ベルファスト(2021)

失はれた地平線を見た

シャングリラ

ベルファストからは行けない

 

原題も「BELFAST

ベルファストとは北アイルランドの市、首府のことで

機動戦士ガンダム」でホワイトベースオデッサの戦いの後

地球連邦軍の補給基地があるため立ち寄った場所として有名(そこか 笑)

ケネス・ブラナー1960生まれ)のノスタルジックで

映画愛が詰まった作品

ニュー・シネマ・パラダイス」を超えたかも

オールドファンのおじさまは今すぐチェックです(笑)

 

そして、さすがシェイクスピア俳優

名言がいっぱい(笑)

お気に入りは

イングランドに行ったら言葉が通じないんだって、じいちゃん」
「ばあさんとは、今もそうだよ」 (笑)

美しい街、ベルファスト

カラーからモノクロに切り替わる冒頭シーン

 

9歳になる少年バディは路地で日本で言うチャンバラをしている

バディのお父さんは大工でイギリスに出稼ぎに行っています

帰ってくると町の男たちがスティーブ・マックィーンと呼び

大脱走」のマーチを口笛で吹く

お父さんとお母さんがダンスするシーンは

ジンジャー・ロジャースフレッド・アステア

ご近所さんはみんな友だち

困ったときは助け合う仲間

それがある日突然、プロテスタントの過激派が現れ

カトリックの家を襲うようになります

北アイルランド紛争

1920北アイルランドアイルランドから分離

多数派のプロテスタントと少数派のカトリックの間で宗教対立が始まり

69年以降はIRAによるテロとプロテスタントの報復がさらに激化

イギリス政府にとって国内最大の課題となります

90年代のEU統合により融和が進み、97年和平が成立(ベルファスト合意)

停戦を宣言したデヴィッド・トリンブル(初代北アイルランド自治政府首相 )と

ジョン・ヒューム北アイルランド社会民主労働党の元党首)は

ノーベル平和賞を受賞

一応の平穏は実現したものの、宗教間による対立は今も続いているそうです

ただ少年バディの目線で描いているので

悲観さはそれほどありません

楽しいことのほうがいっぱい

 

テレビで流れる「宇宙大作戦Star Trek

「リバティ・バランスを射った男」に「真昼の決闘」(High Noon

家族と「チキチキバンバン」(カラー)を見に行く

(「恐竜100万年」はさすがに知らない 笑)

サンダーバードのコスプレ

ボンドカー(アストンマーティン)のおもちゃ

学校では数学の得意で優秀なキャサリンが好き
(クラスメイトからロミオと呼ばれている 笑)

でも教室の席は成績順

テストで高得点を取って彼女の隣に座りたい

おじいちゃんがいつだって素敵

「ズル」を教える

だけどプロテスタントの攻撃は増すばかり

街を去っていくカトリック信者の家族も出てきます

教会では神父が子どもたちに、プロテスタントでない信仰は

苦しんで地獄に堕ちると説教

 

バディの家はプロテスタントで襲われることはありませんでしたが

お父さんは過激派グループに誘われるようになります

いままで仲良くしてきた隣人を襲うなんてできるか

でも断ると自分の家族に危険が迫りかねない

お父さんはお母さんにロンドンで生活することを提案します

お母さんは反対

ここが生まれ育った故郷で

ロンドンに移住したら自分たちは差別され

アイルランド訛りをバカにされる

 

同じイギリス人で同じプロテスタントでも

今度は出身地で蔑視されるのか

でもバディが友人モイラ

お菓子(ターキッシュ・デライト)を万引きしたことがバレ

(不味いのか、それともトルコのお菓子だから嫌いなのか)

過激派が襲った雑貨店からバイオ洗剤を盗み母親を怒らせます

(環境にやさしいからという理由が可愛いすぎ 笑)

 

街は分断し、バディのお父さんとお兄ちゃんは

過激派に囚われたお母さんとベックを助けるためバカチョンと対決

そこ「ハイヌーン」じゃなくて「リオ・ブラボー」でしょ(笑)

ついにお母さんも、こういう環境では

子どもが正しく育たないのではないかと悩み

ロンドン行きを決意するのです

最期まで嘘とユーモアを忘れないおじいちゃん

 

好きな女の子ともお別れ

「将来カトリックのキャサリンと結婚できる?」という質問に

彼女が温かくてやさしい人なら

ヒンドゥー教でも、南部バプテスト連盟でも

菜食主義の反キリスト者でも、と答えるお父さん

宗教が悪いんじゃない、悪いのは使う人間

子どもに愛を教えるのは神様じゃない、大人

大事なのは違いより相手を思いやる心

 

ラスト、大きくジュディ・デンチの顔が映し出されます

そうよ 行きなさい、振り返らずに・・

ケネス・ブラナー、気取ったやつかと思っていましたが(笑)

北アイルランドの労働者階級から王立演劇学校を首席で卒業

実は苦労人なんですね

ケネス・ブラナーのこともかなり見直した作品でありました

 

迷ったのですがぎりぎり(笑)

お気に入りにさせていただきます

 

【解説】allcinema より

「から騒ぎ」「オリエント急行殺人事件」のケネス・ブラナー監督が故郷ベルファストを舞台に、自身の幼少期を投影して描いた自伝的ドラマ。分断による暴力の嵐が吹き荒れる中、それでも変わらぬ家族の愛に包まれて暮らす9歳の少年の目を通して、激動のベルファストと家族の絆をペーソスとユーモアを織り交ぜ郷愁あふれるモノクロ映像で描き出していく。主人公の少年役は本作が映画デビューとなる新星ジュード・ヒル。共演にカトリーナ・バルフ、ジュディ・デンチジェイミー・ドーナンキアラン・ハインズ
 1969年、北アイルランドの首都ベルファスト。ここで生まれ育った9歳の少年バディは、愛する家族と大好きな映画や音楽に囲まれ、楽しい日々を送っていた。ところがある日、暴徒化したプロテスタントの若者が、カトリック系住民への攻撃を開始した。以来、同じ街で平穏に共存してきたプロテスタント系住民とカトリック系住民の対立は激しさを増し、次第に街は暴力と恐怖に覆われていく。バディと家族にも危険が迫り、父親はロンドンへの移住を計画するのだったが…。