無頼の群(ぶらいのむれ)(1958)

f:id:burizitto:20210718125115j:plain

マカロニ・ウエスタンやアメリカン・ニューシネマの先駆けのような作品で

復讐の鬼の主人公も、グレゴリー・ペックより

いかにもクリント・イーストウッド演りそうな役柄


原作があるということなので

たぶん「罪人を赦す」という宗教的な教えと

怒りや憎しみといった実際の人間の感情の

アンバランスがテーマなのだろう、とは思うんですが

f:id:burizitto:20210718125159j:plain
女性がレイプされたり、真犯人が別人だったという

決してスカッとしない結末を

無理やりハッピーエンドにするのは、やはり違和感がありますし

主人公の気持ちの変化も突然で、伝わらない

(この頃のペックはまだ大根役者と呼ばれている)

f:id:burizitto:20210718125218j:plain
それでもオープニングの音楽からワクワクするし

ブレイク前のスティーヴン・ボイドや、往年の名わき役が揃っているので

エスタン・ファンやオールド・ファンには見る楽しみあり

カメラはレオン・シャムロイ

f:id:burizitto:20210718125132j:plain
アメリカ南西部にあるリオ・アリバという村に

ジム・ダグラス(グレゴリー・ペック)と名乗る男がやって来きます

ジムの目的は、銀行強盗の罪で死刑判決を受けた4人組の

絞首刑を見届けることでした


村の人々はジムを怪しみますが

かっての恋人だったジョセファ(ジョーン・コリンズ)は

5年ぶりにジムと再会したことを喜び乾杯します

だけどジムが結婚したと知り、ちょっとがっかり

しかも妻は死んだと聞き、微妙な気分になってしまいます

f:id:burizitto:20210718125246p:plain
その夜ジョセファはジムを教会のミサに誘います

(神父がジムのことを知ってるのは謎のまま)

その間に4人組は村の雑貨屋の娘、エマを人質をとって逃亡してしまう

 

エマの父親に恋人、村の男たちは躍起になって4人組を追おうとしますが

ジムだけはひと眠りして朝になってから追跡するという

そんなジムにジョセファはがっかりするのですが

f:id:burizitto:20210718125336j:plain

誰よりも4人を許さず、裁きを与えると誓っていたのはジムでした

まずは混血のパラル(リー・ヴァン・クリーフ)を捕まえ

土下座して謝る彼を殴り殺します

次にテイラー(アルバート・サルミ)を馬で引きずり木に吊るす

(片足を捉えたのに、逆さづりにされた時にはなぜか両足 笑)


その間(ジムの牧場の隣にある小屋に住む)バトラーが

主犯格のザカリー(スティーヴン・ボイド)に殺されてしまいます

ザカリ―はエマを襲い

その隙にメキシコ人のカルロ(ヘンリー・シルヴァ)は

バトラーが持っていた砂金を盗みます

f:id:burizitto:20210718125406j:plain

ジムや村人たちが小屋に到着した時

すでにふたりの姿はありませんでした

(エマの姿は映し出されない)

ジョセファは犯人を殺してとジムに懇願します

 

ジムは粘り強く追跡を続け、ザカリ―を射殺

国境を越え(保安官たちは法によって越えられない)

カルロの家を見つけます

が、カルロの妻に壺を叩きつけられ気絶(笑)

f:id:burizitto:20210718125346j:plain

気が付いたジムは、なぜ自分たちを追うのかと

逆にカルロに質問されます

ジムは自ら制裁を加えた3人同様、妻と娘が写った写真を出します

半年前自分が留守の間、家にやって来た白人2人と混血と先住民の4人組に

妻は強姦され殺された

その砂袋の砂金は我が家のものだ、と答えます

f:id:burizitto:20210718125300j:plain

カルロは牧場の前を通ったのは確かだが、アンタの女房のことは知らない

砂金は小屋の住人のバトラーが離さず握っていたものを

盗んだものだと言います

(いい人そうだけど、銀行強盗の仲間で死刑囚なのは忘れちゃイカンよ)

f:id:burizitto:20210718125145j:plain

妻が殺されたとき、4人組を見たと教えたのはバトラーだった

それからというもの、復讐のためだけに4人組を追いかけてきた

なのにまさか、親切でお人好しだと信じていた男が

砂金目的のために妻を殺していたなんて

f:id:burizitto:20210718125709j:plain
すっかり自失したジムは、ひとり村の教会に向かい

神父に罪を懺悔します

自分が殺した3人にも、妻子や母親がいたのに・・

 

しかし村人たちにとっては、彼らは殺されて当然の鬼畜

ジョセファはジムの娘を着飾らせ、ジムと結婚する気満々(笑)

村人たちはジムを英雄として拍手と喝さいで迎えます

f:id:burizitto:20210718125414j:plain
ジムは戸惑いながら、その事実を受け入れるのでした

娘のため、刑務所に入るわけにはいかない

これからも生きていくしかないのです

 

ヘンリー・キングとしては、中くらいの出来ですが

新しい西部劇スタイルの境界線になった作品には間違いないでしょう

 


【解説】KINENOTEより

「陽はまた昇る」「拳銃王」のヘンリー・キング監督が、「バラの肌着」のグレゴリー・ペックを主演に、復讐に燃えて4人の仇をつけねらう男を主人公にして作った西部劇。フランク・オルークの小説をシナリオ化したのはフィリップ・ヨーダン。撮影監督は「女はそれを我慢できない」のレオン・シャムロイが担当、メキシコのモレリア付近およびインフェルト山脈一帯のロケを行なっている。音楽はライオネル・ニューマン。出演者は、ペックの他に「気まぐれバス」のジョーン・コリンズ、「月夜の宝石」のスティーブン・ボイド、「カラマーゾフの兄弟」のアルバート・サルミ、「夜を逃れて」「ゴーストタウンの決斗」のヘンリー・シルヴァ、テレビ出身の新人キャスリーン・ギャラント、「青春物語」のバリー・コー、「若き獅子たち」のリー・ヴァン・クリーフ等。製作はハーバート・B・スウォープ・ジュニア。