犬に名前をつける日(2015)

監督の山田あかねさんの実体験と4年間200時間に及ぶ取材をもとにした

ドラマ仕立てのセミドキュメンタリー

 

タイトルだけで犬と飼い主のハートウォーミングな映画だと

勝手に思い込み見たら大間違い

癒されるどころか大砲を撃ち込まれましたね

 

愛犬を亡くしロスになったTV番組のプロデューサー、久野(小林聡美)が

犬の勉強をしにロンドンに行こうと思ってると

療養先の先輩、渋谷昶子(のぶこ)さんに相談しに行くと

渋谷さんから「それより日本で犬の映画を撮りなさい」と勧められます

でも犬の映画といっても、なにをしたらいいのかわからない

とりあえず千葉県の動物愛護センターに行き

「ちばわん」の副代表、吉田美枝さんと出会います

そこで毎年殺処分される犬の多さに驚かされます

そんななか1匹でも多くの犬の命を救おうと

吉田さんら「ちばわん」のスタッフは活動を続けているのです

つぎに久野は広島県の「NPO法人犬猫みなしご救援隊」の代表

中谷百合さんを訪ねます

この人が本当にパワフルで凄い人なんですね

野良猫の保護から始まって、広島市の動物管理センターから

全頭の猫引き受けを始め広島県の野良猫の殺処分ゼロを達成

2011東日本大震災後には取り残された300匹以上の被災動物の救済活動

「動物保護のカリスマ」と呼ばれているそうです

 

殺処分される猫が野良猫なのに対し

(その約9割が赤ちゃん猫←成猫は捕まえにくい、またはリリースされるため)

犬のほとんどが飼い主に捨てられ野犬化したか

飼い主自らが保護センターに持ち込むという

人間の身勝手によるもの

その中でも特に悪質なのがブリーダー(中谷さんは繁殖屋と呼ぶ)に

飼われていた犬たち

これは衝撃的で目を覆うものがありました

人気の純血犬を売るため何度も妊娠させられる母犬

もとは茶色い犬種から、白い犬を作り出すための品種改良

そのために母犬の子宮はボロボロ、歯が抜けはみ出した舌、虚ろな目

近親のための障害犬、奇形犬、改良に失敗し行き場のない犬たち

「ちばわん」が保護に向かった経営破綻した横浜の

ブリーダーも酷かったですね

汚物で汚れた新聞紙と狭い檻に閉じ込められた何十匹もの人気犬

ブリーダーは犬が吠えると棒で檻をガンガンと叩いて鳴きやませます

 

調べてみたところ、なんとブリーダーになるのには

専門的な資格が必要なわけでなく、誰でもなれるということ

あなたの飼っている血統書付きのそのワンちゃん

どこから来たか知っていますか?知らされましたか?

一方で「犬猫みなしご救援隊」や「ちばわん」活動に協力してくれる

多くのボランティアのみなさん

 

悪質なブリーダー(法律を作って撲滅すべき)もいれば

保護センターから、被災地から、名もない犬猫たちを助けようとする

多くの人たちがいる

そんな犬猫たちの里親になり、飼ってみようとする人たちがいる

 

映画の中でお金の話は出てきませんでしたが

実際、動物を保護して、よい環境を与えて育てるって

ものすごくお金のかかることなんですよ(笑)

飼い犬や保護犬と一緒に暮らせる横須賀の特別養護老人ホーム

「さくらの里 山科」の施設長はいい人でサービスも充実していますが

入居料はやはり、それなりにかかると思います(笑)

 

でも同じお金を使うなら、動物を買ったり売ったりするためではなく

動物が、私たち人間が、幸せになるため使うべきということですね

 

もしかして今あなたの欲しいと思っている犬猫ちゃんは

ペットショップではなく、保護センターで待っているかも知れません

早くパパやママに会いたいよ、と

 

 

【解説】映画.COMより

すべては海になる」の山田あかね監督が、動物愛護センターから犬や猫を救い出している人々や、東日本大震災で置き去りにされた動物を保護する人々の活動を追った4年間の記録映像に、女優の小林聡美が主人公を演じたドラマパートを加えて描いたドキュメンタリードラマ。愛犬のナツを病気で亡くしたテレビディレクターの久野かなみは、先輩の映画監督の勧めで「犬の命」をテーマにした映画を撮り始める。取材のため動物保護センターや原発事故の避難区域から救い出された犬たちのシェルターを訪れたかなみは、そこで一匹でも多くの動物を救おうと懸命に働く人々の姿に感銘を受け、ある決心をする。