「The Ballad of Buster Scruggs 」(バスター・スクラッグスのバラード)
全6話 1話約20分程度のオムニバス西部劇集
アメリカでしか作れないブラックユーモア映画
テーマは死にまつわる古いアンソロジー(詩文の美しいものを選び集めた本)
すべての章でなんの恨みもない者同士が、殺したり殺されたりされますが
それぞれの物語にはなんの関連性もございません(笑)
映画的に一番いい出来だなと思ったのは
5話目の「アーサーはビリー・ナップに合わせる顔がなかった」
20分でもこれだけのドラマを作れるのですね
コーエン兄弟が苦手で1話目で挫折しそうになっても(笑)
これは見てほしい
第1話「バスターのバラード」(The Ballad of Buster Scruggs)
放浪の旅を続ける陽気な白服の歌い人バスターはお尋ね者
ある町の酒場でポーカーに参加すると
難癖をつけられ、ならず者と銃撃戦なります
しかしバスターは類稀なる凄腕ガンマン、難なく相手をやっつけますが
決闘を挑んできた黒服の流れ者に撃たれ、あっさりと死んでしまいます
けれど天使になっても軽口をやめることはありませんでした
第2話「アルゴドネス付近」(Near Algodones)
荒野にぽつんと1件の銀行
これは簡単に大金が手に入るぞと
ならず者が窓口の銀行員に現金を要求すると
このおじいちゃん銀行員が思わぬ「ランボー」(笑)
強烈な反撃を喰らってしまい気絶してしまいます
目覚めると保安官たちに囲まれ、首に縄を掛け馬に乗せられていました
馬が草を食べようと前進するたび、いつ落馬して死んでもおかしくない
そこにコマンチ族が急襲してきて、保安官たちが殺されてしまいます
生き残ったならず者は通りがかりの家畜商人に助けてもらいますが
家畜商人は実は家畜泥棒で、罪をなすりつけられたならず者は
結局絞首刑になってしまうのです
老興行は、漫談家の四肢欠損の青年を
見世物にして稼いでいましたが、やがて飽きられ客はこなくなります
そこで巷で人気の計算ができるニワトリを買うことにします
青年は介護なしでは、ひとりで生きることはできない
鳥かごの中のニワトリを見て自分は不必要になったことを悟ります
だけどまさか殺されるとまでは思っていなかったはず
しかし青年は老興行によって川に投げ捨てられてしまうのです
ひとり金脈を求めて旅する老人
彼なりの論理で、地道な作業を繰り返しやっと金脈を発見しますが
それを横取りしようとするならず者が現われ、老人は撃たれて倒れてしまいます
が、それは死んだフリで(笑)
老人は金を奪おうとしたならず者を逆に撃ち殺すのでした
第5話「アーサーはビリー・ナップに合わせる顔がなかった」
(The Gal Who Got Rattled 早とちりの娘)
幌馬車隊で兄と新天地オレゴンへ旅をしている娘
旅の途中兄が病気で死に、娘はどうしたらいいか迷いますが
純粋で真面目な娘を見染めた隊長ビリー・ナップは
彼女にプロポーズします
娘も結婚する決意をしますが、突然行方不明になってしまいます
隊員が言うには飼っていた犬を追いかけて行ったということ
ビリー・ナップと共に隊を率いるアーサーが娘を探しに行くと
犬を見つけ抱えた彼女はプレーリードックの群れを見て笑っていました
そこにインディアンが襲撃
アーサーは自分に何かあったら自殺しろと娘に銃を渡します
もしインディアンに捕まったら嫁にされるか屈辱をうけるのだと
するとアーサーが死んだと早とちりしてしまった娘は
自らの額を撃ち抜いてしまうのです
第6話「遺骸」(The Mortal Remains 遺体、なきがら)
フォートモーガン(コロラド)に向かう乗合馬車の5人の乗客
別居中で大学講師をしている夫に会いに行くという老婦人
言葉の通じない先住民の女と暮らしていたという毛皮猟師
アイルランド人と英国人は(懸賞金のかかった)死体を運ぶビジネスパートナー
フランス人の職業はわからなかったけど(笑)
彼らは人間が1種類か2種類かの議論になり
老婦人が興奮しすぎて発作を起こしてしまいます
御者に助けを求めたものの、御者は拒否
やがて老婦人の容体は安定、不穏なムードの中馬車はホテルに着きます
アイルランド人と英国人が荷台の死体を部屋に運んでいきました
老婦人、猟師、フランス人は恐る恐るホテルに入ります
静かに去っていく馬車
老婦人、猟師、フランス人はすでに死んでいたのです
殺人、死刑、自殺、病気、事故、自然死、誰もが必ず死ぬということ
しかも死に方は様々、自分で選べないということを
残酷だけど陰湿ではない、いかにもシュールでしたね
豪華なキャストの中では、金を探し歩く老山師のトム・ウェイツと
アーサー役の(日本では知名度が低い)グラインジャー・ハインズがよかった
枯れ専萌えは間違いなしです(笑)
【解説】映画.COMより
「ノーカントリー」のジョエル&イーサン・コーエン兄弟が製作・監督・脚本を手がけた西部劇アンソロジー。「オー・ブラザー!」のティム・ブレイク・ネルソンが陽気な凄腕ガンマンを演じる表題作をはじめ、ブラックユーモアや皮肉を散りばめたバラエティ豊かな6話で構成。キャストには「ディザスター・アーティスト」のジェームズ・フランコ、「96時間」シリーズのリーアム・ニーソン、「ビッグ・シック ぼくたちの大いなる目ざめ」のゾーイ・カザン、「セブン・サイコパス」のトム・ウェイツら豪華な顔ぶれがそろった。2018年・第75回ベネチア国際映画祭で脚本賞を受賞。