「死刑台のメロディ(1971)4Kリマスター英語版

無名で一生を終えたであろう自分たちが

 アナキストとして後世に名を残すことができたことを

 検事と裁判官に感謝する

 

原題は「Sacco e Vanzetti」(サッコとバンゼッティ

エンニオ・モリコーネ特選上映 Morricone Special Screening×2」 にて鑑賞

エンニオ・モリコーネの代表作のひとつに数えられ

活動家で歌手のジョーン・バエズが主題歌「勝利への讃歌Here's to you 」と

挿入歌「サッコとヴァンゼッティのバラード」の2曲を歌います

邦題は映画より主題歌よりですが、甘すぎ

ベン・シャーンの絵でも有名な

1920年のアメリカ・マサチューセッツ州で実際に起こった

サッコ=ヴァンゼッティ事件の映像化

暴動やデモ行進は白黒(記録)映像と

カラー映像ドラマ部分にわかれていて

警官隊の手入れは、191919201月まで行われた

冒頭の警官隊による襲撃シーンは「パーマーレイドと呼ばれる左翼狩り

当時の司法長官アレキサンダー・ミッチェル・パーマーの指揮のもと

左派や過激派と思われる人々は大量にレイド(強制捜査、襲撃)

逮捕され、外国人労働者は国外追放されます

1920年3月パーマーが退任し、穏健派はこの悪夢が終わるかと思いきや

そうではなかったのですね

1920年5月5日社会主義思想(といっても単なるビラ配り)のイタリア移民

靴工場で働くニコラ・サッコ(リカルド・クッチョーラ)と

魚売りのバルトロメオ・バンゼッティ(ジャン・マリア・ヴォロンテ)のふたりが

警察で職務質問を受けることになり

サッコが銃を所持していたことから

4月15日にマサチューセッツ州ブレインツリー市の靴工場で

会計部長と護衛が射殺され6,000ドルが強奪された容疑者として

的確な証拠もないまま逮捕、送検されてしまいます

裁判が始まり、検察が用意した証人たちの評言は誰が聞いても嘘

証拠品として出されたものは誰が見ても捏造

一方でふたりにはちゃんとしたアリバイがあり

共産党員ではなく自由を愛するアナーキストだと訴えても

彼らに有利になる評言もすべて却下

さらに検察側のイタリア人蔑視がまあ酷い

ムア弁護士(「バーバレラ」のデュラン・デュランだわ 笑)

カッツマン判事(シリル・キューサック)を「KKKだ」と罵りますが

KKK」って黒人やアジア人やヒスパニックなどへの人種差別だけじゃなく

カトリック教会やフェミニズムなど、悪い意味で多岐にわたっているんですね

100%冤罪、初めから罪をなすり付ける結論ありきの裁判で

1921年7月14日、陪審員は全員一致で死刑判決を下します

公正さに欠ける審理に抗議する暴動がアメリカ各地で起き

ヨーロッパや南アメリカでもデモ活動が起こります

バンゼッティは「アナーキスト」(無政府主義反戦・反資本主義)というけど

サッコはバンゼッティほど強くないんですね

家族が暮らせるお金さえあれば幸せだったのに、それさえ叶わなかった

母親の葬儀にも出れなかった

そのうえ無実の罪で死刑

絶望して奥さんに当たり、心が病んでしまう

戦う意志も生きる気力もなくしてしまいます

ひとりの囚人が真犯人を知っていると告白し(実行犯のひとり)

トンプソン弁護士(ウィリアム・プリンス)が

犯人の証拠が隠滅されていたことを知り

実行犯がわかっても裁判長タイヤ-(ジェフリー・キーン)が

裁判のやり直しは認めることはありませんでした

1927年4月、知事のもとに無実を訴える莫大な量の署名や手紙が届けられ

知事はバンゼッティを呼び、どうして「恩赦」を申し出なかったと

しかし知事が設置した特別委員会は、国際的な助命嘆願を棄却し

死刑判決を再度確定していたのです

知事の友人は憎きカッツマン判事(おまえが死ね)

知事は(おまえも死ね)リンドバーグ(当時は極右で親ナチだった)と

会う約束があるとカッツマンと部屋を出て行くのでした

バンゼッティはサッコに「おまえが正しかった」と言い

サッコは息子に「我々の信念は若者に受けつがれる」

「幸福はひとり占めするな 隣人を思いやり、弱い人、悲しむ人を助けよ」と

手紙を書くのでした

 

1927年8月、ふたりは電気椅子で処刑されます

(「グリーンマイル」は確実に影響を受けているね)

50年後の1977年、マサチューセッツ州知事のマイケル・デュカキスは

誤認逮捕並びに冤罪であるとしてのサッコとバンゼッティ無実を公表

 

しかし今のアメリカでも、SNSを中心とした歴史修正主義者の間では

ふたりは冤罪ではなかったと主張する人々が多くいるそうです

 

 

【解説】映画.COMより

1920年代のアメリカで実際に起こった冤罪事件「サッコ=バンゼッティ事件」の差別と偏見に満ちた裁判の様子を、「明日よさらば」のジュリアーノ・モンタルド監督が冷徹なまなざしで描いた実録ドラマ。
イタリア移民の労働問題が叫ばれていた1920年代のボストン。靴職人のニコラ・サッコと魚行商人のバルトメオ・バンゼッティはともに護身用のピストルを携帯しており、それを見とがめた警察は彼らがイタリア人だと知るや、即座に逮捕。2人はまるで身に覚えがない製靴会社の現金強盗殺人犯とされ、次々と提示される証言や証拠によって有罪の判決が下されてしまう。
サッコを演じたリカルド・クッチョーラが、1971年・第24回カンヌ国際映画祭で最優秀男優賞を受賞。音楽を名匠エンニオ・モリコーネが担当。公民権運動や反戦運動を支持した活動家としても知られるフォークシンガーのジョーン・バエズが主題歌および挿入歌を歌ったことも話題となった。2024年4月、特集上映「エンニオ・モリコーネ特選上映 Morricone Special Screening×2」にて、4Kリマスター・英語版でリバイバル上映。

1971年製作/125分/イタリア
原題:Sacco e Vanzetti
配給:キングレコード