タクシードライバー(1976)

You talkin' to me?(俺に向かって話しているんだろう)は

アメリカ映画の名セリフベスト100」で常に上位にランクイン

原題も「TAXI DRIVER

 

どうしても気になって再見してみました

やはり名作ですね

メロウな音楽に映像もスタイリッシュ

ストーリーもわかりやすく

海兵隊員のタクシードライバー

ニューヨークの街を浄化しようと

大統領候補の暗殺に失敗したかわりに

少女売春の元締めを撃ち殺していくというもの

1981年、レーガン大統領暗殺未遂事件の犯人が

影響を受けた映画としても有名ですね

(本作もジョージ・ウォレス大統領選候補狙撃事件(1972)がヒント)

 

ロームRG14 .22LR(サタデーナイトスペシャル)から6発全弾発砲し

レーガン大統領の左胸部(重症)、大統領報道官の頭部(重症)

ワシントン警察の巡査、シークレットサービスのひとりに命中

その後ただちに他のシークレットサービスや警官に取り押さえられ

犯人は逃亡しようともせずその場で身柄を拘束されます

10秒にも満たない一連の出来事は

テレビカメラによってアメリカ中に生中継で放映されました

安倍元首相の銃撃犯がこの映画のファンだったか

主人公に影響を受けたかどうかはわかりません

しかし安倍元首相の演説を腕を組んで聞き

拍手する犯人の姿がどうしても

(私から見て)トラヴィスと重なってしまったのです

逮捕された山上容疑者は目立たないタイプで

仕事以外はひきこもりだったと報道されていますが

腕は筋肉質で、銃の構えも鍛錬しているように見えます

 

そしてトラヴィスと同じように、暗殺しようとした理由は

「政治信条への恨み」ではありませんでした(いわゆる逆恨み)

ラヴィスは死を覚悟して犯行に及んだわけですが

逆に英雄として扱われてしまい

少女(アイリス)の両親から感謝の手紙を受け取ります

彼を振った女性(ベッツイー)と和解することもできました

(ラストのシーンは脚本にないものをスコセッシが付け加えたもの)

山上容疑者も死刑を覚悟して犯行に及んだと思うんですね

彼も英雄として崇められようになるのでしょうか

山上容疑者に感謝のメッセージを送る人間もいるかも知れません

映画の中と現実の見境がなくなる恐怖

本作はベトナム戦争の後遺症がテーマですが

今はコロナによる抑圧された生活や、深まる格差社会

鬱憤が溜まっている人も多いかと思います

 

だけど、どんな理由があったとしても

殺人を正当化することは許されないのです

映画は映画として楽しむべき

終盤のバイオレンスシーンは今見ても過激で

万人にお薦めはできませんが

今こそ見るべき映画のひとつ

 

現代社会に生きるプアワーカーの心理を

考察する資料としても逸品だと思います

 

 

【解説】映画.COMより

マーティン・スコセッシ監督とロバート・デ・ニーロがタッグを組み、孤独なタクシードライバーの姿を通して大都会ニューヨークの闇をあぶり出した傑作サスペンスドラマ。ニューヨークの片隅で鬱屈した日々を送るベトナム帰還兵の青年トラビス。不眠症の彼は、夜勤のタクシードライバーの仕事に就く。彼は夜の街を走りながら、麻薬や売春が横行する社会に嫌悪感を募らせていく。ある日、大統領候補パランタインの選挙事務所で働く美女ベッツィと親しくなったトラビスだったが、初デートでポルノ映画に誘いベッツィを怒らせてしまう。密売人から銃を手に入れ、自らの肉体を鍛え始めたトラビスの胸中に、ある計画が湧き上がり……。当時13歳のジョディ・フォスターが売春婦役を演じて注目を集め、アカデミー助演女優賞にノミネートされた。第29カンヌ国際映画祭で最高賞パルムドールを受賞。