
原題は「Ballando ballando」(イタリア語で舞踏会)
「アラン・ドロン追悼ライブ」のオフ会で当選した
ギドラ伯爵からのプレゼントDVD
fpdさん超・超・超お気に入りという1本のうえ
日本ではなかなかお目にかかれない
現代イタリア映画界の巨匠と呼ばれたエットーレ・スコラ監督作品
(私が見ているのも「特別な1日」のみ)

フランスの劇団、テアトル・デュ・カンパニョールの同名舞台の映画化で
そのときのオリジナル・キャストがそのまま出演したという
トーキー(セリフなし)ミュージカル作品

1930年代から80年代までのフランスの近代史
カルチャーの移り変わりとともに
フランス人らしい気質(おしゃれ、プライドが高い、ユーモア(皮肉)好き)を
イタリア人であるスコラ監督目線で描いています

1983年、パリのボウルルーム(ダンスホール)
年老いたウェイターがライトを灯し、音楽をかけると
着飾った女性がひとり、またひとりとやってきます
といっても、かなり厚化粧の年増
次に男たちがやって来て、こちらも冴えないオッサンばかり
お互い10人ほどの男女がマジマジと物色し合い
レコードが終わり、バンドによる生演奏が始まると
男たちは気に入った女性をダンスに誘います

ここからキレッキレのダンスが始まるのかと思ったらそうではなく(笑)
ヘタクソだったり、個性的だったり、無駄に女性に抱きついたり
一体何を見せられているのだろうと思うのですが(笑)

そこから1936年のフランス人民戦線(左派)内閣樹立を祝うパーティに
フラッシュバック・・ではなく
(1983年に踊っていた人の若い時ではない)
メンバーは同じなのですが、演じているのは全く違う人物
でもウェイターとトイレの会計係?だけは生き証人のように変わらない(笑)

そこにミレーユ・バラン風の美女を連れた金持ち男がやって来て
さらにジャン・ギャバン風のスーツを着たイケメンがやって来て
男女のもつれがはじまります(「望郷」(1937)のパロディ 笑)
金持ちと美女とイケメンが出て行ったのと入れ替わりに
今度は片目(右派)の男が入って来ると、その場が凍り付きます

1940年、フランス陥落(ドイツによる侵攻)
空襲警報の最中防空壕と化したダンスホールに人々が集まってきます
敵機が去った合図で皆は外に戻りますが
ひとり残った女性が蓄音機にあわせてヴァイオリンを弾き
ウェイターは彼女のためにスパゲッティを作ると
自分の分も分け与えたのでした

1944年、ドイツ占領下
ダンスホールでは夫が戦場に就いている女たちが
女同士で踊ったり、酒で悲しみを紛らわせています
そこにゲシュタポ(ナチスの秘密警察 )の将校とフランス人の協力者の男が現れ
ラジオの曲がフランス語(ジークフリート線の洗濯物をぶら下げる)から
ドイツ語(リリー・マクレーン)に変えらてしまいます

ドイツ人将校のダンスの相手を協力者は探しますが、見つからず
結局彼が将校のパートナーとして踊ることにします
そのとき平和の鐘が鳴ると、ふたりは逃げ出し
パリは解放されたのでした(Dデイ)

1945年、終戦
男たちの帰還を祝いダンスを踊っていると
元ナチスの協力者の男もダンスの輪に入り込みます
それを見つけた女たちは男を追い出します
そこに片足の帰還兵が入って来て(妻と思われる)女性と抱きあうと
皆と一緒に踊り出すのでした

1946年、アメリカ軍が駐留するようになり
バーのカウンターにはコカ・コーラが置かれ
(初めてコーラを飲んだウェイターが吹き出してしまう)
人々はスィング(グレン・ミラー楽団の「イン・ザ・ムード」)の演奏で
踊ります(でもテンポがあわない)

そこに元協力者が2人の兵士を連れてきて
そのうちのひとりがトランペットで「ラ・ヴィ・アン・ローズ」
(1946年にヒットしたエディット・ピアフの邦題「バラ色の人生」)
を演奏するのでした

1956年、アルジェリア戦争(1954-1962)
マンボにサンバにタンゴが流れていると(ラテン音楽、社交ダンスブーム)
リーゼントの若者が乱入してきて曲はロックンロールに変わります
(1955年にヒットしたリトル・リチャードの「トゥッティ・フルッティ」)
そこに体格のいい男が現れ、黒人客(アルジェリア人)をトイレに連れて込みリンチ
(メグレ警部風の)警察官がやってきて黒人を逮捕し連行していきます

1968年、五月革命(反ド・ゴール主義の学生を中心に発生した反体制運動)
真夜中、警察に追われた(ヒッピー風)学生たちが
ダンスホールに忍び込み身を隠しますが、ラジオを聞くことを我慢できず
流れてきたビートルズの「ミッシェル」にあわせ
置いてあった楽器で演奏を始め、踊り出してしまいます

そして再び現在の1983年
(ディスコミュージック)
最初は悪趣味な色ボケにしか見えていなかったババアとジジイが
愛おしくしか感じられなくなる

音楽とダンスと出会いが
一晩中踊り明かした疲れと充実感が
夜が終わり、パーティーが終わってしまう未練が
まるで人生をたとえているよう
店がクローズしてひとりひとり別れを告げて去っていくラスト
それは死の世界に旅立つ姿のようでもあります

やっとダンスに誘われたと思った眼鏡の女性は
ウエイターに揺り起こされただけでした
彼女も去っていくと全ての照明が消され物語は終わります
【解説】映画.COMより
パリ下町のボウル・ルーム(ダンスホール)を舞台に47曲の音楽とダンスで第2次大戦前より現代に至る時代の移り変わりを描く。製作はジョルジョ・シルヴァーニ、監督は「パッション・ダモーレ」のエットーレ・スコラ。脚本はルッジェーロ・マッカリ、ジャン・クロード・パンシュナ、フリオ・スカルペッリ、E・スコラ、撮影はリカルド・アロノヴィッチ、音楽はウラジミール・コスマ、編集はライモンド・クロチアーニが担当。出演はジュヌヴィエーヴ・レイ・パンシュナ、マルティーヌ・ショーヴァン、アニタ・ピッキアリーニ、リリアーヌ・デルヴァル、レイモンド・ウドゥリーヌなど。
1983年製作/フランス・イタリア・アルジェリア合作
原題または英題:Le Bal
配給:ワーナー・ブラザース