サブスタンス(2024)

原題は「The Substance」(物質)

「アノーラ」を見た時も思いましたが、こういう映画が

ゴールデンラズベリーではない映画賞の最有力候補になるとは

時代は変わったものです

女優が「脱いでなんぼ」=「体当たりの演技」と評価されるのは

昔も今も同じですけど(笑)

薬剤を打たれた卵の黄身がふたつになるところから

エリザベス・スパークルという名前が刻まれた

ハリウッド・ウォーク・オブ・フェーム(名声の舗道)が

だんだんと古びていくオープニングから巧いですね

そのエリザベス・スパークルデミ・ムーア)が50歳を迎え

朝のエアロビクス番組を、プロデューサー(デニス・クエイド)の

ハーヴェイ(ワインスタインかよ 笑)から突然解雇されてしまいます

自分の写った看板が取り壊される様子に気を取らたエリザベスは

車を衝突させてしまい、運よく軽傷で済みましたが

運ばれた病院の若い男性スタッフから密かにUSBを渡されます

そこには「より若く、より美しく、より完璧な」が身体が手に入る

闇市場の薬「サブスタンス」の広告が入っていて

エリザベスは思わず注文してしまいます

そこには必ず守ってくださいの注意書きとともに

activato(活性化済)と書かれたアクティブセラム(使うのは一度きり)

実体と分身の栄養剤(各7日分)

安定剤を抽出するための注射(7日分)

意識を交換するためのチューブ(7日ごと)が入っていました

そして最後に最も重要なこと

それは「忘れるな、あなたは1つなのだ」という忠告でした

意を決したエリザベスが活性化済を打つと、彼女は気を失い

割れた背中から若返った自分が出現します

彼女は自らをスー(マーガレット・クアリーと名乗り

エリザベスの後釜を募集するオーディションを受けに行くのでした

【ここからネタバレ 未見の方は観覧注意】

 

私ってホラーがどうしてもコメディに見えてしまう人間で(笑)

この映画も、大阪・関西万博のパビリオン内の「動くiPS心臓」など

未来の医療技術の展示の隣で上映したら面白いのに、と思ってしまいました

ラストのモンストロもミャクミャクに見えなくもない

(超批判されるのわかっていて言っています 笑)

序盤は、皺と毛穴まで見えるデミ・ムーアの顔と

口臭が漂ってきそうなデニス・クエイドの顔のドアップの

グロテスクさが強調され

そこに突然マーガレット・クアリーの若いきらめきが現れる

男たちがスーを見る目、言葉遣いは

エリザベスへのときとはあからさまに違う

ちやほやと褒め称えられるスーは有頂天になっていき

逆にエリザベスはマンションの窓から見える

スーの看板を見るたび落ち込み過食へと走っていく

さらにスーとエリザベスは同じ意識、性格を持ちながら

入れ替わっているときの記憶がないため

お互い暴走していくわけです

 

スーは美しさと健康を維持するため「注意書き」を無視し

エリザベスから安定剤を抽出し続けます

(スーのDIYが凄腕過ぎる謎 笑)

「ヴォーグ」の表紙を飾り、新年の特別番組の司会に抜擢

だけどついに安定剤が枯れてしまう

「サブスタンス」に問い合わせたスーは

安定剤を作るためには、元の身体と意識を入れ替えるしかないと教えられます

意識が戻ったエリザベスは鏡を見て驚愕します

顔も手も足も全て変わり果てた老婆の姿、髪の毛さえない

「サブスタンス」にプログラムの中止を申し込みます

膝を伸ばしただけで死ぬほど苦労したはずのエリザベスが

俊足でしかもタクシーも使わず移動するのはいかがなものか(笑)

スーに彼女を終わらせるための血清を打つと

(完全に注入し終える前に)突然気が変わり

かってスターだった自分をやっぱり取り戻したい

それには特番の司会しかない

(日本でいえば紅白歌合戦の司会に抜擢されるようなもの?)

