SHE SAID/シー・セッド その名を暴け(2023)

原題は「She Said」(彼女は言った)

 

2017年、「ミラマックス」社のCEO兼映画プロデューサー

ハーヴェイ・ワインスタインの30年間にわたる性的加害を暴き

#MeToo運動が広がるきっかけのひとつとなった

ニューヨークタイムズの2人の女性記者の活躍を描いた伝記映画

2013年第85アカデミー賞授賞式で司会を勤めたセス・マクファーレン

助演女優賞候補の5人

アン・ハサウェイレ・ミゼラブル)、ヘレン・ハント(セッションズ)

エイミー・アダムス(ザ・マスター)、サリー・フィールドリンカーン

ジャッキー・ウィーヴァー世界にひとつのプレイブック)という

錚々たるメンバーに

 

「おめでとう」

「もう君たちはハーベイ・ワインスタインが好きなふりをしなくて良くなった」

といった性的ジョークをかまし、非難を受けることになりましたが

それくらいワインスタインのセクハラ行為は有名だったのでしょう

ワインスタインのよう大物でなくても

上司が部下を口説いたり、身体を触ったり

お気に入りの部下の待遇は良くして

間違いを指摘する部下の仕事は干しちゃうとか

ちょっと昔までは日本のフツーの職場でもありましたよね

(今でもあるかも知れないけど)

ただワインスタインは、あまりにも節操がない

そして「なぜそこまで」「そうなったか」と考えたときに

弁護士(法律)が彼の味方をしているんですね

加害者を擁護し、被害者を救済しにくいシステムが存在しているからです

性的関係が女性のイメージダウンになることを利用し

示談金を払い守秘義務を負わせる

さらに女性の肉体的な仕組みとして

好きでもない男性の身体でも受け入れてしまいます

そのことで、男性は肉体関係を正当化し

レイプされた女性をさらに苦しめるのです

記者たちはワインスタインのセクハラ問題だけに留まらず

法律そのものの問題をあぶり出そうとします

ふたたび同じような事件が起きないために

だからこそ被害者女性たちも声を上げる決心をしたのです

ニューヨークタイムズの記者ミーガン・トゥーイー(キャリー・マリガン)は

トランプ大統領のセクハラ記事を発表したことで

被害者女性たちは周囲からの反発や嫌がらせ

ミーガン自身にも脅迫の電話に悩まされています

さらに妊娠中のため”つわり”に襲われています

同じくニューヨークタイムズの記者ジョディ・カンター(ゾーイ・カザン)は

フェミニスト団体のシャウナ・トーマスから、ハーヴェイ・ワインスタイン

「日常的にセクハラや性暴力を行なっている」という告発を受けます

上司のレベッカコルベットパトリシア・クラークソン)の指示で

ジョディは事件を記事にするためワインスタインについて調べることにします

出産を終えたミーガンもジョディに協力することになり

ふたりは被害者と思われる女性への取材を開始します

しかし被害者女性たちが取材に応じることはありませんでした

そこには「性加害者(男性)を守るための法制度」が存在してい

たとえ被害者が警察に性被害を訴えても

証拠がなければ事件化することも、民事裁判で訴えることも難しい

恋人や家族に性被害を秘密にしておきたい被害者も多くいます

それよりもワインスタインの弁護士は

高額な裁判費用もかからず世間に知られることもない

高額な示談金を払うかわりに「秘密保持契約」にサインさせていたのです

もちろん示談金を受け取らず、ワインスタインを訴えた女性もいました

しかしマスコミの一方的な憶測による報道により

罵倒や脅迫を受けるようになったと言うのです

映画界でもワインスタインに対する忖度により

彼のセクハラは長年見て見ぬふりをされていました

そのために、あの「ミラマックス」で、あのワインスタインと仕事が出来ると

何も知らない若いスタッフが性的な餌食にされていったのです

 

