スポットライト 世紀のスクープ(2015)

「こんなのを報道して誰が責任をとるんだ」
「報道しなかったら誰が責任をとるんだ」

原題も「SPOTLIGHT 」(ここではボストン・グローブ紙の取材チームのこと)

 

ピューリッツァー賞受賞の実話ベースの映画化

アカデミー賞では6部門にノミネートされ作品賞と脚本賞を受賞

そのわりにはマイナー扱いな作品(笑)

大統領の陰謀(1976)系が好きな方にはオススメ

確かに地味ですが、スクープをものにしたときの高揚感はあります

2001年、ボストン・グローブ

新編集長のマーティ・バロン(リーヴ・シュレイバー)が着任します

そこで子どもが神父から性的虐待を受けたという事件を知り

「スポットライト」欄の記者

マイク(マーク・ラファロ

ロビー(マイケル・キートン

サーシャ(レイチェル・マクアダムス

ベンジョン・スラッテリー

マットブライアン・ダーシー・ジェームズ

に取材するよう命じます

 

ボストン・グローブ紙の読者のほとんどはカトリック信者

記者たちはしぶしぶ調査を開始

被害者を支援する会や、被害者本人から話を聞きます

すると事件のケーガン神父は、わかってるだけで80人の子どもに

性的な「いたずら」をしていたと報告されていました

しかし神父は無罪放免

 

カトリック教会はそのことを知っていたのに関わらず隠蔽し

別の教区に異動を繰り返していたというのです

そのことはすなわち、さらなる性的虐待被害を拡大していたということです

さらに調査していくとポーター事件という

別の神父が起こした性的虐待事件があったこともわかります

 

聖職者虐待被害者の会の代表のサヴィアノ(ジェイミー・シェリダン)は

被害を受けるこどもたちのほとんどは

家庭に問題があり内向的で孤独な子どもたち

尊敬する神父に声をかけられ、やさしくされ

有頂天になってしまったと言います

 

そのせいで、なにかがおかしいと思いながらも

神父の言うことに従ってしまう

レイプされた子どもたちは、傷つき、信仰心を失い

ドラックに溺れたり、なかには自殺してしまう被害者もいたといいます

運よく立ち直った人間でさえ「秘密」を誰にも相談することが出来ず

ずっと悩み続けていました

なかには自身も成長してから

幼児に「いたずら」するようになってしまった人間も

 

サヴィアノは聖職者による性的虐待

バチカンを主軸とした問題であって

被害者は世界的にいると訴えます

 

30年以上神父の虐待の研究を続けてきた

サイプリチャード・ジェンキンス)は電話取材に対して

神父の約6パーセントが小児愛者という結果が出てると答えます

数字で言うとボストンだけで、90人の神父が小児愛の加害者になるのです

スポットライトは、サイプの証言の裏付けを取るため

ボストンから転任を繰り返した神父を割り出すと

その数87サイプの証言とほぼ一致したのです

しかし神父の名前を公表したとても

今までと同じように無罪になると考えたマーティは

虐待を隠蔽する教会のやり方そのものを暴くことにします

 

ガラベディアン弁護士(スタンリー・トゥッチの訴訟により

ゲーガン事件の証拠文書が公開されることになり

ついに事件は日の目を見ると思われましたが

2001911日、アメリ同時多発テロが発生

教会の取材は中断され、スポットライトの記者たちも

多発テロの取材に駆り出されることになってしまいます

 

しかしその後も被害者の数は続々と増え

このままでは更に被害者が増えてしまう可能性があると思ったスポットライトは

2002年、ボストン教区内で起きた性的虐待事件の記事を600本以上掲載

被害者の数は1000人以上、告発された神父は249人におよびました

教区の責任者、ロー枢機卿は厳しい批判を受け辞任しますが

20045月、教皇ヨハネ・パウロ2世により

サンタ・マリア・マッジョーレ大聖堂の大司祭に任命

バチカンの市民権が与えられアメリカの刑事訴追から逃れます

 

映画の最後には虐待を受けた被害者への

連絡先がメッセージとして表示されていましたね

過去のトラウマを忘れたい気持ちはわかるけれど

虐待にかかわらず、学校でのイジメなど

自分にとって絶えられないのなら、どんな苦しみでもいい

匿名でいいから、あらゆる窓口に相談してほしいと思います

 

このボストン・グローブ紙の記事を皮きりに

ドイツ、アイルランド、イギリス、メキシコ、オーストラリア

フランス、ギリシャ、そして日本でも

聖職者による虐待が発覚し、大きな問題となりました

宗教のことを言える立場ではないけれど

カトリック教会の司祭でも妻帯できる例外があるのなら

結婚したい神父があれば結婚を認めてもいいと思うし

 

同性愛にも反対しているけど

統計的にゲイが最も多いのは、もしかしたら修道士かも知れない

 

「聖」のそばには、必ず「俗」がある

(日本の神社の傍には、風俗店やラブホがある 笑)

 

所詮私たちは神にはなれない

眠い時は寝てしまう、お腹が空いたら食べるように

生きている限り、欲望を抑えきることは不可能

どこかで、いい意味で、バランスをとることが必要なのです

聖職者ならなおさらのこと

私は日ごろからマスコミや弁護士は

有害なゴミでクズだと思っているのですが(笑)

 

日本にもこのように、権力や売り上げや保身に負けず

真実を訴え、不正を裁こうとしているジャーナリストや司法に携わる人間が

もしいるとしたら感激ですね





【解説】allcinema より

カトリック教会が長年隠蔽してきた児童虐待スキャンダルを暴き出し、ピュリツァー賞に輝いた調査報道チームを巡る感動の実話を基に、巨大な権力に立ち向かっていった新聞記者たちのジャーナリズム魂と不屈の執念を描いた実録サスペンス。出演はマーク・ラファロマイケル・キートンレイチェル・マクアダムスリーヴ・シュライバージョン・スラッテリー。監督は「扉をたたく人」「靴職人と魔法のミシン」のトム・マッカーシー。第88アカデミー賞では、みごと作品賞と脚本賞の2冠に輝いた。
 2001年、夏。ボストンの地元新聞“ボストン・グローブ”の新任編集局長としてマイアミからやって来たマーティ・バロン。さっそく目玉になる記事の材料を物色し、神父による子どもへの性的虐待事件に着目すると、これを追跡調査する方針を打ち出す。しかしボストン・グローブの読者は半数以上がカトリック教徒。彼らの反発を招きかねないと古参幹部は難色を示すが、地元のしがらみと無縁で、なおかつユダヤ人のバロンは強気に押し切っていく。こうして、リーダーのウォルター“ロビー”ロビンソンを中心に特集記事欄《スポットライト》を担当する4人の記者たちが調査を開始する。そして地道な取材を積み重ね、次第に事件の背後に隠された巨大な疑惑の核心へと迫っていくが…。