エミリア・ペレス(2024)

原題はEmilia Pérez

メキシコの麻薬王が、チャンスに恵まれない女性弁護士リタに

性別適合手術を受ける協力をしてもらい

エミリアという名前の女性になり

かってのカルテルの富と人脈を利用して

行方不明になったカルテルの犠牲者(パラ)を見つけ

非営利団体を設立し生きがいを見つけますが

身分を隠して呼び寄せた元妻ジェシー

子ども達を連れて愛人と去ろうとしたため

愛人を痛めつけ金を渡し姿を消すよう脅します

怒った元妻は愛人と共にエミリアを誘拐

エミリアを助け出そうとするリタでしたが・・

カンヌ国際映画祭では、審査員賞、主演女優賞、サウンドトラック賞

ゴールデングローブ賞では、作品賞、助演女優賞、非英語映画賞、主題歌賞を受賞

アカデミー賞でも大本命といわれ13部門ノミネート

しかしガスコンのXでの過去の不適切発言が発覚し

ガスコンはアカウントを停止し謝罪したものの

アカデミー会員から手のひら返しを食らってしまいます

最多ノミネート作品が作品賞を受賞できなかった例は多々ありますが

主演俳優炎上作品そのものがキャンセルされてしまうというのは

SNS時代だからこその現象かもしれません

(結果は助演女優賞と主題歌賞の2部門受賞のみ)

テンアメリ系にも厳しく批判され

メキシコではボイコット騒ぎに展開するほど大問題になったそうです

理由は主演3女優メキシコ人でなかったこと

ガスコンはスペイン人、ゾーイ・サルダナはドミニカ系アメリカ人

歌手のセレーナ・ゴメスは(父親はメキシコ人)テキサス生まれのアメリカ人

全員スペイン語は話せるものの、やはりメキシコのスペイン語とは

ニュアンスが違うのでしょうね

原作は2018年に発表されたフランスの作家ボリス・ラゾンの小説

監督のジャック・オーディアールもフランス人

フランス人が描くメキシコ人が当事国の人々にしてみれば

「なんちゃって」メキシコ人「あるある」

ヨーロッパで評価が高くても、受け入れられなかったことがわかります

過去には「エビータ」でマドンナがアルゼンチンのファーストレディや

SAYURI」の日本人芸者をチャン・ツィイーが演じたことでも

強烈に批判を浴びたそうですが、同じようなことなのでしょう

で、私の評価はどうかというと悪くはなかったです

「ブルータリスト」でユダヤハンガリー人が英語なのはOKで

スペイン語が本場の発音でないと批判する意味がわからない

昔のハリウッドの映画なんて、世界各国全人類英語だったくせに(笑)

さらに大きく「好み」が左右していて

フランス映画だけに、歌でセリフを語るミュージカルなので

くるくる廻ってヒットナンバーを熱唱するような

よくあるミュージカル映画が好きな人にはおススメしません

どちらかといえば「ダンサー・イン・ザ・ダーク」のような不条理系ミュージカル

エミリアビョークで、リタがカトリーヌ・ドヌーヴ

ヒロインは幸せを掴めず、ラストは子どもの世話をよろしくという

絶望落ち込む映画が好きな人向け

近年はLGBTQものがあまりに大量生産されていて

「蜘蛛女のキス」や「クライング・ゲーム」を見たころの

衝撃や感動はありませんでしたが

マイノリティとして生きる苦悩は伝わりました

メキシコシティで弁護士をしているリタ(ゾーイ・サルダナ

メディアの妻が(夫に殺された事件で)

