去年マリエンバートで(1961)

原題は「L'Année dernière à Marienbad」

またレヴューの難しい作品を選んでしまいました(笑)

 

雰囲気は同じくアラン・レネによる

二十四時間の情事」(ヒロシマ・モナムール 1959)と似ています

不倫という報われない恋

登場人物が生きているか、死んでいるかわからない

舞台は、バロック風の古城のホテルで

庭園でひとり佇むAという女にXという男が

去年マリエンバートで会いましたね」

「1年後にまた会おうって約束しましたよね」 と語りかけます

女は「そんな記憶ありません」と 全く憶えていない様子

X去年マリエンバートで出会い1年後に駆け落ちの約束をしたこと

初対面はフレデリクスバートの庭園だったこと

女の性格や癖を言い当て、ダンスに誘い

女の記憶を蘇らせようとします

しかし女の夫Mが常にふたりを監視していました

あらすじこそ簡単なのですが(笑)

映画評論家に「わからない」と言わしめ

淀川長治氏さえ「またこの映画と格闘する気になったら、また観ましょう」と

仰った難解映画

時にマネキン人形のように動きが止まってしまう人々

1-3-5-7の順でカードを並べる「ニム」というゲーム

射撃(タキシード姿の男達が、横一列に並び的を撃つ)

シャルル3世とその妃のいわれのある石像

徹底的に繋がらないシーンとシーン

女の着ている服も、場所も次の瞬間変わってしまう

衣装に関しては、シャネルはこう着こなすのだと言わんばかりの洗練さ

(実際の衣装担当もココ・シャネル)

ただ脚本したアラン・ロブ=グリエはヒントを出していて

アドルフォ・ビオイ=カサーレスの「モレルの発明」という

小説を基にしているということ

(マリエンバート(チェコの避暑地)が登場している)

終身刑の判決を受けた逃亡犯が流れ着いた無人島で

避暑地で休暇を楽しんでいるような場違いな男女を見つけ

観察することにします

やがてフォスティーヌという女に惹かれ、男は自分を抑えきれず話かけますが

彼女はまるで男が存在しないかのごとく振る舞い、男の心は激しく傷つきます

そして男はこの島の秘密を知ることになります

島の人々は「機械」が作り出していた幻影だったのです

もうひとつのヒントが、冒頭と終盤にそれぞれ登場する

ROSMER」というタイトルの 劇中劇

イプセンの「ロスメルスホルム」(ロスメルの家と言う意味)

妻を投身自殺で亡くしたロスメルという貴族生まれの牧師は

レベッカと言う若い女性と共同生活をしています

「保守派」の校長クロル(死んだ妻の兄)はロスメルに
保守陣営の新聞の編集長として、共に戦って欲しいと頼みに来ますが

ロスメルはレベッカを愛していて

彼女の「新しい進歩主義」の影響を受けていました

クロルは「裏切り者!」とロスメルを罵り

ふたりの「共同生活」こそが妹を自殺に追い込んだと批判します

ロスメルはレベッカにプロポーズしますが、レベッカは拒否

レベッカはロスメルに激しい欲望を持っていて

死んだ妻とロスメルの奪い合いになっていたことを告白します

何もかも信じられなくなったロスメルは

「もし君が妻と同じ道を歩んだら、再び信じられる」と

レベッカと共に妻が自殺した橋から滝の中へ飛び込むのでした

ふたりの男とひとりの女

ひとりの男は金持ちの保守派

ひとりの男はミューズを追い続ける放浪者

私はXと女は「去年マリエンバートで」死んでいるのだと思います
Xは庭園の高い場所から落ち、女はMに撃たれて死んだ

古城(ホテル)は墓場なのかも知れません

死んだXの魂が約束を守り1年後迎えに来たのです

ラスト、女は記憶を取り戻しXと旅立つ

そうしてふたりの魂は救済され昇華していったのです

大勢の監督や数々の映画に影響を与えたという本作

そのなかでも最も依存していると言われているのが

スタンリー・キューブリックの「シャイニング」

クシシュトフ・キェシロフスキの「トリコロール」三部作

クリストファー・ノーランの「インセプション

ということです

 

【解説】映画.COMより

フランスの名匠アラン・レネが1961年に手がけ、同年の第22回ベネチア国際映画祭で金獅子賞を受賞した一作。戦後世界文学にムーブメントを巻き起こした文学運動ヌーボーロマンの旗手アラン・ロブ=グリエが執筆した脚本で、ヌーベルバーグ左岸派の代表格とされるレネがメガホンをとるという奇跡的なコラボレーションが実現し、「映画史上最も難解な映画」とも称される一作だが、後の映画作家たちにも多大な影響を与えたとも言われている。時代も国籍も不明なバロック調の宮殿のようなホテルに宿泊し、社交に興じる客たち。その中に女Aと男X、男Mの3人がいた。MとAは夫婦だが、XはAに対し、1年前に会い、愛し合ったと語りかける。Aは否定するが、Xは1年後に駆け落ちする約束もしたという。Xの話は真実か、それとも……。ヒロインのデルフィーヌ・セイリグが劇中で着用しているドレス数点を、晩年のココ・シャネルが自らデザインした。2018年、シャネルのサポートによって完全修復が施され、同年のベネチア国際映画祭でプレミア上映。日本では19年10月「4K デジタル・リマスター版」としてリバイバル公開。

1961年製作/94分/G/フランス・イタリア合作
原題:L'annee derniere a Marienbad
配給:セテラ・インターナショナル
日本初公開:1964年5月