コントラクト・キラー(1990)

「ばかね、女はそんなこと気にしてないのよ」

原題はI Hired a Contract Killer 」(殺し屋を雇った男)

 

アキ・カウリスマキは、どんなに不幸でもたとえ死を描いても

見終えた後には、花束をプレゼントされた気分にさせてくれる

魔法使い

だから、少しでも「死にたい」と考えたことのある人は

真面目でプレッシャーに苦しんでいる人は

できればアキを、この作品を見て欲しい

アキは決してお説教なんかしない

言いたいのは

死ぬ前に、今までやらなかったことをやってみたほうがいい

それだけ

アキにしては珍しく、美男美女が主人公でロンドンが舞台

しかもクラッシュのジョー・ストラマーが1曲まるまる歌うというサービス付き

(神様、私の耳をどうか奇跡で治して 笑)

イギリスの水道局に勤めるフランス人のアンリ(ジャン=ピエール・レオ)は

仕事一筋な真面目な男

なのに人員整理のため突然解雇されてしまいます(移民というのが理由)

退職の記念にと金時計を渡される(しかも壊れている 笑)

家族も、友達もいるわけじゃない

アパートを解約し、雑貨店でロープを購入

首吊り自殺を図ったものの失敗

ガス自殺しようとオーブンに頭をつっこむと

ガス会社のストライキでガスが出ない


どうしようかと悩んでいるとき

新聞で「コントラクト・キラー」(殺人請負人)の広告を見ます

(昔からこういうビジネスはあったんだな)

アンリは広告を頼りに「コントラクト・キラー」のアジト

「bar Honolulu」に行き、元締めに会うと大金を払い

殺してほしい人物の写真を渡します(自分の写真)

そしてできるだけ早く殺してほしいと頼みます

これで間違いなく死ねる

バーに入って人生初のウィスキー

すぐに泥酔し(笑)人生初の煙草

相席になった不良親父がアンリに話しかけます

「人生は美しい」

「神の賜物だ」

「美しい花や動物が死を望むか?」

「俺たちだって仕事はない、けど幸せだ」

そこに花売りの女がやってきて、人生初のナンパ

女はマーガレット(マージ・クラーク)と名乗り、住所を教えられ

さらに額にキスまでされてアンリはメロメロ

その姿を窓越しに殺し屋(ケネス・コリー)が見ていました

人生初、女の部屋を訪ね

マーガレットに「“殺し”のキャンセルを」と言われ

「bar Honolulu」を訪れると、なんとバーは壊され瓦礫の山

殺し屋の解約ができない!

アンリがマーガレットのアパートに戻ると、そこには殺し屋がいて

マーガレットの花瓶ドロップで殺し屋が気を失っている最中に

ふたりはホテルに逃げることにします

そして人生初のセックス

アンリは今後どうするか悩み、ひとりバーに入ると

「bar Honolulu」にいたチンピラふたりを発見

ふたりをつけて宝石店に入ると

人生初、強盗と遭遇

ところがチンピラは強盗をアンリになすりつけ逃げてしまいます

人生初、指名手配されたアンリは

再び孤独に生きる決心をし

人生初、ハンバーガー店で働くことにします

しかしすぐにマーガレットに見つかり

「労働者階級に祖国なんて必要ないわ」と説得され

彼女と人生初、国外逃亡することを決意します

そこに殺し屋がやって来て、アンリがハンバーガー店から逃げると

アンリに追いついた殺し屋は「勝ったのは俺だ」と

アンリではなく自らに発砲したのでした

殺し屋は末期ガンでした

別れた妻と娘にお金を残すため、殺人請負人を引き受けたのです

だけど殺し屋は考えた

アンリを殺さず(マーガレットとの恋を実らせたい)

家族が報酬を受け取るためにはどうしたらいいか

 

どうせすぐ死ぬ、ならば自分が撃たれて死ねばいい

それで殺人成立

本作も相変わらずの棒読みで

心がこもっているとは思えないんだけど(笑)

金言がたくさん散りばめられていて、特に心に響いたのが

闇医者?が殺し屋に言ったセリフ

 

「神を信じなければ 地獄は存在しない」

 

自分の身の丈以上の理想や幸せを追いかけるから、人間は不幸になる

私にはそう聴こえました

強盗のチンピラふたりは逮捕され

アンリはマーガレットと再会

 

ハンバーガー店の店主が窓際タバコを吸いながら

眼鏡を拭いている姿で映画は幕を閉じます

たいした欲もないこのおっさんが

結局のところ,いちばん幸せだということなんだろうな(たぶん)

 

 

【解説】映画.COMより

フィンランドアキ・カウリスマキ監督によるサスペンスコメディ。ロンドンの水道局で働くフランス人レオ。突然解雇された彼は自殺を図ろうとするが死にきれず、新聞広告で知った殺し屋コントラクト・キラーに自分の殺害を依頼する。しかしその夜、彼はカフェで出会った花売り娘マーガレットに恋をしてしまい……。主演はフランスの名優ジャン=ピエール・レオ。元ザ・クラッシュジョー・ストラマーによるバーでの演奏シーンも必見。

1990年製作/80分/フィンランド・イギリス・ドイツ・スウェーデン合作
原題:I Hired a Contract Killer
配給:フランス映画社