マルホランド・ドライブ(2001)

原題も「Mulholland Drive

マルホランド・ドライブとは

ハリウッドの有名人が住んでいる高級住宅街を見下ろす丘を走る

全長21マイル (34 km) の道路のこと

デヴィッド・リンチ作品のほとんどが

初見で理解するのは難しい、というより無理

「なんじゃこりゃ?」映画ですよね(笑)

でも「フェイブルマンズ」のジョン・フォードなら

「考えるのではなく、感じろ!」と怒鳴りそう(笑)

ジョン・フォードといえば、、気に入らないインタビューには

「カット!」のひと言

「あのシーンはどうやって撮影したのですか」という質問には

「カメラで」(笑)

そんなジョン・フォードを演じられるのはリンチしかいないと

思いついたスピルバーグもスゴイですよね

スピルバーグリンチ口説き落とすのに3週間かかったそうです

(正確には仲介役のローラ・ダーンのおかげで引き受けてくれた)

リンチからのリクエストは

「衣装を撮影の2週間前までに用意すること」

(2週間毎日着てヨレヨレにするため)

「撮影現場にチートス(お菓子)を用意すること(笑)

そして、「フェイブルマンズ」の全てを喰ってしまったあの怪演

やっぱ天才だわ

ただし制作費のほうはスピルバーグの同年公開された

「AI」に比べても6と2/3

でもこの世界観は、今も多くのカルトファンを虜にしています

物語は大きく2部に分かれていて

 

【前半】はカナダからやって来た女優志願の「ベティ」が

交通事故によって記憶を無くしてしまった自称「リタ」の

素性を調べることに協力し、愛し合うようになるというもの

(リンチは間違いなくおっぱい星人 笑)

やがてリタは謎の青い箱に吸い込まれ消えてしまいます

【後半】ベティは「ダイアン」と名が変わり端役の女優

恋人のリタは「カミーラ」という名で成功していて

新鋭監督のアダムと婚約の報告をします

強い悲しみと嫉妬に狂ったダイアンは

殺し屋のジョーにカミーラの殺害を依頼するのでした

【前半】のヒントは「クラブ・シレンシオ」のマジック(たぶん)

「すべてはまやかしだ」

「バンドはいない!オーケストラもいない!」

【後半】カウボーイは死神の象徴

小人からリアルになる老夫婦は「世間の目」「噂話」の象徴

青い鍵は殺し屋がカミーラ殺しに成功した証し

全てはダイアンが引き起こした強烈な夢(妄想)

しかもあたかも現実のように生々し

ダイアンは幻覚に耐えきれず、自殺してしまいます

原因や方法は何であれ、死の運命にだけは逆らえない

プロットは「黒いオルフェ」(1959)と似ています

リオにやって来た田舎娘ユリディス(ベティ)が

オルフェ(リタ)と恋に落ちますが

オルフェにはミラ(アダム)という婚約者がいました

さらにユリディスが仮装をした謎の男(カウボーイ)に追われるというもの

もしかしたらこれ、ギリシア神話のオルフェとユリディスの物語

(「オルフェウ・ダ・コンセイサゥン」)を

リオからハリウッドに舞台を変えた

単にリンチ版かも知れません(笑)




【解説】映画.COMより

ブルーベルベット」「ワイルド・アット・ハート」の鬼才デビッド・リンチが、ハリウッドを舞台に2人の女が織りなす物語を悪夢のように不条理な展開で描いたミステリードラマ。ロサンゼルス北部の山を横断する曲がりくねった道路“マルホランド・ドライブ”。ある夜、車の衝突事故が起こり、唯一の生存者である女は傷を負ったままハリウッドの街にたどり着く。高級アパートの一室に身を隠した彼女は、そこで女優志望のベティと遭遇。女はとっさに“リタ”と名乗り、事故に遭って記憶を失っていることをベティに打ち明ける。リタのバッグには大金と青い鍵が入っており、思い出せるのは“マルホランド・ドライブ”という言葉だけ。ベティはリタの記憶を取り戻す手伝いをしようと決意するが……。主演は「21グラム」のナオミ・ワッツと「パニッシャー」のローラ・ハリング。2001年・第54回カンヌ国際映画祭で監督賞を受賞した。

2001年製作/146分/アメリ
原題:Mulholland Drive
配給:コムストック