2人のローマ教皇(2019)

壁ではなく橋を作れ

原題もThe Two Popes

ベネディクト16世(在位20052013)とフランシスコ教皇(在位2013~)

2代に渡るローマ教皇実話に基いたフィクション

日本人にはあまり知られていないバチカンの儀式を知れるのは面白い

教皇選挙の「コンクラーヴェ

枢機卿の投票総数の3分の2以上の票を得るまで何度も行われます

民衆に伝える結果は煙の色(黒は未定、白で決定)

伝統の赤い教皇靴、列福(れっぷく)式の司式(儀式の進行)

バルコニーで集まった民衆への最初の祝福

ベネディクト教皇神学者出身の超保守派なんですね

ジェンダー、同性愛、女性の避妊や中絶に反対

アニメやコンピューターゲームに対しても批判的

「教理の番犬」とあだ名され、枢機卿の中でも支持しない派や

民衆の中には「ナチ野郎」と呼ぶ者もいました

さらに教皇庁内部告発書が公となり

バチカンによる資金洗浄聖職者による信者への性的虐待など

スキャンダルが発覚

カトリック教会キリスト教の歴史になかで最も揺れ

ベネディクト教皇は非難され、退任を求める声があがります

これは先に「スポットライト 世紀のスクープ」を観ていて正解

当時のカトリック教会のおかれていた立場が分かります



ベネディクト教皇はその事態に

高齢と健康上の問題を理由に、生前退位を決断をします

同じ頃教皇選挙でベネディクト教皇ラッツィンガー枢機卿)に敗北した

アルゼンチンのベルゴリオ枢機卿バチカンに辞表を出していました

教皇の在位期間は選出から死亡までとなっていて

教皇生前退位は本当に特殊で異例な出来事なのですね

このため退位後は名誉教皇という称号が与えられる

なので教皇生前退位した場合は、名誉教皇と現役の教皇

ふたりの教皇が存在するようになるわけです

後任に任命されたのは、かってのライバルで

穏健派のベルゴリオ枢機卿(フランシスコ教皇)でした



ベルゴリオ枢機卿は、かっては大学で化学を学び愛する女性がいました

彼女にプロポーズをして、幸せな未来が待ってるはずでした

しかしある日の教会で偶然神の声を聞いてしまいます

ベルゴリオは結婚を取りやめ、イエズス会に入会します

神学校で修士号を所得し、神学院院長に就任

その指導力が高く評価、1973アルゼンチン管区長に任命されます

その当時はベルゴリオもラッツィンガーと同じように

バリバリの保守派だったんですね

その後、アルゼンチンは軍事政権の支配下になり

「汚い戦争」(19761983)と呼ばれる白色テロで多くの犠牲者が発生

政府側についていたベルゴリオは

貧困者支援や(反政府側の)怪我人の救助に当たっていたふたりの司祭を解雇

ふたりの司祭は政府軍に拉致され拷問を受けることになります

ただ教会を守りたかった

そのことがベルゴリオに誤った判断をさせてしまったのです

アルゼンチン国内でベルゴリオは批判を受け

今でもベルゴリオの責任を問う声が存在しているといいます

バチカンのスキャンダルを知り、自らも辞任しようと決意したベルゴリオに

ベネディクトは自分がドイツで大司教であったとき

聖職者の少年少女への性的虐待があったという報告にもかかわらず

関与した神父を移動させ、事件を隠蔽し揉み消したことを明らかにします

それは許されることではありませんが

ベネディクトもベルゴリオと同じ、ただ教会を守りたかったのです

ふたりはお互い赦しを請い、お互いの罪を赦します

やはりアンソニー・ホプキンスジョナサン・プライスがさすがの演技で

本物の教皇にそっくりに見える(笑)

しかもピザにファンタオレンジなんて、おちゃめで可愛いすぎる

ふたりでサッカーワールドカップ観戦の演出も洒落ています

因縁のドイツ対アルゼンチン、これは教皇でも燃えますよね(笑)

実際のふたりも大のサッカーファンであるということです

この映画の優れたところは、ローマ教皇という

私たちの手の届かない存在をテーマにしながら

社会的批判と、ヒューマン・ドラマのバランスの良さに尽きると思います

仕上げとしての見終えたあとの気分もいい

ぜひ「おじいちゃん萌え」してみてください(笑)

 

 

【解説】映画.COMより

シティ・オブ・ゴッド」「ナイロビの蜂」のフェルナンド・メイレレス監督がメガホンをとり、2012年に当時のローマ教皇だったベネディクト16世と、翌年に教皇の座を受け継ぐことになるホルヘ・マリオ・ベルゴリオ枢機卿の間で行われた対話を描いたNetflixオリジナル映画。カトリック教会の方針に不満を抱くベルゴリオ枢機卿は、ベネディクト教皇に辞任を申し入れる。しかし、スキャンダルに直面して信頼を失っていたベネディクト教皇はそれを受け入れず、ベルゴリオをローマに呼び寄せる。考えのまったく異なる2人だったが、世界に10億人以上の信徒を擁するカトリック教会の未来のため、対話によって理解しあっていく。ベネディクト16世役にアンソニー・ホプキンス、ベルゴリオ役に「天才作家の妻 40年目の真実」のジョナサン・プライス。脚本は「博士と彼女のセオリー」「ボヘミアン・ラプソディ」のアンソニー・マッカーテン。Netflix20191220日から配信。日本では配信に先立つ1213日から、一部劇場にて公開。