
原題は「Les Enfants Terribles」(子どもたちの恐怖)
原作はジャン・コクトーの同名小説で
モデルはコクトーの友人Jean Bourgointと彼の姉ということ
詩人が書いた小説(文学)なのでね
あえて棘の道の恋愛を選んで突き進むという破滅的物語
ここでは近親相愛、姉による弟の支配と
彼らが引き籠る「部屋」にもあたかも意志があるようで
コクトーはそれを「部屋の精霊」と呼びます

10代の若者が世の中と断絶して自分だけの世界で生きる
(朝方に寝て、午後は遅くなってから起きる)
今でいう「ひきこもり」というテーマや
(ここでは姉ですが)毒親の絶対的支配というのは
21世紀になってからも変わっていない気がしますね

ナレーションも勤め、撮影にも立ち会ったという
ジャン=ピエール・メルヴィルというより
コクトーが監督かよ?の作品なんですが(笑)
しかも「この映画はいつの日のか第一級のものと評価されると確信しています」
と自信たっぷりだったそうです(笑)

実際、メルヴィルの演出によるゲリラ撮影的な退廃的映像感覚は
ヌーヴェルバーグにより再評価され
のちのフイルム・ノワールのスタイルを確立することになったそうです
萩尾望都や竹宮恵子など、日本の少女漫画にも大きな影響を与えていますね
カメラはアンリ・ドカエ

コンドルセ高等中学校に通う14歳のポールは
不良グループのリーダーでいじめっ子の
ダルジュロスという美少年に恋していてます
ポールの気持ちを知っているのか
ダルジュロスは放課後の雪合戦でポールに石を包んだ雪玉ぶつけ
ポールは気を失ってしまいます

意識を取り戻したポールは、やって来た校長に何があったか質問されても
何もなかったとダルジュロスは無罪を庇います
(その後ダルジュロスは校長の顔に胡椒の瓶を投げつけ退学になる)
正義感が強く優しいジェラールが
怪我をしたポールをモンマルトルのアパートまで送って行くと
そこにはポールの美しい姉エリザベートがいました
エリザベートに惹かれるジェラール

という物語の核心に迫るほど、エリザベートが美人でも魅力的でもない
ヒステリーでエキセントリックなオバさんにしか見えない問題
(というか全員中年にしか見えないけどな 笑)
ポール(もともと心臓が悪い)はエリザベートに安静にすることを命じられ
部屋から出ることを禁じられ
エリザベートが語る楽しかった子ども時代の物語を聞かされ
彼女の想像力に支配されています

やがて病気の母親が死に
姉弟はますますふたりだけの世界(部屋)で暮らします
食事などの面倒はマリエットというおばあさんが見てくれました
(分別くさいことを言って姉弟を責めることはない)
ポールの容態が悪化し医師から面会謝絶を受けると
(彼もまた孤児である)ジェラールは金持ちの叔父を説得し
ポールとエリザベートを海岸の別荘で休養させたいと頼みます

そこでエリザベートは
休暇で家族連れでやって来ている幼い子どもたちを脅したり
お店で万引きしたり、ジェラールを巻き込みさまざまな悪戯を実行します
やりかたは間違っているけれど、全てポールを笑わせ元気にするため
ポールは立ち直り回復すると身長まで伸びていました

それから3年後、19歳になったエリザベートは突然仕事をすると言い出します
ジェラールの叔父に洋裁店を紹介してもらい
その美貌とスタイルの良さからモデルとして働き始めると
同僚のモデル(で彼女も孤児である)アガートと仲良くなり
ポールとジェラールに紹介します

ポールはアガートが初恋の美少年ダルジュロスとあまりに似ていたため
アガートに宝箱の中に大切にしまっていたダンジュロスの写真を見せると
アガートは「私の写真だ」と驚きます
ポールはアガートに恋し、アガートも純粋なポールに惹かれます

