ANORA アノーラ(2024)

原題は「Anora」

R指定(日本では18歳未満入場禁止、米国では17歳未満は要保護者の同伴)

にもかかわらず、2025年第97回アカデミー賞

作品賞、監督賞、主演女優賞、脚本賞編集賞の最多5冠を獲得

30年前ならば「脱いでなんぼ」のゴールデンラズベリー賞(褒めています 笑)

だけど時代は、ショーン・ベイカー監督お得意の

セックスワーカー”というような蔑視されている職業に対しての理解と

(いままでのハリウッド的な)サクセスストーリーへのアンチテーゼ

 

といっても、内容的には全く重くない

ただラストの夢破れた女の子の切なさが辛い

ニューヨークで高額のストリップダンサーをしているアノーラは

ロシアの富豪の御曹司イヴァンに気に入られ

15,000ドルで、彼と1週間一緒に過ごす契約を交わすと

ベガスでプロポーズされそのまま結婚

それを知ったロシアの両親が、ニューヨークで司祭(ギャング?)をしている

トロスにふたりの婚姻を破棄するよう命じ

トロスは子分のガルニクとイゴールをイヴァンの家に送り込みます

序盤はセックスしすぎの(笑)「プリティウーマン」

若気の至りと言ったらそれまでですが、さすがナンバーワン

顔が可愛いだけの馬鹿ではないことがわかります

(ブレイク前だからともいえる)よくぞここまでやったという感じ

ヒロインを演じたマイキー・マディソンはユダヤ系だそうですが

東洋人っぽい顔立ちなので親しみやすさがありますね

中盤はドタバタコメディ、やかましいったらありゃしない(笑)

御曹司役のマーク・エイデルシュテインは

「ロシアのティモシー・シャラメ」と呼ばれているそうで(笑)

いつかは文芸的な作品にも主演してほしい美青年

ヒロインを監視するイゴール役のユーリー・ボリソフは

ロシア人として「愛と喝采の日々」のミハイル・バリシニコフ以来

約50年ぶりとなる助演男優賞にノミネート

受賞には至りませんでしたが、控えめながら強烈な印象を残しています

アノーラこと通称アニーは23歳のストリップダンサーで

ブルックリンのロシア系アメリカ人地区ブライトンビーチに住んでいます

ロシア語が話せるアニーに支配人は、金持ちで羽振りがいい

ロシア人の青年イヴァンの相手をするよう頼みます

 

イヴァンはアニーにプライベートでも会って欲しいと(料金はかかる)

翌日彼の邸宅に呼ばれるとそこはすごい豪邸

イヴァンはネットで検索すれば出てくるロシアの有名なオリガルヒの息子で

アメリカには勉強のためやって来た21歳

実際には毎日セックスと酒とクスリ、パーティーにテレビゲーム三昧という

快楽に身を高じていました

 

イヴァンから15,000ドルで彼と1週間一緒にいる契約を持ち掛けられ

ビジネスとして合意するアニーでしたが

イヴァンの金持ちぶりは想像を遥かに超えた、使っても使っても有り余るお金

若いふたりは遊んで暮らすこの楽しい日々がずっと続くと思い込み

イヴァンはアニーにプロポーズし、アニーもそれを承諾

ふたりはベガスで式を挙げます

仕事を辞めイヴァンと暮らし始めるアニー

すぐにイヴァンが結婚したというニュースロシアに広ま

ワーニャの母ガリーナは夫アメリカに飛ぶことにし

それまでにイヴァンの婚姻破棄するよう,アルメニアの司祭トロスに命じます

 

トロスは手下のガルニクとイゴールをイヴァンのもとに送り込むと

ガルニクはアニーを売春婦と呼び

イヴァンが結婚したのはグリーンカードを所得するため

結婚は無効だとアニーを激怒させます

イヴァンは両親が彼をロシアに連れ戻すためやって来ると教えられると

アニーを置いてひとりで逃走

アニーは暴れイゴールの首を噛み、ガルニクの鼻をへし折り、家具を破壊

そこにトロスが登場、アニーのダイヤの結婚指輪を没収し

私は正式な妻だと悲鳴をあげる彼女に猿ぐつわをはめさせ

結婚の取り消しと引き換えに10,000ドルを支払うことを約束

全員でイヴァンを探しに行くことになります

ブルックリン中をドライブして、イヴァンの友人たちを訪ねますが

イヴァンはアニーの電話にも友人たちの電話にも応答しません

イヴァンが行きそうなクラブでは、彼があまりに酔っていたので帰したと言います

疲れ果てた4人がダイナーで食事をしていると

アニーの前の職場の同僚から、イヴァンが店に来ていると知らせが入ります

一行が到着すると、イヴァンはあろうことかアニーのライバル

ダイヤモンドと一緒にいました

酔っ払ったイヴァンを車に乗せ、離婚手続きのため裁判所が開くまで待つ

ところがベガスで結婚したらネバダ州でなければ離婚できない

一同は法廷から追い出されます

イヴァンの両親が自家用機で空港に到着すると、アニーはイヴァンの妻として

母親のガリーナにロシア語で自己紹介し握手を求めます

ガリーナは彼女を冷たく拒絶し

イヴァンは母親のスーツに「新しいコレクション?」と、アニーを無視

ガリーナが自家用機に乗り離婚のためベガス行きを催促すると

アニーはその前に弁護士を雇う

婚前契約していないから離婚したら財産も半分もらうと言い放ちます

(笑いを堪えるイゴールの表情が絶妙 笑)

