ベネチア国際映画祭受賞作品

伯爵(2023)

原題は「El Conde」(伯爵) 1973年から1990年までチリの大統領の座に就き 2006年に91歳で没したアウグスト・ピノチェトの死は自らの偽装で 250年前から生きている不死身の吸血鬼だった、という しかも "鉄の女" と呼ばれた元イギリス首相マーガレット・サッ…

哀れなるものたち(2023)

原題は「Poor thing」(かわいそうなもの) 原作はスコットランドの小説家アラスター・グレイの1992年に発表した代表作で 自ら命を絶った妊婦に、胎児の脳を移植して生き返らせ 理想の女性に育てあげようとした天才外科医の物語 原作はもちろん未読ですが 映…

ノマドランド(2021)

「家」は心の中にある 原題は「Nomadland」 ノマドとは英語で「遊牧民」転じて放浪者のことで 原作はジェシカ・ブルーダーが2017年に発表した ノンフィクション「ノマド: 漂流する高齢労働者たち」 国際的にも高い評価を受けた映画で ひさびさに凄い才能を見…

現金(げんなま)に手を出すな(1954)

原題は「Touchez pas au Grisbi」(現金に触るな) 原作はギャング出身のアルベール・シモナンの同名ベストセラー小説 老いを迎え引退を考えている昔気質のギャングと 目的のためには手段を選ばない新興ギャングとの 金塊にまつわる抗争をメインに ギャング…

昼顔(1967)

原題は「Belle de Jour」(三色朝顔のことで”昼間の美人”という意味) 原作はフランスの作家ジョゼフ・ケッセルが1928年に発表した同名小説 スペインからフランスへ拠点を移したブニュエルに プロデューサーのアキム兄弟が(何人もの監督に断られた)この企…

去年マリエンバートで(1961)

原題は「L'Année dernière à Marienbad」 またレヴューの難しい作品を選んでしまいました(笑) 雰囲気は同じくアラン・レネによる 「二十四時間の情事」(ヒロシマ・モナムール 1959)と似ています 不倫という報われない恋 登場人物が生きているか、死んで…

TAR/ター(2022)

原題も「Tar」(主人公の名前) 突然エンドクレジットから始まるこの映画 アメリカ映画は組合の要請で キャストリストの他に(わずかでも)映画にかかわったスタッフや 企業の名前を全部出すという決まりがあるそうです だからやたらと長いんですね なのでエ…

ボーンズ アンド オール(2022)

原題も「Bones and All」(骨とすべて) 最初から「カニバリズム」(食人、食人俗、人肉嗜食) の 若者の恋愛映画であるという映画広告のネタばらし(笑) マイノリティの恋愛ロードムービと思って見るのには 耐久が必要ですし(笑) 目玉グリグリ、腹を切り開…

イニシェリン島の精霊(2022)

原題は「The Banshees of Inisherin」(イニシェリンのバンシー) バンシーとは、アイルランドに伝わる(古墳や塚に住む)妖精で 家族の死を告げにやってくる女性のこと 監督のマーティン・マクドナーは英国とアイルランドの二重国籍で 劇作家の中でもアイル…

風が吹くまま(1999)

「美しいかもしれない天国や 響きのいい約束よりも 目の前の葡萄酒」 原題は「باد ما را خواهد برد,」(風が私たちを運んでくれる) これもまたアッバス・キアロスタミの意地悪な映画 でもこの巧みな展開には唸ります、うますぎる(笑) テヘランから約700キ…

バスターのバラード(2018)

「The Ballad of Buster Scruggs 」(バスター・スクラッグスのバラード) 全6話 1話約20分程度のオムニバス西部劇集 アメリカでしか作れないブラックユーモア映画 テーマは死にまつわる古いアンソロジー(詩文の美しいものを選び集めた本) 舞台は19世…

ロスト・ドーター(2021)

原題も「The Lost Daughter」(失われた娘) これは手強い映画でした 単に酷い母親を描いているようだけど一筋縄にいかない 女性監督が女性の「裏側」にメスを入れます 英国からギリシャへ避暑のためバカンスにやって来た 自称「文学を教える教授」のレダ(…

パワー・オブ・ザ・ドッグ(2021)

原題も「The Power of the Dog」(犬の力) 海外の批評家からは絶賛され 第79回ゴールデン・グローブ賞では3冠に輝きましたが これは手強い、見る人を選ぶ作品でした LGBTQ(性的マイノリティ) ギフテッド(IQ130以上の発達障害) 身分の差や、アルコール依…

満月の夜(1984)

エリック・ロメールの「喜劇と格言劇」シリーズ第4作目 原題も「Les nuits de la pleine lune」(満月の夜) 副題は「Qui a deux femmes perd son âme, qui a deux maisons perd sa raison」 (ふたりの妻を持つ者は心をなくし、二つの家を持つ者は分別をな…

ともしび(2017)

原題は「Hannah」(主人公の名前) これは難解、というよりかなり手強い(笑) まるで観客の映画を見る目を試すように ポーカーの如く手の内を見せようとしません 一方で残酷に老いを見せつける 若かったらやり直せるでしょう もう一勝負もできるでしょう で…

魔術師(1958)

「見るものは 見た」「知るものは 知った」 原題は「Ansiktet」(顔)原作は英ミステリー作家のG・K・チェスタトン「魔術-ある幻想的な喜劇」旅芸人の魔術師の一座と、科学主義者たちの科学と魔法の対立を喜劇にして描いた必見の傑作ベルイマンのなかでは宗教…

クスクス粒の秘密(2007)

原題 は「LA GRAINE ET LE MULET」(穀物の”種”、魚の”ボラ”) クスクスとはデュラム小麦粉に水を含ませ1mm大のそぼろ状にしたもの 発祥地の北アフリカから、中東、ヨーロッパ、南米までパンやお米とと同じくらい食べられている食材で日本のご飯や、サフラン…

スリー・ビルボード(2017)

「ビルボード」とはアメリカの道路沿いに 自動車で通りすぎる人のために立っている広告看板のこと ある日ミズーリ州の田舎町の街道沿いに 3枚の大きな看板が立てられます そこに書いてあるのは RAPEDO WHILE DYING 「レイプされて死亡」 AND STILL NOARRES …