黒猫・白猫(1998)

原題の「Црна мачка, бели мачор セルビア語)」(黒猫・白猫)は

劇中で時おり姿を見せるつがいのオス猫とメス猫のこと

舞台はブルガリア国境近くのセルビア東部

ドナウ川沿いにあるロマ族(ジプシー)の集落

どいつもこいつもアホばかりで、顔までコメディ

詰め込み放題、散らかし放題、誰かが死んでもお祭り騒ぎ

ラストは好きな者同士が結ばれたんだからハッピーエンドでしょ!

という(笑)

虐げられながらも、逞しく生きる人々への人間賛歌

ヴェネチア国際映画祭でも銀獅子賞を受賞していますが

 

見る人によってはそのグロテスクさと

常識を逸する物語性(自由奔放に生きることの筋違い)に

嫌悪感を抱かせてしまうのもクストリツァの特徴(笑)

密輸で金儲けしているマトコは仕事に失敗し

ベオグラードイスタンブールの間でガソリンを運ぶ列車を盗み

大金を稼ぐことを思いつきます

マトコはその資金を得るため、16歳になる息子のザレと一緒に

ジプシーのゴッドファーザー、ガルガ・ピティチに会いに行きます

 

マトコから彼の父親ザーリェが死んだと聞かされたゴッドファーザー

(病院に入院しているだけ)香典だと大金を渡します

しかしマトコはその金を、マフィアのダダンとの賭けでスッしまったうえ

列車強盗にも失敗、ダダンに莫大な借金をしてしまいます

ダダンは借金を肩代わりするかわり、息子のザレを

彼の小柄な妹ブバマラこと「てんとう虫」と結婚させるよう命じ

マトコはそれを承諾します

しかしザレはバーテンダー10歳年上の金髪女、アイダのことが好きでした

ザレの気持ちを知ってか、アイダはザレのことをからかってばかりいましたが

ザレが「てんとう虫」と結婚式を挙げることになって大ショック

 

一方の「てんとう虫」も自分には背の高い男が現れて

その男と愛し合って結婚するのだと大暴れ

結婚式の日が近づくと、退院したザレの祖父ザーリェが急死

喪に服すため結婚式を延期しなければならなくなると

ダダンはマトコに祖父の死体を屋根裏部屋に死体を隠せさせ

結婚式を断行することにします

たくさんの料理と酒が用意され、皆が喜び踊る中

誓いの言葉を交わさせられるふたり

そこでザレが「てんとう虫」に逃げ道を教えると

「てんとう虫」は贈り物の大きな箱に隠れ会場を抜け出します

その時、身長2メートルの孫グルガこと「グルガ大王」の運転で

ザーリェの墓参りに向かっていた「ゴッドファザー」

ところが途中で荷台のドアが開き「ゴッドファザー」は放り出され

「グルガ大王」が「ゴッドファザー」を探していると

木の幹に隠れていた「てんとう虫」を見つけます

たちまち恋に落ちるふたり

「てんとう虫」を探しに来たダダンたちは彼女を結婚式に連れ戻そうとしますが

「ゴッドファザー」は「てんとう虫」と孫を結婚させると宣言

「ゴッドファザー」の手下であるダダンは受け入れるしかありません

そして「ゴッドファザー」もまた発作を起こして死んでしまう

「グルガ大王」と「てんとう虫」

ザレとアイダのダブル結婚式が行われることになると

祖父(結婚式を延期させるため死んだふりをしていた)と

「ゴッドファザー」まで生き返り

「グルガ大王」と「てんとう虫」は馬車に乗って新婚旅行に

祖父は(マトコに奪われないよう)アコーディオンに隠していた大金をザレに渡し

ふたりはブルガリア行きの汽船に乗り込みます

(アイダの祖母に飲み物に下剤を入れられた)ダダンは

腹の痛みに耐え切れずトイレに駆け込むと

ザレとアイダが仕掛けた悪戯のせいで肥溜めに落ちてしまうのでした

 

ここまで広げた風呂敷を、綺麗に畳んで片づける腕前は見事なもの

ただダダンの汚いオチは、なくてよかったと思います(笑)

(身体を拭かれたアヒルさんがお気の毒すぎる)



【解説】映画.COMより

アンダーグラウンド」のエミール・クストリッツァ監督が、ドナウ川沿岸に暮らすロマ一族の悲喜こもごもを生き生きと活写したコメディ。若者ザーレの恋を縦軸に、ザーレの父マトゥコと新興ヤクザが企てる列車強よかったですね(アヒルさんがお気の毒)

盗、ザーレの祖父ザーリェとマフィアの友情など、3世代の人々が織りなす物語を描く。騙しの天才を自称するマトゥコは、ロシアの密輸船から石油を買うが見事に騙されてしまう。金に困ったマ盗、ザーレの祖父ザーリェとマフィアの友情など、3世代の人々が織りなす物語を描く。騙しの天才を自称するマトゥコは、ロシアの密輸船から石油を買うが見事に騙されてしまう。金に困ったマトゥコだったが父ザーリェには見限られているため、起死回生の策として列車強盗を画策。新興ヤクザのダダンに協力を持ちかけるが……。1998年・第55回ベネチア国際映画祭で銀獅子賞(最優秀監督賞)を受賞。

1998年製作/130分/フランス・ドイツ・ユーゴスラビア合作
原題:Chat noir, chat blanc
配給:フランス映画社