自殺であることを立証する(でっちあげる)ための原稿を書き

リタの上司は最終弁論で勝訴します

良心に反するうえ上司は記憶力も曖昧なおバカ

給料は安く不満だらけ

そこに高額な報酬で仕事を引き受けて欲しいという匿名の電話があり

そのクライアントはリタの不幸な状況をよく知っていました

リタが拉致同様に連れていかれ、面会したのは麻薬カルテルの大物マニタス

彼は密かに性別適合手術を受けるため2年前からホルモン治療を受けており

女性として新たな人生を始めたいとリタに打ち明け

(手術して他人になるため最大級の)準備をしてほしいと頼みます

すでにリタ名義で200万ドル振り込まれた口座があり

引き受けてくれたら暗証番号を教えると伝えます

とはいえ真実を知った以上、断ったら命はないことは目に見えている

リタはバンコクテルアビブの医師に手術の全貌を聞き込み

手術同意する外科医を見つけます

マニタスの妻ジェシーと幼い息子ふたりをスイスに移住させると

マニタスの死は偽装され、マニタスの死体が見つかったとニュースで流れます

その間マニタスは性適合手術と全身整形のため何か月も入院していました

胸の膨らみ、膣の形成、髪の毛から爪の先まで

女になる痛みと苦しみと努力は、本人にしかわからないでしょう

それから4年後、リッチな弁護士としてロンドンに住み活躍していたリタは

「偶然」ではなく、エミリア・ペレスとなったマニタスと再会します

エミリアは妻と息子たちと再びメキシコシティで一緒に暮らすため

リタに手配して欲しいと頼みに来たのです

エミリアは死んだマニタスの遠い従妹ということにし

スイスからジェシーと子どもたちを呼び寄せたリタ

しかし子どもたちはすでにスイスでの生活のほうに慣れていて

ジェシーエミリア束縛されていると感じストレスMAX

まだ若く性欲のはけ口もない

一時期不倫関係にあったグスタボに連絡し関係を復活させてしまいます

エミリアリタとレストランで食事中

カルテルに誘拐され行方不明になった息子のビラを配る母親と出会います

その夜エミリアが次男を寝かしつけている

次男エミリアの匂いはパパと同じ、だから好きとエミリアに甘えます

香水なんかいらないと

パパだとは言えない、だけどわが子への愛おしさが増すエミリア

フランスの哲学者ボーヴォワールの「第二の性」(1949)という著書で

有名な「人は女に生まれるのではない、女になるのだ」の言葉がありますが

トランスジェンダーの人ってやはり「第三の性」といいますか

生まれながらの女性とは違う、女性特有のヒステリックさもないし

いい意味で寛容で両立的、父性と母性の両方を持っている気がします

 

エミリアはリタを通じて、投獄されているかってのカルテルのメンバーから

遺体遺棄した現場を聞き出し

犠牲者(パラ)を特定するための非営利団体NGO)を設立

マスコミには正義のヒーローさながら大きく取り沙汰されます

行方不明になった(生きていたら殺害しようとナイフを持参)

DV夫を探しに来たエピファニアと恋人になり

順風満帆な毎日を送っていましたが

ジェシーグスタボと結婚して新しい家に引っ越すと言います

エミリア息子たちを「私のもの」と、出ていくことを許さないでいると

ジェシー息子たちを連れて消えてしまいます

エミリアジェシー口座を凍結しお金を使えないようにし

グスタボを暴力で脅し金を渡すとメキシコを出国するよう命令します

ジェシーエミリアを許さず、グスタボと共にエミリアを誘拐しリタに身代金を要求

エミリアの切断したを送りつけます

リタはエミリアを救出するために雇った8人の警備チーム

指定場所に行くと銃撃戦になり

エミリアジェシーに初めての出会った日、ネックレスのプレゼント、結婚式

ふたりしか知らないことを話しだします

エミリアがマニタスであることに困惑するジェシー

(長年夫婦だったらどこかで気付くとと思うがな)

グスタボエミリアを車のトランクに積み込み逃げようとすると

ジェシーグスタボに彼に銃を突きつけ車を止めるように命じます

ジェシーが発砲し銃を奪おうとするグスタボと揉み合いになると

車は道を外れ崖から転落

やがて爆発、3人の死が確定したのをリタは道路から眺めていました

リタはエミリアジェシーの子どもたちを引き取ることにし

彼らの母親になることを申し出ます

エピファニアはエミリアの葬儀の行進

真実と自由のために戦ったエミリアの弔辞を歌うのでした

ここに出てくる男たちは単なるお飾り

女のたちの葛藤と友情の物語でした

死をもって己の罪を償うようなラストでしたが

生きがいを得てだんだん綺麗になっていくリタとエミリアがよかった

 

 

【解説】映画.COMより

ディーパンの闘い」「君と歩く世界」「預言者」などでフランスを代表する名匠として知られるジャック・オーディアールが手がけ、2024年・第77回カンヌ国際映画祭で審査員賞と4人の俳優が女優賞を受賞した作品。メキシコの麻薬カルテルのボスが過去を捨て、性別適合手術を受けて女性として新たな人生を歩みはじめたことから起こる出来事を、クライム、コメディ、ミュージカルなどさまざまなジャンルを交えて描いた。
メキシコシティの弁護士リタは、麻薬カルテルのボスであるマニタスから「女性としての新たな人生を用意してほしい」という極秘の依頼を受ける。リタは完璧な計画を立て、マニタスが性別適合手術を受けるにあたって生じるさまざまな問題をクリアし、マニタスは無事に過去を捨てて姿を消すことに成功する。それから数年後、イギリスで新たな人生を歩んでいたリタの前に、エミリア・ペレスという女性として生きるマニタスが現れる。それをきっかけに、彼女たちの人生が再び動き出す。
カンヌ国際映画祭ではアドリアーナ・パス、ゾーイ・サルダナ、カルラ・ソフィア・ガスコン、セレーナ・ゴメスの4人が女優賞を受賞。特にエミリア・ペレス/マニタス役を演じたカルラ・ソフィア・ガスコンは、カンヌ国際映画祭において初めてトランスジェンダー俳優として女優賞を受賞した。第97回アカデミー賞でも作品賞や国際長編映画賞をはじめ、非英語作品としては史上最多となる12部門13ノミネートを果たし、助演女優賞ゾーイ・サルダナ)と主題歌賞の2部門を受賞した。カルラ・ソフィア・ガスコンもトランスジェンダー俳優として初の主演女優賞ノミネートとなった。

2024年製作/133分/G/フランス
原題または英題:Emilia Perez
配給:ギャガ