死の追跡(1973)

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原題は「The Deadly Trackers」”Trackers”とは追跡者のこと

70年代なニューシネマ・テイスト西部劇

ストーリーそのものは、妻子を無法者に殺された保安官が

復讐するという単純なものですが

バイオレンスでハードな展開、バッドエンドは見ていて苦しい

 

正義とは何か、暴力へ問題と銃社会というアメリカの原点を描き出し

理想と現実と倫理観の間で揺れ動く保安官たちのロードムービー

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リチャード・ハリスは銃を持たないことで有名な名保安官

法と秩序と非暴力で町の人々を守り、事件を解決してきました

その平和な町に、突然ロッド・テイラーをリーダーとする

悪党4人組が乗り込んできて銀行を襲いました

保安官と町の男たちは、すぐに4人組を追い詰めますが

悪党たちは小学校に逃げ込み、保安官の息子を人質にします

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息子を助けようとした母親は撃ち殺され

男の子は馬から落とされ、馬の蹄によって踏みつぶされます

そうして悪党たちはメキシコへと逃げて行ったのです

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リチャード・ハリスに西部劇のイメージはあまりないのですが(笑)

紳士的な保安官という役どころは似合ってる

その彼が目の前で妻子を殺されたことによって逆上し

我を忘れて復讐の鬼になる

人間としてあたりまえの感情だけど、その変化が本作の見どころ

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国境を越えてまで犯人を追う権限がないことを承知のうえメキシコ入り

そこで同じく4人組を追うメキシコ人保安官、アル・レッティエリと出会います

アル・レッティエリは妻子を殺される前のハリスと同じような法の番人

一味を逮捕し公平な裁判にかけるべきだと主張します

しかしハリスは悪党に法律など通用しないと主張します

アル・レッティエリを殴り倒し、4人組を探し出しますが

ロッド・テイラーの巧妙な罠に落ち、リンチにあったり

顔前で銃弾が爆発し(一時的な)失明状態に陥ったりします

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アル・レッティエリがいい(笑)

私怨と公務がごちゃ混ぜになったハリスと反目しながらも

彼を助け、男同志の友情が芽ばえていきます

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やたらチープな静止画像が多いのが問題ですが(笑)

悪党一味の内紛が絡んだり、ひとりひとりの人物造形がしっかりしていて

ドラマチックな描写が飽きさせません

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ハリスは悪党を追い詰め、ひとり、またひとり殺していき

ロッド・テイラーの情婦マリアの助けを借りてテイラーを尼僧院に追いつめ

テイラーのひとり娘を人質にとり、首を締めあげ銃を突きつけます

やられたらやり返す「倍返し」(笑)

もうどちらが悪党か分からない

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テイラーは逮捕され、ハリスはアル・レッティエリとの約束を守り

裁判のためテイラーを町に連れ帰ることにしました

しかし町に着くとテイラーの犯罪を証明する証拠がないことに気付きます

それを知って笑いころげるテイラーを、ハリスは撃ち殺してしまう

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それは追う保安官から、追われる犯罪者になってしまったということ

制止を聞かず去っていくハリスの背中に、アル・レッティエリの銃が火を噴きます

 

でもハリスの魂は妻子と一緒に、すでに死んでいたのです

復讐心だけが彼を生かしていた、それだけのこと

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2枚目スターだったロッド・テイラーが弁護の余地もない悪役で

逆に悪役が多いアル・レッティエリが個性的でいい味を出しているという

マニアにはたまらない1作ですし(笑)

 

もう少しお金をかけて丁寧に作っていれば

結構な傑作になったような気がします

 

 

【解説】KINENOTEより

無法者の一団に愛する妻子を殺され、復讐の鬼と化した名保安官の戦いを描く。製作総指揮はエドワード・ローゼン、製作はフォアド・セイド、監督は「110番街交差点」のバリー・シアー、原作はサミュエル・フラーの「リアタ」、脚本はルーカス・ヘラー、撮影はガブリエル・トーレス、音楽はフレッド・スタイナー、編集はマイケル・エコノモーが各々担当。出演はリチャード・ハリス、ロッド・テイラー、アル・レッティエリ、ネヴィル・ブランド、ウィリアム・スミス、ポール・ベンジャミン、ペドロ・アルメンダリス・ジュニア、イゼラ・ベガ、ケリー・ジーン・ピータースなど。