哀れなるものたち(2023)

原題は「Poor thing」(かわいそうなもの)

原作はスコットランドの小説家アラスター・グレイ1992年に発表した代表作で

自ら命を絶った妊婦に、胎児の脳を移植して生き返らせ

理想の女性に育てあげようとした天才外科医の物語

原作はもちろん未読ですが

映画は日本の漫画に強くインスパイアされたように感じます

手塚治虫の「ブラック・ジャック」とピノコの関係に

永井豪楳図かずおのエログロを足して実写版にしたような内容で

ヒロインについては、見た目からして「妖怪人間ベム」のベラ(笑)

衣装やセットの奇妙さはテリー・ギリアムを感じましたね

そのわりテーマは「女性の解放」という(性的一辺倒という極端ではあるが)

フェミニズム的で平凡なもの

私的に新しいものはありませんでしたが

映画館でモザイクなしの男性器を(しかもいくつも 笑)見たのは初めて

しかも、これがディズニー配信

映画の新時代の到来は感じました(そこ? 笑)

観覧注意【以下ネタバレ】

 

ビクトリア朝のロンドン、医学校の教授で天才外科医

ゴドウィン(通称ゴッド)バクスターウィレム・デフォー)から

助手になるよう頼まれた医学生のマックス・マッキャンドルズ(ラミー・ユセフ)

マックスの仕事はゴッドの屋敷に住む

食事は吐き戻す、おしっこは垂れ流し、言葉もろくに話せない

美しくも奇妙な女性、ベラ(エマ・ストーン)の成長記録を残すことでした

ベラは妊娠中に橋から飛び降り自殺した身元不明の女性で

ゴッドは死んだ女性の脳に、彼女の胎児の脳を移植して蘇生

そのため身体は大人でも、脳は産まれたばかりの赤ちゃん

しかしベラの知性の発達は凄まじく、脳移植科学的にも貴重な存在だったのです

そういうことで、突然自慰行為で性的快感に目覚めてしまうベラ(笑)

人前ですることじゃないと教えても、知的には幼い彼女にはわからない

さらに外の世界に興味を持ち始め、外出したいと駄々をこねる

ゴッドはマックスに(ベラの性的欲求を満たすため)

ベラと結婚してくれないかと頼みます

(ゴッドは父親からの生体実験のせいで、生殖機能含め不完全でセックスできない)

マックスはベラを観察するうちにベラに恋し

ベラもマックスのことを好いていたからです

ゴッドは早速結婚の書類を作成するため

弁護士のダンカン・ウェダーバーン(マーク・ラファロ)を呼びます

ゴッドとマックスとベラの3人による

監禁に近い誓約書に興味を持ったダンカンは

花嫁になるベラに密かに会いに行くと、その美しさに一目惚れ

遊び人の心に火が付き、ベラに冒険の旅に出ようと誘います

放蕩な中年男と無垢な娘、誰もが遊ばれて捨てられると心配するわけですが

ベラはダンカンと旅に出る、冒険が終わったらマックスと結婚するときかない

彼女を手放すことを決心するゴッド

ダンカンとリスボンまで行き、グルメや酒の味を覚えるベラ

ダンカンは若い肉体に、ベラは性の悦楽に溺れるのもつかの間

ダンカンはベラの奔放さと、場所を選ばない不謹慎な言動にイラつくようになり

他の男性と仲良くしようものなら(まさかの股間に刺青 笑)

嫉妬で狂い死にそうになります

その頃ゴッドはベラを失った喪失感で寝込むほどでした

そこで再び若い女性の死体を見つけることにし、新たな実験を始めます

しかしフェリシティ(マーガレット・クアリー)と名付けられた女性は

ベラと違い成長が遅いうえ、ゴッドはベラのように愛せませんでした

ダンカンはベラを騙しクルーズ船に乗せ(まわりが海で逃げられない)

軟禁しようとしますが、激怒したベラを阻止することができず

ベラは乗客のマーサ夫人(ヴィッキー・ペパーダイン

ハリー(ジェロッド・カーマイケル)に知り合い

今度はセックスより、哲学や読書に興味を持つようになります

ベラにかまってもらえないダンカンは酒とギャンブルに溺れ

アレクサンドリアに到着すると

ベラはハリーから「本当の世界」を見せてもらいます

そこは灼熱と飢えで、多くの赤ん坊たちが死んでいる世界でした

あまりのショックに取り乱してしまうベラ

クルーズ船の部屋に戻ったベラは、泥酔して寝ているダンカンから

彼がカジノで大勝ちした現金全てを箱に入れると

貧しい人々に寄付すると約束する船員に預けます(当然ネコババされる)

