嘘をつく男(1968)

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「僕の話をしよう
 少なくともそう努めたい」

原題も「L'HOMME QUI MENT/THE MAN WHO LIES」(嘘をつく男)
またもや現実と虚構とSM
しかも"嘘"がテーマなので、少しややこしい
ロブ=グリエが戦争PTSDを描くとこうなります

 

【ここからネタバレあらすじ】

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第二次大戦末期のスロバキア共和国
森で銃弾に追われるジャン・ロバン、またはボリス
またはウクライナ人と呼ばれる男が(ジャン=ルイ・トランティニャン)
レジスタンスの英雄で、同志だったジャンの故郷を訪れます

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館で目隠し遊びをする3人の女は ジャンの妻ローラと
妹のシルヴィアそして召使いのマリア
館にはジャンの父と執事の男も住んでいます
ホテルのバーの可愛いウエイトレス
女たちはボリスと話しますが
男たちはボリスを冷たく拒絶します

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相変わらずロケ地が素晴らしい
時代を超えたスタイリッシュさと
女性をエロティックに捉えるショットも秀逸

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自分が英雄のジャンを助けたと自慢したり
ジャンが撃たれたので小屋に隠して医者を探しに来た
いいや、ジャンは地下で崖から落ちて死んだと言いますが
誰も信じません

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女たちはハサミで髪を切ったり、縄で縛ったり(笑)
ギロチンを思わせる形の丸太
立った状態で後ろ姿の首を絞める
何かの儀式をしているように見えます

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どうやらボリスはジャンを裏切って戦争を生き残った様子
死んだジャンがストップモーションでボリスを見つめる

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それでもボリスは言葉巧みに女たちを誘惑し始め
最初は召使い、次に妹と寝て屋敷に潜り込む
ついにはジャンの妻を口説こうとします

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そこに死んだジョンが現れ、ボリスを3発撃つ
しかしボリスは起き上がり再び森を彷徨うふりだしに戻ります
ボリスはジャンなのか
生きているのか死んだのか(村にはボリスの名前の書かれた墓がある)

【ネタバレあらすじ終了】

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3作目にしてやっと、ロブ=グリエには
(私の解釈で)時間の流れや、生死の観念がないことを発見
現在も過去も未来も、生も死も同時に存在しているのです

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ベルトルッチの「暗殺のオペラ」(1970)との違いも
いつか見比べてみたいと思います

 


【解説】映画.comより
20世紀の文学界に起こったムーブメント「ヌーヴォー・ロマン」を代表する作家アラン・ロブ=グリエの映画監督第3作で、ボルヘスの短編「裏切り者と英雄のテーマ」を下敷きに描いたドラマ。第2次世界大戦末期、ナチス傀儡政権下のスロバキア共和国。小さな村に、レジスタンスの英雄ジャンの親友だという男が現れて彼の妻や妹を誘惑しはじめ……。「男と女」のジャン=ルイ・トランティニャンが主演を務め、第18回ベルリン国際映画祭で男優賞を受賞。日本では、特集上映「アラン・ロブ=グリエ レトロスペクティブ」(18年11月23日~、東京・シアター・イメージフォーラム)で劇場初公開。