少年たちの時代革命(2022)

原題は「少年」

英語は「May You Stay Forever Young 」(永遠に若くいれますように)

ボブ・ディランの「Forever Young」の歌詞からの引用)

 

2019年、逃亡犯条例改正反対運動で逮捕され、釈放されたものの

自分の無気力さに絶望した女子高生(アカウント名)YYは

SNSに自殺を仄めかす投稿をし

それを見た活動家の少年少女やソーシャルワーカーらが

彼女を救うため香港の街を奔走する、というもの

映像はドキュメンタリーとドラマ部分のつなげ方がうまく

まるで本物のデモを見ているようですが

映画としては、正直面白いとはいえませんでした(笑)

ただ作り手の、評価されなくても

たとえ結果がでなくても「あきらめない」という

エネルギーは感じることができます

香港の「逃亡犯条例改正案」とは

中国本土への容疑者引き渡しを可能にする、というもの

香港市民は(中国本土の司法制度の不透明さから

政治的な意図で民主化運動に関わる活動家や思想

学生たちの身柄が強制的に引き渡される危険性があるとして反発

改正案撤回を訴えるための激しい抗議活動が行われ

2019年6月9日 に行われた大規模デモ行進は

世界中の注目を浴びることになりました

さらに6月12日、活動家の梁凌杰(マルコ・リョン・リンキット)が

「林鄭殺港 黑警冷血」(林鄭(当時の行政長官 )が香港を殺す、黒警察は冷血)

と背中に書かれた黄色のレインコートを着て飛び降り自殺したのを皮切りに

抗議の自殺をする若者が相次ぎ

デモ参加者たちは自殺を図ろうとする人をSNSで探し出し

救助するためのボランティアチームを結成します

だからといって、香港の人々も中国政府の方針に

反対な人ばかりではないんですね

大人たちは、真面目に働いてお金を稼ぎ家族を養うことが一番大切

権利だの自由だのと戦う暇があったら

勉強していい大学に入るなり、仕事をしろと

デモしたからと役に立つんだ?と思っているのです

いかにも利益や効率のほうを優先する(ように見える)中国人らしい

いくら政府のやりかたに反発しても、親には逆らえない子どもたち

物語は2019年7月21日

抗議活動に初めて参加した女子高生で(平和的抗議活動=穏健派の)親友のYYとHoは

デモ参加者のひとりが倒れ、警察に暴行を受けているの目撃します

Hoはすぐ帰ろうと引き止めますが、YYがその青年を助けようとしたせいで

ふたりとも逮捕されてしまいます

HoはYYを非難し(親の勧めで)卒業後は海外留学すると告げます

ホーの態度の変化に孤独と絶望を感じるYY

7月28日

YYは遺書を書き、デモの時助けようとした青年ナムに電話して別れを告げます

YYが死をもって抗議しようとしていることに気付いたナムは

ガールフレンドのベル、ドライバーのファイとゾーイ兄妹

支援者のルイスやバーニズムたちとYYを探すことにし

そこにSNSでメッセージを見たソーシャルワーカーのバウが加わります

街の人々にYYの画像を見せ情報を求めるナムたち

バオは偶然にも飲料店でバイトしているHoに会い

YYと同じ学校であることを教えられますが

Hoがそれ以上話すことはありませんでした

彼女に名刺を渡すバオ

やがて多くの抗議活動参加者たちがYYを探すことに協力

YYの家に配達をしたことがあるという宅配業者から

彼女が公営住宅団地に住んでいることがわかり

さらにHoからの電話で正確な住所がわかります

もしかしたらすでにYYは死んでいるかも知れない

ドアをこじ開け中に入ると、YYはいませんでしたが

父親に宛てた遺書見つかりました

それはんで抗議活動の重要性を証明したいというものでした

その時、YYがクレーンゲームで獲った人形との自撮り写真を

SNSに投稿したのをバーニズムが見つけます

一行はすぐさまゲームセンター向かいますが

従業員から1時間前に帰ったことを知らされます

彼らの行動を不審に思った覆面警察官が尾行を始め

チャターロードでの抗議活動の集会に向かうべきだというルイと

YYを探すのが優先だというナムの間で喧嘩が始まり

覆面警察官は彼らを捕らえると路地に連れ込み尋問をはじめます

警察官のひとりが(ホットパンツ姿の)ゾーイにセクハラ行為をし

抗議した兄のファイは強く殴られ頭から血を流し倒れ

そこに(父親が警察官のため逃げた)バーニズムが戻って来て

警察官にゴム弾を直撃

その隙にナム、ベル、ルイは逃走しますが

ゾーイとバオは逮捕されてしまいます

 

ルイはナムのせいで、ファイとゾーイとバオが捕まったのだと非難し

バーニズム連れてチャターロードの集会に行ってしまいます

ナムはベルに7月21日のデモで倒れたとき、警察に暴行を受けている

自分を助けようとしたせいでYYが逮捕されたことを打ち明けます

ナムはYYを自殺に追いやったのは自分の責任だと感じていたのです

 

(イギリスの大学への進学が決まってる)ベルは

香港に残ってナムとずっと一緒にいることを誓い、彼を励まします

YYへの嫉妬なのか、それともナムへの愛の証明なのか

(大人の私にはわからない 笑)

そこにYY自撮りした画像に写っていた人形が落ちてきます

急いで建物の階段を駆け上がり屋上に向かう

ふたりがYYを見つけたとき、そこにHo到着し

3人はYYに自殺しないよう説得します

死んでも香港は変わらない、と

だけど飛び降りてしまうYY

ナムが駆け寄り彼女の腕を掴むと、ベルとHoもそれに続きます

YYが助かったのか、死んだかはわかりません

でもこの映画のテーマはそこじゃない

その差し出した手決して離してはいけないということ

彼らのような若者たちがいたことを忘れてはいけない、ということなのです

 

一連の大規模な抗議活動を受けて香港政府は201910月に正式に法案を撤回

しかし20206月、中国政府により「香港国家安全維持法」が施行

2024年3月には「国家安全条例」が施行され、さらに統制が強化

民主化や自由な政治活動が抑え込まれる状況が続いているそうです

 

 

【解説】映画.COMより

2019年の香港民主化デモを背景に、自殺しようとする少女を救うため民間捜索隊を結成した若者たちが奔走する姿を疾走感たっぷりに描いた青春群像劇。
17歳の少女YYは親友ジーユーとデモに参加して逮捕される。ジーユーは香港を去ることを決め、孤独と絶望を抱えたYYはSNSにメッセージを残して香港の街へ消える。そのメッセージを見た少年ナムは恋人ベルやデモ仲間ルイスらと捜索隊を結成。時にぶつかり合いながらも、それぞれの思いを胸にYYを救うべく街を駆け巡るが……。
キャストには演技経験のない新人を多く起用。本作が初長編となるレックス・レン監督とラム・サム監督がメガホンをとり、コロナ禍のデモ現場でゲリラ撮影を敢行するなど、いまの香港を生きる若者たちをリアルに映し出した。

2021年製作/86分/香港
原題または英題:少年 May You Stay Forever Young
配給:Cinema Drifters、大福