エド・ウッド(1994)


「他人の夢を撮ってどうなる?夢の為なら戦え」 

 

 

アメリカで最低の映画監督」と呼ばれたエド・ウッド

しかし没後、深夜テレビ映画枠で繰り返し放送されたことにより

カルト的な人気を得たそうです(いるよね、クソマニアって)

 

タイトルもいいかげんな「原子の花嫁」「怪物の花嫁」

ドラキュラモノなのに、巨大タコやUFOが登場する

「外宇宙からの墓泥棒」

 

すべてとっさの思い付きと、その場の閃きだけで

エドは映画を作ってしまうのです

 

そんなエドファンを名乗る映画監督は、ティム・バートンだけでなく
やはりカルト的な人気のある監督ばかり(笑)

 

なので本作も面白いか、面白くないか別にして
純粋で一途なクソ映画愛だけを描いているのです
 
ただ、私はバートン作品が苦手なわけではないのですが

なぜかタルコフスキー以上に睡魔に襲われる癖がありまして(笑)

1本見るのに3日はかかってしまうのです

(私的に退屈なのでしょうな)

 

エド・ウッドジョニー・デップ)は、映画を作る熱意だけは膨大ですが

資金不足もあり、1カット、1テイクでサクサクと撮影を済ませ

作品の質を高めようとする気持ちは一切ありません

 

趣味は恋人であるドロレス(サラ・ジェシカ・パーカー)の

下着や洋服を拝借して女装するという

(今では珍しくもありませんが)相当な変わり者

 

ある日ドラキュラ俳優ベラ・ルゴシ(マーティン・ランド―)と知り合い

彼の名声を活用して新たな映画製作に乗り出します

そんなエドに協力する優しきオカマのバニー(ビル・マーレイ)に

制作補佐のクリズウェル(ジェフリー・ジョーンズ)

 

そして(製作費を出したのに)あれこれの注文でエドを爆発させてしまう

教会の牧師(G.D.スプラドリン)

 

注目すべきはやはり、アル中から、モルヒネメタドン中毒へと転じた

典型的なハリウッド俳優ルゴシ

(マーティン・ランド―が助演男優賞を受賞)

 

かっての大スターの末路を最後まで温かく見送る・・・

ことはエドには(金欠で)できませんでしたが

 

それでもブルース・リーの「死亡遊戯(1978)のみたいに(笑)

クライマックスのワンシーンとあとはそっくりさんだけで

ルゴシの遺作を作ることに成功します

 

エドは映画を作るプロセス(トラブル)が

何より好きだったのでしょう

 

バーで知り合ったロレッタ(ジュリエット・ランドー)は

たった300ドルの出資でヒロインの座を手に入れます

 

そのため恋人ドロレスは役を降ろされ、仲も破局

だけどキャシー(パトリシア・アークェット)との出会いで

幸せを掴めたはずなのに

 

結局はエドも映画が売れないことから、アルコールに溺れ

ポルノ作品で身銭を稼いだものの早死にしたそうですが

 
 
資金集めの難しさ、キャスティング、俳優の我儘

出演者やスタッフの不仲、出資者の横暴、批評、興行成績・・・

等々は、今も昔も映画監督を悩ませる問題なのでしょう

 

それでも映画作りは楽しいし、やめられない

そのことをバートンはダメ映画を作ったダメ監督の姿を通じて

感るのです

 

あうか、あわないかは別として()
 

映画愛に満ち溢れているのには間違いない作品でした

 



 

