ボルベール <帰郷>(2006)

 
ボルベールとはカルロス・ガルデルのタンゴの楽曲「Volver」のこと
アルモドバル監督が送る女性賛美3作品の最終章
第59回カンヌ国際映画祭では主演のペネロペ・クルスを含む
出演した女優6人全員に主演女優賞が贈られたそうです
 
アルモドバル監督はゲイであるということですが
女性以上に女性のことわかっていますし
何よりも女性の味方なのだと思います
 
とはいえ彼のブラック・ユーモアは見る人を選ぶでしょう
「オール・アバウト・マイ・マザー」は女性になった元夫が
シスターにエイズを移し妊娠させるものですし
 
トーク・トゥ・ハー」では、看護士が
脳死の患者をレイプして妊娠させるというものです
 
 
 
本作はヒロインのライムンダ(ペネロペ・クルス)の
失業中で酒ばかり飲んでいる夫が
娘のパウラをレイプしようとして殺されてしまうというもの
 
ライムンダはその死体を勝手に営業していないレストランの冷蔵庫に隠し
おまけにそのお店を開店してしまい繁盛までさせるのです
 
とにかく出てくる男がろくでもない
それでも逞しく生きるのです
これには人間のエネルギーと情熱とユーモアを感じます
ペネロペがトイレで音までたてて用を足すのには
ここまでやるかと思ってしまいましたけど(笑)
 
 
 
その後、夫の死体を埋めに行くいくわけですが
でかい冷蔵庫をひとりで運ぶのは無理なわけで
近所の女たちに手伝ってもらいます
 
どう考えても怪しいのですが
女たちは何も言わず協力してくれます
 
そして死んだはずの母が現れ、
ライムンダの知らなかった過去が明らかになるのです
 
ライムンダの娘は実の父親にレイプされて妊娠した子でした
それを知った母親は、父親を浮気相手とともに焼き殺していたのです
その浮気相手は隣人で、今は末期癌で治療中のアグスティナの母親でした
 
 
 



女性というのは、いくら気丈に見えても
誰にも言えない秘密や、誰かに気づいて欲しい苦しみを
抱えて生きているものなのです
 
 
それにしても親子2代で夫殺しとは
冒頭の「未亡人が多いのね」のセリフが
じわじわと効いてきます(笑)
この毒がアルモドバル流コメディ
 
男がはじき出された女だけの共同体は
なんだかいきいきとして、楽しそうでした
 
特に母親役のカルメン・マウラ(当時は64歳が)チャーミングで
仕草のひとつひとつまでが可愛いらしい
ペネロペがフェロモンをまき散らしていたのは言うまでもありません(笑)
 

【解説】allcinemaより
 「オール・アバウト・マイ・マザー」「トーク・トゥ・ハー」のペドロ・アルモドバル監督が贈る郷愁と女性讃歌のヒューマン・ドラマ。監督自身の故郷でもあるラ・マンチャを物語の背景に、母、娘、孫娘の三代の女性たちの葛藤と和解を、色彩豊かな映像でミステリアスかつユーモラスに綴る。アカデミー賞主演女優賞にも初ノミネートされたペネロペ・クルスをはじめとする6人の女性キャストがカンヌ国際映画祭で女優賞に輝くなど、各映画賞で称賛された。
 失業中の夫と15歳の一人娘パウラを養うため、せわしなく働くライムンダ。明るくたくましい彼女にも、10代の頃、確執のあった母がそのまま父と一緒に火事で亡くなってしまうという苦い過去があった。そんなある日、夫がパウラに関係を迫り、抵抗したパウラに刺し殺されてしまう。ライムンダは愛娘を守りたい一心で、夫の死体の処理に奔走、事件の隠蔽を図る。そのさなか、今度は故郷ラ・マンチャに住む伯母の急死の報せが。ライムンダの姉ソーレが葬儀へ駆けつけたところ、彼女はそこで死んだはずの母イレネの姿を見掛けたという奇妙な噂を耳にするのだったが…。