ザ・マミー(2017)

「トラになりたい王子がいた しかしなれなかった」

「ギャングに襲われた場所でトラだけが生きのびて 街で子どもを食っている」

 

原題は「Vuelven」(スペイン語で”戻って来る”の意)

英題は「Tigers Are Not Afraid」(トラは恐れない)

邦題は「mammy」(母親)と「mummy」(ミイラ)を

かけたのだと思いますが(笑)ミイラは出てきません

社会派ダークファンタジー

 

キャッチコピー(一部)は

ブリュッセル国際ファンタスティック映画祭観客賞・銀賞ほか

国際映画祭で51

スティーブン・キングが絶賛し

ギレルモ・デル・トロ2017年のベスト映画に選出

そんな凄い映画なのかと思うわけですが(笑)

かなり意味不明

 

もしかしてメキシコの社会情勢に詳しければ

もう少し理解できたかも知れません

現在もなお続いているメキシコの麻薬戦争

麻薬組織(カルテル)同士の縄張り争いのほかに

麻薬組織と密売の取り締まりを強化したい

メキシコ政府との間の武力紛争

殺人被害者は20万人以上、行方不明者は約34000

 

その多くが麻薬の売人でもなく

治安維持に勤めた警察官でも、反麻薬運動家でもない

なぜ普通の市民だったのか



民族差別は麻薬戦争においても行われ

先住民族たちは警察、軍隊、司法システムの標的にされたそうです

またメディアと報道関係者も攻撃を受けたそうです

そして麻薬カルテルによる人身売買

相手が子どもでも容赦ありません

物語は小学校の作文の授業から始まります

課題はお伽話を書くこと

11歳のエストレラはトラが主人公の物語を考えます

そこに銃撃音、教室は混乱し全員伏せます

そこで担任の先生が、3つの願いを叶えるという

3つのチョークをエストレラに渡します

 

休校になり家に帰るエストレラ

母親の姿はありません

エストレラが感じるのは流れる血のライン

チョークに1つめのお願い

「戻ってきて」と願うと「私はここよ」とママの声がするのでした

お腹が空いたエストレラはママを探すため街を彷徨います

エストレラはストリート孤児グループの

シャイネ、ブラヤン、ポップ、トゥッシ、モロの5人と知り合います

 

シャイネはファスカス一味のカコから銃とiPhoneを盗んだせいで

カコとカコの兄のティオに追われていました

そしてモロが捕らえられてしまいます

そこでシャイネは、エストレラに盗んだ銃を与え

ギャングを殺したら、仲間にすると言います

エストレラが建物に忍び込みニュースを見ている男に銃を向け

(政治家のエスパルザ(裏の顔はチノ)とギャングの繋がりが報じられてる)

ふたつめのお願い、殺さずに済むように願います

 

すると血のラインがエストレラの手首に絡み発砲

撃たれたカコが死んでいました

自分が殺したの?それとも亡霊が?

現実と幻覚の区別がつかない

建物には檻があり、子どもたちが閉じ込められていました

通報でやってきた警察により子どもたちは解放

その中にモロもいました

 

ねぐらに戻ると、その夜再びママの声が囁きます

「彼らがあなたを探しにくる」

「彼らを私たちのところに連れてきて」

エストレラはギャングに見つかる前に引っ越そうと言います

そしてかっては豪邸だった廃墟に身を隠します

なぜ電気が通っているのか、テレビは見れるのか

ロード・オブ・ザ・リング」を知ってるとか

iPhone電源入れっぱなしで(充電も持ちすぎ)

夜中に電球パチパチとか、見つかるだろ!

