原題は「12 O'clock High」(12時高=白昼)
邦題を見ると、「眼下の敵」の向こうを張った作品のようですが(笑)
制作は「眼下の敵」の7年前の終戦4年後
ドイツ本土にある軍需工場を破壊するため
白昼爆撃に向かう空軍隊の物語ですが
ドイツ兵はひとりも登場せず、空戦シーンも極めて少ない
戦争映画というより命令は絶対という軍隊での
上司と部下たちの葛藤を描いたヒューマンドラマ
空戦シーンはドイツ軍とアメリカ軍が撮影した
アメリカ空軍が保管する実写フィルムをつなぎあわせて編集したもの
正直、映像やつなぎ目はかなり粗く、現代の技術でリマスターすれば
迫力のあるスゴイものになるような気がしますが
このハリボテ感が時代を感じて、いいといえばいいのかも(笑)
戦争が終わって4年、弁護士のハーヴィが骨董店でビアジョッキを見つける冒頭
店主はなぜこんなボロのジョッキに金を払うのか不思議がりますが
ハーヴィは戦争中イギリスにあったアメリカ空軍第918隊の飛行基地でおきた
B17機(本物!)の胴体着陸と救助されたパイロットのことを思い出していました
このハーヴィを演じたディーン・ジャガーが、枯れ専門の私の超ドストライク(笑)
最初から最後までいい(アカデミー助演賞獲得も納得)
918隊の隊員たちはドイツ軍から対空砲火による集中攻撃を受け
4分の1の未帰還機を出してしまい士気を失っていました
隊長のダヴェンポート大佐は、これを不運だと表沙汰にしようとせず
疲れ切った隊員たちに休養を与えようとしていました
しかしサベッジ准将(グレゴリー・ペック)は攻撃の失敗の問題は
温情家のダ佐にあると将軍に説明し
ダ大佐を解任し自ら918隊を鍛えなおすことにしました
IDの確認もせず准将の車をそのまま通す門衛のMP
基地外で飲酒している中佐
Tシャツで口笛を吹きながら職務する軍曹
ユルユルの918隊に、厳しい体制と過酷な演習を命じます
これも白昼爆撃を成功させるため
隊員たちもわかってくれるだろうと強気にでるわけですが
全隊員から転任届を提出されてしまうのです
唯一の味方と思えるのは書類係のハーヴィ少佐だけ
彼の主な仕事は戦死者の遺族に手紙を添えて遺品を送ること
彼はサ准将に「私は弁護士です良い弁護士は依頼人を信じます」と
隊員たちを鍛え上げ、敵地攻撃ができるようになる日まで
転任届を留めてくれることを約束してくれたのです
隊員たちからの反感と相反して、訓練によって戦果は改善
成功体験は隊員たちにやる気をおこさせ、挙句の果てには地上勤務の軍曹や
ハーヴィまで無断で飛行機に搭乗し爆撃に向かう始末(笑)
やがてサ准将もダ大佐と同じよう、隊員たちに情が移り
勇姿を称え、行き過ぎた行為を見逃してしまうようになります
もちろんいくら部下を信じたとしても、成功ばかりでない
空に散っていく者、たとえ帰還しても怪我を負ってしまった者
任務を成功させなければならないという重圧と
部下の命を守りたいという責任感
度重なる出撃による過労
ついにサ准将は精神が崩壊し、倒れてしまいます
冷酷な鬼だと思っていたサ准将が、実は自分たちを鍛え上げるために
無理をしていた姿だったと悟った隊員たちは、ますますドイツ軍打倒に燃え
ついに空戦に勝利し軍需工場破壊に成功するのです
主要登場人物には実在するモデルがいて
細部まで入念なリサーチを行い、それぞれの人物の人柄や
実体験によるエピソードを集めてストーリーを構成したそうです
組織論としては現在の職場にも通じるものがありますが
昔の上司は厳しいけれど、イマドキの政治家や管理職と違って(笑)
自分のした命令の責任は、自分でとる覚悟があることは偉いと思います
押井守監督著「仕事に必要なことはすべて映画で学べる」でも
紹介されている名作(笑)
ただ私たちは、たとえ上空から見えなくても
爆撃で死んだ何十万人もの民間人がいたことを
決して忘れてはいけません
【解説】KINENOTEより
「蛇の穴」と同じく、二十世紀フォックスの副社長ダリル・F・ザナックが自ら製作に当たった1950年度作品で、最近相ついで作られた第二次大戦を背景とした戦争映画の1つである。監督は「海の征服者」のヘンリー・キングで、第二次大戦に参加したバーン・レイ・ジュニアと、サイ・バートレット(「アラスカ珍道中」)の2人が自作の小説より脚本を書いたもの。撮影は「狐の王子」のレオン・シャムロイ、音楽は「私も貴方も」のアルフレッド・ニューマンの担当。主演は「仔鹿物語」のグレゴリー・ペックで「パーキントン夫人」のヒュー・マーロウ、この映画でアカデミー助演賞をうけた「西部魂(1941)」のディーン・ジャガー、舞台出身のゲイリー・メリル、「私も貴方も」のミラード・ミッチェル、「ワイオミングの緑草」のロバート・アーサー、その他が共演している。