原題は「The Secret Scripture」 (秘密の聖書)
原作はセバスチャン・バリーの同名小説(2008)
私的には予想外の結末で面白かったのですが(笑)
批評家からはかなりの酷評と低評価だったそうです
原作のほうがあまりに素晴らしいのか
南北アイルランド人の描き方が間違っているのか
聖書を日記にしたことが、神への冒涜になるのか
理由はわかりません
1980年代半ば、アイルランド西部にある精神病院が
老朽化のため壊されることになり、患者たちは転院しなければなりません
そこでただひとり転院を拒み続ける
ローズ・クリア(ヴァネッサ・レッドグレイヴ)という老女の
再鑑定を大司教から依頼されてやって来た
報告書にタイプされてしまい精神病院に入れられ
その後自分が産んだ赤ちゃんを撲殺したとして
“精神障害犯罪者”として40年以上収容されていました
グリーン医師は院長にローズの転院を少しだけ遅らせるように頼み
担当の女性看護師ケイトリンと共に、彼女の話を聞き
聖書に書かれた日記を読み、過去の書類を調べます
第二次世界大戦の初期の1942年
イギリス領北アイルランドにドイツ軍が侵攻してきたため
シッターをして働くローズ(ルーニー・マラ)は職を失い
叔母が経営する故郷の南アイルランドの禁酒ホテルに避難し
地元の独身男たちは、都会から来た洗練された若い女に興味を持ちます
ある日ローズは酒屋の息子マイケル・マクナルティ(ジャック・レイナー)に
声をかけられお互い好意を抱きますが
マイケルは英国軍の兵士不足のため
RAF(Royal Air Force =イギリス空軍 )のパイロットに志願していました
地元の一部の男たち(IRAか)はマイケルを裏切り者とみなし
北アイルランドから来たローズに「どちら派か」と詰め寄ります
海水浴をしていると、見知らぬ男から
海岸は「女人禁制」とか「男の目を見ていいのは妻だけだ」と警告を受けます
ローズが男の言葉を気にせず、帰り道を歩いていると
今度は家まで送っていくという
男はカトリック教会のガント神父(テオ・ジェームズ)で
それからというものローズの行くところに何かと姿を現すようになります
彼は神父の身でありながらローズに恋をしてしまったのです
一方で仕立て屋のジャック(エイダン・ターナー)から猛烈にアプローチされ
ダンス・デートしているところを目撃したガント神父が嫉妬に狂い
神父とジャックは殴り合いの喧嘩になってしまう
叔母はローズと男たちの小さな町での噂に耐え兼ね
ローズには生まれながらの魔性があると
彼女を人里離れた家畜小屋に隠すことにします
ひとり自給自足の生活をはじめるわけですが
なんとそこに戦闘機が墜落し、パラシュートが絡まり木にぶら下がっている
パイロットを救助するとそれはマイケルでした
イギリス軍の兵士を探しに来た、ジャックら3人組からマイケルを隠し
マイケルの傷が癒えるまでと、ふたりは穏やかに暮らしていました
ご都合主義なストーリーと言えば
まあ、その通りそうなんですが(笑)
そこにローズの居場所を知ったガント神父がやってくる
山奥でひとりで暮らすローズを不憫に思い家政婦として雇いたいと言う
ローズは「しばらく考えさせて」とやんわり断りますが
神父は諦めきれません
やがてマイケルの傷が治り、復員しようとした日
ふたりは激しく結ばれ、(プロテスタント)教会で結婚式を挙げます
指輪の代わりは葉巻の帯、神父の祝福を受ける
しかし幸せもつかの間
ローズがマイケルと暮らしていると知った神父は
彼女が「色情狂」である可能性が高いという報告書を作成し
それを盗み見したシスターによって
ローズを精神病院に入院させるという同意書に叔母がサインしてしまう
山小屋にはマイケルを追う3人組が再びやってきて
ローズはマイケルを逃がしますが
(行方不明になった夫を見つけたと思った)警官にローズは捕らえられ
聖マラキ病院に強制入院させられてしまいます
