レヴェナント:蘇えりし者(2015)

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「息が続く限り闘い続けろ」


原題も「THE REVENANT 」(幽鬼)

フランス語の「revenir」(戻る)から派生した英語で

長い間留守にしていた者が帰ってきた時や

死んだと思った人が息を吹き返した時に使う言葉

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「荒野に生きる」(1971)と同じ

1823年に実際にあった「アリカラ事件」 がモチーフ

主人公のヒュー・グラスはもちろん

宿敵のフィッツジェラルド(本名はフィッツパトリック)も

若きブリッジャーも、隊長のアンドリュー・ヘンリー

アメリカ開拓時代に実在した人物で

アメリカでは銅像が立っているほど有名人ということ

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ストーリーはほとんどなく(笑)

雪山で熊に襲われ瀕死の重傷を負った(毛皮ハンター会社の)罠猟師が

息子を殺され裏切った仲間に復讐するというもの

そこに人種差別や、先住民同士の部族間の争い

極寒の自然の中での人間の欲、憎しみ、哀しみ、人情が

ストレートに映し出されていきます

カメラはエマニュエル・ルベツキ

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ヒュー・グラス(レオナルド・ディカプリオ)は

彼の息子でポーニー族の妻との間に生まれたホークを連れ

ヘンリー隊長率いる毛皮ハンター隊のガイドをしていました


その毛皮を狙うアリカラ族の攻撃をかわすため

船を捨て山道を進もうと提案するグラスに

漁師のフィッツジェラルドトム・ハーディ)は異議を唱えますが

ヘンリー隊長はガイドのグラスの意見に従います

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しかしグラスがグリズリーに襲われてしまい(遠くに小熊がいる演出が巧い)

隊長は重傷のグラス看取る係として、ホークと親しいブリッジャーと

フィッツジェラルドを多額の追加料金で雇います


アリカラ族の首長は、奪った毛皮で馬を交換し

誘拐された娘をフランス人から贖(あがな)うため

白人を追っていました

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アリカラ族(白人の頭の皮を剥ぐ)は怖いし

グラスはしぶとくてなかなか死なない

フィッツジェラルドは「楽にしてやるから瞬きで合図しろ」と言い

グラスは必死に瞬きを堪えたものの、ついに目を瞑ってしまう

そこに息子のホークが帰ってきて、ブリッジャーに「助けて」と叫ぶと

フィッツジェラルドはホークを刺し殺して隠してしまうのです

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しかもブリッジャーにはアリカラ族が来たと嘘をつき

ふたりはグラスを置いて去ってしまうのです


ここからのグラスの生命力が凄い(笑)

喉の傷に火薬を詰めて爆発させて治し

動物の死骸に残った肉や、魚や、草を食べ

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親切なモーニー族の男に助けてもらうものの

彼はフランス人に殺されて吊るされてしまう

そのフランス人から馬を盗もうとしたグラスは

慰み者にされていたアリカラ族の娘を助けます

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が、アリカラ族に追われてしまい崖から転落

死んだ馬の内臓を取り出し腹の中に入って寒さをしのぐ


まさか本物の馬の屍ではないでしょうが

あの環境で一瞬でも裸になったり、川の中に入るだけでも命がけ

手袋がないだけでも凍傷になりますから(笑)

レオだけでなく、主演者もスタッフも全員死ぬ思いだったでしょう

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実際ロケ現場は相当揉めて、途中で降りるスタッフは続出するわ

製作期間はどんどん延びるわ、製作費は40億円以上オーバーするわ

スタントなしで挑んだレオは生の肝臓は食べるわ(笑)

すべてにおいて苛酷だったそうです

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どうにか生きて基地に戻ったグラスは

隊長と共に逃げたフィッツジェラルドを追うことにします

グラスを動かしているのは息子を殺した

フィッツジェラルドへの憎しみだけでした

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レオの迫真のサバイバル演技もさるものながら

それにもましてトム・ハーディのクソっぷりが秀逸で

自分以外は誰も信用していない緊迫感が実にリアル

 

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復讐の先に何があるのか

この先主人公がどうなるのかは、劇中では描かれていません

(いつものイニャリトゥ 笑)

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史実では、グラスはまだ若いブリッジャーは許し

陸軍に入隊したフィッツジェラルドへの復讐は断念

(陸軍兵士を殺すと処刑罪になるため)

10年後の1833年冬、イエローストーン川近くでアリカラ族に遭遇し

落命したそうです

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とにかく今の時代にこんな過酷な撮影をしたスタッフ一同を

ねぎらいたくなる作品(笑)

大きな賞をいくつも取れたことがせめてもの救いでしょう




【解説】allcinema より

「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」のアレハンドロ・G・イニャリトゥ監督がレオナルド・ディカプリオを主演に迎え、過酷な大自然の中で繰り広げられるひとりの男の壮絶な復讐劇を壮大なスケールで描いたサバイバル・アクション・アドベンチャー。共演はトム・ハーディ。第88アカデミー賞では監督賞、撮影賞に加え、極寒の大自然を相手に体当たりの熱演を披露したレオナルド・ディカプリオが、みごと悲願の主演男優賞を初受賞した。
 1823年、アメリカ北西部。狩猟の旅を続けている一団が未開の大地を進んでいく。ヘンリー隊長をリーダーとするその集団には、ガイド役を務めるベテラン・ハンターのヒュー・グラスとその息子ホーク、グラスを慕う若者ジム・ブリジャーや反対にグラスに敵意を抱く荒くれハンターのジョン・フィッツジェラルドなどが一緒に旅をしていた。ある時、一行は先住民の襲撃を受け、多くの犠牲者を出す事態に。混乱の中、グラスたち生き残った者たちは船を捨て陸路で逃走することに。そんな中、グラスがハイイログマに襲われ、瀕死の重傷を負ってしまう。ヘンリー隊長は旅の負担になるとグラスを諦め、ブリジャーとフィッツジェラルドに彼の最期を看取り丁重に埋葬するよう命じるのだったが…。