シンプル・プラン(1998)

原題は「A Simple Plan」(シンプルな計画)

原作(脚本も)はスコット・B・スミスのベストセラー小説

公開時はコーエン兄弟の「ファーゴ」(1996年)と比較され

酷評もあったようですが、これはこれで面白い

普通の人たちが大金を拾ったために引き起こす、愚かな悪循環

最初は金を隠し、ほとぼりが冷めたら山分けしようというシンプルな計画だった

でも今の生活が苦しいから、少しでいいからすぐに分け前が欲しい

そのわずかな欲望が、やがて悲劇に変わるというもの


金に目がくらんだ奴ばかりで、どんどん気分が悪くなる(笑)

でもその変貌ぶりに目が離せない

特に素晴らしいのが主人公の兄を演じたビリー・ボブ・ソーントン

自他ともに認める冴えなくて頭の悪い男

女の子と付き合ったのは学生時代に一度だけ

それも賭けの対象にされていただけという悲しい過去

でも本当は純粋で思いやりがあり、人を観察する能力にも長けているんですね

この迷惑なダメ男が、やがて優秀な弟より真実を語るようになります

ミネソタ州ライト郡にある雪深い田舎町

飼料店で働くハンク・ミッチェル(ビル・パクストン)は

図書館に勤め現在妊娠中の妻サラと(ブリジット・フォンダ

つつましやかに暮らしていました

ある日、兄ジェイコブ(ビリー・ボブ・ソーントン)と

ジェイコブの親友ルー(ブレント・ブリスコー)と

墓参りに行った帰り道、キツネを追って入った森の中で

墜落したセスナ機を発見します

機内には死体と440万ドル大金が入ったバック

無職のジェイコブとルーはこれで大金持ちになれると大喜び

最初は金を盗むことにすることに反対していたハンクでしたが

全額ハンクが預かることで同意します

もちろん大金のことは、誰にも話しちゃいけないと釘を打つのですが

 

そのハンクが妻に何もかも打ち明け、出産後の生活を考えたサラは

万が一持ち主が現れた時のためのプランを考えます

金の一部を着服し、残りはセスナ機に戻すというもの

ハンクがジェイコブを誘い森に向かうと

狩りに来た近所の老人(ジャック・ウォルシュ)が偶然ノーモービルで通りかかり

正体がばれたと思ったジェイコブは思わず彼をバールで殴ってしまいます

遺体を橋から落とし事故に見せかけようと工作をするふたり

しかし死んだと思った老人が息を吹き返し

ハンクは本当に老人の息の根を止めてしまいます

図書館に勤めるサラは、新聞記事で金が

人の兄弟に誘拐された相続人の身代金だったことを知ります

やがて娘を出産すると、ますます強欲になってしまうサラ

ジェイコブから老人を殺したと聞いたルー

ハンクに自分の取り分を要求し、当局に訴えると脅迫してくると

サラはルーを酔わせて、ルーが老人を殺したと偽証させ録音することを提案します

ハンクはジェイコブにルーを騙すよう頼み、計画は成功しますが

裏切られたことに気づいたルーが激怒、ハンクに銃を突きつけます

ハンクを救おうとルーを撃ってしまうジェイコブ

さらに取り乱したルーの妻ナンシーをハンクが撃ってしまいます

ハンクとジェイコブの家庭内喧嘩による殺人自殺だという証言が認められ

ふたりは無罪になりますが

親友を殺してしまったことに苦しみだすジェイコブ

さらに金を持って町を出ようというハンクに

町に残り父の残した農場を立て直したいと言うジェイコブ

そこでハンクは、自分を大学に行かせるために両親が借金したこと

そのせいで農場が潰れ、父親が自殺したことを知らされます

しかも保安官のカールから、FBIのバクスターと名乗る捜査官が

誘拐事件の身代金を乗せたまま消息を絶ったセスナ機を探しに

町に来ているから会って欲しいと呼び出されます

ジェイコブがうっかりカールに飛行機のことを口走っていたからです

(偽のFBI捜査官がなぜセスナ墜落現場が分かったのかのかは謎 笑)

バクスターがFBIのバッジを見せないことを不審に思ったサラは

バクスターが誘拐犯人の兄弟のかたわれだと突き止めハンクに連絡

ハンクとジェイコブと保安官と森にセスナ機を探しに行っていたバクスター

セスナ機を見つけると保安官を殺し

保安官の銃を盗んだハンクがバクスターを殺す

 

目の前にいる弟は、かっての「ちゃんとした」自慢の可愛い弟じゃない

「飛行機なんか見つけなけりゃよかった」

ジェイコブは、自分も殺してくれとハンクに頼みます

兄の最後の頼みだと懇願するジェイコブを泣きながら射殺するハンク

やがて本物のFBI捜査官がやってきて

ハンクが殺人と横領で疑われることはありませんでしたが

身代金440万ドルのうちの5000枚に印がつけられており

捜査官は犯人がそのお金が使うのを待つだけだとハンクに打ち明けます

どの紙幣に印がつけられているのかはわかりません

 

サラに440万ドルを燃やすと告げるハンク

サラはもう貧困生活は我慢できないと必死にを止めますが

ハンクは彼女を突き飛ばし、全てのお金を暖炉に放り込むのでした

いちばん欲深で悪知恵が働いたのは

貞淑かわいい奥さん」だったんだな

 

彼女が、お金をセスナ機に戻せと言わなかったら

ルーに偽証させろと言わなかったら

少なくとも誰も死なずに済んだのだから

それにしても、なぜ人間は大金が手に入ると誰かに話したくなるのでしょうね

もし「宝くじ」で大当たりしても

家族にも親友にも内緒にしておくのがいちばんかも知れません

もちろん奥さんや旦那にも(笑)

 

 

【解説】映画.COMより

ふとしたことで大金を手にした人々が平凡ながらかけがえのない人生を見失っていく姿を描いたサスペンス。スコット・スミスの同名ミステリー(邦訳・扶桑社海外文庫)の映画化で、脚本をスミス自身が手掛け、監督には「クイック&デッド」のサム・ライミがあたった。製作は「トゥルーマン・ショー」のアダム・シュローダーと「ハムナプトラ 失われた砂漠の都」のジェームズ・ジャックス。製作総指揮は「プライベート・ライアン」のゲーリー・レヴィンソンとマーク・ゴードン。撮影は『Boys and Girls』のアラー・キヴィロ。音楽は「グッド・ウィル・ハンティング 旅立ち」のダニー・エルフマン。美術は「アマデウス」のマリア・ヴォン・ブランデンスタイン。編集はエリック・L・ビアソンとアーサー・コバーン。衣裳はジュリー・ワイス。出演は「マイテイ・ジョー」のビル・パクストン、「ジャッキー・ブラウン」のブリジット・フォンダ、「パーフェクト・カップル」のビリー・ボブ・ソーントン、「Uターン」のブレント・ブリスコーほか。

1998年製作/122分/アメリ
原題または英題:A Simple Plan
配給:東宝東和