エリザベートはユダヤ系アメリカ人の大富豪ミカエルに結婚を申し込まれ
結婚にはエトワール広場の新居と、車と、死後は全財産を譲るという提案付き
(ミカエルはその名の通り天使なのである)
しかしミカエルはエリザベートと結婚した直後、交通事故死してしまいます
殺人ではなく、あくまで事故
だけどミカエルの死が、姉弟を引き裂こうとするのを防ぐ
怨念によってもたらせたものとしか思えません
(処女のまま)ミカエルの莫大な遺産を相続したエリザベートは
ポールとジェラールとアガートを誘い
豪華な屋敷で4人の同居生活が始まります

ポールのアガートへの思いはさらに募り
彼女への想いを綴った手紙を出すことにします
(同じ家に住んでいるにもかかわらず、速達で 笑)
しかし焦ったポールは封筒の宛名にアガートの名前ではなく
間違って自分の名前を書いてしまいます

一方のアガートもポールのことが好きだと
エリザベートに打ち明けていました
配達人により玄関に置かれた手紙を見つけたエリザベートは
その手紙を粉々に破くと

ポールには、手紙はアガートの部屋に置きっぱなしにされ読まれてもいない
アガートにその気はないと嘘をつき
ジェラールには「アガートはあなたに恋をしている」と
アガートにプロポーズするよう仕向けます
ジェラールはエリザベートを愛しているがため
エリザベートの命令に背くことができなかったんですね
エリザベートの策略により、ジェラールとアガートは結婚し
新婚旅行に出かけた先で偶然、かっての級友ダルジュロスと再会します

ダルジュロスは自動車メーカーの代理人をしていて
フランスとインドシナ間を行き来していると言い
ジェラールが今もポールと会っていること話すと
ダルジュロスはポールのことを覚えていて
「雪の球(ポール)に言ってくれ 俺は卒業してからも変わってない」
「いつも毒薬を集めたいと思ってたが いまも集めている」と
各国から集めた毒のコレクションをジェラールに見せ
「ポールに渡してくれ」と黒い玉(アヘンだろうか)を預かると
ジェラールはそれをポールに送ります

アガートとの恋が実らず絶望していたポールは、小包を受け取ると
「毒薬を飲む」という手紙をアガートに出します
急いで新婚旅行から帰ったアガートは、毒に苦しんでいるポールの看病をし
ポールから深く愛されていたこと
速達で送った手紙のこと
エリザベートにふたりの仲を引き裂かれたことを知ります
ポールが「けがらわしい悪魔!」とエリザベートに吐き捨て、息を引き取ると

ふたりが外界に出たり恋人と結ばれるチャンスもあったのに
最後まで姉は弟を支配し、安全な「部屋」から出ることを許さない
エリザベートの作り出した夢幻の世界に
死んだ姉弟は結ばれ、行くことができたのでしょうか
【解説】映画.COMより
ジャン・コクトーの同名小説を、後に「サムライ」「仁義」などのフィルムノワール作品を生むジャン=ピエール・メルビル監督が映画化し、ヌーベルバーグの先駆的役割を担った作品。ある雪の日の夕方。少年たちの雪合戦が白熱する中、ポールは密かに思いを寄せる級友ダルジュロスが放った雪玉を胸に受け、気を失ってしまう。怪我を負ったポールは、姉エリザベートや病気の母と暮らす自宅で療養することに。姉弟は他人の介入を決して許さない秘密の子ども部屋で、危険な愛と戯れの世界を築き上げていくが……。原作者コクトーが自ら脚色に参加し、ナレーションも務めた。「死刑台のエレベーター」「大人は判ってくれない」のアンリ・ドカエが撮影を手がけ、クリスチャン・ディオールが衣装デザインを担当。1950年に製作され、日本では76年に劇場初公開。2021年10月、4Kレストア版でリバイバル公開。
1950年製作/107分/PG12/フランス
原題または英題:Les Enfants Terribles
配給:リアリーライクフィルムズ