冷戦時代、そしてカビ―・ブロッコリ最後の「007」
ベルリンの壁が崩壊した年に公開されたシリーズ第16作目
原題は「LICENCE TO KILL」(殺人許可証)
女王陛下のためじゃない007
シリーズ初の「汚れた」「血まみれ」たダルトン・ボンド
おかげで興行は失敗
往年の「007」ファンから駄作と罵られたうえ
アメリカとイギリスの映画会社の間で
版権の訴訟問題が起きてしまい新作の制作が中断
「Q 」デスモンド・リュウェリン以外のMI6のメンバー全てが
降板してしまうという事態に陥りました
私はボンドのアナザーストーリーとして
皆が言うほど悪くなかったと思います
余計なエピソードがなく、ストーリーもわかりやすい
ボンドが盟友フェリックス・ライター結婚式にヘリで向かう途中
麻薬王サンチェス発見の報が入り、ふたりは現地へ向かいサンチェスを逮捕
皆の祝福を受ける中、パラシュートで落下したライターは
無事に花嫁デラと式をあげ
記念のライター(煙草に火をつけるほうのライター)を
付き添い人のボンドにプレゼントします
その頃、逮捕されたサンチェスは
DEA捜査官キリファーを甘言で買収し護送車から脱走
部下のダリオらと、新婚初夜のライター家を襲い
ライターの目の前でデラを殺し
拉致したライターの手足をサメに食いちぎらせます(あえて殺さない)
ふたりの無残な姿を発見したのはボンドでした
このライター夫妻が襲われるシーンは
ニュー・シネマ風で、かなりインパクトが強い
ボンドはサンチェスを逃がしたDEA捜査官キリファーを
ライターと同じサメのプールに落とし仇を討ちます
しかしボンドの逸脱した行為にMが渡米
別の任務を指示すると、ボンドはMI6を辞任します
それは殺しのライセンスをはく奪されるということ
これからはスパイではなく
単なる殺し屋になるということ
ボンドは単身、サンチェスの麻薬取引現場を襲って得た大金を軍資金に
フリーの麻薬業者を装いサンチェスに接近します
ライターの復讐をするためMI6を辞め、麻薬王サンチェスに近づく
本作がファイナル・アピアランス
フェリックス・ライター(デヴィッド・ヘディソン)
CIAエージェントでボンドの盟友
サンチェスにより妻を失い、サメの生贄にされ片手片足を失ってしまう
原作では義手義足の私立探偵になり、ボンドに絡んでくるということ
ライターの新妻
サンチェス(ロバート・デヴィ)
DEA(麻薬取締局)が長年追っている麻薬王、銀行やカジノのオーナー
ガソリンにコカインを混ぜタンクローリーで密輸する計画を立てている
ルペ(タリサ・ソト)
サンチェスの愛人
サンチェの若い部下と浮気したり、ボンドに愛を告白してベッドを共にするが
サンチェスが死に、ボンドに振られると
富豪のブレス大統領に乗り換える
キリファー(エヴェレ+ット・マッギル)
サンチェスを脱走させた DEA捜査官
ライターと手足を失ったのと同じ鮫プールでボンドに殺される
クレスト(アンソニー・ザーブ)
サンチェスの側近で、水族館(鮫プール)の隠れ家や
海洋研究センターを運営している
ボンドの罠で麻薬取引に失敗し、その後減圧室で大金が見つかったせいで
減圧室に閉じ込められ殺される
ダリオ(ベニチオ・デル・トロ)
サンチェスの用心棒で、デラ殺害の実行犯
サンチェスに近づいたボンドの正体にいちはやく気づき
コカイン工場火災中のベルトコンベアでボンドと死闘するものの
粉砕機に巻き込まれて死んでしまう
本作がメジャーデビューとなったベニチオ・デル・トロは
プライベートでもロバート・デヴィと意気投合し
役作りも兼ね、レストランなど公共の場で会っていたところ
市民から本物のマフィアと思われ怖がられていたそうです(笑)
シャーキー(フランク・マクレー)
ボートチャーター業を経営しているライターの親友
サンチェスとクレストの隠れ家を突き止め
鮫プールに突き落とされそうになったボンドを助けるが