【解説】KINENOTEより

史上最低の監督と言われた男、エドワード・デイヴィッド・ウッド・ジュニア、通称エド・ウッドの愛すべき、奇想天外な半生を描いた伝記映画。ルドルフ・グレイの評伝『NightmareofEcstasy』(邦訳・早川書房刊『エド・ウッド 史上最低の映画監督』)を、“エドの同類”を自認する「バットマン リターンズ」のティム・バートンの監督で映画化。脚本は「プロブレム・チャイルド うわさの問題児」のコンビ、スコット・アレクサンダーとラリー・カラツェウスキー。製作はバートンと「シザーハンズ」以来の彼の右腕、デニーズ・ディ・ノヴィの共同。エグゼクティヴ・プロデューサーは「ハードロック・ハイジャック」の監督マイケル・レーマン。撮影は「バットマン リターンズ」のステファン・チャプスキー、音楽は「依頼人」のハワード・ショアが担当。また、往年の怪奇スター、ベラ・ルゴシのマスクを完璧に再現したリック・ベイカーほか3人が、第67アカデミー賞メイクアップ賞を受賞。主演は「シザーハンズ」「ギルバート・グレイプ」のジョニー・デップ。ルゴシに「ウディ・アレンの重罪と軽罪」のマーティン・ランドーが扮し、アカデミー賞助演男優賞を受賞。ほかに「スリー・リバーズ」のサラ・ジェシカ・パーカー、「ホーリー・ウェディング」のパトリシア・アークェット、「恋はデ・ジャブ」のビル・マーレイらが共演。95年度キネマ旬報外国映画ベストテン第5位。

30歳のエド・ウッドジョニー・デップ)は、“オーソン・ウェルズ26歳で「市民ケーン」をとった”を座右の銘に、貧しいながらも映画製作の夢に燃えていた。ある日、性転換した男の話を映画化する、と小耳にはさんだ彼は早速プロデューサーに売り込む。「これは僕のための作品です。僕は女装が趣味だから、人に言えない辛さが分かる」と力説するが、バカ扱いされて追い返された。その帰り道でエドは往年の怪奇スター、ベラ・ルゴシマーティン・ランドー)と運命的な出会いを果たす。ベラの出演をエサに監督になった彼は友人のオカマ、バニー(ビル・マーレイ)や恋人ドロレス(サラ・ジェシカ・パーカー)らの協力を得て、監督・脚本・主演した性転換の話「グレンとグレンダ」を完成させた。これを履歴書代わりにいろいろ売り込むがうまく行くはずもなく、自分で資金を集めることに。その間にもエドの元には、頭の足りない巨漢プロレスラーのトー・ジョンソン(ジョージ“ジ・アニマル”スティール)、インチキ予言者クリズウェル(ジェフリー・ジョーンズ)など、一風変わった仲間たちが集まってきた。次回作「原子の花嫁」がクランク・インするが、アンゴラのセーターと女装に執着するエドにあきれたドロレスは怒り爆発し、彼の元を去った。失意のうちにテレビで人気の妖婦ヴァンパイラ(リサ・マリー)に出演のアプローチをするが、けんもほろろ。そんな中、麻薬中毒のベラの病状は悪化する一方で、エドは彼を入院させた。その病院で彼は心優しい女性キャシー(パトリシア・アークェット)と出会うが、彼女は彼の女装癖も受け入れてくれるのだった。一方、エドは心からベラの容体を心配していたが、入院費用が払えず、彼に嘘をついて退院させねばならなかった。「原子の花嫁」が配給会社により「怪物の花嫁」と改題されプレミア試写が行われた。ブーイングの嵐だったが、エドは満足だった。そして数フィートのフィルムを残してベラが死んだ。傷心の彼の前に、バプテスト教会の信者という新たなカモが登場。早速資金を調達した彼は、史上最悪の映画と後世に名を残す「プラン9 フロム・アウタースペース」に着手。ついにヴァンパイラの出演も取り付け、ベラの形見のフィルムや多くの仲間たちと共に意気揚々と撮影に入った。ところが、今回の出資者はあれこれと撮影に口を出し、エドは爆発寸前。お気に入りのアンゴラを着ても心が落ちつかない彼は撮影所を飛び出すが、入ったバーで尊敬するオーソン・ウェルズヴィンセント・ドノフリオ)と遭遇する。彼から「夢のためなら闘え。他人の夢を撮ってどうなる?」と教え諭されたエドは胸を張って撮影所に戻り、自身の納得のいく作品を堂々完成させた。