正欲(2023)

 

「自分がこんな人間だとバレる前に親が死んでくれて良かった
誰にもバレないように無事に死ぬために生きてる
夜寝る時は、明日自分以外の誰かになっていることを願う」

原作は朝井リョウの同名小説

水フェチの男女

異性恐怖症の女子学生

登校拒否の児童とその両親

小児性愛者の小学校教諭(このテーマを同じ土俵にあげたのは間違い)

といった「多様性」のさらに外側にいる人たちの生きざまと

ネット友だちとのリアル化の危険性

私もマイノリティな人間ですが(笑)

それぞれの人間が違って当たり前、夫婦でも親子でも

100%分かり合うことは不可能だと思っているので(笑)

いわんとしていることは理解できましたが

共感はできませんでしたね

ネット友だちとも、オフ会やプライベートでお会いすることもありますが

映画ファンだからといって、好きな映画のジャンルも感想も様々

だからといって思ったのとは違った、裏切られたとはなりません

共通点がないからこそ面白い、新しい発見があることのほうが多い

 

彼らが社会に馴染めない、一部の人間にしか心を開けないのは

マイノリティのせいでなく

コミュニケーション障害といったほうが正解でしょう

 

寺井啓喜(ひろき)(稲垣吾郎

横浜地方検察庁の検事

10歳になる息子の泰希(たいき)不登校になり

教育方針やYouTubeでの動画発信を巡って

妻の由美(山田真歩)と意見があわない

 

息子がおなじ引き籠りの友だちと立ち上げた動画チャンネルが

わいせつ動画サイトと見なされアカウントが停止されたのをきっかけに

(コメントのリクエストに答え、内容が徐々に過激になっていった)

寺井と対立した由美は、泰希を連れ実家に帰ってしまう

 

俗にいう「一般的」「常識的」な考えの持ち主

残業で夜遅く帰宅してレンチンご飯を食べる光景がリアルすぎ(笑)



桐生夏月(きりゅう なつき)(新垣結衣

広島県福山市イオンモール内の寝具コーナーに勤める販売員

人との会話や付き合いが苦手、実家暮らし

水に性的な快感を覚える

中学の同級生だった佐々木にストーカー的関心を持っている

 

佐々木佳道(よしみち)(磯村勇斗

水に異常な執着心をもっている

横浜の食品メーカーに勤めていたが、両親の交通事故死をきっかけに実家に戻る

同級生の結婚式で夏月と再会

 

「普通」に見えるよう、夏月に偽装結婚を持ち掛け

横浜で同居生活を始めると、お互いの暮らしが心地いいものになっていく

 

神戸八重子(かんべ やえこ) (東野絢香

横浜の大学に通う大学生

男性が近くに寄っただけでパニックや過呼吸になってしまう異性恐怖症

(兄からの近親相姦によるものと思わせるセリフがある)

ダンスサークル「スペード」のダンサー

大也にだけ恐怖を感じないため、大也を理解するため

学祭実行委員でダイバーシティフェス」(Diversity=多様性)の開催

「スペード」の公演を提案する

しかしその直後大也は大学を去り行方不明になってしまう

 

この子、演技巧いなあ(笑)

 

高見優坂東希

スペードの代表ダイバーシティ」に理解を示し協力してくれる

大地の気難しさに頭を悩ませ

大地を救えるのは八重子しかいないと思っている

 

諸橋大也(もろはし だいや) (佐藤寛太

八重子と同じ学部に通う「スペード」の実力派ダンサー

大学祭のミスコンで準ミスターに選ばれるイケメン

 

佐々木と夏月は、ネットの観覧やコメントから

大也も水フェチに違いないとチャットで接触する

 

矢田部陽平(岩瀬亮)

小学校の非常勤講師

ネット上で同じ水フェチをきっかけに知り合い

佐々木と大也の3人で噴水公園で会い、その場にいた子どもたちと遊ぶが

矢田部が児童売春で逮捕され、佐々木と大也も容疑者として逮捕されてしまう

 

結果、性的マイノリティに苦しむ人間と

小児性愛者の犯罪者をごっちゃにしてしまったため

(もっと傷つき苦しむのは被害者の少年のほう)

この作品を肯定できないものにしてしまった

 

越川宇野祥平

検察庁に勤める事務官、寺井の相棒
蛇口を(水を出しっぱなしにするため)んだという藤原という男の記事を読み

「藤原は水に興奮し、盗むことで性的興奮を得たのではないか」と推測

(大也のニックネームはこの犯行に共感したfuziwara)

 

セリフのない短いシーンでも、圧倒的な存在感を見せる凄さ

作中で一番変態力を感じた(褒めています 笑)

 

右近一将(鈴木康介

不登校の児童を支援するNPO団体「ライオンキッズ」のスタッフ

ボランティア活動の一環として、動画配信による子どもたちと

社会との繋がりを増やす活動もしていて

泰希の動画に字幕をつけたり編集したりYouTubeに投稿する協力

由美は夫より右近を頼りにしている

 

那須沙保里(徳永えり

夏月と同じイオンモールに勤める妊婦の副店長

夏月を気にかけ、何かと(結婚や彼氏や子どもについてばかり)話しかけるが

夏月に迷惑がられ対立してしまう

 

捜査の聞き取りのため、寺井と面会した夏月は

拘束された夫へメッセージを頼みます

ただひとこと「いなくならないから」と

それにしても、大人が噴水公園で水遊びの動画撮ったり

(あれくいらいの子どもたちなら、親が近くで見守っているはず)

犯罪者とネットやチャットでやりとりしただけで

証拠もなく逮捕されるものなのかな(笑)

八重子のその後もわからないし(笑)

原作は未読なのでわかりませんが

映画という限られた時間の中で何人もの主人公を描くのには

相当な編集力が必要なのだと思いました



【解説】映画.COMより

第34回柴田錬三郎賞を受賞した朝井リョウの同名ベストセラー小説を、稲垣吾郎新垣結衣の共演で映画化。「あゝ、荒野」の監督・岸善幸と脚本家・港岳彦が再タッグを組み、家庭環境、性的指向、容姿などさまざまな“選べない”背景を持つ人々の人生が、ある事件をきっかけに交差する姿を描く。
横浜に暮らす検事の寺井啓喜は、不登校になった息子の教育方針をめぐり妻と衝突を繰り返している。広島のショッピングモールで契約社員として働きながら実家で代わり映えのない日々を過ごす桐生夏月は、中学の時に転校していった佐々木佳道が地元に戻ってきたことを知る。大学のダンスサークルに所属する諸橋大也は準ミスターに選ばれるほどの容姿だが、心を誰にも開かずにいる。学園祭実行委員としてダイバーシティフェスを企画した神戸八重子は、大也のダンスサークルに出演を依頼する。
啓喜を稲垣、夏月を新垣が演じ、佳道役で磯村勇斗、大也役で佐藤寛太、八重子役で東野絢香が共演。第36回東京国際映画祭コンペティション部門に出品され、最優秀監督賞および観客賞を受賞した。

2023年製作/134分/G/日本
配給:ビターズ・エンド