映画業界のセクハラの隠蔽構造を作るため

ミーガンとジョディは「ミラマックス」の理事、財務担当

ワインスタインの代理人弁護士にも取材を続けていきます

ついに彼女ら丹念な活動により、告発に協力する被害女性たちが現われ

そのなかには、商談目的で関係を迫られ脅されたという

グウィネス・パルトロウ

 

マッサージなど度重なる性的行為の要求を断ったため

映画の主演から外されてしまったアシュレイ・ジャッドもいました

さすがに大物女優の名前まで出てくるとワインスタインも気が気じゃない

ニューヨークタイムズの編集長ディーン・バケットアンドレ・ブラウアー)に

度々抗議の電話をしてくるようになり

(グウィネスが何を言ったかがとにかく気になるらしい)

ディーンはミーガンとジョディに「記事を書け」と

GOサインを出すのでした

ほぼ100%女性目線で描かれていて

被害者女性たちの、何十年経っても消えない苦痛

家族に知られたら今の幸せを失ってしまうのではないかという不安

 

取材する側も子育て中のママなので(夫のなんて献身的なこと!)

本当にセクハラ被害をなくしたい

職場での女性の人権を守りたいという思いが伝わります

最初の告発記事は、アシュレイ・ジャッド(本人出演)が

(有名女優として初めて)「顔も名前も公表たものでした

すると記事が記載された翌月だけでなんと82人もの女性が
ワインスタインに性的暴行受けたと告発してきたのです

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一連の報道を受けて「ワインスタイン・カンパニー」は破産

2022年、ワインスタインはニューヨークの裁判所で禁錮23年の実刑判決

2023年、ロサンゼルスでさらに禁錮16年の実刑判決を言い渡されます

 

なぜワインスタインの悪癖を止めれなかったのか

ワインスタインだって馬鹿ではなかったろうに

そこには権力と金にまとわりつく人間たちがいたからです

 

さらに加害者が優遇されるような現在の法律を根本的に改善しなければ

権力者の汚職は、いつまで経ってもなくならないのでしょう

≪余談≫

プロデューサーのひとりに名を連ねているブラッド・ピット

グウィネス・パルトロウがワインスタインにセクハラを受けていると知ったとき

ワインスタインに「二度と彼女に手を出すな!」と怒鳴りに行ったそうです

199497までブラピとグウィネスは交際し婚約にまで至った)

当時のグウィネスへの思いが忘れられなくて(男ってそういうもの)

この映画の制作に踏み切ったのかも知れませんね

≪余談その2≫

ワインスタインは勝手に外国映画の再編集やカットすることも有名で

もののけ姫」の米国公開が決まった時

宮崎駿(正式には彼のプロデューサー)は

「切断禁止」と書いた紙を貼った日本刀を

ワインスタインに贈ったそうです(笑)

 

 

【解説】映画.COMより

映画プロデューサーのハーベイ・ワインスタインによる性的暴行を告発した2人の女性記者による回顧録を基に映画化した社会派ドラマ。
ニューヨーク・タイムズ紙の記者ミーガン・トゥーイーとジョディ・カンターは、大物映画プロデューサーのワインスタインが数十年にわたって続けてきた性的暴行について取材を始めるが、ワインスタインがこれまで何度も記事をもみ消してきたことを知る。被害女性の多くは示談に応じており、証言すれば訴えられるという恐怖や当時のトラウマによって声を上げられずにいた。問題の本質が業界の隠蔽体質にあると気づいた記者たちは、取材対象から拒否され、ワインスタイン側からの妨害を受けながらも、真実を追い求めて奔走する。
「プロミシング・ヤング・ウーマン」のキャリー・マリガンと「ビッグ・シック ぼくたちの大いなる目ざめ」のゾーイ・カザンが2人の主人公を演じる。「アイム・ユア・マン 恋人はアンドロイド」のマリア・シュラーダーが監督を務め、ブラッド・ピットが製作総指揮を手がけた。

2022年製作/129分/G/アメリ
原題:She Said
配給:東宝東和
劇場公開日:2023年1月13日