ボーダーライン(2015)


原題は「sicario」で殺し屋、暗殺者という意味
決して悪い邦題ではないけれど、チラシからキャッチコピーから
見る前から勝手な先入観を植え付けようとするやりかたは
いいかげんどうなのかなと思います
 
派手な銃撃戦などはありません
ソダーバーグ監督の「トラフィック」(2000)を思わせる
硬派な手触りでした
 
 
 
メキシコの麻薬カルテルを殲滅するために
FBIの女性捜査官ケイト(エミリー・ブラント)が
特別捜査官マット(ジョシュ・ブローリン)が率いる謎のチームに立候補し
麻薬と犯罪の街フアレスに足を踏み入れます
 
CIAの工作については、目新しさは特にないものの
当たり前の常識とか正義とか倫理観に対して
「それって本当に正しいの?」という問いかけには答えを悩みます
トランプ大統領がメキシコとの国境を封鎖したくなる気持ちも
理解できるようになってしまうのです
これがドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の特色なのでしょう
 
こういうリアルな凄惨さを見せられると
何が正しいのかがわからなくなるのです

ヒロインが見たのは法も正義も秩序も逸脱した世界
首のない裸で吊り下げられた男女の遺体
渋滞のインターチェンジでの銃撃戦
銀行での現金の洗濯
 
自分がただひたすらに弱い傍観者であることにイラつく
喧嘩腰のくせに、なにひとつ役立ず
根本から組織を倒すための作戦なのに、結果邪魔ばかりなのです
 
 
 
これは、悪を本当に成敗するつもりならば
自らの手を汚す覚悟をするということ
 
逆にカルテル殲滅のためだけに命を捧げる男
正体不明のメキシコ人、アレハンドロ(ベニチオ・デル・トロ)が
素晴らしくかっこいい
デル・トロに麻薬犯罪ものをやらせたら、演技ではなくまさしく「本物」
紛れもない犯罪者です(笑)
最初から彼がトップクレジットでやったほうが
もっと成功したでしょう
 
そう思うとヒロインも「本物」を演じれるヒラリー・スワンク
綺麗どころならシャーリーズ・セロンが、私的には向いていたと思います
 
 
暗視シーン始め、画面の動きや映像は美しく
コーエン作品でおなじみのロジャー・ディーキンスのカメラも逸品
 
 


 
 
このデル・トロを見たなら、彼が助演男優賞にさえ
ノミネートさえされなかったことが納得いきません
わかったことは、合言葉は「マヌケ」だということです
 
ヒロインの行動にはイラつきましたが(笑)
デル・トロには惚れました、ぞっこんです
私から「お気に入り」を捧げたいと思います
 

【解説】allcinemaより
メキシコの麻薬組織壊滅を目的とする特殊チームにスカウトされた正義感あふれるFBI女性捜査官が、突然放り込まれた麻薬戦争の最前線で目の当たりにする衝撃の実態をリアルかつ極限の緊張感で描き出した社会派サスペンス・アクション。主演は「オール・ユー・ニード・イズ・キル」のエミリー・ブラント、共演にベニチオ・デル・トロジョシュ・ブローリン。監督は「灼熱の魂」「プリズナーズ」のドゥニ・ヴィルヌーヴ
 FBIの誘拐即応班を指揮する女性捜査官、ケイト・メイサー。ある日その活躍が認められ、メキシコの麻薬組織“ソノラ・カルテル”の壊滅と最高幹部マヌエル・ディアスの拘束という極秘任務を帯びた特殊部隊にスカウトされる。こうしてリーダーの特別捜査官マット・グレイヴァーやコンサルタントとしてチームに同行する謎のコロンビア人アレハンドロともに国境を越えてメキシコのフアレスに向かったケイト。しかしそこで待っていたのは、正義や法の手続きなどが一切通用しない、暴力のみが支配する麻薬戦争のあまりにも深い闇だった。