってくる
警察長官(ピエール・デュ)
大佐(ジュリアン・ギオマール)
ニック(ジョルジョ・ジュレ)
ペンキ屋、トラックの配達人ヤゴが棍棒を持っていたこと
その夜騒動ついて自慢していたことを評言しに行く途中
彼もまた何者かに殴られ入院してしまう
お金や損得より、真実が大切だと信じている
ニックの母親(アンドレ・テインシー)
バカ正直な息子を案じ、評言を取りやめるよう願う
ニックの妹(マガリ・ノエル)
夫は極右で政府の僕、出世願望があり信念のぶれない兄にキレる
(画像見つからずフェリーニから)
病院長(ヴァン・ドゥード)
解剖によりZ氏の死因は警察が発表した転倒によるものでなく
殴打によるものと報告する
ヤゴ (レナート・サルヴァトーリ)
トラックの運転手
警察と口裏をあわせた動かしがたいアリバイを持っている
心臓が悪いと入院し(なぜか足にギブス)ニックを殺そうとするが未遂に終わる
ヴァゴ(マルセル・ボズーフィ)
いちじく売り、Z氏を襲った実行犯
ヤゴと違いあっさり罪を認める
共産主義のことなんか判らないし、本当はどうでもいい
小鳥を飼うのが趣味だが、警察長官からクレームがきてるから小鳥を殺すと脅され
おまけにイチジク売りの販売許可証も協力しないと更新しないと念を押され
生活のため家族のためやるしかなかったという、本当は気弱でやさしい人間だった
彼のエピソードがいちばん印象深く
封建主義下の庶民がどのような立場か理解しやすい
検察官(フランソワ・ペリエ)
味方だと思っていたが、彼さえも予審判事に捜査の中止を命じる
運転手(シド・アフメド・アゴウミ)
瀕死のZ氏を病院に運ぶ運転手
わざと車を追突させたり、遠回りして病院に到着する時間を遅らせる
実は警察組織の一員
やがて警察の陰謀を疑い調査を続けるのは予審判事ただひとりになります
それでも確実に証拠を掴み、妨害に屈することなく
スキャンダルが明るみなり、当局は事件を隠すことができなくなりますが
予審判側の7人の証人は次々と交通事故等で命を落としてしまいます
政府は彼らの死は警察のスキャンダルとは無関係であると発表
その後起訴された警察幹部は釈放
予審判側は更迭されたのでした
そして体制側はこの混乱を利用し、さらに権力の強化をしていくことになります
冒頭の「設定した人物等は意図したものである。」という挑戦的な言葉
ラストの結局は権力と暴力の前に潰される虚しさ
しかしところどころに緊張感を解すユーモアもあり
社会的プロテストとしてもエンタメとしても一級品
当然これは「お気に入り」しかないでしょう
しかもしかも、2002年に東北新社よりDVDが発売されたのを最後に
ソフトのリリースが止まっており、日本で見るのは難しい作品のひとつということ
その証拠にamazonで29,190円(日本語字幕で見れるかは不明)
ヤフオクでは中古で24,800円(11月29日現在)
こんな貴重な映画を見ることが出来たのもギドラさんのおかげ
家宝のひとつとして大切にさせていただきます(笑)
【解説】allcinema より
地中海に近いある国で、革新政党の指導者モンタンが暴漢に襲われた後、死亡する。当局は自動車事故による脳出血と発表するが、これに疑問を抱いた予審判事トランティニャンは新聞記者ペランの協力を得て真実に迫ろうとする。そして事件の背後に隠された陰謀にたどり着くのだが……。コスタ=ガヴラスが、故国ギリシャで63年に起きた自由主義者ランブスキ暗殺事件に材をとったヴァシリコスの原作を基に、軍事政権の恐怖と陰謀を描き出した問題作(当然、ギリシャでは上映中止となった)。その淡々とした描写は、リアリズムを生むと同時に緊迫感を盛り上げ、作品の持つメッセージを強く打ち出す。アカデミー外国語映画賞をはじめカンヌ国際映画祭審査員特別賞など多くの賞に輝いた。