そこでは反発する患者は拘束され、薬や電気ショックを与えられます
見舞いに来たガント神父は、ローズに「夫がいれば退院できる」と
プロポーズを示唆しますが、彼女から「妊娠している」と告白されるのです
それでも神父はローズが好きで、なんとか救いたいと思ってる
それは彼のせいでローズが入院させられてしまった後悔と
彼なりの懺悔だったのかも知れません
妊婦の入院患者は(葉巻を作る)別病棟に移され
出産を待つことになるのですが、そこで産まれた子は養子に出されると知り
隙を見て病院を脱走し、泳いで海峡を渡り逃げようとするローズ
世間では赤子はゴーント神父の子だと思われていました
(カトリックなので誰もローズとマイケルが結婚式を挙げたことをしらない)
脱走の知らせを受けた警官とガント神父はボートでローズを追い
警官は対岸でローズが赤子を殴っているのを見てしまう
ローズが目を覚ますとそこはベットの上で、息子は死んだと聞かされます
その後、ガント神父からマイケルが3人組に殺されたことを知らされ
ローズは神経が衰弱し、神父とマイケルの見分けさえつかない
しかも取り乱すたびに電気ショックを与えられ、本当に正気を失ってしまう
ローズは残っている記憶を留めるため、「ローズ記」として
聖書に覚えていることを書き留めていくようになります
私は息子を殺していない
マクナルティという夫は存在する
へその緒を切ったのが間違いだった
過去の書類に不審な点はない
ふと看護師のケイトリンが、ローズが息子を産んだ日と
グリーン医師の誕生日が同じことに気付く
しかもグリーン医師に再鑑定を頼んだ大司教のサインはガント
グリーン医師は両親と住んでいた売却予定の家に行き
父からの遺言を見つけます
そこにはガント神父から養子を譲り受けていたこと
死ぬ前に息子ががローズ・クリアの子と打ち明けられたことが書かれていました
そしてもうひとつ、ローズが大切にしていたマイケルの勲章
ローズは息子を殺してはいなかった
ガント神父が保護し里子に出し、大切に育てられたのがグリーン医師
グリーン医師はなぜ大司教がローズの再鑑定を自分に依頼したのか
その理由をはっきりと理解します
売り家の看板をはずしローズを迎えに行く
(ついでに素敵な看護師も迎えに行け 笑)
ガント神父がいつか母子が暮らせるようになる、この日までのために
ローズの息子を連れ去ったのかどうかはわからない
もしかしたら子どもは、本当にガント神父の子だったのかも
知れないとさえ思ってしまう
でもそんなことはどうでもいい
立派に育った息子の姿と、やさしさと思いやりに
彼女の40年間の苦しみが報われたことには違いありません
【解説】allcinema より
「マイ・レフトフット」「父の祈りを」のアイルランドの名匠ジム・シェリダン監督が、同国の人気作家セバスチャン・バリーのベストセラーを映画化した大河ロマン。第二次世界大戦時のアイルランドを舞台に、40年間も精神病院に収容されていた老女のミステリアスな愛の物語を綴る。主演は「キャロル」のルーニー・マーラと「ジュリア」のヴァネッサ・レッドグレーヴ。共演にジャック・レイナー、テオ・ジェームズ、エリック・バナ。
アイルランドの古い精神病院、聖マラキ病院。取り壊しが決まり、患者たちは新たな病院に転院することになるが、ただ一人老女のローズだけはここを動こうとしなかった。彼女は自分の赤ん坊を殺したとの罪で40年間もこの病院に収容されていた。そんなローズの問診をすることになったグリーン医師は、彼女が一冊の聖書に自らの人生を書きつづっていることを知り、彼女の語る過去に耳を傾けていく――。第二次世界大戦中、故郷の田舎町で暮らしていた若きローズは、男たちの注目の的だった。中でも神父のゴーントはしつこく付きまとっていた。そんな中、イギリス空軍に志願したことで裏切り者と白眼視されていた青年マイケルと恋に落ちるローズだったが…。