というツッコミはおいといて(笑)

 

エストレラがシャイネになぜiPhoneを棄てないのかと訪ねると

iPhoneには犠牲者の写真が保存されていました

そこにはシャイネの母親の写真があったのです

家が焼かれ、ママの写真はこれだけなんだ

シャイネがエストレラにママの写真を持ってるか、と聞くと

全部家においてきたと答えます

エストレラに内緒で、彼女の家に写真を取りに行くシャイネ

そこでティオに見つかってしまい

廃墟にやってきたティオはシャイネを助けようとしたモロを撃ちます

 

なにをやっても可愛いモロ

みんなの愛しい弟モロ

そのモロが死んでしまう

(幽霊になっても可愛い)

さらになぜティオがカコのiPhoneにこだわるのか

なにか秘密があるはずだとシャイネがフォルダのひとつを見ると

それは政治家のチノが女性を拷問し殺害した動画でした

 

エストレラはシャイネにiPhonをダシに

チノをおびき寄せるようと言います

エストレラはチノに電話をかけ

モロの仇、ティオを始末することを条件にiPhonを渡すと伝えます

チノは同意し、会う場所を指定すると

カコを殺したのは自分だ

ティオの始末はまかせておけ、と返事をします

 

怖くなったポップとトゥチはチノに会うことに反対し

トロール中の警官に動画を見せますが

「知らない」と逃げられてしまいます

 

大人は当てにならない、自分たちの命は自分たちで守るしかない

待ち合わせ場所の古いスパに向かう子どもたち

チノはティオを殺したと言い、iPhonを渡すシャイネ

シャイネからパスワードを知らないと聞いたチノはiPhonを壊します

しかしすぐに、パスワードを知らなければ電話もかけれない

偽物を渡されたことに気付きます

ポップとトゥチはそこで逃げましたが

エストレラはシャイネの願いである、頬の火傷の跡が消えるように

チョークで×を書き、最後のお願いをします

その瞬間、シャイネは顔を撃たれ死んでしまう

エストレラは逃げ出し、モロのトラの人形がエストレラを導きます

 

トラの人形についてシャフトからいきついた先は

ビニール袋に入れられた多数の死体が隠された部屋でした

腐敗した死体の中からママを探すエストレラ

ママは一時的に蘇生し、ブレスレットをエストレラの手首に移します

そしてチノを呼ぶことを再び要求します

エストレラはカコの電話チノを部屋に誘い込み

入って来たチノを閉じ込めると、犠牲者たちがチノを殺す音

 

そこにシャイネの幽霊が現れ

エストレラと短い別れ

の後、部屋に入り火をつけるのでした

建物から出る途中、エストレラは本物のトラに出会います

そして扉を開けると、そこは一面の野原でした

天国ってこと?(笑)

 

もしかしてエストレラは最初の銃撃で死んでいた

ギャングを倒すため、犠牲者の恨みを晴らすため

3つの願いを叶えるチョークを与えられゾンビになった

だから幽霊(仲間)と話せるし、見える

トラはギャングや、腐敗した政治家を倒す象徴で

「トラになりたい王子がいた しかしなれなかった」 はシャイネ

「トラだけが生きのびて」 はエストレラ

「子どもを食っている」のは犠牲になったモロのこと

 

お伽話の続きだったんだな

 

だけど現実にはギャングも、汚職政治家もなくならない

トラ(英雄)が現れることもありません

日本には「絵にかいた餅」ということわざがありますが

これは「絵にかいたトラ」

お伽話はお伽話でしか終わるしかないのです

 

 

【解説】映画.COMより

行方不明の母を捜す少女を待ち受ける残酷な運命と想像を絶する恐怖を描き、世界各地の映画祭で多数受賞したメキシコ製ホラー。11歳の少女エストレヤは、ギャングに連れ去られ行方不明になった母を捜すため家を出る。やがて、いるはずのない母の話し声が聞こえたり、誰かに腕をつかまれて引きずり込まれそうになったりと、エストレヤの周囲で奇妙な出来事が続発するように。そしてギャングのメンバーであるカコが何者かに殺害されると、また母の声が聞こえてくる。その声は、カコを殺した男がエストレヤを捜しに来ると警告し、男を自分のもとへ連れてくるよう告げるが……。ヒューマントラストシネマ渋谷&シネ・リーブル梅田で開催の「未体験ゾーンの映画たち2019」上映作品。

2017年製作/83分/メキシコ