原題も「Battleground」(戦場、激戦区)
これは埋もれた傑作でした
第二次大戦末期の1944年、ベルギーのバストーニュ
ホリー(ヴァン・ジョンソン)が所属する、バストーニュのサンドバッグ野郎
(the battered bastards of Bastogne)と呼ばれるアメリカ101空挺師団に
ドイツ軍に勝つことに憧れてきた新兵(マーシャル・トンプソン)が
前線と現実と、戦場の残酷を知り成長していく、というのが主なストーリー
同じ「バルジの戦い」を描いた「バルジ大作戦」(1965)が
上層部の視点から米独両軍の作戦を分析し
機甲部隊(戦車隊)を中心に描いているのに対し
こちらは歩兵小隊の局地的な戦いにおける
兵士ひとりひとりの会話や、表情の変化を丹念に映し出します
移動しろと命令されれば移動、穴を掘れと言われれば穴掘り
寝床もない、揺れるトラック、噛みタバコ、入れ歯
チョコ欲しがる子どもたち
民間人女性の家に招き入れられても、セックスする体力がない(笑)
また移動、また穴掘り
ヒーローらしさナッシング(笑)
ベルギーの子ども達もアメリカ兵を見ると
「ギブミー・チョコレート」って言うんですね
素直に子どもたちを可愛いと思う兵士たちの心情が伺えるし
まだ気持ちに余裕があることが伝わります
しかし冬のベルギーの濃霧は厳しく、救援物資が届かない
ブーツ、濡れた靴下、大切な鶏卵、とき卵のヘルメット、雪ではしゃぐ
アイテムの使い方や、過酷な状況とユーモアのバランスがうまい
そしてまた移動、また穴掘り
穴の中で仮眠
偵察では敵か味方かわからず、合言葉で確認し合うものの
米兵を装い英語を話す(知略)ドイツ軍に騙されることもあります
合言葉だけでは信用できないと「ベティ・グレイブルの夫は誰か」とか
「テキサス・リーガーズ・ヒットはなにか」(大リーグ用語でぼてんヒットのこと)
と本物のアメリカ人将校に質問しまくる失態
「百万長者と結婚する方法」(1953)のベティ・グレイブルは
その脚線美と可愛いお尻で、当時のアメリカ兵の恋人
ナンバーワン、ピンナップ・ガールだったんですね
アメリカ軍の一方的な視点で描かれているものの
監督は第一次世界大戦で戦った経験のあるウィリアム・A・ウェルマン
戦場での兵士たちの状況がとてもリアルに感じらます
霧と雪で閉じ込められた、異国での行き先の見えない戦況
死んでいく仲間たち、凍傷の痛み
従軍牧師と祈る兵士たち
牧師が「この戦争は必要だったか?」と自ら問い答えるシーンは
小さな感動を呼びます
やっとバストーニュの空に霧の晴れ間が見えた時
空輸による救援物資のパラシュート投下
これには圧倒的な国力と戦争資金の差を見せつけられます
なぜ日本軍は終戦ギリギリまでアメリカに勝てると思っていたのだろう
ドイツ軍が最後の力をふりしぼったルントシュテット攻勢は失敗に終わり
101空挺師団は忘れられないクリスマスを迎えることができました
反戦を訴えるテーマはひとつもなく(笑)
清々しい気持ちで迎えるラスト
個性的な兵士たちが魅力で、地味なのに飽きさせない展開
エンディングではそれぞれの兵士と演じた俳優が紹介されます
が、私が知っていたのは「ショーシャンクの空に」(1995)の
おじいちゃん囚人を演じたジェームズ・ホイットモアと
「スター・トレック」のカーン役のリカルド・モンタルバンくらいでした(笑)
【解説】KINENOTEより
MGMの製作部長となったドーリー・シャーリーが自ら製作に当り「鉄のカーテン」のウィリアム・A・ウェルマンが監督した1949年度作品。共同製作者のロバート・ピロッシュが脚本を書き撮影はポール・C・ヴォーゲル、音楽はレニー・ヘイトンと新進気鋭のスタッフを揃えているほか、出演者も「ママは大学一年生」のヴァン・ジョンソン、「帰郷(1948)」のジョン・ホディアク、「芸人ホテル」のジョージ・マーフィー以下、リカルド・モンタルバン、マーシャル・トンプソン、ジェローム・コートランド、ドン・テイラー、デニーズ・ダーセル等の新人が起用されている。