
原題は「Scanners」(走査)
ここでは相手の神経系統をスキャンし
破壊することができる超能力(念動力)者のこと

言わずと知れたデヴィッド・クローネンバーグの出世作
見どころでもある血管が破裂、頭部が破裂、眼球が破裂するという
ショッキングな映像は全てディック・スミスの特殊メイクによるもの
CGもない、予算もない、なのにこれだけのクオリティ

このあと公開された「ビデオローム」や「ザ・フライ」「裸のランチ」は
今見てもかなり前衛的ですが(笑)
こちらは意外とわかりやすい

どちらかといえばフランクリン・J・シャフナー の
「ブラジルから来た少年」的な
(人種改良・遺伝子操作などにより)いかに優れた人種を遺すかという
優生学(特定の人種の遺伝的な質を向上させるという信念と実践)と

もうひとつ思い出されるのが「サリドマイド薬害」事件
今でこそ妊婦や授乳期の薬やアルコールは制限が義務付けられていますが
当時は医薬品の安全性に対する評価(承認審査)が不十分で
万能薬と謳われたサリドマイドを妊婦が服用したことにより
主に手足の欠損や奇形をもった赤ちゃんが産まれたのです

本作では難病の妻を救うため新薬の「エフェメロル」を開発した
コンセック社のルース博士(パトリック・マクグーハン)
「エフェメロル」の副作用で長男のレボック(マイケル・アイアンサイド)は
スキャナー(超能力者)として産まれますが
自分の超能力を制御できず、自己破壊的な行動をとるようになります

やがて成長し、スキャンをコントロールできるようになったレボックは
コンセック社を買い取り「エフェメロル」を大量製造
妊婦に投与しスキャナーの国を作ろうと目論みます

スキャナーの破壊的威力を知るルース博士は
レボックの企みを阻止し、世界の秩序を守るため
冷凍保存していた次男ベイル(スティーヴン・ラック)を解放し
(冷凍中に成長したのかは不明 笑)
何も記憶がないベイルにレボックを倒すよう教育するのでした

そこでベイルは、普通の人と同じように生活し
ひっそりと暮らしている穏健派?スキャナーのサークルを知り
キム(ジェニファー・オニール)と知り合います
しかしサークルはレボックに襲われ
多数の死者が出たうえ解散に追い込まれます

ベイルは公衆電話でルース博士に内部に裏切り物がいるに違いないと
ルース博士は人間だけでなくコンピューターにも
(電話回線を通じて)スキャンできることを教えます
公衆電話に念じることでコンセック社のシステムの破壊に成功したものの
突如現れたレボックによって(瞬間移動? 笑)
キムとともにコンセック社に連れ去られます

同じ頃ルース博士は側近のケラーに研究所を乗っ取られ
射殺されてしまいます
ケラーこそ裏切者でレボックの手下だったのです
コンセック社でレボックから全ての真実を打ち明けられるベイル
しかしベイルはレボックの共に闘おうという提案を断り
壮絶なスキャンと人体破壊の対決がはじまります

ベイルの身体が弾け、レボック身体から火が吹く
最後はレボックの勝利と思われましたが
やって来たキムに、「僕たちは勝ったんだ」と語りかけるベイル
つまりふたりは融合し肉体はレボック、記憶はベイルが残ったということ
でも本当にそうなのかはわからない

もしかしたらレボックは両親から愛されなかったことで
単に同じ仲間が欲しかっただけなのかも知れません
でもこれから先、キムの愛を得られたとしたら
この物語はハッピーエンドといっていいのでしょう
【解説】映画.COMより
デビッド・クローネンバーグ監督が超能力者たちの戦いを描くSFスリラーで、のちにシリーズ化もされたヒット作。浮浪者のべイルは自分がスキャナーと呼ばれる超能力者であることを知らされる。その頃、もうひとりのスキャナー、レボックがコンセック社の会議場で人の頭蓋骨を破裂させるという事件が起こる。自らの能力を使って、世界征服をたくらむレボック。女性スキャナー、キムとともにレボックを追うベイルは、やがて自分とレボックにまつわる秘密を知ることに……。2013年、クローネンバーグ監督の新作「コズモポリス」(12)公開にあわせた特集上映「コンセプション オブ デヴィッド・クローネンバーグ 受胎」でリストア版が公開。
1981年製作/103分/カナダ
原題または英題:Scanners
配給:コムストック・グループ