シリーズ第12作目
原題は「For Your Eyes Only」
極秘文書に使われる”Eyes Only”(他言無用、読後焼却)という言葉に
“For Your”を加え「あなただけに見て欲しい」という
性的な意味も暗示したダブル・ミーニング
「ムーンレイカー」までのギャグの暴走やパクリは抑えられ
適度に地に足のついた仕上がり
ボンドガールのセクシーシーンも控えめで
ヒロインの清楚さを強調しようとしたジョン・グレンと
とにかく女を脱がせたい、シリーズ歴代プロデューサー
折り合いをつけるのが大変だったようです
同じくサー・ロジャーボンド全7作品中ベストに選ぶファンが多い一方
ボンドガールが脱がない、セックスシーンがないのはつまらないと
「それ目的」のファンからは酷評もあったようです
あとは悪役のインパクトの薄さですね
前4作はペッパー保安官と、ジョーズという強烈なキャラがいたので(笑)
そこは何か物足りなさを感じてしまう
そのかわりアクションの見せ方は見事なもので
目を見張るテクニック
断崖絶壁をクライミングするシーンも緊張感あります
結果、ジョン・グレンの大規模な改革は
4代目ティモシー・ダルトン、5代目ピアース・ブロスナンまで続く
新たな 007シリーズを築き上げたのです
ギリシャ沖で英国の調査船「セントジョージ号」が沈没
船には潜水艦弾道ミサイルを誘導できる「ATAC」システムが搭載されており
何者かがこのシステムをソ連に売ろうとしていることが判明
このシステムがあれば英国軍の潜水艦を制御することができる
ボンドは東西の軍事危機を招きかねないこの事態を解決するため
捜査に乗り出すのでした
ブロフェルドとも思われる男(ジョン・ホリス)
オープニングシーケンスで登場
墓参りをするボンド、花束を置いた墓石には
「テレサ・ボンド ジェームズの愛妻 ‘69没」の文字
墓地にヘリコプターが舞い降りてきて、ボンドはヘリに搭乗
そしてヘリがビッグ・ベン上空に差し掛かったとき
操縦士のヘッドレストに電流が流れ操縦士は死亡
しかもヘリは何者かによってコントロールされていました
ビルの屋上には白猫を抱いて車イスに乗りリモコンを操るスキンヘッドの男
(ボンドとの最後の戦いの後遺症だろう)
ボンドは操縦管の回路を破壊し手動操縦に切り替え
車イスの男を追跡しヘリの足に車イスを引っかけると
煙突の中へ落下させたのでした
スペクターとブロフェルドの著作権問題が解決しない中
ジョン・グレンは「女王陛下の007」の決着
どうしてもつけたかったんだろうな
「毛を生やせ!」の捨てゼリフは微妙だけど(笑)
主題歌「ユア・アイズ・オンリー」シーナ・イーストン
盗まれた「ATAC」システムを取り戻すために
スペイン、北イタリア・コルティナ、地中海コルフ島
ギリシャにあるシリルの僧院 に飛ぶ
ティモシー・ハブロック卿(ジャック・ヘドリー)
海洋考古学者
海中の遺跡を調べる名目で、実は英国シークレットサービスに雇われ
沈没した「セントジョージ号」を探していた
メリーナ・ハブロック(キャロル・ブーケ)
ハブロック卿のひとり娘
殺された両親の仇を討つため、実行犯ゴンザレスをクロスボウで撃ち
黒幕を見つけるためボンドと行動を共にするようになる
大戦中レジスタンスとして活躍し、女王陛下から勲章も受けたギリシャの富豪
密輸業で巨大な富き、「ATAC」をKGBに売却し財産を拡大しようと企んでいる
本編の黒幕
ビビ・ダール(リン・ホリー・ジョンソン)
オリンピックで金メダルを目指すフィギュアスケート選手
クリスタトスから財政的支援を受けている
ボンドに好意を持っていて、一方で東ドイツのオリンピック選手
クリーグラーにも熱を上げている
が、最終的にコロンボと結ばれそうな予感(ストライクゾーン広いぜ)
ヤコバ・ブリンク(ジル・ベネット)
ビビのスケートコーチで元金メダリスト
男好きのビビに厳しい
エーリッヒ・クリーグラー(ジョン・ワイマン)
クリスタトスに雇われ、KGBとの連絡係でもある
コロンボ(ハイアム・トポル)
エーゲ海の海運王、かってクリスタトスとレジスタンス仲間であり
密輸パートナーであったが、今は敵対しボンドに協力する
いつもピスタチオを食べている(このピスタチオが役に立つ 笑)
リスル伯爵夫人(カサンドラ・ハリス)
クリスタトスと行動を共にする(プロの)愛人
ボンドを探るためボンドの誘いに乗って一夜を共にするが
翌朝ロックの部下に殺される
エミール・ロック(マイケル・ゴタード)
八角形の眼鏡で知られるベルギー人の雇われ暗殺者
