荒野の用心棒(1964)4K復元版

原題は「Per un pugno di dollari」(一握りのドルのために)

ドル3部作の4K復元版が公開され

劇場で見れる日がくるとは夢にも思いませんでした

本当に素晴らしかったです

セルジオ・レオーネがまだ無名の頃

イタリアで公開された黒澤明用心棒(1961)に感銘を受け

西部劇に作り変えようとしたのが発端ということですが

当時はイタリア人監督が日本の時代劇をスペインで撮影するという発想を

誰も信じなかったため(笑)

東宝はレオーネが申請したリメイク権許可依頼を無視

のちの映画のヒットにより著作権侵害だと告訴し

(リメイク権の依頼があったことは裁判中に判明)

荒野の用心棒の製作会社は東宝謝罪、10万ドルの賠償金

アジアにおける配給権配給収入の15%を東宝支払うことになります

一方、海外での映画著作者の報酬を知った黒澤は東宝を信じられなくなり

契約解除し海外進出を決意したそうです

裏目に出て「トラ!トラ!トラ!」を降板させられる)

ストーリーはクロサワ版とほぼ同じ

ひとりの風来坊が仕事を探しにやって来た町で

町を牛耳るふたつの一家がお互い敵対しているというもの

低予算のため、ハリウッドスターの高額なギャラが払えず

目をつけられたのが、テレビ西部劇「ローハイド」でブレイクした

クリント・イーストウッド

当時イーストウッドは「ローハイド」の番組制作側との契約で

ハリウッド映画に主演することができなかったため

半ば観光気分で海外での撮影を承諾したそうです

クロサワ版、レオーネ版どちらも傑作で

勝敗を決めるのは不可能なのですが

音楽はエンニオ・モリコーネの勝ち

(片手間に作った曲がまさかの名曲 笑)

「さすらいの口笛」が流れた瞬間鳥肌モノ

オープニングからワクワクが止まりません

そこから名無しの男(クリント・イーストウッド)がラバに乗って

サンミゲルという町にやってくる

木の枝には首吊りの縄

男が井戸の水を飲んでいると、幼い少年が建物に入っていく

しかし少年は無法者の男たちに追い出され父親ともども銃で脅されます

閉じ込められている女が窓から父子を見つめている

棺桶屋のじいさんが新しい棺桶が必要だと目論んでいる間に

男はちょっかいを出してきた無法者3人を早撃ちで瞬殺します

 

宿屋の親父シルバニトから

この町ではドン・バクスター(武器商人で資産家、町の保安官)と

ドン・ミゲル(酒の密売などで儲けているやくざ)が対立をしていて

すぐに町から出て行くよう言いますが

名無しの男が殺した3人の無法者はバクスターの手下で

男の銃の腕に惚れ込んだミゲルは男を100ドルで雇います

ミゲルには、ライフルの腕の立つラモンという息子がいて
ラモンはアメリカの騎兵隊との取引で、金を騙し取ったうえ機関銃で射殺し

メキシコ兵の仕業だと見せかけたためそれを偶然男が目撃していた)
町に警察(軍隊)が調査に来ることになります

ミゲルは、(治安のいい町見せかけるため)敵対するバクスター

一時休戦を申し出て夕食に招くことにします

 

同じ夜、男とシルバニトは

(ラモンらに虐殺された)騎兵隊の死体を町外れの墓地まで運び

あたかも生きているように墓標に立てかけます

それから男はバクスターにラモンの悪行を明かし対立を煽ると

両家は銃撃戦となり、バクスターの息子アントニオがミゲル一家に拉致され

 

男がラモンが騎兵隊から奪った金を探していたところに

ラモンの愛人マリソルがやって来て、誤って殴り倒してしまいます

男はマリソルをバクスター家に運び、バクスター夫人から謝礼を貰います

マリソルとアントニオの人質交換が行われることになると

再びそこに現れた幼い少年とマリソルの夫

我慢しきれず息子を抱きしめてしまうマリソルでしたが

男は夫にマリソルから離れるよう注意します

その夜ミゲル家で宴会が行われ、男は浴びるように酒を飲むと

酔いつぶれたふりをして寝床を抜け出し

マリソルを夫と息子のところ連れ出し「国境を越えるよう」

バクスター夫人から受け取った金を渡すのでした

そこまでしてくれる理由は何かと訪ねられ

男は昔知っていた女性を思い出したとだけ答える

(「瞼の母」だろうか)

しかしマリソルを逃がしたことはすぐにバレ

男はラモン一味にリンチされ利き手を踏みつぶされてしまいます

隙を見て脱出したところを棺桶屋に助けられますが

ラモンはバクスターの屋敷に灯油をぶちまけ放火

降伏するバクスター一家を皆殺しにします

その様子を棺桶の中から見つめる男

棺桶屋は男を鍛冶屋の跡地?のような場所に匿い

男は傷の回復を待ち(利き手でないほうで)早撃ちの訓練と

板金に精を出します

棺桶屋からシルバニトがラモンに捕まったことを教えられた男は

拷問を受け吊るされているシルバニトを助けにいきます

そこでラモンにライフルで心臓に命中させてみろと挑発する

何度撃たれて倒れても立ち上がる男

ラモンが弾切れになったとき

男は板金で作った防弾チョッキを着ていたことを種明かし

ミゲル一家を全滅させると、町を去っていくのでした

 

大急ぎで大勢の死体の寸法を図る棺桶屋おじさん

だけどどっちの親分も死んでしまって、棺桶代は誰が払うの?(笑)

延々と長ったらしいエンドクレジットや

ラストに余計な「おまけ」がないのも、余韻に浸れてよかったです

 

 

【解説】映画.COMより

イタリアのセルジオ・レオーネ監督が、黒澤明監督の傑作時代劇「用心棒」を西部劇としてリメイクした名作アクション。イタリアのみならず世界中で大ヒットを記録し、イタリア製西部劇“マカロニ・ウエスタン”のジャンルを確立した一作として知られる。
メキシコ国境に近いアメリカの小さな町に現れた流れ者のガンマン。ジョーと名乗るその男は、この町では悪徳保安官バクスターと悪党ロホ兄弟の2大勢力が対立していることを知り、彼らを争わせて共倒れさせようと画策する。
当時アメリカの西部劇テレビドラマ「ローハイド」で人気を集めていたクリント・イーストウッドが主人公のガンマンをクールな魅力で演じ、彼の名が世界的に知れ渡るきっかけとなった。エンニオ・モリコーネが音楽を担当。同じくレオーネ監督と主演のイーストウッド、音楽のモリコーネがタッグを組んだ「夕陽のガンマン」「続・夕陽のガンマン 地獄の決斗」とあわせて「ドル3部作」と呼ばれる。

1964年製作/99分/イタリア・スペイン・西ドイツ合作
原題:Il magnifico straniero
配給:アーク・フィルムズ