一文無しになったダンカンとベラはマルセイユで船を降ろされ

パリに向かったものの食べ物も宿もありません

落ち込むダンカンに対し、ベラはこれこそ冒険だと前向き

マダム・スウィニーキャスリン・ハンター)と出会い

娼館で働くことにします

そこで娼館に来る男たちより

ダンカンとのセックスが素晴らしかったか知るのですが(笑)

ダンカンはベラが売春でお金を稼ぐことが許せない

ダンカンを見限ったベラは彼に別れを告げ

帰りの旅費だと(何かあった時のためにゴッドが用意した)

隠し持っていたお金を渡します(正確には奪われる)

娼館でベラはマダム・スウィニー

「女性が男性を選ぶシステムを導入したい」と提案

(マダムから孫だという赤ちゃんを見せられ撤回)

娼婦仲間のトワネットと仲良くなると、社会主義思想に傾倒

さらにお腹の傷が帝王切開によるものだとトワネットに教えられます

ならば「わたしの赤ちゃんはどこ?」

ロンドンではゴットの腹部に腫瘍(末期ガン)が見つかり

マックスは(精神崩壊し施設に収容されたダンカンからベラの居場所を探り

マックスから手紙を受け取ったベラはロンドンに戻りゴッドと再会

 

帝王切開の傷についてマックスに尋ねると

マックスは正直に赤ちゃんの脳を移植したことを教え、その記録を見せます

真実を隠していたことと、フェリシティの存在を知り

ベラはマックスを罵りますが、彼の誠意とやさしさに打たれ

約束通りマックスと結婚することを誓います

ところが結婚式当日

ダンカンがアルフィー・ブレッシントン将軍と名乗る男を連れてきて

アルフィーベラは自分の妻であり、本名はヴィクトリアだと宣言

ベラは本当の自分を探るため(この場合夫か?それとも父親か?)

アルフィーについて行くことにします

しかしこのアルフィーがとんでもないサイコ野郎で(笑)

ベラはヴィクトリアが自殺したことを納得

 

執事やメイドには銃を突きつけ命令に従わせ

ベラは監禁、薬で眠らせ医者に性器を切除させる計画を立てます

そのことを知ったベラは薬の入ったカクテルをアルフィーに投げつけると

薬の効果で気を失い、自らの足を撃ってしまったアルフィー

「助けてほしい」とマックスを呼びます

アルフィーを救ったら再び虐待を受けると心配するマックスに

ベラはゴッドが脳手術したときの記録を見せます

目の前にはヤギ(笑)

やがてベラとマックスに見守られ、ゴッドは安らかに息を引き取り

ベラはゴッドの仕事を引き継ぐため医学校に進学します

トワネットをパリから呼びよせ

アルフィーは庭に生い茂る葉っぱを幸せそうに食べています

フェリシティは上手にボール投げが出来るようになりました

これは主演者全員、楽しく演じているように見えましたね(笑)

演技の壁を打ち砕くことが、この監督の特徴なのでしょうか

ウィレム・デフォーの慈愛深い父性像はもちろん

 

マーク・ラファロの弾けっぷりが可愛いったらありゃしない(笑)

アカデミー賞では、ぜひ彼に助演男優賞を差し上げたいと思います



 

【解説】女王陛下のお気に入り」のヨルゴス・ランティモス監督とエマ・ストーンが再びタッグを組み、スコットランドの作家アラスター・グレイの同名ゴシック小説を映画化。2023年・第80回ベネチア国際映画祭コンペティション部門で最高賞の金獅子賞を受賞し、第96回アカデミー賞では作品賞、監督賞、主演女優賞、助演男優賞、脚色賞ほか計11部門にノミネートされた。
不幸な若い女性ベラは自ら命を絶つが、風変わりな天才外科医ゴッドウィン・バクスターによって自らの胎児の脳を移植され、奇跡的に蘇生する。「世界を自分の目で見たい」という強い欲望にかられた彼女は、放蕩者の弁護士ダンカンに誘われて大陸横断の旅に出る。大人の体を持ちながら新生児の目線で世界を見つめるベラは時代の偏見から解放され、平等や自由を知り、驚くべき成長を遂げていく。
プロデューサーも務めるストーンが純粋無垢で自由奔放な主人公ベラを熱演し、天才外科医ゴッドウィンをウィレム・デフォー、弁護士ダンカンをマーク・ラファロが演じる。「女王陛下のお気に入り」「クルエラ」のトニー・マクナマラが脚本を担当。

2023年製作/142分/R18+/イギリス
原題:Poor Things
配給:ディズニー
劇場公開日:2024年1月26日