(代わりに200万ドル入った鞄を離さなかったキリファーが落ちる)
サンチェスの部下に殺されてしまう
パメラ(キャリー・ローウェル)
CIAの契約パイロッでDEA情報提供者
サンチェスの部下を抱きこんで司法取引に持ち込もうとしていたが
ボンドの暴走が妨害してしまう
ホーキンス(グランド・L・ブッシュ)
ボンドの復讐に反対するDEA工作員
ブッチャー博士(ウェイン・ニュートン)
寄付金集めのための宗教テレビ番組の司会者、伝道師
国際瞑想センター(コカイン工場の隠れ蓑)の教祖
サンチェスの会計士で、金勘定の考えしかない男
爆破がおこるたび「これで8千万ドル失った」など大騒ぎして
「まずは人件費削減」と、サンチェスに撃ち殺されてしまう
ヘラー中佐(ドン・ストラウド)
表向きはイスマス共和国軍の少佐、サンチェスの警備主任
クワン(ケリー・ヒロユキ・タガワ)
ロティ(ダイアナ・リー=スー)
香港警察の麻薬捜査官
長年にわたりサンチェスを捜査、麻薬工場を見学するチャンスを得たものの
ヘラー中佐率いる軍隊に隠れ家を発見され殺される
ロペス大統領(ペドロ・アルメンダリス・Jr)
イスマス共和国の大統領
M(ロバート・ブラウン)
MI6のトップでボンドの上司
フロリダのヘミングウェイ・ハウス(作家ヘミングウェイの元住居)で
ボンドに会い、イスタンブールでの任務を命じますが
ボンドに断られ、彼のダブル0と殺しのライセンスを取り消します
本作がファイナル・アピアランス
Q(デスモンド・リュウェリン)
イギリス国から不正なエージェントになったボンドに
マネーペニーに頼まれ、ハミガキ爆弾や
永久に目が覚めなくなる目覚まし時計など、不正な援助をしにいく(笑)
おまけに運転手や清掃夫に扮したり
サンチェスのパーティーに参加したりと大サービス(笑)
マネーペニー(キャロライン・ブリス)
本作がファイナル・アピアランス
火災のコカイン工場から脱出するサンチェスと
麻薬入りタンクローリーを奪って追うボンド
激しいカーチェイスの末(片輪走行でロケット弾を避けるのがアツいぜ)
擱座(かくざ)したタンクローリーからガソリンを浴びたサンチェスに
ライター夫妻から貰った記念のライターを見せ
ボンドは火を放つのでした
巨大麻薬カルテルを撲滅させたボンドは、MI6への復帰が決まり
フロリダでライターを見舞いったあと
パメラの元に向かいました
意識を取り戻したライターが、普通に明るいのも微妙だし(笑)
ここまでやったなら、最後までライターとの友情のためだけに
終わらせて欲しかったな
(ツッコむところがなきゃ007じゃないけどね 笑)
【解説】より
4代目ジェームズ・ボンド、ダルトンの2作目にして最終作であるシリーズ第16作。ボンドとフェリックス(ヘディソン)が逮捕した麻薬王サンチェス(ダヴィ)は部下の手で脱走、フェリックスに瀕死の重傷を負わせ、彼の新妻を殺した。友人の仇を討つためボンドは単身サンチェスへ近づいていく……。
今回のボンドはスパイではなく、“M”からの新たな任務を無視し、言わば個人の資格で動く一人の男である。一介の刑事がビルをハイジャックした悪人を倒してしまう時代にもうスパイの出番はなく、模索した上のボンド像と言えよう。ムーアや(後の)ブロスナンのような線の細さもなく、威風堂々たるダルトンはボンドとして申し分ない。原題は聞き慣れたような気がするが、ストーリー共々原作にはないオリジナルのもの。邦題が何故“消された”になっているかと言うと、内容もそうなのだが、はじめのタイトルが“License Revoked”だったから。ローウェル、ソト、共に素晴らしいのに、ボンド・ガールのジンクスどおり未だにビッグにはなっていないのは残念。「ブラック・レイン」「リーサル・ウェポン2/炎の約束」などと同時期、日本劇場五周年記念作品として公開され、アクション映画ファンにとっては夢のような(そしてある意味、悪夢のような)秋であった。主題歌グラディス・ナイト