荒野のストレンジャー(1972)




イーストウッド監督の作品は
説明を省略した引き算の脚本で
それがまた魅力だと私は思います。

しかしここまで突き放すとは!(笑)

ある金鉱で潤う町にやってきた流れ者。
いきなりからんできたゴロツキ3人を撃つ。
ちょっかいを出してきた女を納屋で襲う。

しかし町の住人は出所してくる悪党から町を守るため
この流れ者に用心棒になってくれと頼みます。
そのかわり欲しいものは何でも無償で提供するというというのです。

展開としては用心棒もの、そのものの流れではありますが
ホテルの女主人との関係は?
なぜ町を赤く塗ったのか
悪党をもてなすような野外パーティの準備をしたのか?

主人公の行動を意味することは
一切語られることはありません。

ただこの町ではかって
金鉱が国有地にあることを知った保安官が
国にそれを報告しようとして殺された事件がありました。

殺したのは3人組。
そしてその3人を雇ったのは町の住民だったのです。

元ネタはシェイクスピアの「マクベス」のようです。
殺された王が亡霊となって地獄から現れ復讐する・・

カメラはさすがのブルース・サーティス。
やはり唸りますね。
赤く塗られた町が炎に包まれ、そこに立つ
イーストウッドの姿なんてもう完璧なフィルムアート。
サーティスほどイーストウッド
カッコよく撮れる者は他にいないでしょう。
だけど、たった6週間で撮影したというだけあって
セットはさすがにチャッチかったですねえ。
燃やしてしまうものだったから、別にいいのですけれど(笑)



【解説】allcinemaより
 イーストウッド監督の第2作目にあたる、自らが主演した異色のミステリアス西部劇。陽炎の中から馬に跨がり現れた謎の男。彼は大きな湖の近くにある小さな町ラーゴにつくなり、いいがかりを付けた男どもを目にも留まらぬ早業で撃ち殺しその町に居着くのだった。その頃、以前逮捕した無法者たちが刑期を終え、ラーゴに仕返しにくる事を知っていた町の保安官は、その男の腕前を見込んで用心棒を頼む。その役を引き受けた男は町の男どもに射撃訓練をさせるが、町中を赤いペンキで塗らせたり、野外パーティの準備をさせたりと奇妙な行動も取って行く。そしていよいよ無法者たちが町になだれ込んでくるのだが……。謎の男の正体が次第に判って行き、実は……と言うオチが用意されたなかなか渋い趣向ではあるが、惜しいかなB級ウェスタンにとどまってしまった作品である。尚、その後に本作をアレンジ・リメイクしたような「ペイルライダー」を製作する辺り、イーストウッドはこのストーリーがかなりお気に入りと見える。その時も主人公が乗る馬はあばた模様の白い馬だった。