モールス(2010)




よかったです

大人になる一歩手前のクロエ・モレッツ
少女に純愛を捧げるリチャード・ジェンキンス
残酷ながらも、切なくて、だけど爽やか

「ぼくのエリ 200歳の少女」(2008)は未見ですが
評判が高いのも頷けます


交通事故で全身やけどを負った男が飛び降り自殺することから
物語ははじまります
何も前知識もなかったため、最初はサスペンスかと思い
全く展開が読めませんでした





12歳のマクフィーは学校で「女の子」と馬鹿にされ
3人組の男の子からひどいいじめにあっています
両親は別居してしまい、いつもひとりぼっち

ある雪の夜、隣に引っ越してきたという
アビーという名前の裸足の少女と出会います
「寒くないの」
「12歳くらい」
「友達にはなれない」

この魔性
これだけで人を惹きつける
心を離さない妖しさ

余計なことは言わない
セリフが少ないけれど、いちいちいいです





父親らしい男、トーマスが殺人をし、血を抜きとりますが
集めた血をこぼしてしまいます
そしてアビーは見知らぬ男を襲う


トーマスがアビーをいかに愛していて
アビーがオーウェンに好意を持ち始めたことに
(二度目に逢う時はブーツをはいていることでわかります)
気が付いているのでしょう

トーマスが殺人に失敗してしまうのも
その動揺からだったのかも知れません
オーウェンは老いた自分の後継者

髪の毛ボサボサな爺が美少女に尽くすなんて
普通なら気持ち悪くなるようなシーンでも
さすがリチャード・ジェンキンス、うまいのですね
純粋プラトニック、いやらしさゼロ

オーウェンの中性的な外見もいいです
モールス信号で壁越しの会話
食べれないガムを食べて吐いてしまう
思わずアビーを抱きしめてしまう





彼が笑うのはアビーといるときと
いじめっ子が叱られているときだけ
優しさに触れたことがあまりないということがわかります

アビーの正体を知って戸惑うものの
招き入れる言葉をもらえないで人の家に入ると
体中から血を流してしまうのを見た時
自分と同じ孤独と、生きにくさを見つけたのでしょう

そして自分の姿を認めてもらえた時
アビーの中でも本物の愛が生まれたのです

「行って生き延びるか、留まって死ぬか」
オーウェンのそばに留まって死んだほうがいい

彼らの行く先は前途多難なものでしょう
それでもオーウェンはお菓子を食べ鼻歌を歌っていました
そして笑わない彼の、今までで最高の笑顔でした


たぶん、リメイク版となるとオリジナル版を見た方からは
酷評が多いのではないかと思いますが

私は恋物語として素直に楽しめました
クロエ・モレッツちゃんもバンパイアという運命を背負った
可哀そうな部分も出ていて、ぴったりだったと思います


ふたりが交わすモールスは愛の言葉
オーウェンがいなくなったとき、きっとアビーは死ぬでしょう
私はそう思います



【解説】allcinemaより
ヴァンパイアの恐怖と少年少女のピュアな恋が同時に描かれたオリジナリティ溢れる物語を恐ろしくも切ない作品に仕上げて世界中で評判を呼んだスウェーデン映画「ぼくのエリ 200歳の少女」を、「クローバーフィールド/HAKAISHA」のマット・リーヴス監督がハリウッドで完全リメイクした感動サスペンス・ホラー。主演は「ザ・ロード」のコディ・スミット=マクフィーと「キック・アス」のクロエ・グレース・モレッツ
 しんしんと雪の降る小さな田舎の町。母親と2人きりで暮らす12歳の孤独な少年、オーウェン。いつも学校でいじめにあっている彼は、夜になると団地の中庭でひとり寂しく過ごしていた。ある日、隣に引っ越してきたばかりの謎めいた裸足の少女アビーと出会う。2人は夜の中庭で言葉を交わすようになり、少しずつうちとけていく。その後、部屋の壁越しにモールス信号で連絡を取り合うまでになる2人だったが、やがてオーウェンはアビーの驚くべき秘密を知ってしまう。折しも、町では残酷な猟奇殺人事件が連続して発生し、住民を恐怖に陥れていた。