精神病院に監禁されていたが、診察中医師を殺して脱獄後は
クリスタトスの仲間になる
ボンドに命を狙うものの、ボンドに車ごと崖下に蹴り落とされる
MI6のイタリア北部の連絡員
ビル・タナー(ジェームズ・ヴィリエ)
MI6参謀総長
Q(デズモンド・リュウェリン)
マネーペニー(ロイス・マクスウェル)
ゴゴール将軍(ウォルター・ゴテル)
KGBのボス
1979年のソ連のアフガニスタン侵攻を受け本作では敵役として登場
しかしラストは「ATAC」を壊したボンドを咎めることもなく
ボンドを撃とうとした部下を制止しヘリで立ち去る
マーガレット・サッチャー(ジャネット・ブラウン)
電話会談で「何か望みがあったら言いなさい」という首相に
ボンドの代わりに電話に出たオウムが(口癖の)「キスしてほしい」というと
「それはちょっと」と顔を赤らめる首相
国防大臣、慌てて回線を切る(笑)
バーナード・リーが撮影前に逝去したため、敬意を示しMは登場していない
(休暇中という設定 )
サー・ロジャーは本作撮影終了後、ボンド役の降板を正式に表明しますが
適任者が見つからなかったことと、ドル箱ボンドを手放すわけもなく
結局次作も続投することになります
【解説】KINENOTEより
東西両陣営のパワー・バランスを突き崩す秘密兵器“ATAC”の行方を追って英国のスーパー・エージェント、ジェームズ・ボンドが活躍するアクション映画で、これはシリーズ第12作目に当たる。製作総指揮はマイケル・G・ウィルソン、製作はアルバート・R・ブロッコリ、監督は編集・アクション監督出身のジョン・グレン。イアン・フレミングの原作を基にリチャード・メイバウムとマイケル・ウィルソンが脚色。撮影はアラン・ヒューム、音楽はビル・コンティ、編集はジョン・グローヴァー、製作デザインはピーター・ラモント、衣装はエリザベス・ウォラー、特殊効果はデレク・メディングスが各々担当。出演はロジャー・ムーア、キャロル・ブーケ、トポル、リン・ホリー・ジョンソン、ジュリアン・グローヴァー、カサンドラ・ハリス、ジル・ベネット、マイケル・ゴザード、ジョン・ワイマン、ステファン・カリファなど。
ギリシャ・コルフ島沖イオニア海で、英国電子情報収集船が事故で沈没し、船に積まれていたATAC(超低周発信機)を引き上げる作業を、イギリス海軍情報部は、海軍退役将校で海洋考古学者であるティモシー・ハブロック卿に依頼した。ATACは、原子力潜水艦からのミサイル攻撃を目的地に誘導するトップ・シークレットで、東側に渡れば、軍事バランスが逆転するのは明らかだ。しかし、ハブロックの一人娘で、潜水のベテラン、メリナ(キャロル・ブーケ)が、両親に協力しようと訪れた時、水上機でやってきた何者かによってハブロック夫妻が銃撃された。惨殺された両親の復讐を決意するメリナ。やがて、この事件解決を命じられたジェームズ・ボンド(ロジャー・ムーア)が、犯人とみられるパイロット、ゴンザレス(ステファン・カリファ)を調査するためマドリッドヘ飛んだ。しかし、ゴンザレスは、メリナの復讐の矢のもとに絶命し、ボンドは、殺し屋ロック(マイケル・ゴザード)にひきいられた一団に命を狙われる。ゴンザレスもこの一味の一人だったのだ。ロンドンに帰ったボンドは、ロックの身許を調べ、彼が北イタリアのスキー・リゾート、コルチナ・ダンペッツォにいることをつきとめる。現地に向かったボンドは、そこでギリシア人富豪クリスタトス(ジュリアン・グローヴァー)に近づく。彼は、美少女ビビ(リン・ホリー・ジョンソン)のパトロンで、次期冬期オリンピックのフィギュア種目で彼女に金メダルを取らせようと特訓させていた。コルチナヘは、メリナも来ていたが、彼女は、ロックの配下の殺し屋たちに命を狙われボンドに救われた。やがて、ボンドとメリナは、コルフ島に行き、そこでボンドは、クリスタトスのビジネス上のライバル、密輸業者のコロンボ(トポル)に会った。彼から、クリスタトスがATACをソ連に売ろうとしていることを聞いたボンドはメリナと共に海底を探作し、ATACを発見。しかし、浮上した二人をクリスタトス一味が襲いATACは奪われてしまった。二人はコロンボの応援を得て、クリスタトスのアジトのあるギリシャのメテオラ山ヘと向かった。敵の攻撃をくぐり、山頂に辿りついたボンドら一行はクリスタトスを倒すが、途中コロンボが傷つく。ATACを取り戻す寸前に、しかしやって来たソ連側との間で再び奪い合いがおこる。ボンドはやっと取り戻し、それを断崖から投げ落とした。それを見て、ソ連側はひきあげてゆくのだった。