意識を交換しようとしたその時、スーが目を覚まし

そこで初めてエリザベスとスーは対面します

血清の容器を打たれたことを知り、激怒したスーは

最も肝心な「忘れるな、あなたは1つなのだ」という忠告も忘れ

なんとエリザベスを撲殺してしまいます

それから新年の特番に出演するためにテレビ局に向かい

綺麗にメイクし青く美しいドレスを着たスー

しかしすぐに異変はおこります

鼻血が出て、歯が抜け落ち、耳まで落ちる

安定剤がなければすぐに劣化してしまうことに、改めて気付いたスー

だけどもうエリザベスは亡く、安定剤を抽出できない

なぜなら自分が殺してしまったから

だけど何とか特番に間に合わせたい

スーがとった行動は、残っていたactivatoを使って

新バージョンの自分を作り出すことでした

ところがスーの背中が割れ出てきたのは、より若き美しい自分ではなく

完璧な美を求めたらピカソになっちゃった、という(笑)

スーの目はあっち、口はこっち

もうひとつのエリザベスの顔は裏側

耳はどこかわからないけど、それなりの場所にピアス

顔と思える場所にはエリザベスのポスターの顔を切り取り貼る

口紅も塗っておめかしし

モンストロになった身体にあわせて、ドレスを裂いて着て

いざテレビ局に向かう

クリーチャーの出来としては、新しいものはなく

ジョン・カーペンターの物体Xか

それともデヴィッド・クローネンバーグのハエ男の

二番煎じといったところですが(笑)

監督が女性、しかもフランス人だけに皮肉がたっぷり

(という言い方もコンプライアンス違反かもだけど)

たとえ物体X、ハエ男になっても、女の子なんだから可愛くしなきゃ

女優なんだから綺麗にしなきゃ、という姿が痛々しい

若い女子が好き(ロリータ)(ロリータ役の女優の名前がスー)

血の海(シャイニング)(というより体積以上に血を放出する消防車)

さらに「ツァラトゥストラはかく語りき」(2001年宇宙の旅)には

スタンリー・キューブリックへのオマージュも感じます

最終的にミャクミャクになったエリザベスは

ハリウッド・ウォーク・オブ・フェームに辿り着き

そこで人気絶頂期で感嘆されている自分の幻影を見て微笑むと

血の塊となり、干からび

翌朝には洗浄機によって吸い込まれてしまいます

所詮女性の若さと美とは使い捨て

それを思うと(名前も覚えていなかった)かっての同級生

病院の診断書に急いで連絡先を書いて

それを泥水に落としてしまうようなドジな男

フレッドにあの時会いにいっていれば

違う人生もあったかも知れないのに

老いても大切にされたのかも知れないのに

でも「いい人なんだけど」を選ばないのも女の性(さが)

うろ覚えなんですけど、昔五月みどりさんが

何かのトーク番組で言っていたことを思い出しました

(ご自身の経験から)結婚は3回したほうがいい

最初は好きな男、2番目は経済力のある男

最期は介護してくれる男

できれば1回の結婚が理想ですが

確かに、好き→経済的安定→老後の安心があれば

「サブスタンス」、美しさに執着する必要はないかも知れませんね

 

 

【解説】映画.COMより

バイオレンス映画「REVENGE リベンジ」などを手がけてきたフランスの女性監督コラリー・ファルジャが、「ゴースト ニューヨークの幻」などで1990年代にスター女優として活躍したデミ・ムーアを主演に迎え、若さと美しさに執着した元人気女優の姿を描いた異色のホラーエンタテインメント。
50歳の誕生日を迎えた元人気女優のエリザベスは、容姿の衰えによって仕事が減っていくことを気に病み、若さと美しさと完璧な自分が得られるという、「サブスタンス」という違法薬品に手を出すことに。薬品を注射するやいなやエリザベスの背が破け、「スー」という若い自分が現れる。若さと美貌に加え、これまでのエリザベスの経験を持つスーは、いわばエリザベスの上位互換とも言える存在で、たちまちスターダムを駆け上がっていく。エリザベスとスーには、「1週間ごとに入れ替わらなければならない」という絶対的なルールがあったが、スーが次第にルールを破りはじめ……。
2024年・第77回カンヌ国際映画祭コンペティション部門で脚本賞を受賞。第75回アカデミー賞では作品賞のほか計5部門にノミネートされ、メイクアップ&ヘアスタイリング賞を受賞。エリザベス役を怪演したデミ・ムーアはキャリア初となるゴールデングローブ賞の主演女優賞(ミュージカル/コメディ部門)にノミネート&受賞を果たし、アカデミー賞でも主演女優賞にノミネートされた。共演は「哀れなるものたち」「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」などの話題作で活躍するマーガレット・クアリー。

2024年製作/142分/R15+/イギリス・フランス合作
原題または英題:The Substance
配給:ギャガ