しかしガリーナは裁判などしたらアニーの全てを取り上げる

彼女の人生を破壊してみせると脅します

ロシアのオリガルヒを批判にしてるともいえる展開ですが

(でも世界中の嫁姑問題は共通 笑)

 

つい先日、トランプ大統領アメリカの永住権を獲得できる

(外国の富裕層向け)「ゴールドカード」の販売を始めると明らかにし

ロシアのオリガルヒにも販売するかという質問に「可能性はある」

「私はオリガルヒを何人か知っているが、とてもいい人たちだ」と

答えたそうです

2024年版の世界長者番付では120人のロシア人が名を連ね

アメリカでもオリガルヒやロシアの政権幹部といった大金持ちが

銀行口座、不動産、豪華船、ジェット機などを所有

たぶんかなりの影響力をもっているのでしょうね

 

飛行機の中でイヴァンを「バカ息子」と呼び続ける両親

いやいや、20歳そこそこの若者に大金を与えたらそうなるのもあたりまえ

自由にお金を使わせたあんたらのほうが悪いから(笑)

ベガスに到着し、アニーが離婚の書類に署名すると

イゴールはイヴァンにアニーに謝ったほうがいいと伝えます

「息子は誰にも謝らない」とガリーナが言うと

アニーはどうしてイヴァンが結婚したかわかった

母親が一番嫌がる職業だから結婚したのだと、捨て台詞を吐いて去ります

妻のガリーナが侮辱され吹き出す夫(もしかして婿養子か?笑)

トロスに(荷物をまとめるため)ブルックリンの邸宅に1日いてもいいと言われ

イゴールと過ごすことになるアニー

そこでイゴールに「レイプしようとした」とか「男色」とか八つ当たりしますが

イゴールはアニーに男色と呼ばれる意味がわからない(可愛い)

アニーのため煙草に火を付けたり、ウォッカを注いだり優しい

なぜなら金持ちに摂取される貧乏人の辛さを知っているから(たぶん)

翌日雪の中、彼女を車で送っていくイゴール

アパートの前に到着すると「アンタらしいダサい車」とアニー

「おばあちゃんの車」だと答えるイゴール

そしてトロスからこっそり奪い返したダイヤの指輪をアニーに返します

 

イヴァンの愛は偽物だったかも知れないけど、ダイヤは本物(笑)

ミンクじゃないロシアンセーブルの毛皮は突き返してしまったけど

たとえ仕事を失っても4カラットのダイヤがあれば生活を凌げる

(IKKOさんの質屋のCMみたい 笑)

今気付いた、自分を本当に理解していたのは誰なのか

イゴールと私は同人類

 

アニーはイゴールにまたがり、彼の股間を刺激します

イゴールはアニーにキスしようとしますが、アニーはイゴールにビンタ

そうして泣き崩れてしまいます

たぶんですが、イゴールは反応できなかった

それはイゴールが「男色」だからでも、アニーのことが嫌いだからでもない

彼にとってこういう形のセックスができなかっただけ

だけど女の子を大切に思う気持ちが、余計彼女を傷つけてしまった

アニーが、おバカで幼くて(ある意味)純真なイヴァンを愛したことは本当

イゴールの見返りを求めない優しさに想いを寄せたことも本当

だけどどちらとも結ばれることは、決してない

 

これは10代20代の暗黒時代、青春という名の棘の道の1ページ

でもアニーならきっと乗り越えられると思います

私も、あなたも、数々の失敗を乗り越えてきたように



【解説】映画.COMより

「タンジェリン」「フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法」「レッド・ロケット」などで高い評価を受けてきたショーン・ベイカー監督が手がけた人間賛歌の物語。ニューヨークを舞台に、若きストリップダンサーのアノーラが、自らの幸せを勝ち取ろうと全力で奮闘する等身大の生きざまを描いた。2024年・第77回カンヌ国際映画祭パルムドールを受賞。第97回アカデミー賞では作品、監督、主演女優、助演男優、脚本、編集と6部門にノミネートされた。
ニューヨークでストリップダンサーをしながら暮らすロシア系アメリカ人のアニーことアノーラは、職場のクラブでロシア人の御曹司イヴァンと出会い、彼がロシアに帰るまでの7日間、1万5000ドルの報酬で「契約彼女」になる。パーティにショッピングにと贅沢三昧の日々を過ごした2人は、休暇の締めくくりにラスベガスの教会で衝動的に結婚する。幸せ絶頂の2人だったが、ロシアにいるイヴァンの両親は、息子が娼婦と結婚したとの噂を聞いて猛反発し、結婚を阻止すべく、屈強な男たちを2人のもとへ送り込んでくる。ほどなくして、イヴァンの両親もロシアから到着するが……。
身分違いの恋という古典的なシンデレラストーリーを、現代風にリアルに映し出す。タイトルロールのアノーラ(通称アニー)を演じるのは、「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」や「スクリーム」に出演してきた新星マイキー・マディソン。アノーラに夢中になるお調子者のロシア新興財閥の息子イヴァン役に、ロシアの若手俳優マーク・エイデルシュテイン。

2024年製作/139分/R18+/アメリ
原題または英題:Anora
配給:ビターズ・エンド