原題も「Torn Curtain」(破れたカーテン)
カーテンとは、東西冷戦を比喩的した「鉄のカーテン」のこと
ヒッチさんはエヴァ・マリー・セイントを使おうと衣装合わせまでしていたのに
スタジオからジュディ・アンドリュースを押し付けられたうえ
ポール・ニューマンとは馬が合わないという曰く付き(笑)
お気に入り女優を使えず、気乗りのしない撮影だったせいか
ヒッチさんらしい掴みの上手さや、ユーモアのセンスは感じられず
公開後は「さすがのヒッチコックも年老いたか」と評され
最大の苦境に立たされたそうです
でも、そこまでは悪い作品とは思いません
それなりにツッコミどころもあって楽しい(笑)
いきなりポール・ニューマンとジュディ・アンドリュースの
長すぎるイチャイチャ(笑)
ニューマンはアメリカの宇宙委員会に所属する物理学者で
科学者国際会議に出席するためコペンハーゲンに来ています
秘書のジュディとは婚約中で近く結婚式を挙げる予定のようです
カメオはコペンハーゲンのホテルのロビーで赤ん坊を抱いて
ソファに座っているヒッチさん
そこに秘密の連絡文が届き、ニューマンは会議をすっぽかし
東ベルリンに行ってくるので2、3日コペンハーゲンで待つよう彼女に言います
しかしこっそり後をつけ東ベルリン行きの飛行機に乗るジュディ
東ベルリンで待っていたのは盛大な記者会見でした
アメリカ政府に核兵器を無効にする”ガンマ5”の研究を中止されたニューマンは
”ガンマ5”の「数式」を解いたと言われるリント教授を訊ねるため亡命したのです
当時の東側って絶対的な悪だったのですね
ジュディはニューマンをなじるわけですが
彼を愛しているので「帰れ」と言われても帰らない
実はリント教授の頭の中にしかない「数式」を盗むのがニューマンの仕事
郊外の農場の「母方の親戚」の農家(情報部員)に会いに行く
合言葉は書店で受け取った本の暗号、地面に靴で書いた「π(パイ)」
合言葉がスパイの「パイ」ってわかりやすすぎだろ(笑)
それを消し忘れてしまうというオバカっぷり
最初から信じているわけでなく監視しているわけで
農家の主婦とふたりで追っ手を殺してしまうのです
こうなると逮捕も時間の問題
お人よしの教授を騙して数式を聞き出し
アメリカに協力してくれる東ドイツ人たちの力を借り路線バスで逃亡
劇場でスパイだとばれ、「ファイア!」と叫ぶのはご愛嬌
まさか本物の亡命のプロ集団が、ヒッチさんを参考にしていたとは
無事スウェーデン行きの船にまぎれこみ、愛を確かめ合う
でも偽造亡命したり、人を殺したり、数式を盗んだり
悪いのはアンタのほうだから(笑)
アメリカ人だからって、何をしてもいいのは大間違いです
【解説とあらすじ】KINENOTEより
ヒッチコック監督の50本記念作品。ブライアン・ムーアが自分の原作を脚色、「マーニー」のヒッチコックが演出したスパイ推理ドラマ。撮影をジョン・F・ウォレン、音楽はジョン・アディソンが担当している。主演は、「動く標的」のポール・ニューマンと「サウンド・オブ・ミュージック」のジュリー・アンドリュース。彼等をめぐり「その男ゾルバ」のリラ・ケドロワ、「栄光への脱出」のルドウィヒ・ドナート、バレリーナのタマラ・トゥマノヴァが絡んでいる。製作も、ヒッチコックが兼ねている。